蓮子、また変な夢を見たの。
カウンセリングしてよ。
何、その顔。
そんなに嫌そうにしないでよ。
はいはい、今喋るわよ。
始めに気づいたのはそこが森の中だろうってこと。
次に気づいたのは、パジャマじゃ寒いってことね。
昼か夜かって?
えっと、肌寒かったし、本当に真っ暗だったから夜だったんじゃないかしら。
森だって分かった理由?
そりゃあ、匂いと葉擦れの音よ。
えっ季節?
そんなの今と同じでしょ。
変な蓮子。
つまり、平常運転ね。世は事もなし。
じゃ、続けるわよ。
私は途方に暮れたわ。
コンパスも無い、食べ物も無いでどうすればいいのかさっぱり分からなかったし。
ん?そこに蓮子が居ても意味なかったでしょうね。
だって空が見えなかったんですもの。
蓮子に出来ることなんて無かったわ。
手持ち無沙汰で私は暇でしょうがなかった。
兎でも良いから出てきて早く案内してよって思ってたら、来たのよ。
嫌ね、蓮子。本当に兎が出てきて案内するわけ無いでしょ?
私に縁があるのは、精々宇佐見位なもんだわ。
一文字違いね。
いつも遅刻するから、似てはいるんだけど
いいから、話を進めろって?
遅刻するくせに時間にうるさいのね。
あら、逆かしら。
まあ、どっちでも変わりはないか。
そんなことはどうでもいいし。本題、本題っと。
えーと、何処まで話したかしら。
蓮子、ケーキを突っつくのやめて頂戴。
そのケーキは私のよ。
そうそう、案内係のとこまでだったわね。
碌に見えないし、声しか聞こえなかったけど。間違いなく少女だったと思うわ。
根拠?
決まってるじゃない、若い声だったからよ。
変声機?
そんなものを持って森に入るわけないじゃない。
彼女は言ったわ。
「夜に出歩く人間は食べられたい人間」
私はこう返したの。
「私は美味しくないわよ」
そしたら彼女は笑った様な気がしたわ。
「あら、貴女は自分を食べたことがあるの?」
私は口を閉ざしたわ。
だって食べたことなんてないもの。
だけど言われっぱなしじゃしゃくだからつい言ってしまったの。
「ないけど、嘘だと思うなら食べてみたら?きっと天国行きの列車に乗って帰って来れなくなるでしょうね」って
今、思えばそこまで自分が不味いって主張するのもどうかなって思うのよね。
彼女はそこで首をかしげたわ。
「貴女は里の人間?」
「里?」
「なんだ、貴女里の人間じゃないのね。声かけることもなかったか」
私はぞっとしたわ。
目の前にいるはずの女の子から寒気を感じたのよ。
どうしてそうなったかは分からないけど兎にも角にも目の前の子が怖くなったの。
このままじゃ、いけないと思って私の状況をまくし立てたわ。
女の子は聞いているかいないのかさっぱり掴めなかったけど。
一通り話終えたら、彼女は言ったの。
「ふーん、取り敢えず家に来る?」
天から蜘蛛の糸が降りてきた気分になったわ。
私は一も二もなく頷いたの。
だってそうでしょう。
森の中で寝直す趣味なんて無いもの。
彼女は凄かったわ。
光もない道の中、迷い無く歩いっていたんだから。
でも、今振り返ってみると不思議ね。
足音くらい聞こえてもよさそうなのに一切聞こえなかったんだもの。
そうそう、森を歩いていたらね、葉っぱの切れ目から光が差してきたの。
でね、見えたのよ。
真っ赤なリボンをした頭が。
そのとき確信したわ。
彼女は女の子だって。
だってそうでしょ?真っ赤なリボンをつけるのは女の子かプレゼントくらいなもんよ。
蓮子?相槌がおざなりになってきたわよ。
コーヒーでも飲む?
もちろん、貴女のお金で。
しかし、夢っていうのは気が利かないものね。
靴すら履いてなかったんだもの。
おかげ落ち葉や石を踏みまくって痛くて泣きそうだったわ。
私が疲れてきた頃、ようやく家らしき明かりがみえてきたの。
どんな家だったか?
