少しですが百合表現があります。
それでもよろしければ是非
お盆開け
「よお霊夢。」
三日ほど会っていなかった魔理沙が、またこうして神社にやってきた。
「家の用事はもう終わったの?」
「ああ。ちゃんと送ってきたから。」
お盆になると、魔理沙の大切な人が帰ってくる。
魔理沙に魔法を教えた師匠。魅魔だ。
お盆の間だけ、彼女は魔理沙の家に帰ってきて二人で過ごすらしい。
「アイツも挨拶くらいして回ればいいのに。」
「私もそうやって言ったんだ。でもさ、めんどくさいって」
魅魔らしい。そう思った。
「でも本当はさ、別れが惜しくなるのが嫌だからだと思うんだ。」
「アイツそんな感傷に浸るようなキャラだったかしら?」
「ああ見えて結構寂しがり屋なんだぜ。」
なるほど。誰かさんにそっくりなわけだ。
今では殆ど会うことが無くなった悪霊。
彼女は魔理沙がいっぱしの魔法使いとして自立出来たと判断し旅立った。
旅立った日の事は私も覚えている。
幼い頃の魔理沙が「嫌だ!行かないで!」と人目を気にせずに涙を流して大泣きしていた。
「ほら、泣かない。永遠の別れじゃないんだから。まぁ年に一度くらいは帰ってこれるさね。」
まるで母親のように魔理沙をさとし、泣き止んだのを見届け、そのまま彼女は消えた。
それ以来、私はアイツとは会っていない。
「もう少し、ゆっくりしていけばいいのにね。」
「んー魅魔様にだって色々事情があるんだよ。」
「そういうもんなの?」
「らしいぜ。」
お化けには寺子屋も試験もないと聞いたことがあるが
割と忙しいのかもしれない。
そんな話をしていると、ふと気づく
魔理沙の声のトーンがいつもより若干低い。
「ふーんなるほど。それで、大好きな魅魔様が帰っちゃって魔理沙ちゃんは寂しくなっちゃってるんだ。」
「なっ………ちがっ!そんなことないぜ!」
「だからこんな夕方にわざわざウチにきて」
「ち……ちがうって!!」
慌ててブンブン首を振る仕草がとても可愛らしい。
内心人一倍寂しがり屋の魔理沙の事だ。
今日なんて特に一人で寝るのが辛いんだろう。
「強がっちゃって。」
「わ、私としてはうるさいのが居なくなって清々してるぜ。」
「あらそうなの?」
やれやれのポーズを取る魔理沙。
これこそ、みえみえの強がりである。
「やれ、人里に食材買いに行くだの、食器はどこにあるだの、熱いからフーフーして食べろだの……いちいちうるさいんだよ。」
どうみても仲の良い親子です本当にありがとうございました。
「最後のは、どう考えても子供扱いされてるわね。」
「ひどい話だぜ。」
「あら、部屋が汚いってのは突っ込まれなかったのね」
「そりゃあ、事前に大掃除したし、借りてたものは一時返却したし」
「ふーん……しっかりしてるってトコ見てもらいたかったんだ?」
「うん……ってちがっ!!」
そうやって魔理沙をからかいながら
他愛も無い話を続けていたら
いつの間にやら日が暮れていた。
「今日は泊まってくんでしょ?」
「…………いいのか?」
少し不安そうな表情で魔理沙は聞いてきた。
ここで「ダメ」と言ったらどんな顔するのか気になったが
泣いてしまうとあとが大変だからやめておいた。
私えらい。
「珍しい。いつもならコッチの事情なんか聞かずに泊まってくぜーっていうじゃない。」
「それは……そうだけど」
ああもう。
こういう時に魔理沙は歯切れが悪いというか弱気というか。
本当に水臭い。
ぎゅっ
「れいむ…?」
縁側に座っている魔理沙を後ろから抱きしめた
「こういう時くらい、素直になっていいのよ。」
魔理沙が私の腕に手を添える。
ふにふにした感触から、まだ子供の手だなっていうのが伝わってくる。
しばらく私たちはそうして時間を過ごしていた。
「……霊夢……ありがとう。」
「うん」
「…でもさ、私、全然寂しくなんて無いぜ。」
また強がり?
でも今度は声も落ち着いていて
「うそ」
「これはうそじゃないぜ。だって」
ちゅっ
完全にふいうちだった。
振り向いた魔理沙に
私は唇を奪われた。
「……今は、側に霊夢が居るから……な」
「もう、ばか………」
唇を奪った張本人は、私から視線を外し、顔を赤らめていた。
そんな魔理沙が可愛くて
今度は私が魔理沙の唇を奪ってやった。
夜も更け
「さ、魔理沙。そろそろ寝ましょうか。」
「ああ。なぁ霊夢。」
「わかってるわよ。」
今日はいつもの敷いているお布団じゃなく
少し特別なお布団を出す。
「よいしょっと」
二人分ゆったり寝られる大きさ。
魔理沙と一緒に同じ布団で寝るときに使う布団だ。
「おいで」
「うん……。」
私が布団に入り手招きすると
魔理沙がおずおずと布団の中に潜ってくる。
「灯り消すわよ。」
「いいぜ」
枕元のろうそくにフッと息を吹きかけ火を消す。
光源となるものは月明かりだけになった。
「ねえ魔理沙。」
「なんだ?」
「魅魔が…………バアー!って突然出てきたらどうする?」
「マスタースパークで迎え撃つ」
「やめたげてよぉ」
浴衣の中に隠し持ってたのかミニ八卦炉を取り出し天井に向けて撃つ仕草をする。
冗談で言ってみたが実際出てこられたら天井に穴が開いてしまう
出るなよ。絶対出るなよ!
「……なんてな。」
「もう。」
また、少し切なそうな顔をする
私はそっと魔理沙の手を握った。
「霊夢?」
「強がっちゃって。」
魔理沙が手を握り返してきた。
「大丈夫よ。私がそばにいるから。」
「……ありがとう……れいむ。」
そのまま抱き合って、私たちは眠りについた。
翌朝
「ねえ魔理沙。」
「なんだ?」
「私が居れば、寂しくないって言ったでしょ?」
「ん……まぁ……な」
「じゃあ」
これからは一緒に住んじゃおっか?
普段強気な子が甘えん坊になるのは、テンプレではなく王道と言うんだと思うな。
霊夢可愛い。
デレッぱなしじゃないですかやだー!
後書きでクスリとしてしまったので点数は奮発で。
良かったです
レイマリ良いよねえ。
今しにかけた
今しにかけた