地面に横たわって、空を見上げる。
届かないんだ、絶対に。
私の伸ばしたこの手が空に届くことはない。
あの日の天気は晴れだったっけ。
覚えていないけど、確か晴れていた気がする。
今と同じ、雲ひとつない空。
私を照らしつける太陽は、あの日も輝いていたのかな。
あたい。
私の一人称は、私。
私はあたいじゃない。
あたいの一人称は、あたい。
あたいは私じゃない。
違う私がそこにいる。なりたかった私がそこにいる。
最強なんて陳腐な言葉。
ただの妖精がそんなに強いはずがない。
私は弱い。
でも、あたいは。あたいなら。
そんなものを全部吹き飛ばして、最強を掴める。
私はあたいにすがっている。
あたいは私をどう思っているのかな。
地に伏して。
空を見上げて。
私はあの日を思い出す。
そう、チルノという妖精が一回休みになった日の事を。
アンタ、強いんでしょ?
私が――いや、あたいが声をかけたのは、青髪の天人だった。
黒い帽子に桃をつけたその少女は、こちらを一瞥して鼻を鳴らした。
何だ、ただの妖精か。妖精風情が、何を言う。
そう言って、すぐに天人は剣を振るった。
あたいが体を切り裂かれたことに気付いたのは、上半身が地に伏してから。
手を伸ばしたままあたいは消えて、そして私が現れる。
あ、やっちゃった。悪かったわね。
別段意に介さないといった口ぶりで、天人は剣を腰に据える。
数秒私を見下ろしてから、そしてあたいに一声かけた。
ま、身の程をわきまえなさい。
言い残して、天人はそのままどこかへ行ってしまった。
その言葉はあたいに言った言葉だろうけど。
あたいに言っても、私に言っても。その言葉は、受け入れられない。
私の体はあらかた治った。
あたいももうすぐ復活する。
そのままでいて。
私はあたいに声をかけたい。
あたいは強いんだ。
弱いのは私だけでいいから、あたいそのままでいて。
私の声は届かないけど。
私+あたい。チルノの気持ちは分かるから。
あたいは強くいて。
それが、弱い私の願い。
あたいは強くなくちゃいけないんだ。
だから、あの空に。
あたいの伸ばした手なら、あの空に届くはずだから。
地面に横たわって、空を見上げる。
馬鹿じゃないの。あたいは呟く。
あたいが一回休みになったときにしか出てこない、あたいの弱さ。それが私。
私は観測者じゃない。
実は見られている側だって気付いていない。
私はあたいじゃない?
私とあたいでチルノなのに。
弱さがないと最強にはなれないのに。
届かないのは、あたいの言葉。
直接伝えることは諦めた。
だから、せめて形で示すよ。
あたいは、いや、チルノは起き上って、空を見上げる。
晴れ渡った空。
雲なんて言う邪魔者なんていやしない。
天人は天界というところにいる。
天界はどこだ。
きっと、空の上だ。
ならばとその空まで手を伸ばす。
あたいはチルノとして最強なんだ。
でも、最強は最強であり続けようとするから最強なんだ。
あたいは頑張る。ただひたすら、チルノのために。
チルノは地面を蹴って、空をめざして飛び上がる。
空に伸ばした手を、空に届かせるために。
大体空なんて曖昧なんだ。
どこからが空なんて誰も決めてない。
誰かに見上げられる存在が空なんだ。
私がいつまで地面にいて、あたいを見上げているのかは分からない。
多分、一生そこにいるんだと思う。
直接伝えるのは諦めても、間接的には伝えられるかな。
あたいが空に届けば、それはチルノが空に届いたってこと。
チルノが空に届いたなら、私だって空に届くことになる。
太陽がチルノを明るく照らす。
あたいは、ひたすら空に向かう。
さぁ、天界はどこだ!
