とある雨の日
気まぐれに傘をさして、一人の少女が歩いていた。
「この傘ってやついいわね♪パチェに感謝しなきゃ!」
さっき一人と示したが語弊があったかもしれない。
この少女は人ではないのだ。
吸血鬼・レミリア・スカーレット
(因みに、更に加えるなら歩いているのではなく正確には少し浮いて進んでいた。)
幼げに見えるが、人の寿命くらいならとうに越している。
ただ、理由は不明だが中身は見た目と変わらないままである。
「雨の日の散歩なんて何年ぶりかな?あの時は大変だったなー……」
あの時というのは幾らか前
チビッコ吸血姉妹が雨を無視して出かけた事があったのだ。
入り口近くで倒れていたのは言うまでもあるまい。
「でも今日はコレがある!よーしなんか探すぞー!」
と意気込んだ途端、視界に何かが映り込んだ。
普通の人なら気のせいだと思ったかもしれないが、彼女は夜の主である。
それの正体に気づくまでが早かった。
「なにかしらあの倒れてるやつは……人よね、あれ。」
心配になった彼女は、その『誰か』のもとまで駆けていく。
そして声を掛けた。
「おーい大丈夫?散歩ならまだしも雨の中寝ちゃうのはよくないと思うよ?」
少しからかってみたが返事もない。
体に触れてみるとひどく冷たい。
「ちょっとちょっと、コレって危ないんじゃ……」
今にもあたふたしそうになったとき、ふと
ぎゅー きゅるるー
……かわいい腹の虫が鳴いたのでとりあえず館まで運んでいった。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「んっ……?」
目が覚めた
つまり寝てたって事だろうか?
どうせ道の途中で倒れて寝てたんだろうな。
ただ……
「此処は?」
私は間違いなく『ベッド』の上にいた。
周りには高そうな調度品ばかり。
時計はなかったから時間はわからない。
そして、それよりも気になるのは……
「おっ、気がついた?ん?まだ寝てるの?おーい!」
ちっちゃい子が馬乗り状態でこっちを見てた。
「子供?えっと、お礼がしたいんだけど……」
取り合えずこの謎の空気を脱出するためにどいてもらう作戦にでた。
だがしかし、
「そんなのいいって、それよりお腹空いてるでしょ?ご飯にしましょ?」
作戦失敗
いや、成功なのか?
どちらにせよ私は何日かまともな食事にありついてないことを思い出した。
少し恥ずかしくなって自分のお腹辺りをさすってみる。
………?
暖かくてサラサラした感触
私が着ていた服はもっと硬かったはずだ。
「あっ、でもその前に服着なきゃね!まっててー」
タタターと駆けてく少女
「なぁにをしたぁーー!?あっ、まって行かないで」
バタンッ
扉を閉じて行ってしまった。
……毛布一枚身に包んでベッドで一人待つ。
……とてつもなく悲しいです。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「で、何でメイド服がいるのよ?」
「その子の服が汚かったから。」
「で、何で此処に来たのよ?」
「ほかに人が居なかったから。」
レミィが『メイド服を所望する!!』って入って来たのは数分前のこと。
それまでの経緯を簡単に聞いたところだ。
「あのね、こんな所に服があると思った?無いわよ勿論。」
「うー……じゃあドコにあるの?」
「服の管理って誰の仕事だったかしら?」
気になったので資料を探してきた。
『 紅魔館・仕事分担表
パチェ・図書館、地下室
フラン・庭、廊下
わたし・部屋、物置
その他・テキトーにやっといて 』
「……レミィ、あんたじゃない?」
「……どこだっけ?」
「さあ……」
うーーん、
うーん
うー
…ん
…
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
遅い
遅い遅い遅い
いつまで放置する気だろうか?
