Coolier - 新生・東方創想話

美しい調べは恋の糧。続けてくれ、その歌を。

2012/06/04 18:50:17
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魔理沙が目を覚ますと、見慣れない部屋の椅子に座っていた。
なぜか手が兎の絵柄のタオルでソフトに縛られている。

「…なんだ?誘拐にしちゃ、ずいぶんと…。」
「おめざめのようね。」
「お、お前は…。」

目の前には、背の高い女性。永遠亭の八意永琳だ。

「うふふ、貴方に用があってね。」
「…用ね。こんな方法で頼むんだ。ろくな用じゃなさそうだ。
内容によっちゃ、聞けないね。」
「意外と気骨があるのね。」
「おうよ。で、早く要件を話せ。」

急にもじもじとし始める永琳。
そして顔を赤くして、帽子をいじりながら、口を開いた。

「その用件だけど…貴方、魔法使いを名乗ってるのだから、魔法くらい使えるわよね?」
「……。」
「そ、その…チャームとか使えないかしら?」
「は…?」
「チャ、チャームよ、魅了。そ、そのつまり…。」
「恋の魔法か。」
「そ。そう!それよ!」
「それを、わ、私に教えなさい。タダ、とは言わないから…。」
「んー、誰に使うかは知らないがお前さんだったら、惚れ薬くらい作れるんじゃないのか?」

惚れ薬。その発言を聞いた途端、永琳はぷるぷると震え始めた。

「お…おい。大丈夫か…?」
「…ダメなのよ…。」
「え…?」
「ダメだったの!薬は蓬莱人には効かないなんて!なんで最初に気付かったの!」
「……」
「ああっ!あの時ほど姫様が蓬莱人であることがが忌々しいと思ったことはないわ!!」

そのままさめざめと泣き出す永琳。

しばらく永琳の嗚咽だけが響いていた。

「…いいぜ。」
「えぐっ…ひっく…え?」
「お前に、とっときの恋の魔法を教えてやる。」
「え、いいの!?本当!?」
「ああ。ただ、かわりっちゃあなんだけど、その惚れ薬、わけてくれないか?」
「あれ、貴方、恋の魔法が使えるんじゃないの?」

恋の魔法。その発言を聞いた途端、霧雨魔理沙はぷるぷると震え始めた。


「え…。あ、あの…大丈夫…?」
「…ダメだったんだ…。」
「え…?」
「ダメだっだんだよ!魔法使いに魔法を使おうとしたらばれるだろ!なんで最初に気付かったんだ!」
「……」
「ああっ!あの時ほどアリスが魔法使いであることをが忌々しいと思ったことはないぜ!!

