暑い…暑い…暑い…
頭が朦朧とする。
汗が止まらない。
目が廻る。
-夏の夜中に僕は行き倒れるのか?
ググッ。
「ハハ…こんなところで妖怪に食べられるならまだしも、暑さで死んだんじゃ、
幽霊のお嬢さんに笑われるな…」
着衣は汗でドロドロ、既に上半身がはだけている。
吐き出す息がそのまま霧になっているような感覚。ジメジメしたと言ったレベルを超えている。
森から流れてくる独特の空気が体中に纏わり付いて不快この上ない。
真夜中にこんな人気の無い、道ともいえない道を一人で歩く人間は、相当の急ぎか、相当の馬鹿者だ。
そしてこんな猛暑の中、ろくに妖怪に対する準備も厚さに対する準備もせずに歩いているこの僕、森近霖之助は…相当の急ぎで、相当の馬鹿者と認める。
そもそも僕がこの道を歩いている理由、大雑把にまとめると霧雨魔理沙が原因だった。
モノクロの魔法使い、霧雨魔理沙。僕がかつて修行をしていた霧雨邸の娘”だった”少女であり、現在は僕の営む小店のやっかいな冷やかし、もとい数少ない常連客である。”だった”というのも彼女、勘当されているのだ。理由は色々あるのだが…ダメだ、暑さで意識がぼやけてきている。あのイタズラ娘の可愛らしい顔が目の前にちらつき…いや、僕は何を考えているのだ。
仮にも師の娘、そしてまだ年端も行かない子供に何を不埒な…。
彼女がどうこうと言うわけではない。今は暑さで頭がやられているんだ。フフ…そうさ、可愛い顔にあんなことこんなことイタズラしようだなんて…ハッ!僕は今何を!?
それは夕刻まで遡る。。
昼下がりの暑さにやられ気味の連中を他所に、僕はクーラーの前に陣取り、のんびりと読書をしていた。
クーラーとは魔力を冷気に変換する装置だ、と僕は思っている。実際、夏だというのに非常に快適な午後を過ごせるから、仕組みなんて気にする必要もない。
まばらな客の対応以外はずっと読書に勤しみ、陽も傾き始めた頃。
「いらっしゃい…ん?」
普段は全く見ない客、いや客じゃない。この人は…確か。
「お久しぶりですね、森近さん」
気品のあるブラウンの髪が美しい、初老の女性。そう、思い出したこの方は霧雨邸の従者だ。名前は…忘れた。握手ついでに見ておくか。
「あぁ、お久しぶりです」
--- 話を聞けば、霧雨邸の主、つまり僕の師匠が、屋敷までと呼び付けているとのことだった。
僕が修行を終えて霧雨邸を出たのは、まだ魔理沙もまだ小さく覚えたての魔法で魔理沙の両親や僕を微笑ませくれるような頃だった。あれからもうずいぶん経つし、それ以降はろくに挨拶にも行っていない。そんな不肖な弟子の僕に何の用があるというのか。
「と言うわけで急で申し訳御座いませんが、御一緒願います」
わざわざ従者まで遣わすのだ。何か大変なことがあったのかもしれない。恩師の呼び出しを無碍に断る理由だってない。
「分かりまし…」
立ち上がりながら言いかけた承諾の言葉が終わる前に、彼女は僕の手を強引に引っ張り、箒にまたがらせて全力で霧雨邸へすっ飛ばした。この従者、魔理沙に箒の乗り方を教えた本人だ。老いてもスピード狂は変わりないようだ。
しかし、どうして霧雨の家に長く関わる者は、強引で真っ直ぐなのか。よく思う。前進に激しいバイブレーションを受けながら、不覚にもどこか懐かしい感覚に襲われる僕であった。
香霖堂と霧雨邸は、里を挟んで対極に位置する。
霧雨邸に到着する頃には、陽も暮れ始めて夕闇が広がり始めていた。
従者に導かれ屋敷に入り、そのまま主の部屋へと招き入れられた。
「よく来てくれたな」
「いえ、しばらくの間、お伺いもせず申し訳御座いません」
「なぁに、そんなことはどうでも良いさ」
豪快に笑いながら、師匠は言った。細かいことは気にしない。それも霧雨家の血である。
「ところでだ」
突然師匠はすっと正面を向き僕を正視した。
「店のほうはどうだ?」
「ええ、順調とは言えまえんが、何とか生活しております」
「そうか、聞く所によれば、貴重な品も置いているとのことだが」
ギクリ。
確かに僕の店には貴重な品も多少ある。売っていると言うよりはコレクションの意味合いが強い。それは、魔理沙が生活に困って僕に売りにきた物である。そして僕の言い値で取引は成立していた。
そう、つまり貴重品はほぼ霧雨家の物なのだ。
「え、ええ。ありますね」
言葉を短めに答える。余計なことは言わないほうがいい。しかし、主の言葉は意外なものだった。
「ふむ、いいマジックアイテムがあれば買ってやるぞ?昔のよしみでな」
あからさまではないが、安く売れよ、とのニュアンスがひしひしと感じ取れる。
「それでだ…その、なんだ」
主は僕から視線を外した。今までの豪快な口調が一変した。
「…ヤツも来ていると聞いているが…あー、どうだ」
まるで恋人の身体を案じる青年のような、ぶっきらぼうだが少しの照れと温かみのある声だった。
ヤツとは娘の魔理沙のことだ。どんな事情で勘当したとは言え、娘のことが心配でない父親はいないのだ。父親になったことのない僕にだって、それくらいは分かる。
「来てますよ。よく店のものを持っていきますよ」
「そ、そうか」
しばしの沈黙。”持っていきます”には反応もない。娘のことで頭がいっぱいなのか、持っていくのが普通と思っているのかは分からない。きっと両方なんだろう。
その後、近況の報告しろだの、魔法は上達したのかだのと、娘の話題を全く無かったかのようにとりとめもない話を続けた。
そんな会話がしばらく続いた後、
「…ん?もうこんな時間か。一緒に夕食にするぞ」
夕食に誘そわれた。というより強制とも取れる言葉。やはり血は争えないな。そう、魔理沙も同じなのだ。
強引でまっすぐ、でも、だから不器用。師匠も魔理沙もこういう所があるから憎めない。
丁度僕も腹が減ってきてもいたし、霧雨邸の御馳走にありつけるチャンス、捨てる理由もない。
「はい、ありがたく頂きます」
…待てよ?もしかして今日ここによばれたのは、この言葉のためだけだったんじゃないのか?
