今日も私は地上と地下を繋ぐ橋の上にいる。なぜこんな何もない橋の上にいるのかと言えば理由は簡単、地下から地上へ逃げる者を捕まえるため、また地上から地下に入りたいという者のチェックのため。要は警備である。そしてこの仕事は私が初めて貰った仕事であり、また今まで続けてきた仕事でもある。ほぼ毎日何もないけれど、それでもお金は貰えたし、結構この仕事も気に入っている。が、しかし最近は地上と地下の隔たりも薄くなってきているため、人の出入りも昔よりは自由になっている。そのため私の警備もそこまで必要とはされなくなっていると思う。しかしお金は今だに支給されているから、仕事を放り投げる訳にもいかない。だから私はいまだにこの橋に来ている。まぁ実のことを言えば、この仕事に愛着を持っていたし、昔から来ている場所なので、何となく来てしまっているだけ、というのが正解だ。
そして今日も特にすることもなく、ボーっとしていると久しぶりに人間が橋にやってきた。
「通らしてもらうぜ」
粗暴で野蛮な魔法使いこと霧雨魔理沙がやってきたのだ。別に通してはいけない理由もないので、
「どうぞさっさと通ってください」
こういう以外に他ない。そしたら黒白魔法使い私の言葉を聞く前にさっさと通っていき、見えなくなっていた。何なんだ、あいつから話しかけてきて、せっかく自分が会話してやろうと思ったのにあの態度は。それにしても話は変わるが、あの魔法使いは妬ましい。人間のくせに無駄に強い力を持っているし、なにより友好関係が妬ましい。何であんなやつがあんなに沢山の人や妖怪と仲良くできるのだ。訳が分からない。あぁ世の中は不平等だ。あぁ妬ましい。こんなことを思っていると一日があっという間に過ぎていく。私自身が嫉妬の妖怪だからこういうのを思っているときはいつも楽しい。こう、頭が空っぽになるというか、嫉妬に夢中になるというか。だから私はいつもことあるごとに嫉妬している。あぁあいつは妬ましいと。実際今日もこんな風に思っていたらあっという間に晩御飯の時間になっていた。私はちょっと嫉妬に夢中になりすぎたと反省しながらも、家に帰ることにした。
今日も特にすることがなく、橋の欄干によりかかってボーっとしているとまたもや人間が通った。
「ちょっと地霊殿に用事があるから通してもらうね」
紅白巫女こと博麗霊夢が右手に黒猫を、左手に烏を持ってやってきた。おそらくあれは地霊殿のペットだろう。きっと神社でイタズラをしたに違いない。私はそう推理した。とりあえず止める理由もないので
「どうぞさっさと通ってください」
こう言った。しかし博麗の巫女は私の言葉なんかもきかずにさっさと通って行ってしまった。なんだあの巫女は。昨日の魔法使いといい、最近の人間は礼儀がなっていないと思う。まぁいいや。それより毎回あいつを見ているとなぜか妬ましくなってくる。あんな風に周囲から浮いているような存在であるのにもかかわらず、なぜかみんなから好かれている存在。そして努力をしないにもかかわらず、あの強さを持っている事。何なんだ、才能の差か、生まれ持っての差か。ああいう天才タイプは見ていて本当に腹立たしい。こっちが必死に努力をしたとしても、あいつは何もせずに私以上の結果をだすに違いない。妬ましい。私だって才能が有ればもっと強いはずなのに。
これだったらまだ黒白魔法使いのほうがましに思えるが、なぜあの魔法使いは努力をどんなにしてもけっして届かない奴を追いかけているのだろうか、意味が分からない。どうしてあの魔法使いの瞳はいつも真っ直ぐなのだろうか、訳が分からない。あぁそんな黒白魔法使いもやはり妬ましい。妬ましい。
そして紅白巫女が持って行っていた二匹のペット。どうしてあいつらは地獄の一番下のつらい仕事を毎日しているのにあんなに毎日が充実した生活をしているというような表情を浮かべるのか、どうして毎日が幸せというような表情をしているのか。妬ましい。元、動物の癖に妬ましい。こんな風にしていたらまた今日という一日が終わってしまった。やはり嫉妬は楽しい。私は改めて再認識した。
やはり今日も私は橋の上にいる。今日は橋の欄干に手を乗せて、ボーっと河の向こうを見ていた。そこでは鬼たちが大人数で宴会を開いていた。彼らは馬鹿みたいに酒を飲み、馬鹿みたいに騒いでいる。いや、馬鹿みたいにという表現では誤解を生むから訂正したい。馬鹿達が集まってうるさく騒いでいるのである。なんであいつらは私なんかよりも頭が悪いし、単純で乱暴だし、迷惑な存在であるのにも関わらず、あんなに楽しそうなのだろう。なんであいつらはあんなに笑顔で騒いでいるのだろう。妬ましい。あいつらよりもきっとまじめである私は無表情でボーっとして、あいつらは笑顔なのだろう。妬ましい。妬ましい。そう思っていたら今日も一日が終わった。何というか嫉妬には時間を跳躍することが出来るんじゃないかと思うほど、あっというまに時が過ぎた。
