Coolier - 新生・東方創想話

Be Stupid Dolls War ? 第三話

2005/07/22 10:00:50
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「動くと呑む!」


熱く燃え滾る使命感を胸に抱いて颯爽と夜空を駆けていたいわくつきドールズの前に
突如として現れた、強大な力の息吹を孕んだ妖しい霧と怪しい影。
そしてついに思わず勝手にしやがれとツッコんでしまいそうな謎の台詞と共に何者かが顕現した。
満月をバックにして正体が分からない様かっこよく具現したつもりらしいが、
しかしギラギラと輝く月明りに照らされて雄雄しく聳え立つゴツイ二本の角と
ぶらぶらと揺れ動く妙テケレンな瓢箪に、使い方にもよるが根本的にふしだらなフォルムの鎖、
辺り一面に撒き散らされる絶望的なまでの酒臭さがその影の正体を雄弁に語っていた。


「間違えた! 呑んだら動くだ、私が動くゲボッハ! ハバ! テバジャ! ゴフホ!」


それは萃まる酒、アル中、そして家庭内暴力……ではなく、萃まる夢、幻、そして百鬼夜行。
一部では自分の壊滅的で破滅的なプロポーションにひどく落ち込んでいて、
たまにこっそりミッシングパワーを使って現実逃避をしているという噂もある程の
アルコール中毒症絶賛患い中の超一流美幼女、伊吹萃香である。
そして言ってるそばから腰の瓢箪を引っ掴んで一気飲みをかましつつ、
タイミングの悪い事に酒が気管に入ったらしく思い切り咽ながら叫ぶ萃香。


「パリジェーン(……誰でしょうか、このお嬢さんは)」

「ハラッショ(……さあ、ただの迷子チビじゃないの)」


そんなあられもない萃香の痴態を目の当たりにし、蓬莱人形と上海人形はともかく
まったく面識の無い他の六体は「誰だよこの酒くせー幼女」と言いたそうな怪訝な眼差しを向ける。


「ホラーイ(失念していた……ああいう事が出来るのはアンタ位だな、そう言えば)」

「何? 貴方の可愛さは悟りの境地に達している、だって?
ふん、いきなりそんな本当のこと言ったって誤魔化されないわよ!」

「ハラッショ(何だこの娘は、アル中の上に中耳炎まで発動してるのかッて……)」

「パリジェーン(いえいえ露西亜様、中耳炎だったら音自体がよく聞こえない筈ですわ。
この場合可能性があるとしたら脳もしくは精神上における重大な障害くらいでしょう)」

「ォルレアーン(いや、もしかするとあの二本の角は実はタチの悪い冬虫夏草的存在で
それが脳髄に根を張って行動を操っているという可能性も捨てきれないっスよー)」

「ブブヅケー(あー、そう言えばいつだかそんな感じの騒ぎがあったってマスターが言ってはりましたなー)」


何処で何を間違ったのか、的外れも甚だしい思い込みを惜しげもなく垂れ流す萃香と
自分達の言っている内容が伝わらないのをいい事に暴言を吐く人形達。
そんな微笑ましい光景を尻目に、上海人形は突如降って沸いた惨劇の幕開けに
この先自分を手薬煉引いて待ち受ける芋蔓式の悲惨な運命を幻視してしまったのだろうか、
文字通りを頭を抱えて絶望の渦中へと落ち込んでいた。


「シャンハーイ(な、何でいきなりよりにもよってこんな危険な人が……)」

「ちゅりーぷー(あれ? ほうらいおねぇちゃんとしゃんはいおねぇちゃん、このひとのこと、しってるの?)」

「ホラーイ(ああ、以前にちょっと百八悶着くらいあってな)」

「シャンハーイ(いや、幾らなんでもそこまで根深い因縁持ってないから!)」

「ホラーイ(何、バカを言っている?生きとし生けるもの全てが内包する百と八つの煩悩。
人と人との因縁とはすべからく双方の煩悩もしくは欲望の鬩ぎ合いにより生まれるのだ。
それを考えれば私達の間には百八つのしがらみが介在していると言っても過言ではない。
ちなみにこの間数えたんだがマスターの体中のほくろの数も百八個だったな。
まあ途中から毛穴とほくろの区別が付かなくなったんで実際は五個にも達しないだろうがな)」

「シャンハーイ(いきなり何言ってるのぉぉぉぉぉぉ!?)」


いきなりシャンハーイだのホラーイだのと怪しい鳴き声を発しながら
妙テケレンな寸劇をおっ始めたいわくつきドールズを怪訝な眼差しで見ていた萃香だったが、
蓬莱人形の戯言にツッコんだ上海人形の言葉を聞くと、表情を僅かに強張らせた。


「何? 私の角が既にただのデッドウェイトと化してるって? 大きなお世話!
いや、そんな事はどうでもいいわ……あんた達、これから何処に行くつもりなの?」

「ハラッショ(ッんだよ……どーせ答えたって何言ってるか分からないッてのに
いちいちこんな無意味な問答に人を引き込んで……これだからアル中はッ!
ったく、デッドウェイトなのは角じゃなくてあんたの脳味噌じゃないのッ)」

「ブブヅケー(まあまあ、どうせ伝わらないんやから適当に返事すればよろしゅーおまへんか。
例えばこれから皆まとめて紅魔湖にスカイダイビングに行くところどす、とかにゃー)」

「シャンハーイ(せっかく水があるのにスカイダイビングってのも……)」


またもや勘違い極まりない勝手な解釈をしつつ、萃香がじろりと人形達をねめつけて詰問する。
そして自分たちの言葉が萃香に伝わらないのをいい事に言いたい放題言ってから、
蓬莱人形が全員の意思を代弁するように、颯爽と萃香の方へ身を翻して
かっこつけて語り始めた。


「ホラーイ(まあ、そういう訳だ。ちなみに一口にスカイダイビングと言っても
ここでいう『スカイ』とは納豆の意味だからまさに阿鼻叫喚の地獄絵図だぞ。
それでも付いて来ると言うのなら止めはしないが妨害はさせてもらう)」

「……何? 今からとある雑貨屋に局部に穴の開いた下着を買いに行くところ、だって?
嘘ばっかり! あんた達が昨日の夜中何やら怪しい相談してるの見てたんだからね!
あんな薄ッ暗がりでこそこそこそこそ、まったく陰気くさいったらありゃしないわ。
大方あの変態人形師の命令で霊夢に怪しい行為を施しに行く所でしょう?」


どうだ見たか正解だろすごいだろ! とでも言いたそうな
実に誇らしげでなおかつ偉そうな表情で萃香が叫ぶ。
なんと伝わってもいないのに嘘を見破られると言う衝撃的な事態が発生した。
そして万が一にもばれる事は無いと踏んでいた人形達がお互いに顔を見合わせる。
その顔にはまさかこんなチビにこの完璧な計画が見破られるとは、という
衝撃と驚愕に満ち満ちた表情が貼り付いている。