--- 暑い…暑い…暑い…暑い……
今日は厄日だ。むしろ自ら厄日にしてしまった。
あのまま霧雨邸に一泊させてもらえばよかった。行きと同じように兆速で送ってもらえばよかった。
何故しなかったか。
あのままいるとおそらく店にある貴重品についても尋ねられたろうし、送ってもらうにしても、やはり同じ結果だったろう。
思い出したがあの従者、屋敷の資産の管理が専門だったのだ。下手をすれば、主より酷いことになったかもしれない。途中で箒から落とされるなんて事がないとは限らない。
余談だが、名家に関しては、従者は主より危険だ。なぜなら従者は主人を例外なく愛しているからである。それはもう例外なく。色んな意味で。
気付いたのは屋敷を出てすぐだった。この無情とも言えるほどの暑さ。そして強引に連れ出された為、僕はマジックアイテムを一切持っていなかった。
つまり、暑さをしのぐ為の装備を一切持っていないのだ。このまま回れ右をして屋敷に戻ることも可能だが、先ほどの懸念が拭えない。考えている間も汗が滝のように流れ出ている。この暑さ、里を抜けるまでは騙し騙しいけるが、そこからが辛い。延々と細道が続き、博例神社近くの分かれ道を少し行ったところ、香霖堂までは一切民家も無い。
行くも戻るも、留まるも地獄。しょうがない、歩いて帰ろう。屋敷に戻れば、最悪死もありえる。暑さで死ぬことなんてよほどでなければ無いだろうし。夕刻も過ぎ、後は涼しくなるだけ、里を抜ける頃にはきっと寒いくらいさ。妖怪にとって食われることはあろうとも、暑くて死ぬことは無いだろう。
--- 甘かった。妖夢を可愛がる妖忌くらい甘い。ところで妖忌って誰だ?どうやら本格的に危険な状態になっている。名前すら聞いたことの無い(はず)の者が頭の中で、僕の愛しい半幽少女を鼻血を流しながらナデナデしている。
待て、僕の愛しい、って何だ。何度も言うように、僕は普通だ。少女趣味?勘弁してくれ。僕は普通だ…。
人間は死期が近づくと、普段押さえられていた欲求が高まる、と聞いたことがあるが、これが…それなのか。
いや、百歩譲って彼女達が可愛い少女で愛しいと思える存在だとは認めよう。が、それが己の欲望の対象になることはありえない。そう、あり得ないんだ。
それにしても里を抜けてからどれくらい経ったろう。半刻?少なくても一刻は経ったろう。
時計に目をやる…まだ半刻経ってない。まだまだ歩かないといけないのだ。里でもらった水筒の水も底をついている。
そういえば店を空けたままだったな…もし何か無くなっていることがあれば、魔理沙の仕業だろう。帰ったらお仕置きだ。
フフフ…いくら謝っても許さないぞ?従順に僕の言うことを聞くようになるまで、お仕置きだからね。
…本当に何を考えているんだ。お仕置きだなんて。僕は優しい男だ。盗った事は咎めない。いつもの事だし。だから盗った物のお代として、魔理沙、君を頂くよ。
「うぅ…そろそろ限界だ」
急に辺りがひんやりとした。森からの妄想と湿気と熱を帯びた空気は相変わらずだが、背中から涼しい風が流れてくる。
-誰かいる。
ググッ。
先程までの熱暴走も一気に収まり、後ろにいるであろう何者かに意識を集中する。
僕とソレとの間にはある程度の距離はある。ソレが歩いているならば足音が聞こえる範囲にはいない。飛んでいるならば、飛行用の羽音や放出される魔力が届く範囲にはいない。つまり近くにいないと言うことだ。
また、こんな気配を放つ人間はそうはいない。そしてその人間は、僕の知る限りこんな暑い日にわざわざ出歩くような無駄なことは決してしない。と言うことは、これは人間ではない。
いやいや、頭が冴え過ぎて余計なことを考えすぎた。ずばり言おう。後ろにいるのは…湖に住まう氷精だ。
名はチルノ。何故そこまで分かるか?愚問だ。熱帯夜にも関わらず出歩き、離れているにも関わらず僕に冷気を感じ取られてしまうくらい、無駄に冷気を放出する程度の能力と鈍さ。これだけで十分だ。
