タグ通りの珍カプとなっております。お気を付けください。
この作品は
閻魔の笑顔と花妖怪
閻魔と花言葉
雨、昼下がり、相合傘にて
の続編となっています。よろしければ先にお読みになることをお勧めします。
幾日も降り続いていた長雨も過ぎ去り、雨空と暗雲から青空と大きな入道雲の似合う季節へと移行する。
季節は夏。一年中向日葵が咲いている太陽の畑も、本来あるべき姿だからだろうか、満開に咲き誇っている。
そんな一面黄色が敷き詰められた真ん中に、ポツンと一軒立っている家に今日も私はやって来ていた。
「今日も暑いですね~」
茹だるような猛暑に中てられながらも、己の善行を積むために各方面を歩き回った後にここへとやってきた。
「そうね。梅雨が終わったとたんに一気に熱くなったわね。」
氷を入れ冷やされたお茶をテーブルの上に置きながら幽香は答える。
「それより大丈夫?熱中症で倒れたりしない?」
幽香は心配そうな顔で私に聞いた。
「大丈夫ですよ、幽香。これでも閻魔ですよ、そんなにやわじゃありません!」
胸を張ってそう答える。
「あら、この間顔色悪くしてうたた寝していたのは誰かしら?」
「う・・・・」
それは初めて幽香の家で泊まったときの話だろう。あの時は仕事に追われ、疲労によって太陽の畑の真ん中でついついうたた寝をしてしまったのだ。
事実なので二の句がつげない。
「まぁ、閻魔の仕事がどれほど忙しいか、私にはわからないしね。仕方ないわ、でもあまり無理はしないでね?」
「はい、気をつけます。」
本来は私が説教をしたり注意を呼びかける立場なのですが・・・。
「今日は泊まってく?」
渋面を作りながらアイデンティティについて考えていると、そう尋ねられた。
「いえ、今日は帰りますよ。ここのところ、また小町がサボっているようなので、訓戒しなくては・・・。」
初めて幽香の家に泊まって以来、ときどき泊めてもらうことがあるのだ。幽香の作ってくれる食事はとても美味しいうえに野菜が多くて栄養満点なのだ。なんだか餌付けされているような気がしないでもないが・・・。
え?夜は一緒に何してるかって?
その話については・・・・別に話す必要も・・ないでしょう。
(へ・・変なこと、してる訳でも・・・ないですし)
「ならいっそ話せばいいんじゃないの?」
「こ、心読まないでください!第一誰に話すというのですか!?」
「?」
?
閑話休題
「それにしても一面まっ黄色ですね。」
窓から見える向日葵畑に目を向けながら、感嘆の声を出す。
「そうね。この太陽の畑には一年中向日葵が咲いているけど、やはり夏になるとその数が一気に増えるわね。」
「昔から桜の木下には屍体が埋まっているとか、花には不思議な言い伝えがあったりしますが、これだけの数の向日葵があると何か不思議な気分にさせますね。」
狭くはない太陽の畑のほぼ全域に向日葵はその大輪の花を見せていた。
その景色は、別の季節に向日葵を見るという奇妙な感覚とは違う、一種の神秘的な妖しさを見る者に与えていた。
「そうね・・・。」
?
「そういえば幽香は何故向日葵が好きなのです?」
素朴な疑問を口にしてみたつもりであった。しかし
「・・・・そうね、何故かしらね・・。」
帰ってきた答えは歯切れの悪いもの。
その表情は何か思案するような、そして不安や哀調を見え隠れさせたものであった。
「幽香?大丈夫ですか?どうかしたのですか?」
「・・・!いいえ、なんでもないわ。大丈夫。」
とても大丈夫のようには見えない。でもそれを問うたところで、おそらく何も教えてはくれないだろう。
「・・・映姫あのね・・・。いえ、なんでもないわ。お茶のお変わり持ってくるわね。」
何かを告げようとするも、意味を持つべき言葉は外へと出されることもなく再び幽香の心の奥底へと沈んでいったようだった。
中途半端な空気を混ぜるように、幽香は足早に台所へと歩いていく。
混ざった空気は窓の外の灼熱とは打って変わってどこか冷たく、その冷たさが私の心へ吹き抜けていくような錯覚がした。
(幽香どうしたのでしょうか・・・。何か気に障るような、もしくは嫌なことを思い出させるようなことを言ってしまったのでしょうか?)
しかし私が話したのは向日葵についてだけ・・・。
(幽香は向日葵が嫌い?)