いうまでもなく今日も私は橋にいる。今日は橋のはじの方でしゃがみながらボーっとしていたら、一匹の妖怪が通った、と思ったらあっという間に通り過ぎた。おそらくあれは天狗の新聞記者の射命丸とかいうやつだろう。あいつのことはどうでもいい。しかし橋の監視役でもある私を無視していくというのは、少々いただけないことだ。その上あいつがあんなに急いでいるということは、きっとあいつの興味を引く何か事件があったのだろう。妬ましい。私に許可なく橋を通っていきたくなるほどの事件がおきたことが、私なんか眼中になんかないというその態度が妬ましい。あぁ妬ましい。そう思っていたら一日が終わってしまった、嫉妬はやはり素晴らしい、私の時間がここまで短く感じるほど夢中になれるのだから。あぁ、何と素敵な嫉妬の世界。私はそう思った。
嫉妬は私にとっての全てだ。私はもともと、人間だった時、嫉妬に囚われて今のような妖怪になった。人間の頃は嫉妬をすると、こう何故か素直には楽しめなかった記憶がある、理由は分からないけれども。けど、妖怪になってからは違った。嫉妬が自分の生きがいのように楽しく感じ始めたのだ。私にはこれしかない、というほどに。今までのことを見ていればわかるように、私にとって嫉妬は楽しい。自分の世界に簡単に旅立つことができるし、そのおかげで一日が短く感じられるほど充実していると思う。だから私にとって、嫉妬とは、とても素晴らしいものなのだ。
今日も今日とて橋の上。今日は橋の真ん中で地上からの入り口の方を見ながら仁王立ちをしていた。昨日のように許可なく渡られるのが嫌だからである。一応こちらも仕事なのだから、一言二言の会話をしたうえで、私が許可を与えてからでないと、私の気持ちがスッキリしないのである。さぁこれで今日はばっちしだ、そう考えていたら後ろから声をかけられた。
「すいません、あの邪魔なんですが」
「ひ!」
まさかの後ろから、いきなりなのでビックリして変な声が出てしまった。まぁ気にしたらだめだ。とりあえず何でもなかったような感じで振り返って、と見たらなんだ嫌われ者の古明地さとりか。
「嫌われ者ですみませんね」
「あ、すまない」
「いいですよ、慣れてますから」
そう言って彼女は私の横をゆっくりと通り過ぎていった。それにしてもあいつですら地上に行く用事があるというのに、私には無い。妬ましい、本当に妬ま
「あなたって何時もそうやってことあるごとに妬ましい、妬ましいと心の中で思っているのですか?」
おっと、まださとりに心を読まれる範囲にいたか。これは失敗したと思ったが、いまさらどうしようもない。
「あぁ、そうさ。なんせ私は嫉妬を操る妖怪だからね」
あたりさわりもない答えで返した。というか嫉妬が楽しすぎるというのが一番の理由なんだけどね、っとこれも聞かれたか?
「ええ、ばっちり聞こえています。ところでどうして嫉妬を操る妖怪になって、なるほどそういうことですか」
出たよ、勝手に心を読んで一人で会話を終了させるパターン。これだからこいつと話すのは嫌なんだ。一方的に会話をされるというのはイライラする。しかも自分のいやなことをただひたすら言われ続けるとなると、もううんざりだ。こんな奴とは会話したくないと私は思い、さとりのことを無視しようとした。しかし、
「あなたはある一人の女に嫉妬心を抱いた。理由は、なるほどあなたが欲しがっていたもの全てを持っていたからですか。美しさ、男、知性、性格、器量。数えるとキリがないほどあったんですか。大変でしたね。それで嫉妬に心を奪われ、自らが鬼となってしまったと。で、最後には封印されてしまい、そのままこの嫌われ者の流刑地、幻想郷の地下に来たんですか。そうですか」
こいつは、私が会話などしたくないと言っているのに、無視しようとしているのを理解したうえで話しかけてくる。こいつは本当に性格が悪いな。だから嫌いなんだ。
「嫌いでいいですよ。それがさとり妖怪という種族ですから。それとこれは独り言です。決してあなたとは会話していません。それで私いつも思ってたんですけど、どうしてそこまで嫉妬に駆られたんですか?」
どうしてって、さっきお前が言った通りじゃないか。私の欲しかったもの全てを持っていた女がいて、妬ましくて仕方なかったからだ。私がどんなに頑張っても手に入れることが出来なかったものを。おっと、つい独り言にのってしまった。
「そう、独り言ですから、反応しなくても結構です。どっちにしろあなたの心は読めますし。しかし本当にそう思ってるんですか?何でそんな理由で、こんな風に全ての物に嫉妬するんですか?」
何が言いたい。というかこれはあいつの独り言なんだ、無視無視……。
「いや、どうしても本心でそう言ってるようには見えなくて。というかあなた自身も気づいているんじゃないんですか?」
まったく独り言をブツブツ呟く変な奴に絡まれちゃったよ。無視しないと。
「あ、気づいていないんですか。それとも気づいていないフリですか?まぁどっちでもいいや、教えてあげましょう。あなたには嫉妬しか残されていないんですよ。あなたは昔、公家にいたそうですね。お偉いさんのお家じゃないですか。なんでそんな所にいて、他の人にそんな嫉妬をするのですか?むしろ嫉妬される立場だと思うんです」
こいつ、また勝手に人の過去を。いや、無視だ、無視無視無視無視無視無視。