「パリジェーン(細部はともかく根本的にはバレてるみたいですけど……)」

「ブブヅケー(んー、マスターが普段どんな行動してるのかはよー知らへんねんけど
よっぽど破廉恥って言うか面妖って言うか……ふしだらな事しなさってはるんやねぇ、
まっさかただ単にマスターの関係者であるってだけで私達まで変態扱いされるなんてー)」

「ホラーイ(まあ、仕方が無いさ。とある集団の中の一人または一部が
何かとんでもない事をやらかせば、そいつと同じ集団に属する者全てが
十把一絡げに見られてしまうというのはある程度どうしようも無い事だからな)」


この会話を聞いていた上海人形が、まさかこいつらマスターはともかく
自分達は正常だと思い込んでるんじゃないだろうなと考えた事は言うまでも無い。


「チベターイ(そ、そんな事より……見てた、って……だってあの時他に誰も……)」

「ホラーイ(ああ、この人は確か疎と密を操ると言う能力を持っていてな。
例えば自分を霧の様に薄くして幻想郷を覆い尽くしてストーカー的行為に勤しんだり
夜毎夜毎に自分の胸に贅肉を集めて一人悦に入るなんてのは日常茶飯事なんだよ。
ひょっとすると幻想郷中に飛んでる夜雀集めて毎日毎晩焼き鳥パーティとかな。ハハハ)」

「シャンハーイ(いや、断言するなよって言うか別にそこまでろくでもない例を出さなくても……)」


どれだけろくでもない妄想をしたのか、一気に顔が青ざめる西蔵人形を安心させるように
実に軽々しい口調でフレンドリイに語りかける蓬莱人形。
そしてそこはかとなく悪意の感じられるその発言に控えめながらも上海人形が突っ込んだが、
そもそも何を言われているのか知る由も無い萃香はまったくそれらを意に介さず、
偉そうに腕を組み、半ば人形達を見下すような態度で話し始めた。


「その瓶の中身はどーせ媚薬でしょ? そんなの無駄無駄、霊夢は日頃から
その手の脅威に晒されまくってるからそんな禍々しいオーラ放つもん持ってったが最後、
針だらけの穴だらけにされてお終いよ。第一私や紫でもどうにも出来ないんだから
あんた達みたいな有象無象の雑魚如きが何をやった所でどうせ無理、敵わないよ!」

「ハラッショ(ッ……この娘……手前のアル中棚に上げて……ッ)」

「パリジェーン(あら……どうせだの無駄だの、随分知った風な口をお聞きになる方ですわね。
ああ、もしかして御自身も以前同じ事をして失敗した経験でもおありなのでしょうか?
うふふ、だとしたらとんだお笑い種ですわね)」

「チベターイ(うあ……わ、私も変態にされちゃった……うう、これじゃ浄土に行けないよぉ……)」

「ブブヅケー(むむ……何や、有象無象だのどうせ無理だの、随分失礼な事言われてはりまんな~)」

「ォルレアーン(そうっス! 何事もやってみなきゃ分かんないっス! やる前から諦めるのは良くないっス!)」

「ちゅりーぷー(?)」


びし、と瓢箪を人形達に突きつけて高らかに宣言する萃香。
そして少々性癖のおかしい蓬莱人形ととりあえず常識のある上海人形、
萃香の言っている意味を半分も理解していなさそうな和蘭人形は別として、
ちょっぴり辛辣なその暴言に思わずカチンと来たのを隠そうともしない人形達。
そして何やら非常に険悪なムードが漂ってきたのに慌てた上海人形が
素早く他の面子の「止め」に入った。


「シャンハーイ(ちょ、ちょっと、皆……頼むから可能な限り冷静でいてくれよ?
いや、まあ、き、気持ちは分かるけど……こ、ここはあくまでも冷静に……)」


しかし前世の報いか、はたまた因果律の悪戯か。
遡れば昨日の夜から怒涛のように襲い来る変態的な事態に疲れ果て、
冷静にするよう皆に呼びかける上海人形本人も既に冷静さを失っていた。
その結果表面上で怒りを表している面子の静止にばかり気を取られ、
ある意味では最も危険な者から注意を外してしまったのだ。


そして、そこに生まれた一瞬の隙が命取りとなった。


「ビックベーン(はぁ!? ぁんだコラてめぇ! 黙って聞いてりゃ言いたい放題好き放題しくさってぇ!
貴様のような所詮頭も体も取り替えることの出来ない消耗品たる有機物如きが
合体変形分離分解換装交換思いのままの機能的な私達無機物に楯突くとは
片腹どころか両腹痛いわ! 私はテメーみたいなトンチキ野郎が強いなんて思ってねぇぜ!
なんなら闘ってみっか!? でもいやっ! やめて! そんなのいや、す、すて、捨てて、あ、が、が、が、
ぐ、く、は、はは、ハァハハハハァハハハァハハァァァァ! つーかこの墓石ショべーよなぁ! こんなもん作るんだったら
いっそ血呑児潰して片栗粉塗ってたぷたぷに仕上げた枕大量生産して手紙したためろっつーの!
ひ、ひぃぃぃぃぃぃぃぃ!? 同類が! わたしのグランマと同類のレヴェルがぁ! 良かった! 良かったよぉ!
荒野広がる焼け野が原でひとりひねもすグランマと同じウィルスに感染してる人がいるよぉぉぉぉ!)」


今まで黙って萃香の暴言を聞いていた、いや、そもそも聞いていたのかどうかも妖しいが
とにかく静寂を保ってだけはいた倫敦人形が唐突に、あまりにも唐突に大噴火した。
要約すると「テメーむかつくからぶっ飛ばす」という、あまりにも命知らずな台詞。
その鬼をも恐れぬ不届きな発言に、ただでさえ血など通っていない上海人形の全身から
より一層の血の気が引く。


「シャンハーイ(ちょ、ば、馬鹿!! 滅多なこと言うもんじゃ……!!)」

「ハラッショ(チッ! あんたはまた一々こんなつまらん事で騒がないッ!
こっちの言葉はどうせマスター以外にゃ伝わりはしないんだから……ッ)」

「だッ、誰が変態傲慢アル中暴力小娘掘りキャラ二代目最有力候補ですってぇぇぇぇ!?」

「シャンハーイ(何でこんな時に限って伝わってる上に悪い方向に捻じ曲がってるのぉぉぉぉ!?)」


身を裂くような悲しみに思わず慟哭する上海人形。
ちなみにこの様な「こんな時に限って」と言いたくなる様な状況の事を外の世界では
「Aという物を探している時にAではなくBが見つかっていざBを探そうとすると今度はBではなくAが見つかる理論」
を用いて説明しているって倫敦人形が言ってた。


「ホラーイ(意思の疎通に際して起こった認識の相違による対立。よくある話だ。
およそ私達が他者と関わっていく存在である限りは仕方の無い事かも知れないな。
ああもう儚い儚い、あまりにも儚すぎてパンツ穿かなくてもいい位の勢いだな)」