チルノは僕に仕返しでもするつもりなんだろう。以前、チルノが霊夢、魔理沙と弾幕勝負をして負けたとき、罰ゲームと称して香林堂に冷房として1日軟禁されたことがあった。逃げ出さないように霊夢特製の護符を貼り付け、三人で熱いお茶を啜るという贅沢を堪能した。ちなみに、神社や魔理沙の家でそれをしなかったのは、万が一チルノがキレて弾幕勝負になったとしても、被害を受ける心配が無いからだ。全く、僕の店を何だと思っているんだ。実際文句を言ったら、黙って場所を提供しろと言わんばかりの弾幕を放ってきた。店は滅茶苦茶、僕とチルノはボロボロにされてしまった。(全く、最近の若い子は何かと弾幕を撃ちたがる。いい迷惑だ)
チルノはあの性格だから、きっと復讐の機会を伺っていたにちがいない。だが、霊夢や魔理沙には敵わないのは明白。
ならば弾幕が苦手な僕ならば復讐も簡単だと踏んだのだろう。そして今日、こんな真夜中、足元もフラフラな僕を見つけて、
こっそり後ろから闇討ちと考えた。といったところか。
チルノは相変わらず帰路を進む僕の後ろを付かず離れず付いてくる。攻撃の機会を伺っているようだが、僕にとっても好都合だ。このまま家まで付いて来てくれれば、チルノの冷気のおかげで涼しいまま無事に帰れる。家に着いてしまえば、適当なマジックアイテムでチルノを返り討ちにするのも容易だ。
が、その考えは脆くも崩れた。
「そこのメガネ!!止まりな!!」
声をかけてきた。本当にこの氷精は頭が悪い。闇討ちなら一撃でしとめられる可能性だってあるのだ。正々堂々戦おうという意気込みであればまだ分かるが、そもそも例の件で弾幕勝負は圧倒的に弱いということをチルノも知っている。それで正々堂々もへったくれも無い。おそらく、いや確実に単なるバカなのだ。
僕はチルノの呼びかけに答えず、歩みを進める。
「聞こえないの!?とまれー!!」
それでも僕は無視を決め込む。
「このばかメガネ!!」
一気に周囲の空気が冷え始め、その根源が僕の行く先を阻んだ。
-湖上の氷精-
チルノ
「やぁチルノ。こんな時間にどうしたんだい?」
自分で言っておきながら、白白しすぎだろうと苦笑する。それをばかにされていると勘違い(実際にバカだと思っているが)したチルノは釣り目を更に吊り上げて怒っている。
「このメガネ!!いつまでも調子に乗ってんじゃないわよ!?」
怒ってる怒ってる。氷精は怒れば怒るほど冷気を放つ。さっきまで滝のように流れていた汗もすっかり引き、一気に気持ちいいを通り過ぎ、風邪でも引いた感覚に襲われる。
「今日は紅白も黒白もいないみたいだから、だれも助けてくれないわよ?」
「そりゃ参ったな。命だけは助けてくれ」
しょうがない、少しは付き合ってあげようか。僕は弱弱しい人間を演じ始めた。
「今更命乞い?弱い人間はすぐそれだね」
「そりゃそうだよ、目の前に強い氷精がいれば、誰だってそうなるよ」
「ふふん、そりゃそうね。じゃあ命だけは助けてあげる。でもそれじゃああたいの気も収まらないから、ちょっと痛い目にあってもらうよ」
バカもおだてりゃ木に登る。これで家までの冷房は手に入れたも同然。
霊夢と魔理沙二人にボロボロに時は、売り物を守るために敢えて被弾したんだ。チルノにはそれがわかっていない。本来の僕は、攻撃力が無い分を補って余りある、紳士的な弾幕回避術を持っているのだ。それはもう狂言でも舞うように。
チルノの弾幕を回避しつつ後退、家へ到着、マジックアイテムで撃退。クーラーの効いた部屋で快眠。今日も一日お疲れ様でした。よし、明日も元気に商売商売。完璧な作戦だ。
「アイシクルフォール!」
早速スペル発動か。だがそのスペル、余りに避けやすい。すまないねクーラー、もといチルノ。
「うわー!たすけてくれー」
半ば棒読みで作戦開始。しっかり弾に掠り、何とか避けている感じも演出する。
「すばしっこいヤツだね!おとなしく当たりなよ!!パーフェクトフリーズ!!!」
続けてこのスペルか。代わり映えしないな。弾速は速くなるものの、無駄にばら撒いた弾は無視。向かってきた弾を掠り、全弾フリーズした時点で一気に後退する。
「あー!ずるいぞー!!」