そのままさめざめと泣き出す霧雨魔理沙。

しばらく魔理沙の嗚咽だけが響いていた。

「いいわ。」
「えぐっ…ひっく…え?」
「貴方に、惚れ薬を分けてあげる。」
「え、いいのか!?よし。じゃあ、今から家に帰って、持って来るぜ!」

そう言うと魔理沙は手のタオルをはらりととき、出ていった。


~・~・~・~・~・~・~・~



「…これだ。」

霧雨魔理沙は自宅の本棚の奥から一冊のノートを取り出した。
そして急いで中身を確認する。

「術式、呪文、ああ。間違いない。」

ノートをエプロンの中にしまう。

「ふぅ、思いの外早く見つかったな。もっと厳重に隠してたつもりだったんだが…。」

そしていそいそと外に出て、箒をひっつかんだ。

「よし…待ってろよ…。」





~・~・~・~・~・~・~・~




「……これね。」

永琳は永遠亭の秘密の薬戸棚からちいさな薬瓶を取り出した。
そしてラベル、中身を確認する。

「ラベルも、中身も間違い無いわね。」

瓶をポケットにしまう。

「すこし減ってたわね…。気のせいかしら…。」

そして椅子に座る。

「ああ…。早く魔理沙来ないかしら…。」




~・~・~・~・~・~・~・~



「待たせたな。」
「ええ。待ったわ。」

永琳は柔らかく微笑んだ。。
永琳はポケットから薬瓶を取り出した。
魔理沙はそれを受けとり、しげしげと眺める。

「これが、約束の薬。無味無臭で何にでも溶けるから、紅茶にでもいれるといいわ。」
「ありがとう。…でも私が紅茶なんか淹れたら疑われそうだ…。」
「うーん、あなたが家に行ったときにアリスの紅茶に入れるしかないわね…。」
「それも難しそうだ…。」

魔理沙はエプロンからノートを取り出した。
永琳はそれを受け取り、中を確認する。

「これが、約束の魔法だ。そのノートの通りにやれば、大丈夫だぜ。」
「ありがとう。…『ぎゅっと抱きしめて、耳元で呪文を…』って…」
「大丈夫だ。呪文が効けば問題無いだろ。」
「うう…。出来るかしら…姫様はよくスキンシップしてくるけど…私からなんて…」

しばらくお互い、薬とノートを眺めていたが、やがて二人は
固く握手をし、くるりと向き直って、それぞれの行動を始めた。



~・~・~・~・~・~・~・~



「邪魔するぜ。」
「あら、魔理沙じゃない。今日は随分大人しいのね。」
「お、大人しい?」
「ええ、普段は『アーリース!邪魔するぜー!』って感じで入ってくるのに。何かあった?」
「な、なにもないぜ…」
「そう、ちょっと待ってて。お茶を淹れるから。」

そういってアリスは台所に向かった。
アリスがティーセットを持ってくるまでの時間が永遠にも思える。
心臓がばくばくと打つ。

「お待たせ。」
「あ、ああ。頂くぜ。」

アリスがティーセットをテーブルに置く。
しかしどうやってアリスのカップに薬を入れようか。

「あ。」
「ふぇ!な、なんだよ!」
「そういえば慧音から羊羹を貰ったの。切ってくるわね。」
「お、おう!わ、私は羊羹が大好物なんだぜ!」
「そう?それは良かった。」

そういってアリスはまた台所へ向かった。
アリスが完全に台所に入ったのを見計らって…

さらさらと、アリスのカップに薬を入れ、いそいで自分のスプーンでかき混ぜた。

「おまたせ。」
「!!!!!」
「ど、どうしたのよ。」
「な、なんでもないぜ!」

アリスはテーブルに羊羹を置いた。

「(ああ、アリスがこれで紅茶を飲めば…)」

心臓が早鐘のように打つ。頭が熱くなる。

「魔理沙?ねえ?聞いてるの?」
「うぇ!?あ、聞いてるぜ!赤城が甲板に急降下爆撃を受けて炎上したんだろ…?」
「そんな物騒な話してないわよ…」
「え、えっと」
「魔理沙、なんだかあなた変よ?顔も真赤だし。」
「そ、そんなこと…」

その瞬間、ふわり、といい匂いがして、魔理沙の額につめたいものがあたった。
アリスが立ち上がり魔理沙の額に手を当てたのだ。

「わわわわわわ…」
「わ、すごい熱!大変!」
「え、え、え?」
「魔理沙、ほら、ベッドに入って。今お粥を作るわ。それまで寝てなさい。」

魔理沙からは見えなかったが、アリスは一瞬、くすりといたずらっぽく笑った。


~・~・~・~・~・~・~・~


「お話ってなあに?お小言はいやよ。」
「え、えとですね。」

永琳は呪文を心の中で復唱する。

「も、もう少しこちらにいらしてください。」
「?」

お互いの黒目がはっきり見える位置まで近づいた。

「(ああ…ここから姫様を抱きしめて呪文を唱えれば…)」

しかし、体が動かない。
心臓がばくばくと打つ。

「どうしたの?なんだか変よ?顔も赤いし。」
「な、なんでもありません!」

勇気を、ありったけの勇気を振り絞る。

「(姫様はいつもそのくらいしてくるじゃない!何をしてるの!)」
「永琳?ねぇ永琳?聞いてるの?」
「は、はいぃ!先輩が後輩を屋上に日焼けに誘ったんですよね…?」
「そんな汚い話してないわよ…」
「え、えっと」
「ねえ、本当に大丈夫?」
「そ、そんな私は何時もどおり…」