「まぁ、仮に、あなたが不細工で見せられない顔だったら、他の女の美しさに嫉妬するというのはまだ分かります。だけど、何故全てに嫉妬するのか、私には理解できません。嫉妬というものは、無い物ねだり。自分では手の入らない物を持っている奴を羨ましいと思う気持ち。あなたは上流階級にいたのだから、やろうと思えばなんだってできたと思います。例えば男に対する恋愛だったら、自分も歌などを学び、そこから男との話を広げられるようにしたり、男に対しアピールできるようにする。そこから教養とも学べたでしょうし、知性だって身につけられたはずです。つまり、美以外だったら何とかなったかもしれなかった。にもかかわらず、あなたは一つもそれらを手に入れなかった。そして手に入れた女性を妬んだ。これっておかしくないですか?」
なんなんだ、こいつは、本当に、うるさい。無視しないと。こんなやつの言ってることなんて、どうせおかしいんだから。
「いや、あなたって努力してたんですか?あなたは軽く努力をしただけで努力をしたつもりになって、こんなに努力したのに私には手に入らない。なのにあんな奴が私の欲しかったものを手に入れている。あぁなんて妬ましい。こんな風に、妬みを自分の努力しなかった現実から逃げるために使ってるんじゃないんですか?」
無視無視無視無視無視無視。
「才能が無かったなんて、そんなの他の人もほとんど同じですよ。まぁたまに霊夢さんみたいな才能の塊とかもいます。しかしあまり才能を持っていない人でも、才能の塊と同じくらいの強さを持った人もいます。例えば魔理沙さんなんかいい例でしょう。彼女は影でたくさん努力をしているそうです、だから天才と渡り合えているんですよ。すこしやっただけで才能が無いっていう言葉を使うのは、ただの逃げです。努力から逃げるための負け犬の言葉です」
こいつはなんなんだ、お前の独り言うるさすぎるんだよ。いい加減無視できない。
「そうだ、具体的に昔、どれくらい頑張ったか教えてください。」
あぁ、うるさいな。
「あぁ喋らなくてもいいです。あなたの心は読めますから。なるほど、これだけしか、というかほとんど努力なんてしてなかったんですね。いままでは嘘をついてごまかしていたんですか。そうですか。まぁこれで分かった通り、あなたは努力なんてしてなかった。いや、やらなかったことをどう誤魔化すかに努力したのですか。で、その方法が嫉妬と。嫉妬って楽しいですよね。嫉妬し続ければやがてこんな風になったのはあいつのせいだと責任転嫁でき、自分の責任だったという現実から逃げられますもんね。そしたら気持ちも楽になりますからね」
独り言がうるさいな。
「で、嫉妬をすることにのみ努力をしたあなたは、妖怪になった今、こんどは目に映る全ての物に嫉妬していると。そりゃあそうですよね。生きている間何もしてこなかったんだからあなたは空っぽなんです。だから何も持っていないあなたは何でも欲しがる。例えそれがどんなものであっても。だけどあなたはそんなこと認めたくなかった。だからあなたは嫉妬を操る妖怪として他の物全てに嫉妬し、自分が空っぽの存在であるという現実から逃げていた。違いますか?」
……。
「とうとうだんまりですか。さっきまで散々、無視とかうるさいとか連呼していたのに。まぁいいでしょう。ここまでで分かったでしょうが、あなたが嫉妬するのは、自分の非を認めないため。自分が空っぽであると認めないため。まぁ念のためもう一度言っておきました」
なんでお前はそんな意味の分からない独り言をする。うるさいんだよ。私の仕事の邪魔をするな。
「私は仕事の邪魔なんてしてませんよ。ただ、人の嫌なことを思い出させてあげる。これがさとり妖怪の性分ですから、ついやってしまうんです。それに、いつも誰かが橋を通るたびに、演技がかった心の声で妬ましい、あぁ妬ましいと思うあなたがうざったかったんです。だから今日言わせてもらいました。あ、今のあなたの心の声に反応した会話みたいになってしまいましたが、これは全部独り言です。後ついでの機会ですから、これも独り言として、言っときます。あなたってだれからも必要とされてないし、どうでもいい存在として見られていますよね。まぁあなたみたいに常に妬ましいとかいう空っぽの人と仲良くなりたい人なんていないですからね。あ、そうだどうしてこう思ったか理由が聞きたいですか?」
うるさい。だまれ。
「そうですか聞きたいですか。あなたって最近会話しましたか?」
……無視しよう。
「え?あなたが今思っているのって、この間の魔理沙さんと霊夢さんの時のですか?あんなの会話じゃなですよ。誰からも頼まれていないのに、橋の警護をしている面倒な奴に絡まれないように、仕方なく一言声をかけただけじゃないですか。現にあなたが通ってくださいといったら、さっさと通って行ったじゃないですか。会話なんて無く。しかも宴会があった時なんかは誘いの言葉もなかったし、射命丸さんにいたってはあなたを無視しています。じゃあ何時くらいから会話していないんでしょうね」
……。
「あぁあの初めて、霊夢さんや魔理沙さんが地底に乗り込んできた時以来なんですか。てことはもう数年まともな会話はしていなかったんですね。まぁこんな感じの状態の人が、誰かから必要とされているとは考えられませんね。まぁ、しょうがないですよね、あなたには何もない。空っぽなのですから。あなたは周りの人から見たら、路傍の石、いやそれ以下の認識しかないでしょうね。いてもいなくても同じ存在ですからね。だけどそれも自分の責任。いままでは見て見ぬふりをしていたんですから、自業自得です」