弾が止まれば逃げるのは簡単だ。つくづくバカな氷精だ。急いでフリーズを解除して弾を動かすが、僕のスピードには追いつかない。そう、逃げる相手に弾幕は効果が薄いのだ。どうせ撃つなら高速弾か追尾弾、なんて余計なことまで考える余裕すらある。
「待てー!」
弾幕を撃ってくるヤツが待てと言って、待つ相手がいるわけがない。
そうこうしているうちに、博霊神社近くの分かれ道まで来ている事に気付いた。ここまでくれば、もう大丈夫だ。
ググッ。
後はチルノを店に連れ込み、マジックアイテムであんなことやこんなことをして辱め…。
僕は何を考えているんだ。だから繰り返し言ってるじゃないか。僕にそういう趣味はない。暑さで頭が朦朧と…。
「?」
おかしい。何かがおかしい。今はチルノのおかげで暑くないじゃないか。朦朧とした意識も今じゃはっきりして、華麗な足取りで弾幕を回避までしている。そう、僕は普通だ。普通なのだ。
「じゃあ何でこんなことを考える?」
違う、違う!!必死に邪な考えを振り払おうとチルノに背を向けて、僕は全速力で走り出した。
「あー!待て待て待てー!!」
さっきまでの余裕は僕にはない。すぐ横を掠めていく弾は、避けているわけじゃない。偶然当たらなかっただけだ。
取り乱した僕には全く気付かず、相変わらずの弾幕を放ち続けるチルノ。
顔を上げると香霖堂の看板が見えている。店に飛び込み、強力なマジックアイテムでチルノを撃退、それで終わりだ。
最後の道のりも運良く、まさに運良くチルノの放った弾幕にも当たらず、僕は店内に飛び込んだ。そしてマジックアイテムを手にしてチルノを待ち構えた。
「このー!店ごと凍らせてやる!」
彼女は最上級の冷気を放ち店内に飛び込んで来た。そして店内を一気に凍らせる…はずだった。
凍ったのはチルノだった。正確に言えばチルノの表情だった。
「え、え、それ…」
言葉を詰まらせながら、僕の持っているマジックアイテムを指差す。正直、自分でも何を掴んだか確認していなかったが、相当強力なものを掴んでいるに違いない。チルノの表情がその答えだ。
そう思っていた。
だがチルノの表情は青ざめるのではなく…真っ赤になっていた。
「こ・・・こ・・・・この!!どどどど変態ーーーー!!!」
「え?」
「いやーーーー!!」
チルノは一目散に逃げ出した。その顔、既に半泣き。いい顔だ。
僕は、僕自身が握っているものを確認すべく視線を「ソレ」に移した。
ソレは…。
その夜、霖之助は独り萌え上がった。
「フフッ。今日も僕の可愛い仔猫ちゃんたちが来る頃だね。偶然ハレンチ素敵トラップも準備万端♪」
その日以来、こーりんは冷やかし、もとい常連客の少女たちに、偶然を装った萌えシチュエーションのトラップを仕掛けては、一人狂喜している。
「ごめんあそばせ?」
今日も早速獲物が来たと、萌え上がるこーりん。店に入った瞬間、偶然倒れている竹に足を引っ掛け、偶然水の張ってある桶を倒し、ずぶ濡れになる寸法である。
「あらあら、今回も巧い仕掛けね」
眼前に突然現れた美女、スキマ妖怪、八雲紫。入り口からここまで、スキマで移動したようだ。
「さすがはゆかりん」
「こーりんもなかなかよくてよ」
ニヤリとする二人。
「今日は藍をここへ使いに出してるから様子見に来たのよ。楽しみですわ」
「ゆかりんも悪ですなぁ。自分の式神が僕の素敵トラップにかかるのを見に来るなんて」
「フフフ、永く生きていると、こういう楽しみの一つや二つ、あってもいいじゃない?」
「フフッ。やっぱりゆかりんは悪ですなぁ」
「「フフ…ハハハハッ」」
--- それにしてもこーりんにここまでの適性があるとは紫自身も予想外だった。
萌え仲間を作る為、「紳士なお兄さんと狼お兄さんの境界」を少し弄っただけで、ここまでの萌え上がってしまうとは。
自分でやっといて軽く引き気味な紫であった。
(終)
…あの時以来、チルノは霊夢と魔理沙を見る度に、真っ赤になって逃げ出すようになった。
何を見たかは、チルノとこーりんだけの秘密である。
頭が朦朧とする。
汗が止まらない。
目が廻る。
-夏の夜中に僕は行き倒れるのか?
