『妹紅へ
阿智鮫また地誌おも落ち充てあつテヂマゲトを時あねいアホ無智。
円ネモゲッタに鉈気化器オヅキらワミの濡れあつ血鉈な。
失せぢ草ごとコナタな。宇佐見えっとモイラカボとコナタなお無恥。
鬼アヲキラッパ世で歴充てあつとウィオも斧クグッサ皆棚。
兄イオ連れ言えったヂクソツ小津小田口。
絵か出ろカホ時あちい。根もぎらにき。
輝夜』
「あいつ、こんな……」
古い手紙。数か月前、決闘の果たし状とともに送られてきた手紙である。
文法もへったくれも無い、個々の単語の意味でさえ怪しいものばかりの文章。
それを読みながら、妹紅はぷるぷると震えていた。
「うう…こんな物、読めない方が良かった……」
送られてきた当初、全く意味の分からない内容に妹紅は困惑するばかりだった。
しかし、せいぜい分かる「アホ」、「無智」、「無恥」のような悪口や「鉈」、「血」、「斧」などの物騒な言葉から、好意的な文章で無い事は理解した。
それでもやはり意味不明なまま過ごしていたある日、妹紅は友人である慧音にこの手紙を見せた事がある。
その時の彼女は少し考え込んだ後、笑いながらこう言った。
「多少強引だが輝夜らしくていいじゃないか。でも妹紅には少し難しいかな? それじゃあわたしがヒントを出そう」
そう言いながら慧音は紙切れに何かを書いた。
そこに書いてあったのは次の通りである。
『 運営は言えぬ。 海女は尼。 雲丹は居ぬ。 』
これを受け取った当時の妹紅は、しかし意味が分からなかった。
慧音の言うヒントとやらもますます混乱させるばかりで、役に立ちそうなものとは思えなかった。
その意をそのまま慧音に言うと、彼女はまた笑った。
「あはははっ。妹紅、あんまり人に聞いてばかりじゃ駄目だぞ。ちゃんと自分で考えないと。輝夜もきっとそれを望んでいるよ」
これはどれだけ聞いても答えを教えてくれそうにないと把握した妹紅は、仕方ないので自分で考える事にした。
暇があれば手紙に目を通し、どう読むべきか考えた。
その間輝夜とは何度も顔を合わせたが、敢えて話題には出さなかった。輝夜に教えを請う事だけは、プライドが許さなかったのだ。
そのような日々を過ごし、そして今日、ついに解読に成功したのである。慧音のヒントを漠然と見ていたら、ふと思いついた。
答えが分かった妹紅。しかしその顔は、心なしかすぐれなかった。
「はぁ…どうやって返事しよう……」
ため息を一つこぼす。
手紙の読み方も、その文意も理解した。ならば手紙に対する返事を書かなくてはならないのだが、それが困る。
そんな内容なのである。正直、慧音に読ませたのは失敗だったと思う。食えるのならその歴史を食ってしまいたい。
「ええぃ! くよくよしてても仕方ない!」
悩んでいてもはじまらないと、そう自身に弾みをつけて、妹紅は紙と筆をとった。
勢いに任せ、それでも時々考え込みながら、妹紅は手紙を書きあげたのである。
「……ん」
「……何よ?」
そうこうして永遠亭。手紙の送り主の部屋。
妹紅は腰をおろし、対面する相手に二通の手紙を差し出した。一通は、数か月前に送り付けられた手紙。そしてもう一通は、その送り主への返事の手紙。
「これ、輝夜が出した手紙。それと、返事」
「……あっ!」
輝夜は驚いた声を上げ、妹紅の差し出した二通の手紙を素早く受け取った。
そしてまず自分が出した手紙の方に目を通し、ちらちらと恥ずかしそうに妹紅の方へ視線を向ける。
「もしかして、意味分かったの?」
決まりの悪そうな態度の輝夜に、妹紅は呆れ顔になってしまった。
「分かったから返事を書いたんだよ。いいから読んで」
「……うん」
弱々しく呟いて、輝夜は恐る恐る、妹紅の差し出した真新しい方の手紙に目を通した。
『輝夜へ
親塗り無か真央ウィサタウィラマ。あったかワホ時あちい。
いいセル猪野あぬ袖加地佐奈はニサ子。兄のなにら壁ったいソロ子無知。
ウルソワ滝牡蠣オヅキらわ揉み沙汰ウィヌウヘアも。