「いい加減にしろ!」
私はとうとう我慢できず、さとりを殴るため拳を握り、腕を振り上げた。独り言だからとか言っていたけど、あからさまに私の事を言っているのは分かるし、これ以上言われると本当に頭がおかしくなりそうだったからだ。この殴る行為は正当だろう。が彼女は私の拳をヒラリとかわし、そのまま橋の、地上への出口行きの方まで走って行った。「わかりましたか?あなたの嫉妬の意味が。分かりましたか?あなたの存在意義がいやーそれにしても楽しいですね。他人の嫌な所をつつくのは。あぁ、それと私のは全部独り言ですから。なんかその辺にいる嫉妬の妖怪なんかに話しかけていませんから」と楽しそうな声で言いながら。
一人残された私はどうするということもなく、橋の欄干によりかかり、ただ彼女が言っていたことを思いだしていた。嫉妬をしてみじめな自分から逃げる。現実から逃げる。確かにそうだったのかもしれない。しかし今さらどうすることもできない。私は人間だった時から空っぽで、言い訳のための嫉妬しかもっていなかった。そんな人間が妖怪になったのだ。もうすでに私という存在は他人に嫉妬するということから出来上がっている。つまり私のアイデンティティは嫉妬しかないのだ。元に何もないのだから、今から変えることもできない。それは0という数字にはどんな大きい数字を掛けても0にしかならないのと同じだ。それでもやった方がいいとは自分でも思っている。しかしやったとしても私はこの性格、雰囲気、考え、行動を変えられる気がしない。私という存在、それは自分は何もせず、ただ周りに嫉妬する妖怪。もしその考えを捨ててしまったら、自分という存在を捨てるのと同義だ。例えそっちの方が周りから受け入れられるとしても、私自身の意識の底では認められない。もしそのままでいたら、きっと嫉妬の妖怪という自分が崩壊し、どうなるか分からない。存在自体が消えるかもしれない。気が狂うかもしれない。ともかく無理に変えても良い未来が何一つと見えない。
「まぁ、どうすることも出来ないのよね」
結局はそうなのだ。私は気づくのに遅すぎたのだ。いや、正確に言えば逃げるのをやめるのが遅すぎたんだ。人間の時にあと少し努力をしてきていたら、こんなみじめな嫉妬妖怪になんかならなかったかもしれない。しかし私はそこで逃げた。必死に必死に逃げ続けた。そして妖怪になっても逃げ続け、今日気づかされた。そう私は今日初めて逃げるのをやめて立ち止まり、そして振り返った。しかしその後ろには闇しかなく、自分がどこから逃げてきたかも分からない。もう私は帰れないのだ。あきらめるしかないのだ。多分私は明日からもまたいつも通り現実から逃げるため嫉妬するだろう。あの何も考えずただ嫉妬するだけでいい世界に。あの世界は何も考えずにすむから楽だろう。逆に言えば考えさせてくれるものが何もない、無しかないということなのだろうが。しかしこんな風に後悔し続ける生活を続けるなら、私はまたあの世界にもどって、何も考えたくないと思っている。だから私は、
「あーあ、本当にさとり妖怪っていうのは性格が悪い。聞いてて本当に嫌な気落ちになったよ。今日はもう家に帰って酒のんで寝よ。そうすれば明日にはわすれているでしょ」
こう自分に言い聞かせながら、家に帰ることにした。明日になったら今日のことを忘れる、こんな都合のいいことは無いだろう。しかし私は現実から逃げるのは得意なようだ。だから明日からも嫉妬をしよう。嫉妬し続ければ、この現実から逃げだせる。そうあの素敵な嫉妬世界に早く戻ろう。
そして今日も特にすることもなく、ボーっとしていると久しぶりに人間が橋にやってきた。
「通らしてもらうぜ」
粗暴で野蛮な魔法使いこと霧雨魔理沙がやってきたのだ。別に通してはいけない理由もないので、
「どうぞさっさと通ってください」
こういう以外に他ない。そしたら黒白魔法使い私の言葉を聞く前にさっさと通っていき、見えなくなっていた。何なんだ、あいつから話しかけてきて、せっかく自分が会話してやろうと思ったのにあの態度は。それにしても話は変わるが、あの魔法使いは妬ましい。人間のくせに無駄に強い力を持っているし、なにより友好関係が妬ましい。何であんなやつがあんなに沢山の人や妖怪と仲良くできるのだ。訳が分からない。あぁ世の中は不平等だ。あぁ妬ましい。こんなことを思っていると一日があっという間に過ぎていく。私自身が嫉妬の妖怪だからこういうのを思っているときはいつも楽しい。こう、頭が空っぽになるというか、嫉妬に夢中になるというか。だから私はいつもことあるごとに嫉妬している。あぁあいつは妬ましいと。実際今日もこんな風に思っていたらあっという間に晩御飯の時間になっていた。私はちょっと嫉妬に夢中になりすぎたと反省しながらも、家に帰ることにした。
今日も特にすることがなく、橋の欄干によりかかってボーっとしているとまたもや人間が通った。
「ちょっと地霊殿に用事があるから通してもらうね」
紅白巫女こと博麗霊夢が右手に黒猫を、左手に烏を持ってやってきた。おそらくあれは地霊殿のペットだろう。きっと神社でイタズラをしたに違いない。私はそう推理した。とりあえず止める理由もないので