仕方がないから外に出てみよう。
私はタオルに身を包んで部屋を見回した。
「ナイフ……」
幸いそれはすぐに見つかった。
なんか持ってないとダメになりそうだった。
ただ、持ってるだけで安心する。
逆に言えば無いと不安でしょうがないのだ。
私はナイフを手に取りこの部屋を後にした。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「で、なんでフランを呼んできたの?」
「一人じゃ思い出しそうになかったから。」
「順番に部屋を探してくだけじゃないの。」
「そんなこと言わないでよフラン。」
結局図書館じゃ見つからなかったので今はフランと探していた。
庭の手入れは適当に切り上げさせた。
「大体お姉ちゃんがかってに人の服脱がしたり、人を拾ってくるからだよ。」
「だって冷たかったんだよ?お腹空かせてたんだよ?服は濡れてたんだよ?」
「お腹空いてるのはいけないわね。」(早く済ませたらご飯になるかな?)
「でしょ?でしょ!そうだよねー!」
うんうん、空腹はだめだよね。
さすが私の妹、わかっている。
「まあしかたないしこの部屋から順番に漁っていきましょ?」(ご飯♪ご飯♪)
「そうしよー」
このへやじゃないなー
お姉ちゃんこんなんが出てきたー
えっなになに…
じゃーん!!
おぉ…すご…
でしょ……
こ……
…ぶ…
………
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
しばらく歩いていて気が付いた。
最初は気づかなかったけど、この家は普通じゃない。
まず、この家は広い。
別に広いくらいならいくらでも、と思うかもしれない。
だがこの家はとても広い。
おそらく館とか城とかの方が近いだろう。
それともう一つ。
……窓がない。
まぁ、住んでる人からしておかしそうだがそれは置いておく。
なぜ窓がない?
少ないとかのレベルじゃない。
無い。
私はこういう造りの建物を知っている気がする。
はっきりとは思い出せないが、知っている。
たぶん入ったのは一度じゃないだろう。
……自分で気が付いていた。
覚えてないんだ。
自分が誰なのか、何をしてたのか、このお守りの意味も。
私いくつだったっけ?
思い出せないならしょうがない。
覚えてないからか簡単に割り切れた。
なら今するべきは?
私はまた服を探すことにした。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「見つかんない……」
「お姉ちゃんホントに覚えてないの?」
「なに?もうばてて帰ってきたの?」
「ぱちぇ~たすけてー。」
「ここから動かなくていいなら良いわよ。」
「服つくってよ、魔法とかでパーってできないの?」
「できるわよ。」
「「えっ」」
予想外な答えがかえってきた。
「えっ、できるの?」
「そんなことまでやれちゃうわけ?」
「一応はね、準備はいるけど。」
「はやく言ってよ!」
「私だって忙しいの。」
少し不満が残ったがしかたない。
ここはお願いさせてもらう。
「でっ、準備って?」
「私の専門じゃないからね、サイズと素材になんたらかんたら……」
「ふむふむ……」
「……お姉ちゃんわかってる?」
「うー?」
わかんないからメモしてもらった。
取り合えずこれを揃えなきゃ。
「じゃあわたしはあの子連れてくるから。」
「フランは材料!」
「私は準備、と。」
こうして、それぞれ客人のために動き出した。
一人は誰かの為に。
一人は暇つぶしに。
一人はご飯の為に。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
この時、あの時、選択を変えていたら
何か変わったのだろうか?
