ある日、父が失踪したと侍女に聞いた。
私は妾腹の子だったので、外にはあまり出して貰えなかった。
でも、その話を聞いて、私は一人で外に飛び出した。
場所は知っている。
たった一度だけ、侍女と共に、父に内緒で訪れた事があったから……
侍女が幼い私に、あれが、なよ竹の輝く姫です……と説明するが、まったく頭に入らない。
なんて……綺麗なんだろう……
その時、私は『あいつ』に見惚れていた。
あの人が、私の母様になるかもしれない人……
本当の母は随分前に亡くなっていたから、単純に嬉しかった。
あの人が母様になったら、私と遊んでくれるだろうか?
もっと父様も私を見てくれるだろうか?
そうだ、あの人と仲良くなれば、きっと両方叶う
私は願った。
父様に嫁いで欲しい、と。
それなのに……
あいつは……
難題を吹っ掛け、父様に、藤原の家に恥をかかせた!
待ってろ……父を、藤原の家を侮辱した事、後悔させてやる!
だけど、私の行動は遅すぎた。
今日、『あいつ』は月に帰るらしい。
周囲には2000人もの兵が厳重に警備していた。
当然、私のような小娘が近寄れるはずも無い。
だが、2000人の兵は現れた月の使者100人に対し、何も出来なかった。
『あいつ』は空を飛ぶ車に乗り込んで、たった100人程の月の使いと共に月へと帰って行ってしまった。
私は、遠ざかる使者達と空を飛ぶ車を見ている事しか出来なかった。
その時、地上の人間たちは誰も気がつかなかった。
満月が反射している光の中、眩い光が生まれた事を。
99人の使者を死者とし、二人が行方を眩ました事を。
どうにか復讐できないものか……
思案していると、『あいつ』が残した物があると耳にした。
そうだ、私がそれを奪ってやる!
翁の家に押し入ると、帝に送った後だった。
くそう……でも、諦めない!
調べた末、調岩笠という人物が駿河の山でソレを燃やすらしい。
後を追って、岩笠を殺し、ソレを奪った。
壷?
……中身は……薬?
翁や帝に飲んでもらう為に残したようだけど……
ふふん、私が飲み干してやる!
山の頂で薬を飲んでから、私は周囲の死ばかり見てきた。
別に、私が殺した訳じゃない。
みんな寿命を迎えただけだった。
そう、私が死なないだけだった。
いつしか私は物の怪の類と恐れられ、住む場所を転々とした。
山を越え、森を抜け、川を渡り。
道を逸れて、竹林の只中で私は抜け殻の様に座り込む。
住む場所を変えるのも疲れた。
人の死も見飽きた。
もう、死にたかった。
でも、死ねない。
もう、考えるも疲れた。
生きている事がこんなにも苦痛だなんて……
心が……壊れそうだった
そんな私の前に、『あいつ』が現れた。
「あら……永琳来て~、何か居るわよ?」
ぅ……なんだ?
「ふむ……人間のようですね」
弓矢を持った、青と赤い姿をした白髪の少女と
「んん?……どこかで見たような……」
どこかで見たような、黒髪の少女
「姫、知り合いですか?」
姫?
――まさか
「あ……あんた……まさか……なよ竹の…」
「あら、喋ったわ……それよりあなた、どうして私の……」
「姫、もしかしたらあの時の口止めの薬を……」
「あなた、翁に渡した薬を奪ったの!?」
「ぁ……あは……あはははははッ」
月に帰ったはずなのに、なんで此処に居るのだろうか?
でも、今はそんな事、どうでもいい。
「あら、元気になりましたね」
やった、逢えた!
私の生きる目標に、出会えた!