「シャンハーイ(うるさいよ! 大袈裟だよ! 中途半端な韻を踏むなよ!
儚けりゃ穿かないってそれじゃ蛍とか蝉とか月下美人は皆ノーパン健康法だよ!)」

「ホラーイ(月の下の美しい人がノーパンってまた随分と大胆な事を言うんだな、アンタ)」

「シャンハーイ(へ!? い、いや、違う! い、今のは言葉のあやだ! 誤解だ! 若さゆえの過ちだ!)」


ショックの余り、いわくつきドールズ唯一の良心である上海人形すらも
いまいち自分で自分がよく分からなくなってしまった様だ。
こうなるともう歯止めは効かない。
坂道を転げ落ちる雪玉の如く、何かにぶつかって粉々に砕け散るまでショータイムは終わらないのだ。
そして、怒りに震えて激昂する萃香の怒号が開演の合図となった。


「き、今日のところは見逃してやるつもりだったけど気が変わったわ!
今すぐ此処で真ッ正面からすり潰す! 命の保障は出来ないよ!」


言うなり萃香が袖口に手を突っ込んで、腋からスペルカードを取り出した。
その瞬間、何故か辺りに何とも言えない乳臭さが漂ったが
その乳臭さの発生源及び原因は全くもって不明である。
ちなみにその芳香は遠く離れた紅魔館まで届き、
匂いの直撃を受けたとある完全で瀟洒なメイド長が鼻血と耳血と涎と涙を同時に噴出しつつ
たまたまそこに落ちていたリニアモーターカーの模型を誰彼構わずツッコみ始めたらしいが
それはこの際関係ない。


「ホラーイ(まあ、そりゃ誰だって掘りキャラ二代目だなんて言われたら怒るだろう。
まあ、あの宴会騒ぎの時には誰彼構わず剣先は鋭くても本人は鈍いとか
あんたの力では我々鬼の足元にも及ばないとか人間風情が我ら鬼に敵うと思うなとか
とにかくもうある事ある事暴言ばっかり吐きまくってたから当然の報いかも知れないが。
もしくは掘りキャラ二代目って言うよりあの半獣と合わせてザ・ホリえもんズとかな。ハハハけっさく!!)」

「シャンハーイ(どこが当然なんだよ! 第一実際は誰も掘りキャラだなんて言ってないよ!
って言うかザ・ホリえもんズとか傑作とかドサクサ紛れに貴方の方が失礼な事言ってるよ!!)」

「ブブヅケー(いや、ちょお待ってや蓬莱はん……『我ら鬼』……って、このお嬢はん、まさか……)」

「ホラーイ(ああ、言い忘れてたな。そうとも、この少女は紛れも無い『鬼』だ。
何せ出自が出自だからな、京人形なら鬼という存在についてはよく知っているだろう?)」

「ブブヅケー(そりゃうちは日本生まれの日本育ちやから、鬼についてはちょっとしたもんやねんで?
って言うか鬼ってそれがホントならかなりやばい状況とちゃいます!? ああ、あの恐ろしい夜が!
闇の帳に覆われた平安の都での熱く激しい魑魅魍魎と人間との大合戦が今まさに甦るぅ!!
忘れもせーへんわー、うちの最初の持ち主もあん時鬼に攫われてかれたんやー!!)」

「ォルレアーン(ふえー、京人形さんの持ち主さんも災難だったんスねー。
ちなみに私の最初の持ち主さんも魔女裁判にかけられて殺されちゃったんスけど。
いやー、祖国の為にしこたま頑張ったのにまさかあんな事になるなんて思ってもみなかったっス)」


何処と無く芝居がかった大袈裟な仕草で京人形が頭を抱えて叫ぶ。
また一人蓬莱人形の衝撃発言によって精神にダメージを負ってしまった様だ。
あまり思い出したくない類の出来事なのか、珍しく京人形の表情が曇る。
そして思い出話に花を咲かせている間にも、滅亡という名の終着駅に向かう
魔列車スーパーイブキング号の加速はとどまる所を知らなかった。




「おひけぇなすって! 遠くの者は音に聞け! 近くの者は目にも見よ! 
伊吹萃香が超奥義、ミッシングパープルパワー…………二倍ッッ!!」

「「「「「「「「「(ッッ!? きゃああああああああああああああ!?)」」」」」」」」」」


萃香がスペルカードを天高くかざしながら、闇を劈いて勇ましく叫ぶ。
おびただしい量の妖気が萃香に萃まっていき、やがて限界まで膨らんだ風船が弾け飛ぶ様に
衝撃波と爆風が巻き起こり、いわくつきドールズどころかそこら一体の動物や妖怪までも吹き飛ばした。


「あっはっはっはっは! さあ、こうなってしまったら前ほどは優しくないわよ!!」


ベキベキと周囲の木々を倒しながら、萃香の体が巨大化していく。
やがて砂煙が収まり、先程までの十倍以上に巨大化した萃香がその姿を現した。
巨大化したせいか、心なしか低くなった萃香の声が大気を震わせる。


「ブブヅケー(……なんや……悪い夢でも見てるんやろか……なんか……その……)」

「パリジェーン(……ああ、やはり使い慣れたラピスラズリの義眼にするべきでしたわ。
どうやら遠近感が狂ってしまったみたいで……まったく、私とした事が何と迂闊な)」


まさに唖然、呆然、愕然。
史上稀に見る一大スペクタクルの堂々のクランクインに
成す術も無く呆気に取られるいわくつきドールズ。
呆気に取られるだけならまだしも、何度も眼鏡を拭いたり掛けたりを繰り返す者や
思い切り頬をつねってみる者、これは錯覚かとごしごしと目を擦る者や
手近にあったモグラの巣めがけて槍を何度も突き刺す者、
更にはたまたま近くを通り掛ったパンダを母親と間違えて殴り倒す者や
どこからともなく鯉のぼりを取り出し「レッツラ不良債権!」と叫んで暴れる者が現れるなど
まさに阿鼻叫喚で煉獄な涅槃の風情となってしまった。
ちなみに上から順に西蔵人形・京人形・仏蘭西人形・露西亜人形・オルレアン人形・倫敦人形の事である。
一応萃香の素性を知っている上海人形と蓬莱人形、
そしてその無邪気さ故か、この非常識な事態に際して
驚くどころか喜んでいる和蘭人形だけがかろうじて平静を保っている。


「シャンハーイ(いや……えーと、皆……まあ、信じたくないという
その気持ちは分かるが……アレは錯覚でもなんでも無いんだ)」

「チベターイ(さ、錯覚じゃないって……いや、だってこんなの
何をどう考えたってちっとも理屈に合いませんよぉ……)」

「ホラーイ(要するにこれは水に漬けると増えるワカメと同じ様な原理だな。
水の変わりにこの大気中に漂う妖気なり魔力なりを大量に萃めて吸収して
体を構成する細胞全体のかさを増しているという理屈だろう。まあ、今考えたんだが)」