そうね、お菓子の家だったかもしれないし、藁で出来た家かもしれないわ。
部屋に連れてって貰った後、布団まで敷いてくれたの。
優しさが胸に染みたわ。
蓮子の優しさ?そうね、貴女がその目を有効に活用して時間に遅れなくなったなったら少しは私の胸も吸収してくれるでしょうよ。
続けるわよ?
障子だったから隣から音が聞こえてくるのよ。
何て言うか、硬質なものを擦っている様な音が響いてきてたのよね。
シャッ、シャッという感じね。
あまりに聞こえてくるもんだから気になって耳を澄ましたのよ。
そしたら、食べ物とか少し足りないとか弾幕とか紅白とか色々聞こえてきたの。
横に目を向けるたらね、障子に影が映っていたの。
まるで昔話に出てくる鬼のようなだったわ。
怖くなって、転がるように家を飛び出したの。
そしたら、女の子が追いかけてきたわ。
蓮子、後少しだからシャープペンシルを分解するのやめてくれる?
山姥は餅にすると美味しいらしい?
やよ、そんな変なもの食べたくないわ。
私は必死で走ったわ。
でも、女の子はそれこそ背中に羽が生えているかってくらいに早かったわ。
いや、確かに私の足は自慢出来るレベルじゃないけどね。
もうクタクタでもう走れないと思った時神社が見えたの。
テンプレ、テンプレって喧しいわよ。
境界に顔叩きつけるよ?
藁にもすがる思いで私はお賽銭を入れて祈ったわ。
私をお守り下さいと。
だってこういうとき神様は願いを聞いてくれるはずでしょ?
そりゃ祈るわよ。
祈ってる途中で背中に軽い衝撃を受けたわ。
なんだろうと思って振り返ると私を追いかけてきていた女の子だったのよ。
背筋が凍ったわ。
もうダメだ。食べられてしまうんだと諦めたよ。
女の子の手には包丁が握られていたしね。
背中に張り付いた女の子はうめき声のようなものを上げながら顔を押し付けてきたわ。
そしたら女の子が言ったの。
「貴女が今年初めての参拝客よ」
カウンセリングしてよ。
何、その顔。
そんなに嫌そうにしないでよ。
はいはい、今喋るわよ。
始めに気づいたのはそこが森の中だろうってこと。
次に気づいたのは、パジャマじゃ寒いってことね。
昼か夜かって?
えっと、肌寒かったし、本当に真っ暗だったから夜だったんじゃないかしら。
森だって分かった理由?
そりゃあ、匂いと葉擦れの音よ。
えっ季節?
そんなの今と同じでしょ。
変な蓮子。
つまり、平常運転ね。世は事もなし。
じゃ、続けるわよ。
私は途方に暮れたわ。
コンパスも無い、食べ物も無いでどうすればいいのかさっぱり分からなかったし。
ん?そこに蓮子が居ても意味なかったでしょうね。
だって空が見えなかったんですもの。
蓮子に出来ることなんて無かったわ。
手持ち無沙汰で私は暇でしょうがなかった。
兎でも良いから出てきて早く案内してよって思ってたら、来たのよ。
嫌ね、蓮子。本当に兎が出てきて案内するわけ無いでしょ?
私に縁があるのは、精々宇佐見位なもんだわ。
一文字違いね。
いつも遅刻するから、似てはいるんだけど
いいから、話を進めろって?
遅刻するくせに時間にうるさいのね。
あら、逆かしら。
まあ、どっちでも変わりはないか。
そんなことはどうでもいいし。本題、本題っと。
えーと、何処まで話したかしら。
蓮子、ケーキを突っつくのやめて頂戴。
そのケーキは私のよ。
そうそう、案内係のとこまでだったわね。
碌に見えないし、声しか聞こえなかったけど。間違いなく少女だったと思うわ。
根拠?
決まってるじゃない、若い声だったからよ。
変声機?