「どうぞさっさと通ってください」
こう言った。しかし博麗の巫女は私の言葉なんかもきかずにさっさと通って行ってしまった。なんだあの巫女は。昨日の魔法使いといい、最近の人間は礼儀がなっていないと思う。まぁいいや。それより毎回あいつを見ているとなぜか妬ましくなってくる。あんな風に周囲から浮いているような存在であるのにもかかわらず、なぜかみんなから好かれている存在。そして努力をしないにもかかわらず、あの強さを持っている事。何なんだ、才能の差か、生まれ持っての差か。ああいう天才タイプは見ていて本当に腹立たしい。こっちが必死に努力をしたとしても、あいつは何もせずに私以上の結果をだすに違いない。妬ましい。私だって才能が有ればもっと強いはずなのに。
これだったらまだ黒白魔法使いのほうがましに思えるが、なぜあの魔法使いは努力をどんなにしてもけっして届かない奴を追いかけているのだろうか、意味が分からない。どうしてあの魔法使いの瞳はいつも真っ直ぐなのだろうか、訳が分からない。あぁそんな黒白魔法使いもやはり妬ましい。妬ましい。
そして紅白巫女が持って行っていた二匹のペット。どうしてあいつらは地獄の一番下のつらい仕事を毎日しているのにあんなに毎日が充実した生活をしているというような表情を浮かべるのか、どうして毎日が幸せというような表情をしているのか。妬ましい。元、動物の癖に妬ましい。こんな風にしていたらまた今日という一日が終わってしまった。やはり嫉妬は楽しい。私は改めて再認識した。
やはり今日も私は橋の上にいる。今日は橋の欄干に手を乗せて、ボーっと河の向こうを見ていた。そこでは鬼たちが大人数で宴会を開いていた。彼らは馬鹿みたいに酒を飲み、馬鹿みたいに騒いでいる。いや、馬鹿みたいにという表現では誤解を生むから訂正したい。馬鹿達が集まってうるさく騒いでいるのである。なんであいつらは私なんかよりも頭が悪いし、単純で乱暴だし、迷惑な存在であるのにも関わらず、あんなに楽しそうなのだろう。なんであいつらはあんなに笑顔で騒いでいるのだろう。妬ましい。あいつらよりもきっとまじめである私は無表情でボーっとして、あいつらは笑顔なのだろう。妬ましい。妬ましい。そう思っていたら今日も一日が終わった。何というか嫉妬には時間を跳躍することが出来るんじゃないかと思うほど、あっというまに時が過ぎた。
いうまでもなく今日も私は橋にいる。今日は橋のはじの方でしゃがみながらボーっとしていたら、一匹の妖怪が通った、と思ったらあっという間に通り過ぎた。おそらくあれは天狗の新聞記者の射命丸とかいうやつだろう。あいつのことはどうでもいい。しかし橋の監視役でもある私を無視していくというのは、少々いただけないことだ。その上あいつがあんなに急いでいるということは、きっとあいつの興味を引く何か事件があったのだろう。妬ましい。私に許可なく橋を通っていきたくなるほどの事件がおきたことが、私なんか眼中になんかないというその態度が妬ましい。あぁ妬ましい。そう思っていたら一日が終わってしまった、嫉妬はやはり素晴らしい、私の時間がここまで短く感じるほど夢中になれるのだから。あぁ、何と素敵な嫉妬の世界。私はそう思った。
嫉妬は私にとっての全てだ。私はもともと、人間だった時、嫉妬に囚われて今のような妖怪になった。人間の頃は嫉妬をすると、こう何故か素直には楽しめなかった記憶がある、理由は分からないけれども。けど、妖怪になってからは違った。嫉妬が自分の生きがいのように楽しく感じ始めたのだ。私にはこれしかない、というほどに。今までのことを見ていればわかるように、私にとって嫉妬は楽しい。自分の世界に簡単に旅立つことができるし、そのおかげで一日が短く感じられるほど充実していると思う。だから私にとって、嫉妬とは、とても素晴らしいものなのだ。
今日も今日とて橋の上。今日は橋の真ん中で地上からの入り口の方を見ながら仁王立ちをしていた。昨日のように許可なく渡られるのが嫌だからである。一応こちらも仕事なのだから、一言二言の会話をしたうえで、私が許可を与えてからでないと、私の気持ちがスッキリしないのである。さぁこれで今日はばっちしだ、そう考えていたら後ろから声をかけられた。
「すいません、あの邪魔なんですが」
「ひ!」
まさかの後ろから、いきなりなのでビックリして変な声が出てしまった。まぁ気にしたらだめだ。とりあえず何でもなかったような感じで振り返って、と見たらなんだ嫌われ者の古明地さとりか。
「嫌われ者ですみませんね」
「あ、すまない」
「いいですよ、慣れてますから」
そう言って彼女は私の横をゆっくりと通り過ぎていった。それにしてもあいつですら地上に行く用事があるというのに、私には無い。妬ましい、本当に妬ま
「あなたって何時もそうやってことあるごとに妬ましい、妬ましいと心の中で思っているのですか?」
おっと、まださとりに心を読まれる範囲にいたか。これは失敗したと思ったが、いまさらどうしようもない。
「あぁ、そうさ。なんせ私は嫉妬を操る妖怪だからね」
あたりさわりもない答えで返した。というか嫉妬が楽しすぎるというのが一番の理由なんだけどね、っとこれも聞かれたか?