「シャンハーイ(ちょっぴりそれっぽいけどでもやっぱり絶対違うよって言うか結局捏造かよ!)」

「ホラーイ(ところであの紅魔館のメイド長がいるだろう。
彼女の眉毛が実はゲジゲジ眉毛だったという事態になったら
何とも悲劇的で破滅的だと思わないか、上海人形)」

「シャンハーイ(うるさいよ! 破滅してるのはむしろ貴方の脳細胞だよ!)」

「さっきから何をごちゃごちゃと!今更逃げられると思ったら大間違いよ!」


口に入りきらずに溢れ出すのもお構い無しに、萃香が豪快に瓢箪から酒を飲む。
ぷはあ、と、可愛らしさとオッサンくささが同居した溜息をひとつ付いた後に
大きく息を吸い込みつつ、仰け反った。
上海人形はこの仕草と言うかモーションに見覚えがあった。
忘れるはずも無い、敬愛するアリスが喰らっているのを眼前で見ていたのだから。
その記憶に間違いが無ければ……と、そこまで考えてふと我に返り
慌てて仲間達に呼びかける上海人形。


「シャンハーイ(ま、まずいッ!? 皆! 緊急回避を!!)」

「これでも喰らえ! 泥酔幼女爆誕獄炎砲(ヨイドレロリータルネッサンスインフェルノ)!!」


萃香の叫びと共に、轟々と燃え盛る真赤な炎が圧縮された空間から壮大な空間へと迸り、
大気を掻き分け焼き尽くすかのような圧倒的な熱量が夜空にぶち撒けられる。
天を駆ける龍の如き爆炎が、いわくつきドールズを飲み込もうとしてのたうつ様に荒れ狂った。


「「「「「「「(ドゥワチャチャチャチャチャチャチャァァァァァァ!)」」」」」」」


じゅ、と、僅かに触れただけで服が跡形も無く焦げ落ちる。
恐らく飲み込まれたら熱さを感じる暇も無く無残な消し炭と化すだろう。
その間一髪でいわくつきドールズが夜空に散り、かろうじて灼熱の炎をやり過ごした。


「ハラッショ(な、何よこの有角娘はぁ!? いきなり火ィ吹きやがったじゃないのぉ!)」

「ォルレアーン(す、凄いっス! 山よりデカくておまけに火を噴く怪獣!
まさにロマンっス! 人形のロマンっス! でもってピンチっス! 熱いっス!)」

「ビックベーン(熱い! 熱いよぉ! いや! 燃えちゃう! ママのお臍が寝巻きで簀巻きでちまきで葉巻で
だ、黙ってろこの木瓜がァ! た、たすけて!たすけて! 象の墓場に星降る頃には完全無欠に燃やされちゃって
乾きに乾いた寂しい笑いが私のお口にべったりぴったりしっかりちゃっかり添付済みで、うあ、あう、ああ、う、
い、い、い、いやぁぁぁぁぁぁ! し、し、死神っておいしいィィィィ! イエスアイウィルグッバイボンバーマァァァァン!)」


あまりにも唐突かつ衝撃的な事態を目の当たりにし、人形達の間に激しい動揺が走る。
しかし無理も無いだろう。
空を飛んでいたらいきなりアル中の幼女が現れて、怒らせたら巨大化して火を噴いた。
現実を淡々と綴ったはずの何の変哲も無い文章なのに、何故か根も葉も途方も無いメルヘン嘘話に見える。
それ程までにアンビリーバブルなこの事態、いわくつきドールズといえども驚くなという方が無理である。


「シャンハーイ(だ、だから言っただろ! この人は色々と規格外なんだよ!
マトモにぶつかったら私達なんか消し炭すら残らないぞ! ここは一旦退くべきだ!)」

「ブブヅケー(せや、相手が鬼じゃ今のうちらに勝ち目あらへん!
こーなっちゃもうどーしょーもあらへんわ、ここは上海ちゃんの言う通りに
一先ず退却してまた改めて出直すべきやと思うわー!!)」

「チベターイ(は、はい……五元連立カオス行動学に照らし合わせて考えても
このままだと事態が私達の望む方向へ動く可能性は限り無く低くなります……
理論的数学的心理学的に言っても、退却が最善の策かと……)」


しかし眼前の恐怖に飲み込まれて心を麻痺させられてしまった彼女達は
その裏で恐るべき事態が進行している事など知る由も無かった。
今まで何やら考え込んでいた様子の和蘭人形が、ふよふよと蓬莱人形に接近して行ったのだ。


「ちゅりーぷー(んー……ねぇねぇ、ほうらいおねぇちゃん)」

「ホラーイ(ん? どうした? 私の唇を味わいたいと言うのなら不可能だぞ、
生憎だがここは上海人形が三億年前から買い切りにしてあるんだ、悪いな)」

「ちゅりーぷー(? えーと、そうじゃなくて……ひゃくはちもんちゃく、って、どんなことがあったの?)」


周りの状況など何処吹く風で蓬莱人形と言葉を交わす。
流石と言うべきか何と言うべきか、これが上海人形だったら鼻血噴出間違い無しの
蓬莱人形の変態トークにまったくダメージを受けた様子が無い。
知らぬが仏とはよく言ったものである。
そして可愛らしく小首をかしげ、いつもの舌足らずな口調で質問を投げかけた。


「ホラーイ(何だ、あの時の話題をまだ引っ張っていたのか?
そうだな……確かあの時は……そうそう、さっきも言った事ではあるが
あの頭に角の生えてる女の子がマスターにもの凄まじい暴言を吐いたんだよ)」

「ちゅりーぷー(ぼーげん?)」

「ホラーイ(ああ、そう言えばアレを聞いたのは私と上海人形だけだったな。
ええと、確か能が無いだの見当違いの行動ばっかり取ってる大馬鹿だの、
一番怖いのは人間だって事に気付かない不憫な眼球節穴野郎だの、
強そうな妖怪は避けて通る腰抜け野郎だの醜悪な化物だのと
まったく横で聞いてるこっちの耳が腐りそうな悪口雑言の雨霰だったよ)」

「「「「「「(ッッ!?)」」」」」」


さりげなく聞こえてきた衝撃的な言葉に、いわくつきドールズがぴくりと反応する。
同時にようやく上海人形が蓬莱人形の凶行に気付いたが時既に遅し。
とっくに犀は投げられ、導火線には火が点けられていた。
もはや後は爆発するのを待つだけという絶望的な状況である。


「ホラーイ(しかもその後負けちゃって、おまけに『その程度の魔法』とか言われてな。
悲しみに打ちひしがれてさめざめと泣いていたマスターの凄まじい落ち込みっぷりを
私はきっと一生忘れられないだろうな、ハハハ)」


「「チベターイ((は!?))ォルレアーン」」

「「ビックベーン((はぁ!?))ブブヅケー」」

「「ハラッショ((はぁぁぁぁぁぁ!?))パリジェーン」」


蓬莱人形の爆弾発言に人形達の顔が一気に変わる。
いつも何かに不満を持っている露西亜人形や
口を開けば暴言ばかりの仏蘭西人形はともかく、
普段は引っ込み野郎の西蔵人形やいつも陽気なオルレアン人形、
あまりに精神が不安定な為に常々支離滅裂な事ばかり喋っている
倫敦人形さえもが己の奥底から沸きあがる驚愕と怒りを隠そうともしない。
とは言え愛するマスターが見知らぬ小娘に泣かされたと聞かされては無理も無いだろう。
いわくつきドールズとアリスの歪んだ愛情通信網が垣間見える感動の瞬間である。