空の中で叫ぶあたいの声は、綺麗に澄んだまま、この空には広がっていった。
届かないんだ、絶対に。
私の伸ばしたこの手が空に届くことはない。
あの日の天気は晴れだったっけ。
覚えていないけど、確か晴れていた気がする。
今と同じ、雲ひとつない空。
私を照らしつける太陽は、あの日も輝いていたのかな。
あたい。
私の一人称は、私。
私はあたいじゃない。
あたいの一人称は、あたい。
あたいは私じゃない。
違う私がそこにいる。なりたかった私がそこにいる。
最強なんて陳腐な言葉。
ただの妖精がそんなに強いはずがない。
私は弱い。
でも、あたいは。あたいなら。
そんなものを全部吹き飛ばして、最強を掴める。
私はあたいにすがっている。
あたいは私をどう思っているのかな。
地に伏して。
空を見上げて。
私はあの日を思い出す。
そう、チルノという妖精が一回休みになった日の事を。
アンタ、強いんでしょ?
私が――いや、あたいが声をかけたのは、青髪の天人だった。
黒い帽子に桃をつけたその少女は、こちらを一瞥して鼻を鳴らした。
何だ、ただの妖精か。妖精風情が、何を言う。
そう言って、すぐに天人は剣を振るった。
あたいが体を切り裂かれたことに気付いたのは、上半身が地に伏してから。
手を伸ばしたままあたいは消えて、そして私が現れる。
あ、やっちゃった。悪かったわね。
別段意に介さないといった口ぶりで、天人は剣を腰に据える。
数秒私を見下ろしてから、そしてあたいに一声かけた。
ま、身の程をわきまえなさい。
言い残して、天人はそのままどこかへ行ってしまった。
その言葉はあたいに言った言葉だろうけど。
あたいに言っても、私に言っても。その言葉は、受け入れられない。
私の体はあらかた治った。
あたいももうすぐ復活する。
そのままでいて。
私はあたいに声をかけたい。
あたいは強いんだ。
弱いのは私だけでいいから、あたいそのままでいて。
私の声は届かないけど。
私+あたい。チルノの気持ちは分かるから。
あたいは強くいて。
それが、弱い私の願い。
あたいは強くなくちゃいけないんだ。
だから、あの空に。
あたいの伸ばした手なら、あの空に届くはずだから。
地面に横たわって、空を見上げる。
馬鹿じゃないの。あたいは呟く。
あたいが一回休みになったときにしか出てこない、あたいの弱さ。それが私。
私は観測者じゃない。
実は見られている側だって気付いていない。
私はあたいじゃない?
私とあたいでチルノなのに。
弱さがないと最強にはなれないのに。
届かないのは、あたいの言葉。
直接伝えることは諦めた。
だから、せめて形で示すよ。
あたいは、いや、チルノは起き上って、空を見上げる。
晴れ渡った空。
雲なんて言う邪魔者なんていやしない。
天人は天界というところにいる。
天界はどこだ。
きっと、空の上だ。
ならばとその空まで手を伸ばす。
あたいはチルノとして最強なんだ。
でも、最強は最強であり続けようとするから最強なんだ。
あたいは頑張る。ただひたすら、チルノのために。
チルノは地面を蹴って、空をめざして飛び上がる。
空に伸ばした手を、空に届かせるために。
大体空なんて曖昧なんだ。
どこからが空なんて誰も決めてない。
誰かに見上げられる存在が空なんだ。
私がいつまで地面にいて、あたいを見上げているのかは分からない。
多分、一生そこにいるんだと思う。
直接伝えるのは諦めても、間接的には伝えられるかな。
あたいが空に届けば、それはチルノが空に届いたってこと。
チルノが空に届いたなら、私だって空に届くことになる。
太陽がチルノを明るく照らす。
あたいは、ひたすら空に向かう。
さぁ、天界はどこだ!
空の中で叫ぶあたいの声は、綺麗に澄んだまま、この空には広がっていった。
あたいを想う私の気持ち、私を想うあたいの気持ちが優しく伝わってきました。
一見矛盾しているように思える最強と弱さの同居は、もしかしたらそれはとても自然なことなのかもしれませんね。
短いながら楽しめました。
というわけで点数だけ
テンション上がってますが、掌編とは思えぬ読後感、満足感を味わうことができました。
お見事です。
書きたいもののために悪役を用意する必要があることはありますが、それでももうちょっとマイルドなやり方があると思います。こうまで無意味に性格悪いと、天子好きとしては不快感が強いです。
チルノの発病はありえないよ。
本文は割と爽やかだったし、味があった。
チルノの性格をどう捉えるかによっては、面白い解釈かなぁと。