そんなものを持って森に入るわけないじゃない。
彼女は言ったわ。
「夜に出歩く人間は食べられたい人間」
私はこう返したの。
「私は美味しくないわよ」
そしたら彼女は笑った様な気がしたわ。
「あら、貴女は自分を食べたことがあるの?」
私は口を閉ざしたわ。
だって食べたことなんてないもの。
だけど言われっぱなしじゃしゃくだからつい言ってしまったの。
「ないけど、嘘だと思うなら食べてみたら?きっと天国行きの列車に乗って帰って来れなくなるでしょうね」って
今、思えばそこまで自分が不味いって主張するのもどうかなって思うのよね。
彼女はそこで首をかしげたわ。
「貴女は里の人間?」
「里?」
「なんだ、貴女里の人間じゃないのね。声かけることもなかったか」
私はぞっとしたわ。
目の前にいるはずの女の子から寒気を感じたのよ。
どうしてそうなったかは分からないけど兎にも角にも目の前の子が怖くなったの。
このままじゃ、いけないと思って私の状況をまくし立てたわ。
女の子は聞いているかいないのかさっぱり掴めなかったけど。
一通り話終えたら、彼女は言ったの。
「ふーん、取り敢えず家に来る?」
天から蜘蛛の糸が降りてきた気分になったわ。
私は一も二もなく頷いたの。
だってそうでしょう。
森の中で寝直す趣味なんて無いもの。
彼女は凄かったわ。
光もない道の中、迷い無く歩いっていたんだから。
でも、今振り返ってみると不思議ね。
足音くらい聞こえてもよさそうなのに一切聞こえなかったんだもの。
そうそう、森を歩いていたらね、葉っぱの切れ目から光が差してきたの。
でね、見えたのよ。
真っ赤なリボンをした頭が。
そのとき確信したわ。
彼女は女の子だって。
だってそうでしょ?真っ赤なリボンをつけるのは女の子かプレゼントくらいなもんよ。
蓮子?相槌がおざなりになってきたわよ。
コーヒーでも飲む?
もちろん、貴女のお金で。
しかし、夢っていうのは気が利かないものね。
靴すら履いてなかったんだもの。
おかげ落ち葉や石を踏みまくって痛くて泣きそうだったわ。
私が疲れてきた頃、ようやく家らしき明かりがみえてきたの。
どんな家だったか?
そうね、お菓子の家だったかもしれないし、藁で出来た家かもしれないわ。
部屋に連れてって貰った後、布団まで敷いてくれたの。
優しさが胸に染みたわ。
蓮子の優しさ?そうね、貴女がその目を有効に活用して時間に遅れなくなったなったら少しは私の胸も吸収してくれるでしょうよ。
続けるわよ?
障子だったから隣から音が聞こえてくるのよ。
何て言うか、硬質なものを擦っている様な音が響いてきてたのよね。
シャッ、シャッという感じね。
あまりに聞こえてくるもんだから気になって耳を澄ましたのよ。
そしたら、食べ物とか少し足りないとか弾幕とか紅白とか色々聞こえてきたの。
横に目を向けるたらね、障子に影が映っていたの。
まるで昔話に出てくる鬼のようなだったわ。
怖くなって、転がるように家を飛び出したの。
そしたら、女の子が追いかけてきたわ。
蓮子、後少しだからシャープペンシルを分解するのやめてくれる?
山姥は餅にすると美味しいらしい?
やよ、そんな変なもの食べたくないわ。
私は必死で走ったわ。
でも、女の子はそれこそ背中に羽が生えているかってくらいに早かったわ。
いや、確かに私の足は自慢出来るレベルじゃないけどね。
もうクタクタでもう走れないと思った時神社が見えたの。
テンプレ、テンプレって喧しいわよ。
境界に顔叩きつけるよ?
藁にもすがる思いで私はお賽銭を入れて祈ったわ。
私をお守り下さいと。
だってこういうとき神様は願いを聞いてくれるはずでしょ?
そりゃ祈るわよ。
祈ってる途中で背中に軽い衝撃を受けたわ。
なんだろうと思って振り返ると私を追いかけてきていた女の子だったのよ。
背筋が凍ったわ。
もうダメだ。食べられてしまうんだと諦めたよ。
女の子の手には包丁が握られていたしね。
背中に張り付いた女の子はうめき声のようなものを上げながら顔を押し付けてきたわ。
そしたら女の子が言ったの。
「貴女が今年初めての参拝客よ」
騙されたぜ!
しかし、なぜ包丁研いでたんだよ霊夢www
この淡々とした文章と蓮子とのやり取りが巧いなぁ。
素晴らしいSSでした!
また、「真っ赤なリボンをつけるのは女の子かプレゼントくらいなもんよ。」の言い回しも好きです。