確かに一年中向日葵が咲いている太陽の畑に居て、風見幽香と言えば向日葵だ、と言われているだけで本人が実際に好きだと言ったということは聞いたことはない。
しかし、わざわざ嫌いな花の近くに居る必要などあるだろうか?居なくてはならない理由が?どんな?
そもそも花を愛する幽香に嫌いな花が、ましてそれが向日葵であるなど考えられないことである。
(駄目だ・・・。わからない。
そもそも私は幽香のことを知らなさ過ぎるのでは・・・。)
なんでもかんでも自分に話してほしいという訳ではない。言いたくないことや知ってほしくないことの一つや二つ誰しもあるだろう。しかし愛する人のことをほとんど知らないという事実は重い何かへと変化し、私の背中に圧し掛かった。
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ところどころヒビの入った、それでいて意外にも汚れや塵がない綺麗な石畳の地面に、ストンと着地する。
目の前には神社の拝殿。しっかりと賽銭箱が置いてあるが、おそらくここ十数年間その役目を全うしてはいないだろう。中身は空っぽのはずである。
(いえ、決め付けはよくないですね。)
そうは言いつつ、入っていても数円、数十円なのだろうと思ってしまうのがこの神社がの博麗神社たる所以なのだろう。
「げっ!」
突然蛙の首を絞めたような声がしたので振り向くと、そこには箒を持った巫女装束の少女がこちらを見ていた。
「人の顔を見るなりなんですか、その声は。曲がりなりにもあなたは巫女なのですから・・・。」
「あ~はいはいわかりました、わかりました。で、閻魔様がこんなところまで来るなんて珍しいですね。何か用が?」
「人の話の腰を折らない!はぁ、まぁいいです。今日は・・・。」
お~~~い
用件を言い終える前に遠くから声が近づいてくる。
「お~い、遊びに来てやったぜ!霊夢。今日はアリスも一緒だ。」
白黒の装束を着た、金髪の少女が物凄いスピードで飛んできて、派手な着地を見せた。
そしてそれに少し遅れて
「ちょっと魔理沙、速すぎ・・・。」
息を切らしながら、人形のような容姿をした金髪の少女が小さな人形を一体従えて魔理沙の横に立つ。
「アリスが遅いんだよ。」
「霧雨魔理沙は少し落着きを持ったほうが良いですね。」
「そうそう、もうちょっと落ち着きなさい。・・・って閻魔様!?」
と、アリスが驚きの声を上げる。
「うお!?ちびっ子閻魔様!なんでこんなところに居るんだぜ?」
「誰がちびっ子ですか!!言うほど小さくありません!あなたとそれほど変わらないでしょう?」
「いやぁ、閻魔って聞くとでっかくて厳ついおっさんを思い浮かべちやうから、想像との対比で余計小さく見えちゃうんだよ。」
「閻魔は外見ではありません!魔理沙、あなたには少し説教が必要のようですね。」
「げっ!」
なんですか?私に対して蛙の首を絞めたような声を出すのが流行っているのですか?
「まあまあ落ち着いてください閻魔様。何か用があってここに来たのではなにのですか?」
「そうそう、なんで閻魔様が博麗神社なんかにいるんだ?霊夢に説教か?」
「え?そうなの?」
「いえ、そうではなく・・・、今日は聞きたいことがあってここに来たのです。霊夢それに魔理沙やアリスにも。」
映姫の珍しい訪問に三人は頭に?を浮かべながら顔を見合わせた。
「ふむ、風見幽香の過去について知りたいと。」
冷たい麦茶を飲みながら霊夢が確認する。
「ええ、貴方達なら幽香について知っていることも多いだろうと思いまして・・・。」
麦茶のコップに手を添えながら答える私。冷たい感触が気持ちいい。
「なんでまた幽香なんだ?」
「魔理沙。」
少しわざとらしい咳払いと共に隣に座る友人の名前を呼ぶアリス。
「確かに大分前から知ってはいるけど、それほど多くのことを知っているわけではないわね。」
霊夢が難しい顔で答える。
「知っていることといえば、昔は夢幻館って言う館の主人だったことくらいかしら。まぁその館も私が負かした後に手放したみたいだけど。」
「そういえばいつの間にか私の魔法を盗んでたな。」
「あ、それ私も。」
と、魔理沙の言葉に同調するアリス。
幽香が魔法を使えるのは知っている。しかしそれが魔理沙やアリスの物であったことは知らなかった。
「魔法ですか・・・。性格的なものはどうでした?」
「一言で言えば変な奴だったな。カリスマとかはあまり感じられなかった気がする。まぁえらい強かったけど。」
