タグ通りの珍カプとなっております。お気を付けください。
この作品は
閻魔の笑顔と花妖怪
閻魔と花言葉
の続きとなっておりますが、前作をお読みにならなくても問題はありません。
ザーー、ザーー、ザーー・・・
ポタ、ピチャ・・・・
~~~~~~雨、昼下がり、相合傘にて~~~~~~
午前中、青い姿を見せていた空は昼頃になると急に厚い雲に隠れ始め、昼を過ぎると大きな雨粒を落とし始めた。
「こんなことなら傘を持ってくるんでした・・・。」
古い民家の屋根の下で、一人雨宿りをしながら溜息混じりに呟いた。
断続的に聞こえてくる雨音は、静寂を無音と採るならば些か騒々しい。しかし、強く降る雨のせいか、大通りにもかかわらず近くを歩く人影は一つもなく、その佇まいは静寂と呼んでも差し支えないように思える。
今日一日の休暇をいつものごとく説教に奔走して人里を歩き回っていたが、急に振り出した雨に追いかけられ、運よく見つけた広めの屋根に逃げ込んだ次第である。屋根に入った瞬間雨足が強まったのも運のおかげだろうか。
生憎傘は持っていなかった。朝方見せた青空が判断を鈍らせたのだ。
いや、梅雨にもかかわらず傘を持ち歩かなかったのは完全に自分の非である。
自分は気が長いほうだと思う。いつもなら雨が止むか弱まるのを待つのだが、今日はこの後幽香の家でお菓子と春摘みの紅茶を頂く予定だった。
確かにお菓子や紅茶も楽しみだったが、なによりも大好きな人に会うのが一番の楽しみだった。
しかし、そんな浮き足立った気持ちも目前に降る強雨に焦燥へと姿を変えざるを得なかった。
いっそかまわず雨の中を走りぬこうかと思ったが、雨があまりにも強く足を踏み出すことができなかった。それに幽香に会うのに濡れ鼠なのもどうかと思う。
「・・・・・・幽香・・・。」
それ故に、最愛の人の顔に思いを馳せるほかなかったのだ。
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「遅いわね・・・。」
甘い匂いの漂う部屋で、愛する小さな閻魔を待ちながら独語した。
部屋を漂っている匂いの正体は映姫の為に焼いているお菓子の匂いだ。美味しいと喜んでくれるだろうか、そんな不安と期待を織り交ぜながら作ったクッキーやスコーンは、河童に作らせたタイマー付オーブンの中で今しばらくの焼き上がりを待つばかりだった。
ふと、窓の外を見ると強い雨が草木の葉を打ち付けていた。
「もしかして、この雨で動けなくなっているのかしら?」
大いにありえることだ。大方、いつもどうり人里に行くのに、朝晴れていたので傘を持っていかなかったのだろう。
突然の雨に慌てている映姫を思い浮かべると、くすりと笑みがこぼれる。
あの子らしい。しっかりしているようでどこか抜けているところがあるのだ、あの小さな閻魔様は。
そこが可愛いのだけれども。
そうとなれば迎えにいこう。
傘立てから2本の傘を取り出し玄関へ向かう。
外は大雨だが足取りは軽い。あたりまえだ、大好きな人に会いに行くのだから。
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「はぁ・・・、どうしよぅ・・・。」
一向に止まない雨を忌々しく思いながらも悩んでいた。
やはり濡れるのを覚悟で走りぬこうか
(やはり、それしかないですね!)
意を決して一歩を踏み出そうとしたとき、急に周りが暗くなった。
頭を上げてみるとそこには、先ほどまで思いを募らせていた人の姿があった。
「幽香!!」
「やっぱり傘持ってなかったのね?」
優しさも含まれた苦笑い顔で、そう問われた。
どうやら完全に看破されているらしい。自分の失敗がこうも筒抜けだとやはり恥ずかしい。
恥ずかしさゆえに熱くなった顔をコクコクと縦に振ることしかできなかった。
そんな私の頭を幽香は何の気なしに撫でてくる。
これまた恥ずかしさのせいか、抵抗できなかった。
「・・・ヤメテクダサイ、ユウカ・・・。」
小声でささやかな抵抗を試みた。
最近うまく抵抗できなくなっているような気がするのですが・・・。
「はい、映姫。」
差し出された手には1本の傘が掴まれていた。
「わぁ・・ありがとうございます、幽香。わざわざ持ってきてくださったんですね?」
「そうよ、さぁ行きましょう。お菓子が待っているわ。」
傘を差し、二人並んで歩き出す。
しかし、傘のせいで二人の間に少しの間が生まれてしまっている。
(そういえば小町が・・・)
『やっぱり純愛といったら相合傘ですよ!1本の傘に寄り添う二人!いいですね~』
的なことを恋愛漫画片手に言っていた気がする。まぁ仕事中に漫画を読んでいるのではありません、とそのまま説教に突入したのですが・・・。
(相合傘か・・・。)
・・・・・・・・・。
もともと、(説教のときは除き)それほど雄弁というほどではない二人。
そんな二人の間にあるのは、信頼と愛情と雨の音だけであった。
「あの幽香?わざわざ傘を持ってきてくれた上に厚かましいかもしれないのですが、お願いを聞いてもらえますか?」
「何?どうしたの?」
不思議そうな顔を幽香は向けてきた。
「その・・・、そちらの傘に入ってもいいですか?」
一瞬の驚きの後、なるほどという顔になって幽香は頷いた。
「いいわ、いらっしゃい。」
そう幽香は言って広げた場所に傘を閉じて飛び込んだ。
飛び込んだはいいが、少し恥ずかしい。見るものが居ないとは言え往来の真ん中でするには難度が高い。
「少し恥ずかしいわね。」
どうやら幽香も同じ気持ちのようだ。顔が若干赤い。
「でも、なんだかいいですね。くっ付いてる感じが・・・。」
そう、恥ずかしさ以上に満たされていくものがあった。いつも以上に心が近づいているように感じられるのだ。狭い傘の中、大好きな人とくっ付いて歩いていくのは・・・。
「そう、そうね・・・。」
幽香は優しい笑顔を向けてくる。つられて私も笑顔になる。
だんだんと弱まっていく天水の中、笑顔を見せあいながら一つの傘で歩いていく二人の姿があった。
ここから幽香と映姫のほのぼの夏休みライフ的な展開に…(意味不
ともかく幽映はやれ!
なぜ自重したし。