「ええ、ばっちり聞こえています。ところでどうして嫉妬を操る妖怪になって、なるほどそういうことですか」
出たよ、勝手に心を読んで一人で会話を終了させるパターン。これだからこいつと話すのは嫌なんだ。一方的に会話をされるというのはイライラする。しかも自分のいやなことをただひたすら言われ続けるとなると、もううんざりだ。こんな奴とは会話したくないと私は思い、さとりのことを無視しようとした。しかし、
「あなたはある一人の女に嫉妬心を抱いた。理由は、なるほどあなたが欲しがっていたもの全てを持っていたからですか。美しさ、男、知性、性格、器量。数えるとキリがないほどあったんですか。大変でしたね。それで嫉妬に心を奪われ、自らが鬼となってしまったと。で、最後には封印されてしまい、そのままこの嫌われ者の流刑地、幻想郷の地下に来たんですか。そうですか」
こいつは、私が会話などしたくないと言っているのに、無視しようとしているのを理解したうえで話しかけてくる。こいつは本当に性格が悪いな。だから嫌いなんだ。
「嫌いでいいですよ。それがさとり妖怪という種族ですから。それとこれは独り言です。決してあなたとは会話していません。それで私いつも思ってたんですけど、どうしてそこまで嫉妬に駆られたんですか?」
どうしてって、さっきお前が言った通りじゃないか。私の欲しかったもの全てを持っていた女がいて、妬ましくて仕方なかったからだ。私がどんなに頑張っても手に入れることが出来なかったものを。おっと、つい独り言にのってしまった。
「そう、独り言ですから、反応しなくても結構です。どっちにしろあなたの心は読めますし。しかし本当にそう思ってるんですか?何でそんな理由で、こんな風に全ての物に嫉妬するんですか?」
何が言いたい。というかこれはあいつの独り言なんだ、無視無視……。
「いや、どうしても本心でそう言ってるようには見えなくて。というかあなた自身も気づいているんじゃないんですか?」
まったく独り言をブツブツ呟く変な奴に絡まれちゃったよ。無視しないと。
「あ、気づいていないんですか。それとも気づいていないフリですか?まぁどっちでもいいや、教えてあげましょう。あなたには嫉妬しか残されていないんですよ。あなたは昔、公家にいたそうですね。お偉いさんのお家じゃないですか。なんでそんな所にいて、他の人にそんな嫉妬をするのですか?むしろ嫉妬される立場だと思うんです」
こいつ、また勝手に人の過去を。いや、無視だ、無視無視無視無視無視無視。
「まぁ、仮に、あなたが不細工で見せられない顔だったら、他の女の美しさに嫉妬するというのはまだ分かります。だけど、何故全てに嫉妬するのか、私には理解できません。嫉妬というものは、無い物ねだり。自分では手の入らない物を持っている奴を羨ましいと思う気持ち。あなたは上流階級にいたのだから、やろうと思えばなんだってできたと思います。例えば男に対する恋愛だったら、自分も歌などを学び、そこから男との話を広げられるようにしたり、男に対しアピールできるようにする。そこから教養とも学べたでしょうし、知性だって身につけられたはずです。つまり、美以外だったら何とかなったかもしれなかった。にもかかわらず、あなたは一つもそれらを手に入れなかった。そして手に入れた女性を妬んだ。これっておかしくないですか?」
なんなんだ、こいつは、本当に、うるさい。無視しないと。こんなやつの言ってることなんて、どうせおかしいんだから。
「いや、あなたって努力してたんですか?あなたは軽く努力をしただけで努力をしたつもりになって、こんなに努力したのに私には手に入らない。なのにあんな奴が私の欲しかったものを手に入れている。あぁなんて妬ましい。こんな風に、妬みを自分の努力しなかった現実から逃げるために使ってるんじゃないんですか?」
無視無視無視無視無視無視。
「才能が無かったなんて、そんなの他の人もほとんど同じですよ。まぁたまに霊夢さんみたいな才能の塊とかもいます。しかしあまり才能を持っていない人でも、才能の塊と同じくらいの強さを持った人もいます。例えば魔理沙さんなんかいい例でしょう。彼女は影でたくさん努力をしているそうです、だから天才と渡り合えているんですよ。すこしやっただけで才能が無いっていう言葉を使うのは、ただの逃げです。努力から逃げるための負け犬の言葉です」
こいつはなんなんだ、お前の独り言うるさすぎるんだよ。いい加減無視できない。
「そうだ、具体的に昔、どれくらい頑張ったか教えてください。」
あぁ、うるさいな。