「私の名前は妹紅、藤原妹紅!」
ふらつきながらも立ち上がる。
「藤原……ふーん、あの詐欺野郎の娘か何かかしら?」
「さ……ッ、父様を……藤原を……侮辱するなぁあああ!!」
掴みかかろうとしたが、白髪の少女の放った矢に眉間を穿ち打ち抜かれる。
「がッ――ッ」
ビクビクと体を痙攣させ、私の体は死に絶える。
が、私は死なない。
途端に私の体は炎に包まれて、燃え尽き、その場に再生する。
「……はぁ、……はぁ、……コ……コロシテヤル……」
この頃の私は蘇生に慣れていない為に、極度に体力を消耗する。
その場にしゃがみ込んで肩で息をしていた。
それでも、私は睨み続ける。
「貴女は罪を二つ犯したわ……薬を奪い、飲んだ事……そして、私の命を狙った」
「ふん、あんたも、私の父様を侮辱した! 狙う理由は十分だ!」
「そう、いいわ……貴女は私に殺される義務があるけど、貴女は私を殺す権利があるという事ね」
「義務……? 権利……?」
何を言っているんだ?
「永琳、帰りましょう」
「はい、判りました」
「妹紅……刺客を送るかもしれないし、直接殺しに行くかも知れない……
どちらにせよ、楽しみにしてね……ふふふ……」
その時の私は、去ってゆく後姿を見ている事しか出来なかった
始まりは最悪だった。
次第に、私は力の使い方も覚え、復讐を忘れ、
只々、殺しあえる事を楽しんだ。
何度殺したか判らない。
何度殺されたか判らない。
でも、確実な事が一つある。
「あぁ、生きているって何て素晴らしいんだろう」
そして、今日も私は『あいつ』と対峙する。
『あいつ』は買い物袋を手にぶら下げ、左右に人形を連れて歩いてきた。
「こんな所で会うとは……奇遇ね、妹紅」
『あいつ』は買い物袋を左右の人形に渡す。
「ふん、あんたが集落から来るなんて……明日は槍でも降るのかしら?」
私は手に炎を燈す。
「あら・・・その前に降るものがあるわよ?」
『あいつ』も懐に手を入れる。
「あぁ、そうか血の雨ね。」
「えぇ、そうよ血の雨よ。」
「「ただし……貴女のね!」」
さぁ、楽しもう!
私は妾腹の子だったので、外にはあまり出して貰えなかった。
でも、その話を聞いて、私は一人で外に飛び出した。
場所は知っている。
たった一度だけ、侍女と共に、父に内緒で訪れた事があったから……
侍女が幼い私に、あれが、なよ竹の輝く姫です……と説明するが、まったく頭に入らない。
なんて……綺麗なんだろう……
その時、私は『あいつ』に見惚れていた。
あの人が、私の母様になるかもしれない人……
本当の母は随分前に亡くなっていたから、単純に嬉しかった。
あの人が母様になったら、私と遊んでくれるだろうか?
もっと父様も私を見てくれるだろうか?
そうだ、あの人と仲良くなれば、きっと両方叶う
私は願った。
父様に嫁いで欲しい、と。
それなのに……
あいつは……
難題を吹っ掛け、父様に、藤原の家に恥をかかせた!
待ってろ……父を、藤原の家を侮辱した事、後悔させてやる!
だけど、私の行動は遅すぎた。
今日、『あいつ』は月に帰るらしい。
周囲には2000人もの兵が厳重に警備していた。
当然、私のような小娘が近寄れるはずも無い。
だが、2000人の兵は現れた月の使者100人に対し、何も出来なかった。
『あいつ』は空を飛ぶ車に乗り込んで、たった100人程の月の使いと共に月へと帰って行ってしまった。
私は、遠ざかる使者達と空を飛ぶ車を見ている事しか出来なかった。
その時、地上の人間たちは誰も気がつかなかった。
満月が反射している光の中、眩い光が生まれた事を。
99人の使者を死者とし、二人が行方を眩ました事を。
どうにか復讐できないものか……
思案していると、『あいつ』が残した物があると耳にした。
そうだ、私がそれを奪ってやる!
翁の家に押し入ると、帝に送った後だった。
くそう……でも、諦めない!
調べた末、調岩笠という人物が駿河の山でソレを燃やすらしい。
後を追って、岩笠を殺し、ソレを奪った。
壷?
