草木も眠る丑三つ時。悪魔と魔女の宴。
トントン、と小気味のいいリズムが鳴り響き、沢庵が、塩辛が、蝉の抜け殻が、イチゴ大福等々が千切りにされていく。
イチゴ大福を千切りにするなどはまさに匠の技である。
「凄い……あのパチェ、落ちながら料理してるわ」
レミリアは呟いた。その言葉が示すように、彼女は自由落下していた。そして、フリーダムな手さばきで調理をしていた。彼女の手元の蝉の抜け殻は黒くなっていった。そこからは芳醇なトリュフの香りが漂っていた。
トリュフ、フォアグラ、ガリガリ君コンポタ味。パチュリーと共に自由落下した世界三大珍味――沢庵や塩辛を原料にした――が鍋に収められる。
鍋の中の色は形容しがたい。色鮮やかな灰色、と言うのが一番近いのだろうか? 矛盾した言葉に思え、真実を示している。
匂いは、甘くも苦くも辛くも思える。一見、シチューかと思えるが、厨房の錬金術師の考えなど、常人に推し量れるわけがない――何故落ちながら料理をする必要があるのかも。
「うお! まぶし!」
レミリアは思わず顔をしかめた。パチ、パチ、と光が放たれる。1.21ジゴワットの電気が放たれ、大気の灼ける臭いがした。
目が眩む。レミリアが再び顔を開けたときには、既に料理は完成していたようだ。
「久しぶりに作ったから、味は保証しがたいけど」
と言いつつも、パチュリーの顔には何処か満足げな様子が浮かんでいた。信玄餅を皿に取り分ける仕草も、どこか弾んだ気配が感じられる。
「絵に描いた餅ね」
その異形の姿を見て、思わずレミリアは呟いた。まるで――クレヨン画を空中に固定したかのような佇まい。
「いただきます」
だが美味である。レミリアは思わず頬を緩ませた。見た目も味の内……などという言葉が言い訳にしか聞こえない、無骨だが、味本位の信玄餅であった。パチュリーもつまんで一口、呟いた。
「ふむ。まあまあかしら。私は普段物を食べないから……基準は曖昧だけどね」
多分、謙遜なのだと思う。仏頂面を保ちつつも、親友の頬がひくついていたことをレミリアは見逃さなかった。
口に入れる手が止まらない、そして、次第にレミリアの口から奇声が漏れ始め、
「……静まって……私の右手」
等とわけのわからないことを口走りだした。
「ふうん、あれが欲しいの? レミィ?」
「ああ、耐えられないわね。もう体が求めて仕方ないのよ……」
そこでようやく、パチュリーの顔に笑みとわかる緩みが浮かんだ。
「あらあら、こんなにびしょびしょにしちゃって。いけない子。パブロフの犬もかくやという様ね」
見下すような声、表情。存在その物が嗜虐的だった。だが、レミリアにはもはや抗うことは出来ない。
厨房の錬金術師の罠に、心も体も捕らわれてしまったレミリアには――
「そんなに入れて欲しいの?」
内心で悔しい! でも! と叫びつつ、口に出す声は途切れ途切れに、
「もう我慢できないわ……焦らさないで……入れてよ……」
それでもパチュリーは動かない、ジトッとした目で、沈黙をする。はぁ、はぁ、と荒いレミリアの息づかいだけが、悪魔の屋敷に響く。
「パチェ……貴方から誘っておいてこれは酷いわね……余り私を怒らせない方が身のためよ」
「そんなに体を濡らした子に言われても威圧感はないわね」
レミリアの体中から汗が噴き出す。禁断症状を起こしているかのような様だ。そうして散々焦らしては満足したのか。パチュリーは鍋を持ち、黄金色の聖水をジョッキに流し込む。
ゴクゴクゴク――と一息に流し込む。
「ああ、生き返る。全く、焼き鳥にビールは基本。同時に出さない奴はアイアンメイデンにぶち込むレベルね。憲法で保障されてるレベルよ」
「レミィ。これはどう見ても餅でしょう」
そう言われて、レミリアは「ああ」と気の抜けた声を出した。
しかし、このぷりぷりとした肉厚の食感。香ばしい匂い。滴る油、肉汁。甘辛いタレ――どう考えても、焼き鳥にしか思えない。ビールがどこまでも美味くなる、引き立てる味だった。
もっとも、これが焼き鳥でないなら今飲んでいるものもビールでないのだ。塩辛や蝉の抜け殻を煮た物。何かの煮汁だ。
