今日も参拝客は一人も来なかった。
「はあ~…」
私は深い溜め息をついた。
□□□
紅霧異変から一年くらいは経っただろうか。
あれから異変の首謀者、“紅い悪魔”こと吸血鬼レミリア・スカーレットはよく神社に遊びに来るようになっていた。
しかし、こいつは西洋のバケモノなので普通のお茶を飲まない。頑固にも紅茶しか飲まないのだ。ハッキリ言って“こいつ用のお茶の用意は非常に面倒”である。吸血鬼だか貴族様だかなんだか知らないけど。
お茶の用意をしながら、不満ついでに異変の時の事の文句をぶつける。
「まったく、あの時はどれだけ迷惑かけたと思ってんのよ。“ずっと光が差さない”ってさ、里の人達からびっくりするくらいに非難轟々だったんだからね、それはもう」
「そんなの知ったこっちゃ無いわよ」
相変わらずこの調子である。異変の原因も結局はこの500歳のお子様のワガママだったと事は今更言うまでもない。
「ま、私も弾幕ごっこは嫌いじゃないけどさ」
そう、スペルカードルールによる平和でのんきな異変解決。弾幕勝負。
我ながらよくできた仕組みだと思う。なにしろ昔のように妖怪との命がけの血みどろの争いをしなくて済む。そんな殺伐とした世界は今の幻想郷には確かに似合わないかなー、とは思う。
心の中で頷いていると、ふと、レミリアの妹の事を思い出した。
例の、495年間以上も引きこもっていたヤツだ。その癖に弾幕ごっこが強いのなんの、あれはまさに悪夢であった。
「…ねえ、あんたさ、たまには妹も連れてきたら?いくら吸血鬼だって言っても、“人をお茶だの焼き菓子の形でしか見た事がない”なんて聞いた時には流石に吃驚よ。どれだけ引きこもってるのって」
「ああ、フランの事は別に知らない。この煎餅美味しくない。咲夜のプリンが良い」
レミリアはそっけなく答える。
「何よ、人が珍しく心配して言ってやってるのに。一緒に月まで行った仲じゃないの。ま、あんたは勝負に負けてふて腐れて寝たふりしてたけどねー」
「あ、あれは昼間に動いたからちょっと疲れたから眠くなっただけだ! 本当に退屈だったしさ! だから、その… なかった事にしなさいよ…! じゃないと暴れるよ!」
「はいはい、そういう事にしておいてあげるわよ。ところであんた顔赤くなってるわよ? 流石は人々に恐れられる、スカーレットデビルの名は伊達じゃないわね」
レミリアはいよいよ顔を真っ赤にしてポカポカと殴りつけてくる。まったく、吸血鬼の力は強いから堪らない。
こうして二人で怒って、笑って、文句を言いながらお茶を啜って、煎餅をかじる。
今日も幻想郷の夜は更けていき、また朝を迎える。のんきないつもの日常。
でもやっぱり、少しだけ憂鬱。翌朝、賽銭箱を覗いてみた。
やっぱり昨日も“参拝客”はただの一人も来なかったようだ。
「はあ~…」
私は深い溜め息をついた。
「はあ~…」
私は深い溜め息をついた。
□□□
紅霧異変から一年くらいは経っただろうか。
あれから異変の首謀者、“紅い悪魔”こと吸血鬼レミリア・スカーレットはよく神社に遊びに来るようになっていた。
しかし、こいつは西洋のバケモノなので普通のお茶を飲まない。頑固にも紅茶しか飲まないのだ。ハッキリ言って“こいつ用のお茶の用意は非常に面倒”である。吸血鬼だか貴族様だかなんだか知らないけど。
お茶の用意をしながら、不満ついでに異変の時の事の文句をぶつける。
「まったく、あの時はどれだけ迷惑かけたと思ってんのよ。“ずっと光が差さない”ってさ、里の人達からびっくりするくらいに非難轟々だったんだからね、それはもう」
「そんなの知ったこっちゃ無いわよ」
相変わらずこの調子である。異変の原因も結局はこの500歳のお子様のワガママだったと事は今更言うまでもない。
「ま、私も弾幕ごっこは嫌いじゃないけどさ」
そう、スペルカードルールによる平和でのんきな異変解決。弾幕勝負。
我ながらよくできた仕組みだと思う。なにしろ昔のように妖怪との命がけの血みどろの争いをしなくて済む。そんな殺伐とした世界は今の幻想郷には確かに似合わないかなー、とは思う。
心の中で頷いていると、ふと、レミリアの妹の事を思い出した。
例の、495年間以上も引きこもっていたヤツだ。その癖に弾幕ごっこが強いのなんの、あれはまさに悪夢であった。
「…ねえ、あんたさ、たまには妹も連れてきたら?いくら吸血鬼だって言っても、“人をお茶だの焼き菓子の形でしか見た事がない”なんて聞いた時には流石に吃驚よ。どれだけ引きこもってるのって」
「ああ、フランの事は別に知らない。この煎餅美味しくない。咲夜のプリンが良い」
レミリアはそっけなく答える。
「何よ、人が珍しく心配して言ってやってるのに。一緒に月まで行った仲じゃないの。ま、あんたは勝負に負けてふて腐れて寝たふりしてたけどねー」
「あ、あれは昼間に動いたからちょっと疲れたから眠くなっただけだ! 本当に退屈だったしさ! だから、その… なかった事にしなさいよ…! じゃないと暴れるよ!」
「はいはい、そういう事にしておいてあげるわよ。ところであんた顔赤くなってるわよ? 流石は人々に恐れられる、スカーレットデビルの名は伊達じゃないわね」
レミリアはいよいよ顔を真っ赤にしてポカポカと殴りつけてくる。まったく、吸血鬼の力は強いから堪らない。
こうして二人で怒って、笑って、文句を言いながらお茶を啜って、煎餅をかじる。
今日も幻想郷の夜は更けていき、また朝を迎える。のんきないつもの日常。
でもやっぱり、少しだけ憂鬱。翌朝、賽銭箱を覗いてみた。
やっぱり昨日も“参拝客”はただの一人も来なかったようだ。
「はあ~…」
私は深い溜め息をついた。
次はもっと長いお話を読みたいです。
内容は面白かったです