「あぁ喋らなくてもいいです。あなたの心は読めますから。なるほど、これだけしか、というかほとんど努力なんてしてなかったんですね。いままでは嘘をついてごまかしていたんですか。そうですか。まぁこれで分かった通り、あなたは努力なんてしてなかった。いや、やらなかったことをどう誤魔化すかに努力したのですか。で、その方法が嫉妬と。嫉妬って楽しいですよね。嫉妬し続ければやがてこんな風になったのはあいつのせいだと責任転嫁でき、自分の責任だったという現実から逃げられますもんね。そしたら気持ちも楽になりますからね」
独り言がうるさいな。
「で、嫉妬をすることにのみ努力をしたあなたは、妖怪になった今、こんどは目に映る全ての物に嫉妬していると。そりゃあそうですよね。生きている間何もしてこなかったんだからあなたは空っぽなんです。だから何も持っていないあなたは何でも欲しがる。例えそれがどんなものであっても。だけどあなたはそんなこと認めたくなかった。だからあなたは嫉妬を操る妖怪として他の物全てに嫉妬し、自分が空っぽの存在であるという現実から逃げていた。違いますか?」
……。
「とうとうだんまりですか。さっきまで散々、無視とかうるさいとか連呼していたのに。まぁいいでしょう。ここまでで分かったでしょうが、あなたが嫉妬するのは、自分の非を認めないため。自分が空っぽであると認めないため。まぁ念のためもう一度言っておきました」
なんでお前はそんな意味の分からない独り言をする。うるさいんだよ。私の仕事の邪魔をするな。
「私は仕事の邪魔なんてしてませんよ。ただ、人の嫌なことを思い出させてあげる。これがさとり妖怪の性分ですから、ついやってしまうんです。それに、いつも誰かが橋を通るたびに、演技がかった心の声で妬ましい、あぁ妬ましいと思うあなたがうざったかったんです。だから今日言わせてもらいました。あ、今のあなたの心の声に反応した会話みたいになってしまいましたが、これは全部独り言です。後ついでの機会ですから、これも独り言として、言っときます。あなたってだれからも必要とされてないし、どうでもいい存在として見られていますよね。まぁあなたみたいに常に妬ましいとかいう空っぽの人と仲良くなりたい人なんていないですからね。あ、そうだどうしてこう思ったか理由が聞きたいですか?」
うるさい。だまれ。
「そうですか聞きたいですか。あなたって最近会話しましたか?」
……無視しよう。
「え?あなたが今思っているのって、この間の魔理沙さんと霊夢さんの時のですか?あんなの会話じゃなですよ。誰からも頼まれていないのに、橋の警護をしている面倒な奴に絡まれないように、仕方なく一言声をかけただけじゃないですか。現にあなたが通ってくださいといったら、さっさと通って行ったじゃないですか。会話なんて無く。しかも宴会があった時なんかは誘いの言葉もなかったし、射命丸さんにいたってはあなたを無視しています。じゃあ何時くらいから会話していないんでしょうね」
……。
「あぁあの初めて、霊夢さんや魔理沙さんが地底に乗り込んできた時以来なんですか。てことはもう数年まともな会話はしていなかったんですね。まぁこんな感じの状態の人が、誰かから必要とされているとは考えられませんね。まぁ、しょうがないですよね、あなたには何もない。空っぽなのですから。あなたは周りの人から見たら、路傍の石、いやそれ以下の認識しかないでしょうね。いてもいなくても同じ存在ですからね。だけどそれも自分の責任。いままでは見て見ぬふりをしていたんですから、自業自得です」
「いい加減にしろ!」
私はとうとう我慢できず、さとりを殴るため拳を握り、腕を振り上げた。独り言だからとか言っていたけど、あからさまに私の事を言っているのは分かるし、これ以上言われると本当に頭がおかしくなりそうだったからだ。この殴る行為は正当だろう。が彼女は私の拳をヒラリとかわし、そのまま橋の、地上への出口行きの方まで走って行った。「わかりましたか?あなたの嫉妬の意味が。分かりましたか?あなたの存在意義がいやーそれにしても楽しいですね。他人の嫌な所をつつくのは。あぁ、それと私のは全部独り言ですから。なんかその辺にいる嫉妬の妖怪なんかに話しかけていませんから」と楽しそうな声で言いながら。