鮎隠れ地シア。
妹紅』
早々と手紙を読んだ輝夜は、紙と筆を取り出して何かを書き始めた。
その紙と妹紅の手紙とを見比べながら、急いで、それでも慎重に、つらつらと書く。
そして書き終えた後、一息ついてからまじまじと自分が書きこんだ紙を見つめる。
「…………」
「…………」
じっと紙を見つめる輝夜と、その様子をじっと見つめる妹紅。両者の間に、重い沈黙が立ち込める。
だんまりの二人に共通していた事は、湯気が出るのではないかというくらい顔が赤い事である。
永遠に続くかとさえ思われた沈黙は、しかして最初の手紙の送り主によって砕かれた。
「な……」
「えっ?」
微かに聞こえたその声に妹紅が反応した時、輝夜は立ち上がって、まくしたてるように言葉を並べた。
「な、何が『親塗り無か真央ウィサタウィラマ。あったかワホ時あちい』よ!? 何か月もかかったくせに!」
「むっ…!」
輝夜の言葉にカチンときた妹紅。負けじとこちらも立ち上がり、大きな声で応戦する。
「輝夜こそ何が『鬼アヲキラッパ世で歴充てあつとウィオも斧クグッサ皆棚』だよ!? 十分ストレートじゃないか!」
「ふ、ふん。妹紅になんか読めるわけないって思ったのよ! そっちこそ『ウルソワ滝牡蠣オヅキらわ揉み沙汰ウィヌウヘアも』なんて、気取っちゃってさ!」
「何を~!」
「何よ!」
結局こうなる二人。取っ組み合いの喧嘩を始めてしまった。
手紙の内容とは裏腹なのか、はたまた裏の裏で表の状態なのかもしれない。
ともあれ、部屋の中でぎゃあぎゃあ騒ぐ二人に、とうとう仲裁者がやって来て、障子を強く開けた。
「ちょっと二人とも! 喧嘩なら外でやって……あら? 何かしらこれ」
「「はっ!?」」
取っ組み合いの中いつの間にか部屋の隅まで飛ばされていた二通の手紙を、永琳は拾った。
彼女がそれを読み始めると、掴み合っていた輝夜と妹紅は動きを止め、青い顔で永琳の方を見た。
「え、永琳! その手紙は何でもないのよ! だから読まないで!」
「そ、そうだよ! ほら、使われてる言葉も意味分かんないでしょ? だから返して!」
必死になって懇願する輝夜と妹紅。
二人は恐れていたのである。月の頭脳と謳われる八意永琳が、手紙の内容を瞬時に読み取ってしまう事を。
そして、その恐怖はどうやら現実のものとなってしまったようだ。手紙に目を通した永琳は、とても楽しそうに笑みを浮かべている。
「へえ、『失せぢ草ごとコナタな。宇佐見えっとモイラカボとコナタなお無恥』なんて、輝夜も大胆ねえ」
「わあああ!?」
「それに『鮎隠れ地シア』なんて、惚れ惚れしちゃうわね妹紅」
「ぎゃああ!?」
「それじゃあ二人とも。喧嘩もほどほどに、弾幕なら外でね」
恐ろしき笑みから繰り出される言葉の刃が、両者の心を貫いた。
まさに顔から火が出んばかりに真っ赤な二人は、立ったまま呆然としていた。それこそ、立ち去った永琳が手紙をそのままもって行ってしまった事に気付かないくらいに。
しばらく立ちすくむ二人。先に妹紅の方が、その場に腰を下ろした。
「と、とにかく返事は出したから。あれがわたしの本音!」
こうなってはもうどうしようもないと、妹紅はそっぽを向きながらも半ばヤケで伝える。
輝夜は、小さく反応を返した。
「……うん」
妹紅の言葉に、少しだけ首を縦に振った輝夜もその場に腰を下ろす。
両者共々、何だかどっと疲れてしまった。そっと、肩を寄せ合う。そして見つめ合った。
「えーっと…これからもよろしく?」
「何で疑問形なのさ……」
しょっちゅう喧嘩して、それでもこんな風に肩を寄せ合って。
たまに分かりにくい気持ちの伝え方をして、顔を赤らめあう。そんな関係。
長く永く続く二人の間柄。
てるもこって久しぶりに読んだけどちょっと甘すぎんよー
阿智鮫も雪疎な富めと出買ったかニケだ布古ディ亜K。
どういう事なの…
それにしてもお熱いことで
良かったです