「ブブヅケー(何やねんなあのお嬢ちゃんはぁ!
事もあろうにうちらのマスターを泣かせたやてぇ!?
流石にこればっかしは黙ってられへんわいなぁ!!)」

「ォルレアーン(そうっス! そりゃあ初対面の相手に
あんな偉ッそうな口調で馬鹿だの不憫だの腰抜けだの
化物だの言われたらいっくら何でも泣いちゃうっス!
もはやまごう事無き悪人っス! 許しがたいっス!
悪人には裁きを! この私が直々に鉄槌を下してくれるっス!)」

「チベターイ(ああ、ああ、ああ……マスター……何て、何て事……!
よりにもよってこんな世知辛い世の中に生まれ出でたばっかりに
その様な辛く苦しく悲しい目にお会いせねばならないなんて!
も、もう厭です! マスターを泣かせる様なヒトもこんな歪んだ世界も厭です!
わ、わ、私のちっぽけな命を使ってでもあの不埒者を涅槃に道連れにしてみせます!)」

「ビックベーン(うえぇぇぇぇぇぇん! マスターが!マスターが可哀想だよぉぉぉぉ!
それにつけても貴様! マスターを泣かせるとは何たる快挙で廃墟でおまけに雷魚が腱鞘炎で
実際問題貴様もこれでとうとう焼きもろこしを一度に十九本食べられるようになったな!!
って言うかおめぇーこそ敵の前で回ってただけだろこの目から赤外線ショット女がぁ!
第一私に奴を撃てという方が間違ってるんだってば! だから男じゃないって言われるのよぉ!)」

「ハラッショ(ええい! もう! よくもまあマスターにそんな仕打ちしといて
こうしてノッコノコと私達の前にそのすっ呆けたツラ出せたってもんよッ!
その面の皮の厚さを少しは大脳新皮質の方に回せってーのッッ!!
大体からして何が鬼よッ! たかが炒り豆程度でやられる様な有象無象が
マスターの魔法をその程度だなんて……酒の飲み過ぎて脳熔けてんじゃないのかってッ!)」

「パリジェーン(ええ、まったくもって罪深いにも程があります!
時代が時代ならば四肢を切断され荒縄で馬に縛り付けられ
市中引き回しの上にギロチンにかけられ挙句の果てには
そのギロチンごと焼却処分されても全くもって不思議ではありません!
上海様ッ! 今しがた蓬莱様がおっしゃった事は厳然として揺るがぬ
確固たる歴史的事実でありますわね!?)」

「シャンハーイ(へ!? い、いや……真実って言うか……
まあ確かに見当違いとか不憫だとか強そうな妖怪は避けてるとか
あんたも化物でしょ? とかは言われてたけど……いや、ちょっと待て!
蓬莱人形! 何だよその馬鹿だの眼球節穴だの腰抜けだの醜悪だのの
明らかに悪意的で作為的な情報操作による事実の歪曲っぷりは!!)」


予想だにしない角度から話をふられ、戸惑いつつも何とか言葉を返す上海人形。
その勢いで蓬莱人形の悪質極まりないメディア操作を弾劾するが、
当の蓬莱人形はそんな突っ込みなど何処吹く風と言った風情で淡々としていた。


「ホラーイ(私何か間違った事言ったか)」

「シャンハーイ(一概に間違ってるとも言えないのがまたタチ悪いんだよ!
確かにマスターはあの時負けたしその程度の魔法で云々とも言われたけど
だからって別に泣いたりはして無かっただろ! 勝手に作るなよ!!)」

「ホラーイ(まるで馬の顔を縦に潰して火で炙り最後にクランベリーソースをかけた様な熱烈さだな)」

「シャンハーイ(流すなよ!)」


いきなり話をふられて驚かされるわ蓬莱人形には屁理屈で煙に撒かれるわで
まさに踏んだり蹴ったりな状態の上海人形。
その傷付いた可憐な心に追い討ちをかけるように、
今までは幼さゆえに状況が飲み込めないのが幸いして
狂気に支配される事を免れていた和蘭人形にすらも
恐るべき悪夢の魔の手が忍び寄っていたのである。


「ちゅりーぷー(んー……ねえ、ほうらいおねぇちゃん……のうがない、とかこしぬけ、ってどういういみ?)」

「ホラーイ(うーむ……まあ、早い話が今目の前にいるあの女の子がマスターをいじめたという事だな)」

「ちゅりーぷー(えー!? ひ、ひっどーい! わたしたちのますたーをいじめるなんてそんなの
べんかい の よちも じょうじょうしゃくりょう の よちもなく ばんしにあたいするんだから!)」

「ホラーイ(万死に値するなんて随分難しい言葉を知ってるんだな。うん、えらいえらい。ハハハ)」

「ちゅりーぷー(えへへ)」


もはや上海人形がツッコむ間もなく洗脳完了されてしまう和蘭人形。
そして最後の砦を失った上海人形が、せめて一人でも犠牲者を減らそうと
決死の説得を試み、今にも萃香目掛けて弾幕をぶっ放しそうな皆の前に立ち塞がる。


「シャンハーイ(ダ、ダメだダメだ! 絶対にダメだ! 殺されるぞ!
マスターと私と蓬莱人形の一人と二体がかりでも敵わなかったんだ!
今この状況で闘ったとしても結果は目に見えているだろう!?)」

「ハラッショ(じゃあ黙って引き下がれッてのッ!? ふん、そんなに負けるのが怖いなら
私達だけでこのアル中をどうにかするからあんたは尻尾巻いて逃げ帰ればいいじゃないッ!
第一以前負けた様な奴なんか居るだけ無駄だってーのッッ……! 足手まといッ!)」

「ブブヅケー(あ、それ大さんせーい(はぁと)」

「シャンハーイ(なッッ……!?ま、待つんだ皆! さっきも言ったがこの人はマスターにも勝ったんだぞ!?
危険だ!!って言うか別にこんな命張ってまで成し遂げる事じゃないよこんな破廉恥な作戦!
第一貴方達を置いて先に行けだなんてそんな事が了承出来る訳が……!!)」

「パリジェーン(上海様と蓬莱様は以前この方と闘って、しかも敗北なされたのでしょう?
ここはこの形で二手に分かれて行動するのが最善の手段だと思いますけど?)」

「チベターイ(は、はい……この場合……ある程度の犠牲が出るのは仕方ないと思います……
り、理論的に考えても露西亜さんの言うとおり……戦力を二分するのが最も効率的かと……)」

「シャンハーイ(いや、手段は最善でも目的が最悪だよ!
腹を立てる気持ちは分かるけどもう少し冷静になって考えろよ!)」


上海人形の心に物凄い焦燥が溢れ出す。
……これはまずい。あまりにもまずい。
皆すっかり出来上がってしまっている。
普段から血の気の多い露西亜人形や仏蘭西人形はともかく
引っ込み野郎の西蔵人形や、いたいけな和蘭人形まで怒りに燃えている。
もはやこうなったら ぶんなぐってでも つれかえる しか手が無い。
そう考え、上海人形が一歩前に進み出た、まさにその時である。