ググッ。
「ハハ…こんなところで妖怪に食べられるならまだしも、暑さで死んだんじゃ、
幽霊のお嬢さんに笑われるな…」
着衣は汗でドロドロ、既に上半身がはだけている。
吐き出す息がそのまま霧になっているような感覚。ジメジメしたと言ったレベルを超えている。
森から流れてくる独特の空気が体中に纏わり付いて不快この上ない。
真夜中にこんな人気の無い、道ともいえない道を一人で歩く人間は、相当の急ぎか、相当の馬鹿者だ。
そしてこんな猛暑の中、ろくに妖怪に対する準備も厚さに対する準備もせずに歩いているこの僕、森近霖之助は…相当の急ぎで、相当の馬鹿者と認める。
そもそも僕がこの道を歩いている理由、大雑把にまとめると霧雨魔理沙が原因だった。
モノクロの魔法使い、霧雨魔理沙。僕がかつて修行をしていた霧雨邸の娘”だった”少女であり、現在は僕の営む小店のやっかいな冷やかし、もとい数少ない常連客である。”だった”というのも彼女、勘当されているのだ。理由は色々あるのだが…ダメだ、暑さで意識がぼやけてきている。あのイタズラ娘の可愛らしい顔が目の前にちらつき…いや、僕は何を考えているのだ。
仮にも師の娘、そしてまだ年端も行かない子供に何を不埒な…。
彼女がどうこうと言うわけではない。今は暑さで頭がやられているんだ。フフ…そうさ、可愛い顔にあんなことこんなことイタズラしようだなんて…ハッ!僕は今何を!?
それは夕刻まで遡る。。
昼下がりの暑さにやられ気味の連中を他所に、僕はクーラーの前に陣取り、のんびりと読書をしていた。
クーラーとは魔力を冷気に変換する装置だ、と僕は思っている。実際、夏だというのに非常に快適な午後を過ごせるから、仕組みなんて気にする必要もない。
まばらな客の対応以外はずっと読書に勤しみ、陽も傾き始めた頃。
「いらっしゃい…ん?」
普段は全く見ない客、いや客じゃない。この人は…確か。
「お久しぶりですね、森近さん」
気品のあるブラウンの髪が美しい、初老の女性。そう、思い出したこの方は霧雨邸の従者だ。名前は…忘れた。握手ついでに見ておくか。
「あぁ、お久しぶりです」
--- 話を聞けば、霧雨邸の主、つまり僕の師匠が、屋敷までと呼び付けているとのことだった。
僕が修行を終えて霧雨邸を出たのは、まだ魔理沙もまだ小さく覚えたての魔法で魔理沙の両親や僕を微笑ませくれるような頃だった。あれからもうずいぶん経つし、それ以降はろくに挨拶にも行っていない。そんな不肖な弟子の僕に何の用があるというのか。
「と言うわけで急で申し訳御座いませんが、御一緒願います」
わざわざ従者まで遣わすのだ。何か大変なことがあったのかもしれない。恩師の呼び出しを無碍に断る理由だってない。
「分かりまし…」
立ち上がりながら言いかけた承諾の言葉が終わる前に、彼女は僕の手を強引に引っ張り、箒にまたがらせて全力で霧雨邸へすっ飛ばした。この従者、魔理沙に箒の乗り方を教えた本人だ。老いてもスピード狂は変わりないようだ。
しかし、どうして霧雨の家に長く関わる者は、強引で真っ直ぐなのか。よく思う。前進に激しいバイブレーションを受けながら、不覚にもどこか懐かしい感覚に襲われる僕であった。
香霖堂と霧雨邸は、里を挟んで対極に位置する。
霧雨邸に到着する頃には、陽も暮れ始めて夕闇が広がり始めていた。
従者に導かれ屋敷に入り、そのまま主の部屋へと招き入れられた。
「よく来てくれたな」
「いえ、しばらくの間、お伺いもせず申し訳御座いません」
「なぁに、そんなことはどうでも良いさ」
豪快に笑いながら、師匠は言った。細かいことは気にしない。それも霧雨家の血である。
「ところでだ」
突然師匠はすっと正面を向き僕を正視した。
「店のほうはどうだ?」
「ええ、順調とは言えまえんが、何とか生活しております」
「そうか、聞く所によれば、貴重な品も置いているとのことだが」
ギクリ。
確かに僕の店には貴重な品も多少ある。売っていると言うよりはコレクションの意味合いが強い。それは、魔理沙が生活に困って僕に売りにきた物である。そして僕の言い値で取引は成立していた。
そう、つまり貴重品はほぼ霧雨家の物なのだ。
「え、ええ。ありますね」
言葉を短めに答える。余計なことは言わないほうがいい。しかし、主の言葉は意外なものだった。
「ふむ、いいマジックアイテムがあれば買ってやるぞ?昔のよしみでな」
あからさまではないが、安く売れよ、とのニュアンスがひしひしと感じ取れる。
「それでだ…その、なんだ」
主は僕から視線を外した。今までの豪快な口調が一変した。
「…ヤツも来ていると聞いているが…あー、どうだ」
まるで恋人の身体を案じる青年のような、ぶっきらぼうだが少しの照れと温かみのある声だった。
ヤツとは娘の魔理沙のことだ。どんな事情で勘当したとは言え、娘のことが心配でない父親はいないのだ。父親になったことのない僕にだって、それくらいは分かる。
「来てますよ。よく店のものを持っていきますよ」
「そ、そうか」
しばしの沈黙。”持っていきます”には反応もない。娘のことで頭がいっぱいなのか、持っていくのが普通と思っているのかは分からない。きっと両方なんだろう。
その後、近況の報告しろだの、魔法は上達したのかだのと、娘の話題を全く無かったかのようにとりとめもない話を続けた。
そんな会話がしばらく続いた後、
「…ん?もうこんな時間か。一緒に夕食にするぞ」
夕食に誘そわれた。というより強制とも取れる言葉。やはり血は争えないな。そう、魔理沙も同じなのだ。
強引でまっすぐ、でも、だから不器用。師匠も魔理沙もこういう所があるから憎めない。
丁度僕も腹が減ってきてもいたし、霧雨邸の御馳走にありつけるチャンス、捨てる理由もない。
「はい、ありがたく頂きます」
…待てよ?もしかして今日ここによばれたのは、この言葉のためだけだったんじゃないのか?