キンキンに冷えてはいても、熱で作られた物なのだ。
「……しかし、パチェの料理の仕組みは何度見ても理解しがたいわね。何がどうしたらこうなるのかしら?」
魔法の賜物なのだろうとはレミリアにも予測が付く。パチュリーと言えば精霊魔法の使い手と知られる。精霊さんが頑張っているのかも知れない。
いずれにせよ、具体的な事はわからない。それでも、美味ければいいや、と思えるのはこの魔法の言葉があるからだ。
「アフリカではよくあることよ」
美味を作り出すコツを聞かれると、パチュリーはいつもこう言うのだ。そして、その言葉を聞くと、全てを許せてしまう。それもまた、アフリカではよくあることだ。
◇
アフリカ! その妙なる響きを聞く時、我々はDNAに刻まれた、生命力溢れる世界を思い起こす。
「アフリカではよくあることだから」
昨晩の痛飲が祟ったか。おねしょで描かれた世界地図を月明かりが照らしていた。
それでも咲夜は、
「なるほど、アフリカではよくあることなら仕方ないですね」
幻想郷に住む身ながらも、自然と納得してしまった。脳裏に浮かぶ光景が、大らかな気持ちを生み出すのだ。
ケニアの大草原を駆けるガゼル。それを見守る白き霊峰キリマンジャロ――決して一度も訪れたことはない土地なのに、ライオンの息づかいも、闇と獣の匂いだけが支配する夜も、ありありと思い浮かべることが出来た。
主や魔術師ヤン同様、紅茶党を自認する咲夜ではあるが、今日はヘミングウェイを読みつつ、キリマンジャロを飲もう。そう思えた。
月明かりが照らす世界地図に、キリマンジャロの雪が見えた。
アフリカ――コプト語で我々の故郷を意味する地――は人類と吸血鬼全ての故郷である。故に、我々はアフリカという単語を聞く度に、遠い遠い祖先に、過去に、思いを馳せるのだ。
弱肉強食。残酷だが、平等な時代。獣を狩れば、喜びと共に土着の神に祈りを捧げる。獣に狩られれば、悲嘆の涙でサバンナを濡らす。力こそが正義であり、法であった古き良き時代を思い起こす。
そんな世界では、全てが起こりえるのだ。だからこそ、「アフリカではよくあること」という魔法の言葉には、無限の可能性と説得力が秘められている。
「ご覧なさい、咲夜。ガンダムが飛んでいるわ」
布団から目を逸らすかのように、レミリアは空を指さした。
「……ダンボールが空を飛んでいるようにしか見えませんが」
「咲夜の目は節穴かしら? ほら、大きく『GUNDAM』と書いてあるじゃない」
――私が、私達がガンダムだ! と叫びつつ、胸に「GUNDAM」と書かれたダンボールを被りながら空を飛ぶ早苗の姿がそこには有った。季節の変わり目には、このように頭がユニークになる人間も生まれるものである。
「ガンダムと書けばガンダムになるというのは、流石に暴論ではないでしょうか?」
「アフリカではよくあることよ」
「なるほど」
おねしょから脱税まで、年齢詐称から暴行にムネオハウスの乱立も贈賄も、アフリカではよくあることと言えば許される、はずだった。
その時は、そう思えていた。
◇
全米No.1大ヒット! その圧倒的な説得力は少女達の憧れである。
早苗「その傘って本当に酷いデザインですよね」
小傘「でも、全米No.1大ヒットなんだよ」
早苗「それどこで売ってたんですか!? 教えて下さい!」
ジャパネット「今なら最新型PCにデジタルカメラがセット!」
紫「でも、お高いんでしょう?」
ジャパネット「なんと全米NO.1大ヒットの商品! 金利は当社が負担! さらに全米が泣いたSDカード付き!」
紫「もしもし! もしもし!」
NTT「ぴんぽんぱんぽん。こちらはNTTです。ただいま全米No.1大ヒット中に付き、大変混み合っています。恐れ入りますが、もう少し経ってから、お掛け直し下さい――」
ついに、レミリアもその選ばれし世界に。全米No.1大ヒットの世界に足を踏み入れることになった。
――ヴァンヴァンヴァヴァンヴァンパイア。ヴァンパイアが送るスーパーヴァンパイアアクション!
「見せてやるわ……ワラキアニンポーの神髄を」
――ナンパなチャラ坊はレミリアに土下座! これぞ幼女の教科書!