けど其れは本当に望む物じゃない。
だから……
from E.Y.S.M for R.S
気まぐれに傘をさして、一人の少女が歩いていた。
「この傘ってやついいわね♪パチェに感謝しなきゃ!」
さっき一人と示したが語弊があったかもしれない。
この少女は人ではないのだ。
吸血鬼・レミリア・スカーレット
(因みに、更に加えるなら歩いているのではなく正確には少し浮いて進んでいた。)
幼げに見えるが、人の寿命くらいならとうに越している。
ただ、理由は不明だが中身は見た目と変わらないままである。
「雨の日の散歩なんて何年ぶりかな?あの時は大変だったなー……」
あの時というのは幾らか前
チビッコ吸血姉妹が雨を無視して出かけた事があったのだ。
入り口近くで倒れていたのは言うまでもあるまい。
「でも今日はコレがある!よーしなんか探すぞー!」
と意気込んだ途端、視界に何かが映り込んだ。
普通の人なら気のせいだと思ったかもしれないが、彼女は夜の主である。
それの正体に気づくまでが早かった。
「なにかしらあの倒れてるやつは……人よね、あれ。」
心配になった彼女は、その『誰か』のもとまで駆けていく。
そして声を掛けた。
「おーい大丈夫?散歩ならまだしも雨の中寝ちゃうのはよくないと思うよ?」
少しからかってみたが返事もない。
体に触れてみるとひどく冷たい。
「ちょっとちょっと、コレって危ないんじゃ……」
今にもあたふたしそうになったとき、ふと
ぎゅー きゅるるー
……かわいい腹の虫が鳴いたのでとりあえず館まで運んでいった。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「んっ……?」
目が覚めた
つまり寝てたって事だろうか?
どうせ道の途中で倒れて寝てたんだろうな。
ただ……
「此処は?」
私は間違いなく『ベッド』の上にいた。
周りには高そうな調度品ばかり。
時計はなかったから時間はわからない。
そして、それよりも気になるのは……
「おっ、気がついた?ん?まだ寝てるの?おーい!」
ちっちゃい子が馬乗り状態でこっちを見てた。
「子供?えっと、お礼がしたいんだけど……」
取り合えずこの謎の空気を脱出するためにどいてもらう作戦にでた。
だがしかし、
「そんなのいいって、それよりお腹空いてるでしょ?ご飯にしましょ?」
作戦失敗
いや、成功なのか?
どちらにせよ私は何日かまともな食事にありついてないことを思い出した。
少し恥ずかしくなって自分のお腹辺りをさすってみる。
………?
暖かくてサラサラした感触
私が着ていた服はもっと硬かったはずだ。
「あっ、でもその前に服着なきゃね!まっててー」
タタターと駆けてく少女
「なぁにをしたぁーー!?あっ、まって行かないで」
バタンッ
扉を閉じて行ってしまった。
……毛布一枚身に包んでベッドで一人待つ。
……とてつもなく悲しいです。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「で、何でメイド服がいるのよ?」
「その子の服が汚かったから。」
「で、何で此処に来たのよ?」
「ほかに人が居なかったから。」
レミィが『メイド服を所望する!!』って入って来たのは数分前のこと。
それまでの経緯を簡単に聞いたところだ。
「あのね、こんな所に服があると思った?無いわよ勿論。」
「うー……じゃあドコにあるの?」
「服の管理って誰の仕事だったかしら?」
気になったので資料を探してきた。
『 紅魔館・仕事分担表
パチェ・図書館、地下室
フラン・庭、廊下
わたし・部屋、物置
その他・テキトーにやっといて 』
「……レミィ、あんたじゃない?」
「……どこだっけ?」
「さあ……」
うーーん、
うーん
うー
…ん
…
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
遅い
遅い遅い遅い
いつまで放置する気だろうか?
仕方がないから外に出てみよう。
私はタオルに身を包んで部屋を見回した。
「ナイフ……」
幸いそれはすぐに見つかった。
なんか持ってないとダメになりそうだった。
ただ、持ってるだけで安心する。
逆に言えば無いと不安でしょうがないのだ。
私はナイフを手に取りこの部屋を後にした。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「で、なんでフランを呼んできたの?」
「一人じゃ思い出しそうになかったから。」
「順番に部屋を探してくだけじゃないの。」
「そんなこと言わないでよフラン。」
結局図書館じゃ見つからなかったので今はフランと探していた。
庭の手入れは適当に切り上げさせた。
「大体お姉ちゃんがかってに人の服脱がしたり、人を拾ってくるからだよ。」
「だって冷たかったんだよ?お腹空かせてたんだよ?服は濡れてたんだよ?」
「お腹空いてるのはいけないわね。」(早く済ませたらご飯になるかな?)