一人残された私はどうするということもなく、橋の欄干によりかかり、ただ彼女が言っていたことを思いだしていた。嫉妬をしてみじめな自分から逃げる。現実から逃げる。確かにそうだったのかもしれない。しかし今さらどうすることもできない。私は人間だった時から空っぽで、言い訳のための嫉妬しかもっていなかった。そんな人間が妖怪になったのだ。もうすでに私という存在は他人に嫉妬するということから出来上がっている。つまり私のアイデンティティは嫉妬しかないのだ。元に何もないのだから、今から変えることもできない。それは0という数字にはどんな大きい数字を掛けても0にしかならないのと同じだ。それでもやった方がいいとは自分でも思っている。しかしやったとしても私はこの性格、雰囲気、考え、行動を変えられる気がしない。私という存在、それは自分は何もせず、ただ周りに嫉妬する妖怪。もしその考えを捨ててしまったら、自分という存在を捨てるのと同義だ。例えそっちの方が周りから受け入れられるとしても、私自身の意識の底では認められない。もしそのままでいたら、きっと嫉妬の妖怪という自分が崩壊し、どうなるか分からない。存在自体が消えるかもしれない。気が狂うかもしれない。ともかく無理に変えても良い未来が何一つと見えない。
「まぁ、どうすることも出来ないのよね」
結局はそうなのだ。私は気づくのに遅すぎたのだ。いや、正確に言えば逃げるのをやめるのが遅すぎたんだ。人間の時にあと少し努力をしてきていたら、こんなみじめな嫉妬妖怪になんかならなかったかもしれない。しかし私はそこで逃げた。必死に必死に逃げ続けた。そして妖怪になっても逃げ続け、今日気づかされた。そう私は今日初めて逃げるのをやめて立ち止まり、そして振り返った。しかしその後ろには闇しかなく、自分がどこから逃げてきたかも分からない。もう私は帰れないのだ。あきらめるしかないのだ。多分私は明日からもまたいつも通り現実から逃げるため嫉妬するだろう。あの何も考えずただ嫉妬するだけでいい世界に。あの世界は何も考えずにすむから楽だろう。逆に言えば考えさせてくれるものが何もない、無しかないということなのだろうが。しかしこんな風に後悔し続ける生活を続けるなら、私はまたあの世界にもどって、何も考えたくないと思っている。だから私は、
「あーあ、本当にさとり妖怪っていうのは性格が悪い。聞いてて本当に嫌な気落ちになったよ。今日はもう家に帰って酒のんで寝よ。そうすれば明日にはわすれているでしょ」
こう自分に言い聞かせながら、家に帰ることにした。明日になったら今日のことを忘れる、こんな都合のいいことは無いだろう。しかし私は現実から逃げるのは得意なようだ。だから明日からも嫉妬をしよう。嫉妬し続ければ、この現実から逃げだせる。そうあの素敵な嫉妬世界に早く戻ろう。
もし、最後にパルスィがさとりの言葉に負けてウワアアって発狂でもしてたら私は間違いなく最悪の評価をしていました。……のですが、彼女がラストで清々しいまでの開き直りっぷりを見せていたのが謎のツボに入ってしまったようです。
ハハハなかなかやるなこいつ、もうとっくに狂い終わってやがった。
全体的にはイヤーな感じだったのですが、終わってみるとなんだか、さとりも含め「あー、まあクズやろうなりの生き方としてはアリかもなー」と変に納得させられた私がいました。とはいえムカついたのも事実ですし、かなりおまけしてこんな点数をつけてみますね。
パルスィもさとりも実際居たらこんな感じでしょうねぇ。
たださとりの嫌な奴度は少しで済んでいないと思います(^^;
まあ、『ある意味』って前置きがつく羨ましさではあるのですが。
俺にとって『現実』ってのは足が速すぎる。おまけにでかくて重い。ボルトみたいな奴だ。
とても逃げ切れないから踏ん張って耐える努力をせざるを得ない、なんて思ってしまう。
人間時代はおろか、妖怪になってまで嫉妬という唯一最大の才能でもって逃げ続ける水橋さんは凄い。かもしれない。
だからかな、ラストはちょっと不満かも。
忘れちゃいかんでしょ、忘れちゃ。貴女はさとりにさえも嫉妬すべきだったのだ。
今日嫉妬できない者が明日嫉妬できるはずがないじゃないか。
蛇足ではありますが、文章について感じたことを。
あくまで俺の好みってやつなんですが、例えば冒頭。自分のブラウザ設定だと四行の中で『~ため』って言葉が四つ。
若干くどい印象を受けるかな。逆に、
>彼らは馬鹿みたいに~馬鹿達が集まって、みたいに意図が感じられる積み重ねは好きです。
全体的に見渡してみても同様で、強調気味の文が毒にも薬にもなっている気がしますね。
とまぁ冗談はさておき、さとりさんやりおるわーははははww
たしかに、こういうのもありかもしれないわ。ただひたすらに俺は悪くねぇ!俺は悪くねぇ!
楽しかったです、もう、いろいろと。