……中身は……薬?
翁や帝に飲んでもらう為に残したようだけど……
ふふん、私が飲み干してやる!
山の頂で薬を飲んでから、私は周囲の死ばかり見てきた。
別に、私が殺した訳じゃない。
みんな寿命を迎えただけだった。
そう、私が死なないだけだった。
いつしか私は物の怪の類と恐れられ、住む場所を転々とした。
山を越え、森を抜け、川を渡り。
道を逸れて、竹林の只中で私は抜け殻の様に座り込む。
住む場所を変えるのも疲れた。
人の死も見飽きた。
もう、死にたかった。
でも、死ねない。
もう、考えるも疲れた。
生きている事がこんなにも苦痛だなんて……
心が……壊れそうだった
そんな私の前に、『あいつ』が現れた。
「あら……永琳来て~、何か居るわよ?」
ぅ……なんだ?
「ふむ……人間のようですね」
弓矢を持った、青と赤い姿をした白髪の少女と
「んん?……どこかで見たような……」
どこかで見たような、黒髪の少女
「姫、知り合いですか?」
姫?
――まさか
「あ……あんた……まさか……なよ竹の…」
「あら、喋ったわ……それよりあなた、どうして私の……」
「姫、もしかしたらあの時の口止めの薬を……」
「あなた、翁に渡した薬を奪ったの!?」
「ぁ……あは……あはははははッ」
月に帰ったはずなのに、なんで此処に居るのだろうか?
でも、今はそんな事、どうでもいい。
「あら、元気になりましたね」
やった、逢えた!
私の生きる目標に、出会えた!
「私の名前は妹紅、藤原妹紅!」
ふらつきながらも立ち上がる。
「藤原……ふーん、あの詐欺野郎の娘か何かかしら?」
「さ……ッ、父様を……藤原を……侮辱するなぁあああ!!」
掴みかかろうとしたが、白髪の少女の放った矢に眉間を穿ち打ち抜かれる。
「がッ――ッ」
ビクビクと体を痙攣させ、私の体は死に絶える。
が、私は死なない。
途端に私の体は炎に包まれて、燃え尽き、その場に再生する。
「……はぁ、……はぁ、……コ……コロシテヤル……」
この頃の私は蘇生に慣れていない為に、極度に体力を消耗する。
その場にしゃがみ込んで肩で息をしていた。
それでも、私は睨み続ける。
「貴女は罪を二つ犯したわ……薬を奪い、飲んだ事……そして、私の命を狙った」
「ふん、あんたも、私の父様を侮辱した! 狙う理由は十分だ!」
「そう、いいわ……貴女は私に殺される義務があるけど、貴女は私を殺す権利があるという事ね」
「義務……? 権利……?」
何を言っているんだ?
「永琳、帰りましょう」
「はい、判りました」
「妹紅……刺客を送るかもしれないし、直接殺しに行くかも知れない……
どちらにせよ、楽しみにしてね……ふふふ……」
その時の私は、去ってゆく後姿を見ている事しか出来なかった
始まりは最悪だった。
次第に、私は力の使い方も覚え、復讐を忘れ、
只々、殺しあえる事を楽しんだ。
何度殺したか判らない。
何度殺されたか判らない。
でも、確実な事が一つある。
「あぁ、生きているって何て素晴らしいんだろう」
そして、今日も私は『あいつ』と対峙する。
『あいつ』は買い物袋を手にぶら下げ、左右に人形を連れて歩いてきた。
「こんな所で会うとは……奇遇ね、妹紅」
『あいつ』は買い物袋を左右の人形に渡す。
「ふん、あんたが集落から来るなんて……明日は槍でも降るのかしら?」
私は手に炎を燈す。
「あら・・・その前に降るものがあるわよ?」
『あいつ』も懐に手を入れる。
「あぁ、そうか血の雨ね。」
「えぇ、そうよ血の雨よ。」
「「ただし……貴女のね!」」
さぁ、楽しもう!