--- 暑い…暑い…暑い…暑い……
今日は厄日だ。むしろ自ら厄日にしてしまった。
あのまま霧雨邸に一泊させてもらえばよかった。行きと同じように兆速で送ってもらえばよかった。
何故しなかったか。
あのままいるとおそらく店にある貴重品についても尋ねられたろうし、送ってもらうにしても、やはり同じ結果だったろう。
思い出したがあの従者、屋敷の資産の管理が専門だったのだ。下手をすれば、主より酷いことになったかもしれない。途中で箒から落とされるなんて事がないとは限らない。
余談だが、名家に関しては、従者は主より危険だ。なぜなら従者は主人を例外なく愛しているからである。それはもう例外なく。色んな意味で。
気付いたのは屋敷を出てすぐだった。この無情とも言えるほどの暑さ。そして強引に連れ出された為、僕はマジックアイテムを一切持っていなかった。
つまり、暑さをしのぐ為の装備を一切持っていないのだ。このまま回れ右をして屋敷に戻ることも可能だが、先ほどの懸念が拭えない。考えている間も汗が滝のように流れ出ている。この暑さ、里を抜けるまでは騙し騙しいけるが、そこからが辛い。延々と細道が続き、博例神社近くの分かれ道を少し行ったところ、香霖堂までは一切民家も無い。
行くも戻るも、留まるも地獄。しょうがない、歩いて帰ろう。屋敷に戻れば、最悪死もありえる。暑さで死ぬことなんてよほどでなければ無いだろうし。夕刻も過ぎ、後は涼しくなるだけ、里を抜ける頃にはきっと寒いくらいさ。妖怪にとって食われることはあろうとも、暑くて死ぬことは無いだろう。
--- 甘かった。妖夢を可愛がる妖忌くらい甘い。ところで妖忌って誰だ?どうやら本格的に危険な状態になっている。名前すら聞いたことの無い(はず)の者が頭の中で、僕の愛しい半幽少女を鼻血を流しながらナデナデしている。
待て、僕の愛しい、って何だ。何度も言うように、僕は普通だ。少女趣味?勘弁してくれ。僕は普通だ…。
人間は死期が近づくと、普段押さえられていた欲求が高まる、と聞いたことがあるが、これが…それなのか。
いや、百歩譲って彼女達が可愛い少女で愛しいと思える存在だとは認めよう。が、それが己の欲望の対象になることはありえない。そう、あり得ないんだ。
それにしても里を抜けてからどれくらい経ったろう。半刻?少なくても一刻は経ったろう。
時計に目をやる…まだ半刻経ってない。まだまだ歩かないといけないのだ。里でもらった水筒の水も底をついている。
そういえば店を空けたままだったな…もし何か無くなっていることがあれば、魔理沙の仕業だろう。帰ったらお仕置きだ。
フフフ…いくら謝っても許さないぞ?従順に僕の言うことを聞くようになるまで、お仕置きだからね。
…本当に何を考えているんだ。お仕置きだなんて。僕は優しい男だ。盗った事は咎めない。いつもの事だし。だから盗った物のお代として、魔理沙、君を頂くよ。
「うぅ…そろそろ限界だ」
急に辺りがひんやりとした。森からの妄想と湿気と熱を帯びた空気は相変わらずだが、背中から涼しい風が流れてくる。
-誰かいる。
ググッ。
先程までの熱暴走も一気に収まり、後ろにいるであろう何者かに意識を集中する。
僕とソレとの間にはある程度の距離はある。ソレが歩いているならば足音が聞こえる範囲にはいない。飛んでいるならば、飛行用の羽音や放出される魔力が届く範囲にはいない。つまり近くにいないと言うことだ。
また、こんな気配を放つ人間はそうはいない。そしてその人間は、僕の知る限りこんな暑い日にわざわざ出歩くような無駄なことは決してしない。と言うことは、これは人間ではない。
いやいや、頭が冴え過ぎて余計なことを考えすぎた。ずばり言おう。後ろにいるのは…湖に住まう氷精だ。
名はチルノ。何故そこまで分かるか?愚問だ。熱帯夜にも関わらず出歩き、離れているにも関わらず僕に冷気を感じ取られてしまうくらい、無駄に冷気を放出する程度の能力と鈍さ。これだけで十分だ。
