Coolier - 新生・東方創想話

常世の住人

2005/07/07 21:39:48
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「今日という今日こそは、お前を守りきってみせる。」

「…すまないけど、もうやめてくれない?」

「何を、お前が何と言おうと、お前は私が守る…お前は人だ。人なんだ。」

「人?そうだね。私は人だよ…永遠に。」

「なればこそ…私がお前を守ってみせる。」

「でももし…その痛みすら、私の欲するものであったとしたら?」

「そんな、馬鹿な…」

「変わらぬということは、恐ろしいことだよ。貴女が不毛と言う事も、私にとっては一つの慰みだ。」

「あの女に惑わされたのか!馬鹿なことを言うな、妹紅!」

「慧音、お願いだから…好きに、させて。」

「…!」

唇から血が滲むほどに噛み締め、指がひしゃげるほどに拳を握り固め

白沢はただ、涙を流す。

救えない、救えるわけがない。そんなことはわかっている。だが、今だけでも救いたい。

「…ありがとう、慧音。私は貴女のことが大好きだよ。だから…貴女には、ただ見ていて欲しい。」

「何故…」

「深入りしないで欲しい。深入りすれば…きっと貴女は私のことを諦めてしまうだろうから。」

「妹紅…」

「諦めないで、見捨てないで、私を…命ある限り、私を見ていて…」

「救いたい…」

「ごめん、我侭で。」

「謝らないでくれ…」

「ごめん、不毛で。」

なんと不毛な存在なのだろう。

終り無き命、果て無き命。

彼女にとって、死は終りではない。

今日が終われど明日は来ない。

明日になれば今日が来る。

10秒後は今であり今は10分後だ。

「…私は今夜も、輝夜と殺し合いをするよ。」

「やめてくれ…思いとどまってくれ…妹紅…」

「ごめん、ごめんなさい、慧音。」

「救いたい…お前を…」

「ありがとう…。貴女のおかげで、胸を張ってこう言えるわ。」

「…?」

「生きているってなんて素晴らしいんだろう…って」

「妹紅ぉ!!うああああああ!!」

「夜までまだ少しある。一人にしないで。抱きしめていて…」









「姫、そろそろお時間では。」

「そうね…あの子も首を長くして待っているわ。」

「では、私は湯の用意をして姫の帰りをお待ちしております。」

「ありがとう。毎度の事ながら、貴女は聞き分けがよいわね。妬けないの?」

「悔しいですよ。とても。私以外の者と、姫が殺し合いをされることが。」

「憎い?あの子が。」

「ええ、憎いです。ですが…」

「ふうん?」

「いつかは、私と姫と、そしてあれだけが残される日が来る。いつまでも、嫌ってばかりもいられないでしょう。」

「正解ね。そんな貴女が大好きよ、永琳。貴女も、こんな我侭な私の事を好きでいてくれる?」

「当然です、姫。我侭なのは、あの蓬莱人ですよ。図々しくも…」

「あら、求めたのは私よ?私は前々から、あの子に何度も何度も、諦めずに恋文を送り続けていたもの。やっと、今の関係になれた。」

「私も…なれるでしょうか?」

「もちろんよ。今度…そうね、あの子のお友達が逝ってしまった後、あの子をここに入れてあげましょう。そして毎晩…三人でしましょう。」

「ええ…楽しみです。」

「ふふ。それでは行ってくるわ。貴女とは、後でゆっくり…ね。」

「行ってらっしゃいませ、姫。」









「こんばんは、妹紅。待ちくたびれた?」

「こんばんは、輝夜。ちょっとな。」

「ごめんねぇ、永琳がうるさくて。」

「いいさ。私の方も似たようなもんだし。」

「ふふ。それじゃあ、早速しましょうか…」

「ああ。早く始めよう。夜が明ける頃にはあいつが世話を焼きに来る。できれば、その時には五体満足でいてやりたい。」

「ええ。私も永琳を待たせているし…じゃあ、早く、私を殺して。私を、終わらせて!」

「だめだ。この前は私がお前を殺したところで夜が明けたじゃないか。今度は、お前が私を殺すところからだ。」

「そうだったわね。なら早速、妹紅、殺してあげる!」

「ああ、早く…殺して!」

「少しだけ、さようなら、妹紅!」





罪を受け生れ落ちた土塊の人の形よ。

それを憐れんだ主の与え給うた最後の慈悲、それが浄化。

短い時しか生きれぬ人の、安易で単純な思考の中では、死と定義されているもの。

主の最後の救済。苦しみの果てに人は罪を贖うことを許されるというのに。

永遠に許されぬ者達の、主に見捨てられた者達の狂宴。

ただ、それを求めるには、あまりにも遅すぎた。





「ただいま、輝夜。どうやら、また駄目だったよ。」

「おかえり、妹紅。では次は、私を殺してちょうだい。今度こそ、変われるかも知れない…」





求めるように殺し合い、愛し合うように、殺し合う。

さあ、変わらぬ世界で、明日も明後日も、来年も再来年も、百年後も千年後も。

人が救われ妖怪が救われ、文明が消え星が死んださらにその先でも…今日を繰り返そう。

終末を誰よりも恐れ、終りなき孤独に狂い永遠に泣き叫び続ける者は…少しでも多いほうがいい。

───ようこそ、不変(かわれぬ)世界、常世へ。







「ただいま、妹紅。」

「おかえり、輝夜。じゃあ今度は…」




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コメント



0.1440簡易評価
2.80名前が無い程度の能力削除
旨く言葉に出来ません…
20.無評価おやつ削除
だつぼーっす……
24.10匿名削除
まず懺悔を。
このお話、最後の最後で笑いに転ずるオチがあるものとばかり勝手に思い込んでおりました。
まだかな、まだかなと思いつつあれ……終わり……?
だって輝夜と妹紅があんまりにも真面目すぎるから!
読んでる身としてはつい緊張をほぐしてしまいたくなる、そんなガチンコな二人に幸あれ。
25.無評価駄文を書き連ねる程度の能力削除
>>匿名さん
なんだか気分を悪くされてしまったみたいですみません。
そういえば処女作もこれほどではないですが、ちょっと救いのないヤツでしたね。
明るいのと交互に出してるので、次は明るいのいきます。
一度膨らんだ妄想は止まりませんでした。読んで戴いて、ありがとうございます。

>>おやつさん
ありがとうございます。その言葉をもらえただけでも投稿してよかったです!

>>名前が無い程度の能力さん
読んで戴いてありがとうございます。
28.100ke削除
かっこいい話ですね、
輝夜と妹紅は東方で1番かっこいいと思ってる自分にはたまりません。
蓬莱人のFLASHを思い出しました。