「でしょ?でしょ!そうだよねー!」
うんうん、空腹はだめだよね。
さすが私の妹、わかっている。
「まあしかたないしこの部屋から順番に漁っていきましょ?」(ご飯♪ご飯♪)
「そうしよー」
このへやじゃないなー
お姉ちゃんこんなんが出てきたー
えっなになに…
じゃーん!!
おぉ…すご…
でしょ……
こ……
…ぶ…
………
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
しばらく歩いていて気が付いた。
最初は気づかなかったけど、この家は普通じゃない。
まず、この家は広い。
別に広いくらいならいくらでも、と思うかもしれない。
だがこの家はとても広い。
おそらく館とか城とかの方が近いだろう。
それともう一つ。
……窓がない。
まぁ、住んでる人からしておかしそうだがそれは置いておく。
なぜ窓がない?
少ないとかのレベルじゃない。
無い。
私はこういう造りの建物を知っている気がする。
はっきりとは思い出せないが、知っている。
たぶん入ったのは一度じゃないだろう。
……自分で気が付いていた。
覚えてないんだ。
自分が誰なのか、何をしてたのか、このお守りの意味も。
私いくつだったっけ?
思い出せないならしょうがない。
覚えてないからか簡単に割り切れた。
なら今するべきは?
私はまた服を探すことにした。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「見つかんない……」
「お姉ちゃんホントに覚えてないの?」
「なに?もうばてて帰ってきたの?」
「ぱちぇ~たすけてー。」
「ここから動かなくていいなら良いわよ。」
「服つくってよ、魔法とかでパーってできないの?」
「できるわよ。」
「「えっ」」
予想外な答えがかえってきた。
「えっ、できるの?」
「そんなことまでやれちゃうわけ?」
「一応はね、準備はいるけど。」
「はやく言ってよ!」
「私だって忙しいの。」
少し不満が残ったがしかたない。
ここはお願いさせてもらう。
「でっ、準備って?」
「私の専門じゃないからね、サイズと素材になんたらかんたら……」
「ふむふむ……」
「……お姉ちゃんわかってる?」
「うー?」
わかんないからメモしてもらった。
取り合えずこれを揃えなきゃ。
「じゃあわたしはあの子連れてくるから。」
「フランは材料!」
「私は準備、と。」
こうして、それぞれ客人のために動き出した。
一人は誰かの為に。
一人は暇つぶしに。
一人はご飯の為に。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
この時、あの時、選択を変えていたら
何か変わったのだろうか?
けど其れは本当に望む物じゃない。
だから……
from E.Y.S.M for R.S
話の展望が見えるところまで書いて欲しかったなというのが、正直な感想です。
「レミリアが誰かを拾ってきました」で終わってしまっているので、感想の書きようが無いというか。
でも、テンポがよくて、するすると読めるのは、いいですね。
良かれ悪かれ、その評価が可能なレベルに近づいてきていると思います。
とりあえず一つ。視点移動は多くの作家様が怖がるほどの、非常に危険なテクニックです。
入れ替わるたび、読者は混乱してしまいます。しかし今回は、すぐに分かるようになっていて良かったと思います。
でも、やっぱり不要な負担を読者に与えているように思えました。
もう一つ。続きモノは回避される読者様が多いようです。
ここでは沢山の作品が投稿されていますので、そっちを読むのに忙しく、いちいち完結するのを待ってられないんですね。
週刊誌でもそうですが、続きモノが生き残るためには、スピードが要求されます。
特に長編だと、投げてしまう作家様がほとんどです。
大変だと思いますが、頑張ってください。