チルノは僕に仕返しでもするつもりなんだろう。以前、チルノが霊夢、魔理沙と弾幕勝負をして負けたとき、罰ゲームと称して香林堂に冷房として1日軟禁されたことがあった。逃げ出さないように霊夢特製の護符を貼り付け、三人で熱いお茶を啜るという贅沢を堪能した。ちなみに、神社や魔理沙の家でそれをしなかったのは、万が一チルノがキレて弾幕勝負になったとしても、被害を受ける心配が無いからだ。全く、僕の店を何だと思っているんだ。実際文句を言ったら、黙って場所を提供しろと言わんばかりの弾幕を放ってきた。店は滅茶苦茶、僕とチルノはボロボロにされてしまった。(全く、最近の若い子は何かと弾幕を撃ちたがる。いい迷惑だ)
チルノはあの性格だから、きっと復讐の機会を伺っていたにちがいない。だが、霊夢や魔理沙には敵わないのは明白。
ならば弾幕が苦手な僕ならば復讐も簡単だと踏んだのだろう。そして今日、こんな真夜中、足元もフラフラな僕を見つけて、
こっそり後ろから闇討ちと考えた。といったところか。
チルノは相変わらず帰路を進む僕の後ろを付かず離れず付いてくる。攻撃の機会を伺っているようだが、僕にとっても好都合だ。このまま家まで付いて来てくれれば、チルノの冷気のおかげで涼しいまま無事に帰れる。家に着いてしまえば、適当なマジックアイテムでチルノを返り討ちにするのも容易だ。
が、その考えは脆くも崩れた。
「そこのメガネ!!止まりな!!」
声をかけてきた。本当にこの氷精は頭が悪い。闇討ちなら一撃でしとめられる可能性だってあるのだ。正々堂々戦おうという意気込みであればまだ分かるが、そもそも例の件で弾幕勝負は圧倒的に弱いということをチルノも知っている。それで正々堂々もへったくれも無い。おそらく、いや確実に単なるバカなのだ。
僕はチルノの呼びかけに答えず、歩みを進める。
「聞こえないの!?とまれー!!」
それでも僕は無視を決め込む。
「このばかメガネ!!」
一気に周囲の空気が冷え始め、その根源が僕の行く先を阻んだ。
-湖上の氷精-
チルノ
「やぁチルノ。こんな時間にどうしたんだい?」
自分で言っておきながら、白白しすぎだろうと苦笑する。それをばかにされていると勘違い(実際にバカだと思っているが)したチルノは釣り目を更に吊り上げて怒っている。
「このメガネ!!いつまでも調子に乗ってんじゃないわよ!?」
怒ってる怒ってる。氷精は怒れば怒るほど冷気を放つ。さっきまで滝のように流れていた汗もすっかり引き、一気に気持ちいいを通り過ぎ、風邪でも引いた感覚に襲われる。
「今日は紅白も黒白もいないみたいだから、だれも助けてくれないわよ?」
「そりゃ参ったな。命だけは助けてくれ」
しょうがない、少しは付き合ってあげようか。僕は弱弱しい人間を演じ始めた。
「今更命乞い?弱い人間はすぐそれだね」
「そりゃそうだよ、目の前に強い氷精がいれば、誰だってそうなるよ」
「ふふん、そりゃそうね。じゃあ命だけは助けてあげる。でもそれじゃああたいの気も収まらないから、ちょっと痛い目にあってもらうよ」
バカもおだてりゃ木に登る。これで家までの冷房は手に入れたも同然。
霊夢と魔理沙二人にボロボロに時は、売り物を守るために敢えて被弾したんだ。チルノにはそれがわかっていない。本来の僕は、攻撃力が無い分を補って余りある、紳士的な弾幕回避術を持っているのだ。それはもう狂言でも舞うように。
チルノの弾幕を回避しつつ後退、家へ到着、マジックアイテムで撃退。クーラーの効いた部屋で快眠。今日も一日お疲れ様でした。よし、明日も元気に商売商売。完璧な作戦だ。
「アイシクルフォール!」
早速スペル発動か。だがそのスペル、余りに避けやすい。すまないねクーラー、もといチルノ。
「うわー!たすけてくれー」
半ば棒読みで作戦開始。しっかり弾に掠り、何とか避けている感じも演出する。
「すばしっこいヤツだね!おとなしく当たりなよ!!パーフェクトフリーズ!!!」
続けてこのスペルか。代わり映えしないな。弾速は速くなるものの、無駄にばら撒いた弾は無視。向かってきた弾を掠り、全弾フリーズした時点で一気に後退する。
「あー!ずるいぞー!!」
弾が止まれば逃げるのは簡単だ。つくづくバカな氷精だ。急いでフリーズを解除して弾を動かすが、僕のスピードには追いつかない。そう、逃げる相手に弾幕は効果が薄いのだ。どうせ撃つなら高速弾か追尾弾、なんて余計なことまで考える余裕すらある。
「待てー!」
弾幕を撃ってくるヤツが待てと言って、待つ相手がいるわけがない。