「容疑者は幼女! 身長は140cm! 髪は青。翼がキュートな吸血鬼だ!」
――さいたまから風が語りかける! うまい、うますぎる! これぞ彩の国のリトマス試験紙! 十万石まんじゅう! さいたま銘菓、十万石饅頭!
「お姉様……もう終わりよ……無限に分裂する十万石まんじゅうは、やがてブラックホールになるわ……そして世界は終わる……」
――肉密度10000%! これぞレミリア流、拳のマニフェスト!
「ミンチより酷いわ……」
――レミィ……忘れないよ……
原作 マイケル・クライトン「ライジング・サン」
制作総指揮 ジェームズ・キャメロン(殺人魚フライングキラー)
監督 ティム・バートン(PLANET OF THE APES/猿の惑星)
脚本 スティーヴン・E・デ・スーザ(コマンドー)
音楽 ブラッド・フィーデル(ゾンビ伝説)
主演 レミリア・スカーレット(イデオン対ゲッターエンペラー)
共演 スティーブン・セガール。ジャン・クロード・ヴァンダム。ジョニー・デップ。サモハン・キンポー。ザ・ロック。ショー・コスギ
主題歌 Toto"Africa"
全米No.1大ヒット。理想の父親像NO.1(木曜洋画劇場調べ)のセガールと結婚したい吸血鬼No.1(文々。新聞調べ)のレミリアが初共演! 今年最大の話題作!
"沈黙の妹と魔法使いと門番とメイド長と片腕カンフーと空飛ぶギロチンとカウボーイ&エイリアンで修羅場過ぎるリローデッド"
近日公開予定 こうご期待!
「は! ドリームか!」
と、レミリアが叫んだ瞬間、予告編は消え失せる。目に映るのは見慣れた棺桶の蓋。それを外せば、ダンボール製の天井。見やりつつ思った。
――そう、これは夢なんだ。私は今、夢を見ているんだ。
目が覚めたら私はまだ500歳。起きたら陰陽玉体操に行って、夜ブラッドを飲んで、涼しい真夜中にケーキを食べながらセガール拳を学んで、朝になったら図書室をプールにして思いっきり遊ぶんだ……
しかし、何度目を擦っても、頬を抓っても、夢は覚めない。
札束という札束だけが視界に映る。レミリアはそっと嘆息し、呟いた。絶望と共に。
「アフリカではよくあることよ……」
正論ではあった。アフリカでは未だ政情不安定な国も多い。インフレも付きものだ。そして、「ジンバブエドルを買えば大金持ちになれる」という運命を見たレミリアは、全資産をジンバブエドルに換金したのだが……結果は改めて言うまでもあるまい。歴史的インフレーションに巻き込まれて、文字通りの紙くずと化した。
もっとも、ある意味では大金持ちであろう。一円札の山は百兆ジンバブエドル札の山となった。そして、100,000,000,000,000と書かれた数字だけを見れば、この紙くず一枚で、幻想郷に流通する総貨幣量を凌駕するのだから。
使い道はないが。幻想郷の少女はトイレにはいかないので、トイレットペーパーにすることも出来ない。
――紅魔館売ります。
幾重もの抵当権により固く閉ざされた紅魔館の門に、そのような虚しい文句が書かれていた。門番は、もういない。紅魔館の少女たちは出稼ぎ生活に追われているのだ。
その前に立てられた紅いダンボールハウス、紅魔館Mk-2の隙間から月を見上げ、レミリアは、はたと落涙した。己の不甲斐なさを呪う。
「インフレはアフリカではよくあること、もっと堅実に行くべきだったわ……」
中央アフリカやギニアの例を出され、散々咲夜に忠告されていたのに……と思いつつ、潤んだ声で一人ごつ。
もし生まれ変わったら、国債に投資する堅実な吸血鬼生を歩もう、と決断する。
吸血鬼の発祥、ギリシャ神話の息づくギリシャ国債を買い占めようと……あるいは、まさかの時の宗教裁判に備えて、スペイン国債を買おうと誓った。
ミルクが溢れた後のむなしい決意ではあったが……
「……レミィ。ご飯でも食べて元気を出しなさいよ」
「ん、ああ、パチェ……悪いわね……世話になって」
「困ったときはお互い様。私も長年居候の身だったから」
コックのアルバイトより戻ったパチュリーは、にっこりと笑い、何かを差し出した。雑草や何かを煮詰めて作った何かが。
口に入れると芳醇な肉汁が広がり、油の仄かな甘さとスパイシーな塩気が調和した、上質のステーキの味がした。雑草のようなものの確かな肉厚感、血の滴るレアの風味。
