あつい

「ねえ」





目を閉じたまま問い掛ける。


「なあに？」


紫はすぐに応えてくれる。
声が若干間延びして聞こえるのは暑さのせいだろうか。

今日は３０度を超えてるらしい。


あつい
とにかく暑い。


いつもなら縁側で優雅にティータイム（緑茶）なのに
外からの照り返しがすごくて中に避難した。

日が当たらなくとも、暑すぎて暖かいお茶なんて飲んでいられないだろうけど。


そういえば緑茶を冷やして飲むのもいいって教えてくれたのはだれだったっけ？

私は砂糖を入れて、ほんのり甘くしたのが好きなんだけど。

甘くするのは緑茶的にありなのかな？


「ねえ？」


目を閉じて黙っていることに疑問を感じたんだろう

紫が心配するような顔でこっちを見ているのを感じる。


感じる　というか　勘じる？



「ん？」





なにを言おうとしていたんだっけ？

えーっと……










　まあ、いいか。


「……忘れちゃった。」


　ふっ。

　思わず笑みが零れる。
　ああ、可笑しい。



　私は熱にやられたみたい。

　顔がニヤけるのを抑えられないのは、きっとこの暑さのせい。



　お隣さんも呆れたようにため息を吐く。







「霊夢？」


　すぐそこから聞こえてくる声。

　意思とは関係なく緩む頬に、手を当ててみる。


　熱い。
　しかも汗で湿ってる……

　まるで『今日』みたいだ　なんて思った。


　触れた時と同じくゆっくりと手を下ろす。


「なあに？」


　応えた私の声も妙に間延びしていて
　なんだかあいつみたいだった





　と、

　今さっき触れた反対側の頬をそっと
　ひんやりとしたものが撫でる。


　紫の手をいつもよりも冷たく感じるのは、熱いから。


　間違えた。

　今日が　暑いから。





　冷たさが心地よくて、
　撫でるその手が優しくて。


　私の心音だけがやけに大きく聞こえた





　頬から伝わる熱で、
　ゆっくりと温まる手。

　頬と手で、繋がっている。


「あついわね」


　あいつがそんなことを言うから

　私はそっと目を開ける


　こっちをみて微笑む。
　私を優しく撫でる。

　ただ、それだけ。





　さっきよりも熱くなった頬を、その手に軽く押し当て

　またそっと目を閉じる。


「そうね。」



　とだけ、短く答える。



　揺れていると錯覚するほどの鼓動が
　血液と一緒に大切な何かを押し出していて

　胸から溢れた『何か』は

　口から零れる


「でも、」


　でも？

　でも、なんだろう？


　どうして　でも、なんて言ったのか
　見当もつかなかった。










　見当もつかなかったから


　私を急かす衝動に任せてみた。




「……嫌いじゃないわ。」



　その言葉は、不思議と心にぴたりと収まった。

　そんなこと感じてたのか私。




　紫はその答えを気に入ったらしく、
　ちょっとだけ笑った。





　ああ。

　もうお昼もとっくに過ぎて、涼しくなるはずなんだけど。


　『今日』はまだまだ熱くなりそうだ。

それだけで私は嬉しくなってしまうの。





初投稿です　はじめまして！

今更ながら改行たくさん使いすぎでしょうか？
読みづらいかな？と思いつつも改行はしたかったのでそのまま投稿させていただきます。


暑いとぼーっとしちゃうよねっておはなし。
穏やかのんびりなつれいむ。（何