「そうね、昔も弱いものいじめが好きでサディスティックなところはあったけど、もう少し明るかったよに思えますね。」
「今みたいに他人を遠ざけてるって感じではなかったな。夜中に押しかけても『またきてね~❤』とか言う奴だったし、自分からちょっかいをかけるようなところもあった気がする。」
サディスティックなところがあるのはわかる、しかし、性格が明るいというところは今の幽香と比べてみても違和感がある。決して暗いわけではないが、少なくとも語尾に❤が付くのは考えづらい。
他人が遠ざけているという部分も理解できる。幽香が他人と話しているところを見たことがあまりないからだ。
(そういえば、幽香はあまり私に触れようとしない気がします。)
頭を撫でるということは時々あるのだが・・・。
(いえ、別にもっと抱きしめてほしいとか、そういうことではなくて)
「何赤くなってんだ?閻魔様。」
熱くなった顔を指摘され、慌てて取り成す。
「い、いえ何でもありません!」
「まぁ、私たちが知っているのはそれくらいかしらね。魔界の異変以降、大結界異変までの間は全く姿を見なかったしね。」
そうなると幽香の性格の変化は霊夢たちが知らない間の何かによってと考えるのが妥当だろう。
わかったことと言えば、昔と今では幽香自身に差異があるということだけ。
(幽香本人に聞いてみるしかないでしょうか。)
「秘密主義だしな~、幽香。」
そう、幽香はあまり自分のことを語ろうとしない。だからこうして幽香の過去について知っている人間に話を聞いているのだが、やはり本人ではなく他人に過去を根掘り葉掘り聞くのは罪悪感があった。
愛する人のことを知らない、という重石に罪悪感が加わり圧し掛かる。
「そうですか・・。わかりました。教えていただいてありがとうございます。」
「あまりお役には立てなかったようね。」
「いえ、そんなことは。それでは。」
頭を下げ3人に礼を言い、飛び立つ。
(ともかく幽香の元にいきましょう。聞けるか聞けないかはともかく・・・。)
閻魔が飛び立ったのを見届け3人向かい合って座る。
「で、結局なんで閻魔様が幽香のことを知りたがるのか知りそびれたぜ。」
「幽香に説教かます為じゃないの?弱いものいじめが過ぎるとか何とかで。」
「え、何二人とも知らないの?」
霊夢と魔理沙の疑問に驚くアリス。
「アリスは知ってるのか?」
「貴方達、天狗の新聞読んでないでしょう?」
「あんなゴシップだらけの三流記事なんか読まないぜ。ポストに突っ込みっぱなしだな。」
「私も焚き火のときの火種とかゴキブリ叩いたりしか使ってないわ。」
各々の文々。新聞の扱いを告白する2人。
「そりゃあ私だってはなっから信じて読んでるわけではないけれど、どうやら本当のことも書いてあるみたいだしね。」
呆れつつも答えながら、アリスは居間の片隅に積み重なっている新聞から一部を抜き取る。
「確かこの新聞よ、ほら。」
・・・・・・。
「「え~~~~~~~!?」」
その新聞を読んだ二人はあまりの驚きのため驚愕の声を上げるのだった。
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太陽の畑、向日葵の群れの中をとぼとぼと歩く。
知りたいという願望、それに対する引け目と罪悪感が渦巻く。
強い日差しに照らされ地面に焼け付いた影は、黒々ととしていてまるで私の内面を表しているようだった。
(でももし何か押さえ込んでいるものがあるなら救ってあげたい)
大好きな人の苦しい顔を見るのは嫌だ。何よりも辛いことなのだから・・・。
キーーーン
最愛の人の不安そうな顔の意味を考え込んでいると、突然の耳鳴りに襲われた。
同時に強烈な目眩がやってくる。
「なっ、急に・・・何です・・!」
ぐにゃぐにゃと回りだす世界に目を開けていられない。思わず腰を落としそうになる。
なんとか体勢を立て直すが、体の内から力が抜けていくような感覚がする。
なんとか、目眩が引いていくのを感じ、ホッとする。
時間にしてほんの数秒のことなのだろうが、とてつもなく長く感じられた。
(熱に中てられてしまったんでしょうか?)
急激な不調に驚きながらもゆっくりと目を開ける。
「え?」
思わず出してしまった間抜けた声は不調に対するものではなく、目に映った景色に対しての愕き。
目の前に広がるのは一面の向日葵畑ではなく、風にざわめく緑の草原だった。
To Be Continued.....。
続きに期待します。
後編楽しみです
良かった
15、6ならロリな気も…
アリも良いと思ふよ(アリコン的な意味で)