それを口にしては、レミリアも微かに表情を緩めた。その時である。
「レミリア・スカーレット発見!」
黒衣の妖精達の声が響いた。四季映姫・ヤマザナドゥの子飼い妖精、官憲達である。
全財産を使い果たしたとは言え、紅魔館の広大な敷地にかかる固定資産税が消えたわけではない。何恒河沙のジンバブエドルでも、何十阿僧祇のジンバブエドルでも払いきれぬ。巨額の税金が。
「アフリカではよくある事じゃない!」
「ここは幻想郷! 脱税はギルティ!」
襲いかかる妖精。迫り来る弾幕。地獄の軍団。紅魔館を狙う黒い影。
レミリアは「パチェ! 危ない!」と叫び、パチュリーを逃がすべく放り投げた。
鬼にも比する吸血鬼の膂力で吹き飛ばされたパチュリーは衝撃で気を失い、そのまま成層圏より自由落下。首が曲がってはいけない角度で曲がっていた。アフリカではよくあることとはいえ、魔法使いでなければ命に関わる所だった。
――金は命よりも重い。
その概念だけは、アフリカには薄い。そうレミリアは信じていた。
素朴で、人間らしい息づかいが根付いているアフリカには……
レミリアは純真さを忘れ、金が支配する世界に嫌気を感じつつ、抗うために逃げた。どこまでも、どこまでも。
果てしなく、レミリアは逃げた。レミリアが気付くと、そこはコンクリートジャングル。東京砂漠であった。貴方がいれば歩いて行けるのだが、あいにく、彼女はひとりぼっちだった。
外の世界へ行ったとて、状況が好転したわけではなかった。寄るところの無い不法滞在吸血鬼には、東京の風は冷たすぎる。空を飛ぶだけで、おまわりさんどころか自衛隊のF-15Jに追い回される日々。
結界にシャイニングウィザードを決めて帰ろうとも思ったが、脱税で豚箱も耐えかねる。
だからこそ……その再会は何よりも心を打った。人の情けが、身に染みた。
外の世界へと出稼ぎに訪れていた早苗。彼女がレミリアを救ったのだ。
◇
広島東洋カープ。赤ヘル軍団。もしくは阪神タイガースの二軍として知られる赤貧球団である。もっとも、近年は養老院と化した一軍a.k.a阪神タイガースよりも好調ではあったが。レフトへの凡ヒットがランニングホームランとなることはない。
DeNAベイスターズと阪神タイガースが熾烈な五位争いを繰り広げる九月のある日。
――レミリア・スカーレットから猛虎魂を感じる。
との文句が阪神の機関誌ことデイリースポーツの一面を飾った。
猛虎魂を感じるとは、要約すると札束で強奪したいという意味である。阪神が負けているときは試合の記事を書いても不買運動が起きるだけなので、こういった飛ばし記事やエア移籍の報道で紙面を埋めるのだ。
「また打った! 東風谷選手の大ホームラン! 今シーズン378号のビッグアーチ!」
四番キャッチャーである早苗は、カープの主軸として獅子奮迅の活躍を見せていた。彼女の能力で風を操ればバントすらホームランとなる。空振りしても振り逃げホームランとなるほどだ。
そして、先発のレミリアも好調だ。
「ストライクバッターアウト! レミリア選手! 今シーズン58回目の完全試合達成!」
スピードガンの表示は2,160kmを示していた。大木を片手で放り投げるのが吸血鬼。音より早い剛速球で今日も三振の山を築く。早苗も風を操ってはミット前で威力を殺し、無事に捕球。見事なコンビネーション。
そして――十二球団の内、最も優勝より遠い存在であったカープは、91年以来の、悲願の優勝、そして日本一を遂げたのであった。レミリアもまた、無事滞納していた税金を返済した。明治より続いた貨幣価値の変化もよかった。
だが、カープの快進撃もそこまでだった。各球団を巻き込んだ争奪戦。飛び交う札束裏金栄養費。それにもなびかぬ気骨有る少女二人であったが、ついに、
「あの超人二人を使うことは人権侵害である」
と言う紳士的クレームが読売巨人軍球団会長より入ったのだ。レミリアと早苗が札束になびかないと知っての、姑息な策である。
レミリアは法廷に打って出んとしたが、「俺は法廷闘争では負けたことがない」と豪語するナベツネには勝てない。
「超人を使うなんてアフリカではよくあることよ」