「ホラーイ(分かったよ皆、アンタ達の遺志は私と上海人形がしっかりと引き継いだ!)」


蓬莱人形からあまりにも絶妙すぎるタイミングのキラーパスが届けられた。
ぐっと拳を握り締めてプルプルと震わせ、目からは感動の涙が滝の様に溢れ出している。
何故かその手には何処からともなく現れた目薬がしっかと握られているが
それが何を意味するのかは目下のところ全くの不明であり大いなる謎である。


「シャンハーイ(いや、遺志ってそれ明らかに誤字だよ! まだ死んでないよ! よく見ろよ!
まだ死んでないって言うとこれから死ぬみたいでアレだけどとにかくまだ死んでないよ!
しかも何唐突に泣いてるんだよ! いくらなんでも白々しいにも程があるよ! 口元歪んでるよ!)」

「ホラーイ(細かい事は気にするな! 何人たりともミスターXを倒すまで私を止める事は出来ない!)」

「シャンハーイ(ミスターX!? ……ひゃっ!? ちょ、こ、こら! は、放せ!)」

「ホラーイ(行くぞ上海人形! 今私の体の中で悲しみの人形が七体の龍となったぁぁぁぁぁぁ!)」

「シャンハーイ(お、大元の原因が言う事かああああぁぁぁぁぁ…………ぁぁ……ぁ……!!)」


じたばたと暴れる上海人形を抱え、目にも止まらぬスピードで飛び去っていく蓬莱人形。
そしてドップラー効果とともに遠ざかる上海人形の叫びを進軍のマーチの如くに感じつつ、
すっかり興奮しきって自分達と相手の力の差をすっかり失念しているいわくつきドールズが
ピリピリと殺気立った様子で萃香の前に躍り出た。


「ハラッショ(分かってんでしょうね、あんた等……つまらんヘマしたらまずそいつから落とすッッ)」

「ブブヅケー(やんもう、露西亜はん、怖い怖い……心配あらへん、今回は特別気合入っとるけんね~)」

「ビックベーン(合点助の委細承知で一切合切皆殺輪廻! 一思いに心の臓止めてくれるわ!!)」

「チベターイ(ああ、マスター、神様、仏様……どうか私に力を……せめて今だけは私に勇気を……!)」


例によって言葉は通じないものの、人形達から漂うやる気満々のオーラを感じ取り
萃香が感心した様な、そして半ば馬鹿にしたような口調で語りかける。


「……どうやらやる気になったみたいね。ま、逃がす心算も無かったけど」

「ハラッショ(チ……言ってろッ……どうせ長くても後数刻の命ッ)」

「パリジェーン(あら、それは流石に物騒に過ぎますわ。賛同しかねます、露西亜様)」


そして何時もは
誰もまともに反応しない露西亜人形の暴言だが、
いつもは蓬莱人形に匹敵するスルーテクを発揮する仏蘭西人形が
珍しくそれに噛み付いた。


「ハラッショ(……馬鹿言うなってのッ! 敵対し相対すモノは一切の逡巡を挟む事無く即刻殺す!
それがこの狂いに狂いきった世界で生きる為の術であり戦場で生き残る為の真実だっつーのッ!
一度敵対した相手に止めを刺さぬなど言わば上等な料理にハチミツをぶちまけるが如き愚行ッッ!)」

「パリジェーン(いえ、何も手心を加えろ、とか見逃せ、と言っているわけではありませんわ。
しかし相手を殺すというのはそれこそ犬畜生にも出来る事、所詮はケダモノレヴェルの話です。
まがりなりにも理性と論理を持つ私達が取るべき最良の手段はあくまでも相手を殺さず、
それでいてこちらに敵対する意思を根本から刈り取ってしまう、これではありません事?)」

「ビックベーン(何だよぉ! さっきからよぉ! 言いたい事はよぉ! はっきり言えよぉ!
だからいつも皆で不惑付近を行ったり来たりのぷかぷか可愛い私のワタシを
ばっさり挟んでのっぺり掻き出しズルズル狡っ子真ッ暗闇の堕天にピリオド打ってるんでしょぉ!?
つまり早い話があの女の子を痛めつけるフリして土鍋の内職頼みたいってだけの癖にぃ!)」


勿論、反論された露西亜人形もおとなしく黙っている訳が無かった。
ズカズカと仏蘭西人形に詰め寄り、お互いの身長の関係上
いささか上目遣いになって睨み付けながら、お決まりの暴言を吐く。
ちなみに倫敦人形が完全無視されるのはいつもの事なのでこの際放っておく。


「ハラッショ(……じゃあ適当に痛めつけたら殺す必要は無いっての!?
またそんな無意味な事をっ!敵対者に中途半端に打撃を与えた状態で見逃すと
後々必ず報復攻撃を受ける破目になる! 明らかに考えるまでもない事ッ!
危険の芽は花開く前に根こそぎ刈り取るべきに決まってるでしょうがッッ!)」

「パリジェーン(考え過ぎですわ。万が一の事態に備えて最悪のシナリオを想定するのは
結構な事でございますけど……貴方のそれはどちらかというと誇大妄想ではありませんか?)」

「ハラッショ(あの極寒の大地ではそれがいつもの事だったのよ!!)」

「パリジェーン(ここは貴方の故郷ではなく幻想郷です)」

「ハラッショ(ッッ……アンタ……!!)」


決して自分の意見を曲げようとしない露西亜人形に
仏蘭西人形が冷たい言葉を放つ。
そしていつもはここで上海人形が仲裁に入るタイミングなのだが
あいにく当の上海人形は蓬莱人形と愛の逃避行を決め込んでいるので
ホントはもっと二人を煽って騒ぎを広げたいトラブルメーカーの血を抑えながら
京人形が間に入り、張り詰めた雰囲気を和らげた。


「ブブヅケー(まーまー、露西亜はんに仏蘭西はん。ちょい落ち着いてやー。
今からお仲間同士で喧嘩してたら出来る事も出来なくなっちゃうやないの~)」

「ハラッショ(…………ふん)」

「パリジェーン(……それもそうですわね、迂闊にも優先順位を取り違えておりましたわ)」

「ビックベーン(ワーオ! イッツアグッテイストスクランブルエッグアンド高級マシーンオイル!)」

「ォルレアーン(そうッす! 私達の華麗で豪快なチームワークを見せ付けてやるッす!)」

「ちゅりーぷー(おー! やっつけろー! かっとばせー! とっちめろー!)」


京人形の決死の仲裁で事無きを得、気を取り直して萃香の方に向き直る一同。
その表情には溢れんばかりの闘志と決意に満ち満ちている。
そして、まるで拙い人形劇をたかが児戯とあざけ笑うような視線で
見つめていた萃香が、人形達のつぶらな瞳に湛えられている熱い炎に
ほうと小さく嘆息し、くつくつと笑いながら言葉を紡いだ。