そうこうしているうちに、博霊神社近くの分かれ道まで来ている事に気付いた。ここまでくれば、もう大丈夫だ。
ググッ。
後はチルノを店に連れ込み、マジックアイテムであんなことやこんなことをして辱め…。
僕は何を考えているんだ。だから繰り返し言ってるじゃないか。僕にそういう趣味はない。暑さで頭が朦朧と…。
「?」
おかしい。何かがおかしい。今はチルノのおかげで暑くないじゃないか。朦朧とした意識も今じゃはっきりして、華麗な足取りで弾幕を回避までしている。そう、僕は普通だ。普通なのだ。
「じゃあ何でこんなことを考える?」
違う、違う!!必死に邪な考えを振り払おうとチルノに背を向けて、僕は全速力で走り出した。
「あー!待て待て待てー!!」
さっきまでの余裕は僕にはない。すぐ横を掠めていく弾は、避けているわけじゃない。偶然当たらなかっただけだ。
取り乱した僕には全く気付かず、相変わらずの弾幕を放ち続けるチルノ。
顔を上げると香霖堂の看板が見えている。店に飛び込み、強力なマジックアイテムでチルノを撃退、それで終わりだ。
最後の道のりも運良く、まさに運良くチルノの放った弾幕にも当たらず、僕は店内に飛び込んだ。そしてマジックアイテムを手にしてチルノを待ち構えた。
「このー!店ごと凍らせてやる!」
彼女は最上級の冷気を放ち店内に飛び込んで来た。そして店内を一気に凍らせる…はずだった。
凍ったのはチルノだった。正確に言えばチルノの表情だった。
「え、え、それ…」
言葉を詰まらせながら、僕の持っているマジックアイテムを指差す。正直、自分でも何を掴んだか確認していなかったが、相当強力なものを掴んでいるに違いない。チルノの表情がその答えだ。
そう思っていた。
だがチルノの表情は青ざめるのではなく…真っ赤になっていた。
「こ・・・こ・・・・この!!どどどど変態ーーーー!!!」
「え?」
「いやーーーー!!」
チルノは一目散に逃げ出した。その顔、既に半泣き。いい顔だ。
僕は、僕自身が握っているものを確認すべく視線を「ソレ」に移した。
ソレは…。
その夜、霖之助は独り萌え上がった。
「フフッ。今日も僕の可愛い仔猫ちゃんたちが来る頃だね。偶然ハレンチ素敵トラップも準備万端♪」
その日以来、こーりんは冷やかし、もとい常連客の少女たちに、偶然を装った萌えシチュエーションのトラップを仕掛けては、一人狂喜している。
「ごめんあそばせ?」
今日も早速獲物が来たと、萌え上がるこーりん。店に入った瞬間、偶然倒れている竹に足を引っ掛け、偶然水の張ってある桶を倒し、ずぶ濡れになる寸法である。
「あらあら、今回も巧い仕掛けね」
眼前に突然現れた美女、スキマ妖怪、八雲紫。入り口からここまで、スキマで移動したようだ。
「さすがはゆかりん」
「こーりんもなかなかよくてよ」
ニヤリとする二人。
「今日は藍をここへ使いに出してるから様子見に来たのよ。楽しみですわ」
「ゆかりんも悪ですなぁ。自分の式神が僕の素敵トラップにかかるのを見に来るなんて」
「フフフ、永く生きていると、こういう楽しみの一つや二つ、あってもいいじゃない?」
「フフッ。やっぱりゆかりんは悪ですなぁ」
「「フフ…ハハハハッ」」
--- それにしてもこーりんにここまでの適性があるとは紫自身も予想外だった。
萌え仲間を作る為、「紳士なお兄さんと狼お兄さんの境界」を少し弄っただけで、ここまでの萌え上がってしまうとは。
自分でやっといて軽く引き気味な紫であった。
(終)
…あの時以来、チルノは霊夢と魔理沙を見る度に、真っ赤になって逃げ出すようになった。
何を見たかは、チルノとこーりんだけの秘密である。
すごくおもしろかったです。
けど、一つ気になるところが・・・霖之助って人間でしたっけ?
チルノ・・・一体何を見た・・・
人間じゃない気も。
まさか蓬莱の薬かッ!
てゆーか香霖堂仕様のゆかりん可愛くない?
実は本物のこーりんは見たこと(読んだこと)がないのは内緒です。
最後のゆかりんは、有名絵師さんの「動物耳萌えゆかりん」がモチーフでした。
それと、チルノが見たものは、ゆかりん秘蔵のy(スキマ
いや、なぜか言わないといけない衝動に駆られただけですよ?
点数は点の説明どおりの意味でとってください