抗弁も虚しく。二人は日本プロ野球界から追放される憂き目にあった。
レミリアの剛球が生み出したソニックブームが各方面に被害を与えたのも良くなかった。立て替えたばかりのマツダZoom-Zoomスタジアムは、既に往年の川崎球場を彷彿とさせる有様である。
余談だが、川崎球場は「新加入の助っ人がトイレの汚さに絶望して帰国した」「ガラガラの外野席で流し素麺が行われていた」などの武勇伝を持つ古き良き時代の野球場である。
記録に残る中では、総観客数は25人という試合もあったそうだ。外野席の端っこにはミイラが落ちていたとも言う。
閑話休題。
器物損壊、傷害、合法ロリ禁止法、その他諸々の罪で逆に告訴される羽目となり、レミリアは再びの逃亡生活を余儀なくされた。
そんな中での朗報である。
「レミリアさん、私独自の裏表ルートで聞いた話だと……アフリカにはエクストリーム・プロ野球というものがあるそうです」
「エクストリーム! いい響きだわ。アフリカではよくある響きだけど」
「マサイ族の戦士や、私達同様日本球界から追放された選手達の球団……アストロ球団がしのぎを削っているそうですよ」
アストロ球団。かつて極短い間存在した、伝説の球団である。数々の必殺技――文字通りの殺人技――を武器に快進撃を続けたが、死者が出るのは日常茶飯事、と言うアストロ球団の野球は危険すぎたのだ。
日本球界を追放されたアストロ球団は――アフリカへと飛んだ。そして、真の最強リーグ、エクストリーム・プロ野球を作り上げた。
アフリカならばそんな球団でも許される、と言う空気もまた、アフリカではよくあることである。
そして二人は真夜中の逃避行に出る。一路ケニアに、マサイ族の国へと飛び立った。
しかし、目印の無い海上の飛行は容易ではない。海を越え海を越え、iPhoneを見やりつつ西へ西へ。
奇跡的に電波はあった。流石のプラチナバンドである。あるいは早苗である。ちなみに筆者の地元には一向にプラチナバンドが来る気配は無い。
ゆえに地図は有ったのだが、表示されるのは「パチンコガンダム駅」や「大王製紙空港」ばかりであてにならない。
次に携帯を変えるときはiPhoneではなくアンドロイドにしよう、二人してそう思いつつも飛び続けていると、幸い、都市を確認出来た。
「ちょっと疲れたわ。休憩しましょう」
「そうですね。日が出るといけません」
空中で灰になるのも困る。眼下には人工的な光が広がる。6×10^125ジンバブエドルの夜景を見やりながら、光溢れる都市に降り立った。
「ここはどこかしらね?」
「んー。シンガポールとかじゃないですか?」
高層ビルの建ち並ぶ近代的街並み。アフリカではよくあること、とは思えなかった。
「もっと飛んだんじゃない? ギリシャくらいかもしれないわ」
西の何処かであろう、とは思うが、考えても詮無きこと。
「ま、こういう時はおまわりさんに聞くに限るわ」
レミリアはバサバサ、と音を立て、警察らしき場所の前に降り立った。警察っぽい制服は万国共通なのだ、と思った。きっとアフリカでもよくある服だろう。
そして、空から人が降ってきたら不審者と思うのも万国共通である。二十二世紀の猫型ロボットがひみつ道具を使うことを平然と受けいれる……そんな現代でも。
「怪しいですね……署までご同行下さい」
「細かい奴ね。アフリカならこんなことはないのに! アフリカではよくあることよ」
「ここはアフリカですが……」
ナイロビの夜。ケニアの首都たる近代都市で、今再びの逃亡が始まった。
そして、レミリアはまた一つ知った。アフリカではよくあること――そんな戯言は幻想なのだと。
アフリカと言われれば大多数の人は首を傾げるやもしれませんが、俺には見える…ヨハネスブルクに迷い込んだおぜうさまが…
生きろお嬢…! アフリカなんてぶっ飛ばせ。
「言われなくてもスタコラサッサよ!」
なお信玄餅まで出してくるとは思ってなかったので腹筋は完全に破壊されました。
アフリカモードになってからそのまま最後まで進行してしまったのが残念でした。紅魔館の影も見えない。冒頭が一番面白かったです。
レミリアがカープ入りするところからが面白かったのでそこから書き始めてほしかった
カープの優勝という概念が幻想入りしてそうだけど