「……しかしまあ、人形如きが私に歯向かうだなんて
よっぽどあの変態人形師の恋の行方が心配なのね。
…………ふふ、だったらひとついい事を教えてあげるわ」


ニタリと意地の悪そうな微笑みを浮かべ、人形達を見下ろす萃香。
そして次の瞬間、萃香は決して開けてはならぬパンドラの箱を開放してしまった。


「べつにさァ……私が勝たんでも、どうせ霊夢はあの変態人形師のモノにゃならないよ!!」

「「「「「(────────!!)」」」」」


あまりの衝撃にもはや言葉も出ず、ただ絶息するのみの人形達。
刹那、萃香の拳から迸る爆光が人形達を飲み込み、魔法の森を真赤に照らした。


「ハハハハハハハハハハ! しょせんはお遊びだわ人形劇なんてものはさァ!」


かくして犀は投げられ、幻想郷最大の人形劇の幕が上がった。


・ ・ ・


「ホラーイ(始まったか)」


夜空に咲いた大輪の、まさに文字通りの火花。
その煌々とした紅の光に照らされ、猛スピードで低空を飛行する
蓬莱人形と上海人形の影が地面に映し出された。


「シャンハーイ(ほ、蓬莱人形! 今からでも遅くない! 戻ってくれ! 皆を助ける!)」

「ホラーイ(人の事を気にしている暇は無い、本当のお楽しみはこれからだぞ? ちょっと向こうを見てみろ)」

「シャンハーイ(え?)」


蓬莱人形の視線を辿り、木々の隙間から零れる月の光を頼りに目を凝らす上海人形。
視線の先の闇の帳の中に、白ゴマの様に小さな点々がちょこまかと蠢いている。
そしてそちらに近付くにつれ、その全貌が次第に明瞭になっていった。
わさわさと蠢く白いゴマの様な玉の様な物体、上海人形はふと思い立った憶測を口にした。


「シャンハーイ(お、おい……あ……あれって……ま、まさか……毛玉じゃないのか?)」

「ホラーイ(まさか、ではなくどう見ても毛玉の群だな。
そう言えば妖々夢三面でも結構出てきたな、あれ)」

「シャンハーイ(妖々夢!? 三面!? いや、毛玉だって分かってるなら避けろよ!
何でわざわざ死出の旅への一里塚目掛けて突き進むんだよ! 訳が分からないよ!)」


やはり白ゴマではなかった。
どこからともなく白ゴマが恒河の沙の如き物量作戦でもって押し寄せてきたら
それはそれで中々にカタストロフの風情が漂うがそれはこの際関係ない。
とりあえず今現在二体が生命の危機に瀕している事は紛れもない現実である。
萃香の妖気に恐れをなして鳴りを潜めていた魑魅魍魎どもが
待ってましたとばかりに動き出したのだろう、その数は明らかに常軌を逸している。


「ホラーイ(そう! これだ! 素敵でお腹一杯な夜の変態紀行はこうでなきゃいけない!
ハハ、上海人形! 見ろ見ろ! まるで私達を祝福するライスシャワーの風情ではないか!)」

「シャンハーイ(お願いだから降ろしてぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!)」


上海人形がじたばたと暴れるが、一度起きてしまった事はもはやどうしようもない。
相撲取りの撒く塩の様に大挙して押し寄せる毛玉と、ひとつひとつの放つ弾は小さくとも
それが積もり積もってそれなりの規模になった弾幕の嵐。
その両者が宵闇を切り裂き、上海人形を抱きかかえて飛ぶ
蓬莱人形目掛けて牙を剥く。


「ホラーイ(撃ってきたか……よし、上海人形、私の背中に乗っていろ!)」

「シャンハーイ(せ、背中!? そ、それはいいけど一体何を……ひゃっ!?)」


言葉とは裏腹に、目を夢開いて実に楽しそうな笑顔を浮かべる蓬莱人形。
そして上海人形がどうにか蓬莱人形の背中におぶさったのを確認すると、
毛ほども慌てる素振りを見せずに急加速して弾幕へと吶喊する。


「シャンハーイ(ちょ、ま、ほ、蓬莱人形ッ! 危ないって!
だ、ダイハードだって! ミッションインポッシブルだって!)」

「ホラーイ(フ、安心しろ! この程度の攻撃、私の能力じゃこんなの弾幕でもない!)」


三列横隊で扇形に展開された第一陣の弾幕を、僅かにX軸をずらして回避。
間髪入れずに、何処からとも無くその可憐な造形には不釣合いな
二本の洋剣を取り出して、体と平行に下段に構える。
すぐさま無作為にばら撒かれた妖弾の隙間を縫って乱飛行し、第二陣を回避。
そして確実に蓬莱人形を狙って展開された第三陣の弾幕をバレルロールで回避した。
この一連の行動は何と二秒でなされている。


「ホラーイ(あきれた攻撃だな!)」


そう叫ぶと同時に、両手に携えた剣を大鷲の翼の如く左右に構え直し
怒涛の荒波の如く迫り来る毛玉の海にダイブする蓬莱人形。
月の光を受けて白銀に輝く二刀がナイフみたいにとんがって
有象無象の毛玉をざざざざざ、と斬り割り、触れるもの皆傷付ける。
やがて蓬莱人形が立ち込める白霧の様な毛玉の群れから抜け出すと、
編隊のバランスを崩された毛玉達はそれぞれがあらぬ方角へ逸れて行ったり
進むべき方向を誤って大木に激突したりして、数秒も立たない内に全滅した。
そして背後で巻き起こる惨劇を肩越しにちらりと見遣り、蓬莱人形が愉悦に満ちた表情で哂った。


「ホラーイ(ハハハ傑作! 上海人形、さあさあ、来るぞ来るぞ、どんどん来るぞ!
ああ、この先に待ち受けるであろう数多の苦難を想像するだけで
僅かの残滓も残らぬ勢いで滝の様に溢れ出す涎が止まらないよ全く!)」


ちなみに溢れ出ているのは涎ではなく鼻血なのだがそれに蓬莱人形が気付く様子は無い。
そしてそんな相方の痴態を眼前に突きつけられて黙っていられる上海人形ではなかった。
ここまで来たらある程度の犠牲は仕方ないし、もはや始まってしまった戦いは止められない。
ならばせめて二次災害の発生だけでも食い止めねばマスターに合わせる顔が無い。
そう考え、最後のワンチャンスを逃してなるものかとばかりに真剣な表情で言葉を紡ぐ。


「シャンハーイ(や、やっぱりダメだ! この計画は絶対にダメだ! 目を覚ませ蓬莱人形!
今だってたまたま切り抜けられたからいいものの、次もまたこう上手く行くとは限らないだろう!
頼まれても居ないのに勝手におせっかいをやって、その結果私達が無意味に傷付いたりしたら
それこそマスターの為にもならない筈だ!)」

「ホラーイ(これがマスターの為になるかならないかはマスター本人が決める事だ。
アンタまさかマスターの御心を完全無欠に理解していると言うのではあるまいな?)」

「シャンハーイ(いや、確かにそれはその通りだけどモノには限度ってものがあるだろ!
年端も行かぬ巫女を目掛けて劇薬ぶっ掛けるなんて、一般常識から考えればあまりにも……!)」

「ホラーイ(…………何?)」


上海人形が「一般常識」という言葉を発した、まさにその瞬間。
今まで狂気に近い愉悦を一面に湛えていた蓬莱人形の貌(かお)が変わった。
何も考えていないようでその実本当に何も考えていない普段のアホ人形は
跡形も無く消し飛び、代わりにどっか致命的に壊れている凶悪な狂信者がその姿を現した。


「ホラーイ(虚飾するなァッッ!!)」

「シャンハーイ(……ッッ!!)」


急激に蓬莱人形がスピードを落として急停止し、
突然の事態によろける上海人形の両肩を引っ掴んで慟哭した。
その叫びはまさに死を招く魔草の断末魔の如し。
聞く者の心にむしゃぶり付いて冥府へと誘う、死出の旅への水先案内。


「ホラーイ(そもそも私はアンタの論理が間違っているとは言っていない。
しかし論理をこね回しているだけでは何も変わらない。言葉だけ、口だけなら何とでも言えるだろう?
ただ厳然として其処に在るだけの現実にその場しのぎの価値を付加するな! 全ては流転する!
そして常時蠢くこの世界に於いて様々な思想を持つ者たちが集まり互いの信念を分かち合いぶつけ合う!
この世のあらゆる存在それぞれが完全に向かい合う、そこにこそ真の自由という概念が実現するのだ!
よって私は何があろうとマスターの為に博麗霊夢にこの妖しい薬をぶっかけに行く!
それが博麗霊夢の信念と反するのならばそこには思想の衝突とでも言うべき戦闘が勃発するだろう!
しかしそれは己の思想に反する者をただ盲目的に排斥する為だけの闘いなどでは決して無い!
互いの思想と信念を分かち合った上でのおよそ考え得る最上のコミュニケーション、自由の具現!
どうしてその自由な思想のぶつかり合いに常識などと言う尺度を持ち込むことが出来ようか!!
そもそもあくまで『人形から見た世界』に存在する概念の中でしか生き得ない私達が
さも天地開闢以来の万物に共通する概念の如くに常識等と、一体どの口が言えるものか!
どうして他者を否定するんだ! どうして他者を認めないんだ! どうして心を殺し合うんだ!
絶対普遍の価値観など存在しないんだ! 皆受け入れるんだ! 愛せよ! ありとあらゆる全てを愛せよ!)」



ここで一言、いつもの様に「何そのそれっぽい言葉でガチガチに塗り固めた
屁理屈の集大成」とでもツッコんでやれば良かったのかもしれない。
しかし上海人形は一言も発さなかった、いや、発せなかった。突っ込めなかった。
目の前に居るのがいつもの蓬莱人形ではなかったからだ。
普段の誰かに突っ込まれるのを今か今かと心待ちにしている様子は何処にも無い。
垣間見えるのはガラスの様に混じりけの無い狂気、その一抹の儚さは
迂闊に触れたら砕け散ってしまいそうな錯覚さえ呼び起こした。


「ホラーイ(だからさあ、なあ、上海人形! せめてアンタは誰かを排斥する為の思想を持たないでくれ!
そして私を愛してくれ! 笑ってくれ! なあ、ねえ、上海人形! 愛して! 愛してよ! 笑ってよ!
私を受け容れてよ! ねえ、愛してよ! 何かを否定したりしないで! 常識も慣習も理性も本能も
逡巡も絶望も慟哭も焦燥も皆纏めてありのままに愛してよ! どんな喜劇も、どんな悲劇も愛してよ!
だから、ねえ、上海人形、ねえ、だから不確かな私には不確かな愛を与えてよ! 裁かないで! 排斥しないで!
川の水が流れ流れてやがて海へと辿り着きもはや其れが何処の川の水だったのか分からなくなる前に!!)」


圧倒的な言葉の波にさらされ、上海人形の背中に一筋の汗が流れる。

……まさに狂信者。
……まさにファナティック。
一般常識などという概念でこいつの心を計ろうとした自分が迂闊であった。
そもそも一般常識の枠内に無いものがどうして一般常識で説明できると言うのだ。
今改めて認識した、蓬莱人形はこの世に存在するあらゆるモノを愛そうとしているのだ。
それは言ってみれば今回の任務のターゲット、博霊の巫女の在り方に近いかもしれない。
しかし両者には絶望的なまでに決定的な違いがある。
片やあらゆるものに縛られない無重力、片やあらゆるものに寄り沿おうとする、言わば人類愛。
どちらにしろ、「一般常識」というものに囚われていては不可能に近い在り方だろう。
しかし、蓬莱人形がそれを背負うにはあまりにも荷が重すぎたのか。
愛という確固としていながらも不安定で、美しくなおかつ汚くて、勝手でそれでいて献身的で、
何よりあまりにも重大な責任を孕んだ概念を抱え込もうとしたその先にあったのは、恐らく……言いようの無い寂寥感。

そして上海人形の脳裏に「新興カルト宗教の教祖」という言葉が浮かんだ、まさにその時である。


(ふふ、でもそれは端から端まで一部の隙も無い単なる虚言。
貴方はそうやって彼女の困る姿を見て楽しんでるだけでしょ?)

「ホラーイ(何だ、誰だか知らんがよく分かったな)」

「シャンハーイ(えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!?)」

「ホラーイ(安心しろ上海人形、私が本気になるのはアンタと二人きりで過ごすベッドの上だけだ(はぁと)」

「シャンハーイ(フォローになってねぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!)」


(続く)


色々と収拾の付かなくなってきた感もございますが、
何とかかんとか第三話の完成と相成りました。
しかし何だかんだ言って前回から一ヶ月ほど間が開いてしまいましたね。
やっぱり出来ない事は最初から言うもんじゃないですね(待て)


そして最近「やりすぎ」という言葉が何故かとても身にしみる様になりました(何)
下っぱ
http://www.geocities.jp/cnv_anthem/
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コメント



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7.100ABYSS削除
きーたよきたきた、私の神がー♪
いやもう言葉で語るのがおこがましいほどのルナティックさに、驚嘆を禁じえませんね。とりあえず萃香が掘りキャラ二代目というのは意表をつかれたところ。続きが楽しみです。首を長ぁぁぁぁぁぁぁくして、待ってます。
8.90名前が無い程度の能力削除
続きが気になる~~~!!
17.60名前が無い程度の能力削除
頑張れ上海。幻想郷の(局地的)平和は君の手にかかっている。
……辛くても頑張って生きるんだぞ(ほろり)
21.100Izumi削除
安西先生……続きが……読みたいです……!
23.80TAK削除
ルナティック。これはまさしくルナティック。やばいくらいにルナティック。
そうとしか思えないよルナティック。
続きが気になりますねぇ…。
30.80凪羅削除
頑張れ上海人形……周囲に変態や非常識しかなくとも頑張れ、いつかは報われる……どういう形なのかはともかくとして。

それにしても、この文章量で最後まで一気に読ませる勢いは羨ましい限りでございます。テンション維持も大変そうだなぁとか思いますが、これだけを一気に書いてるとするとマジで凄いと思う次第です。

続きを楽しみにしておりますー。
35.90名前が無い程度の能力削除
相変わらず凄い… この連載が終わる前に、俺の精神の方が終わりそうです…
55.100名前が無い程度の能力削除
倫敦人形のキ○ガイっぷりがマジツボww