その瞬間、ふわり、といい匂いがして、永琳の額につめたいものがあたった。
輝夜が永琳の額に手を当てたのだ。

「わわわわわわ…」
「す、すごい熱よ!ど、どうしましょう!」
「え、え、え?」
「と、とりあえず楽にしてね!今なんとかするから!どうしましょう…蓬莱人が
病気になるなんて…」

永琳からは見えなかったが、輝夜は一瞬、くすりといたずらっぽく笑った。






~・~・~・~・~・~・~・~




さて、三月ほど前まで時間はさかのぼる。

アリスが目を覚ますと、見慣れない部屋の椅子に座っていた。
なぜか手が兎の絵柄のタオルでソフトに縛られている。

「ふうん、随分とご丁寧な誘拐ね。」
「お目覚めかしら?魔法使いさん。」
「あなたは…」

目の前にはきれいな黒髪の少女。彼女は確か、永遠亭の蓬莱山輝夜だ。

「実はね、貴方に用があってね。」
「…ろくな用じゃなさそうね。
まあいいわ。内容によっては聞いてあげなくもない。」
「うふふ、貴方、魔法は使えるわよね?」
「ええ。」





「じゃあ、魅了とか、恋の魔法は使えるのかしら?ちょっと
協力して欲しいの。もちろん、お礼はするわ。」
輝夜、恐ろしい子!


こんにちは。怪力線です。
前回とても暗い話を書いてしまったので
今回は落ちも山もないお気楽なお話でございます。やっぱりこういうのは書いてても楽しいですね。
怪力線
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コメント



0.940簡易評価
5.100名前が無い程度の能力削除
 ミミ、 ヾ==-   〃 ゞヾ,〃 ))`ー-==ニ二三  i   l  >>怪力線  |
  `ミミ、      !,-/´゛   ー'_,.-==-_`ー-==ニ l.  |  エ凡  |
 ミミ彡ミ三=-、   { ,'    、-=' 〃 ̄`)〉- `ー/ニ ノ  | ハ_ヽヽ|
        `   y__      ''   '-  ||||! {-/ /|       |
 ミミ、         〈,/ヽ      ' ー''``  |||  / /  |  |    |
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           /  /\ `ニ`    /   l /  |   ‐┼‐   ヽ
 彡三=''   _,.-'" /   / \    /   / /  |     '      \
9.100名前が無い程度の能力削除
永琳と魔理沙の百合か?とタグでした想像の斜め上をいった

似た者同士じゃないか…
楽しかったです
11.90奇声を発する程度の能力削除
可愛いなw
読んでて微笑ましかったです
12.80名前が無い程度の能力削除
そうすればお腹がいっぱいになって食べられなくなるだろうから
14.80名前が無い程度の能力削除
play on.
とりあえず、タイトルに釣られたシド星人がここに。

えーりんはヘタレなくらいが丁度良いね。そして姫様が全部分かってればなおよし。
魔理沙も同じく……本当に似たもの同士じゃないか。
次は是非ともレミパチュで。
16.90名前が無い程度の能力削除
お相手の方が一枚上手だったか…
18.100名前が無い程度の能力削除
序盤を読んでこの2人のタグに納得し、
あぁなんて面白い設定なのだろうと思った。

んで実際に読んでみて
予想通り、面白い話だったなと思った。
24.100名前が無い程度の能力削除
サッー!
27.無評価怪力線削除
こんにちは。恒例のコメント返信です。
5. 名前が無い程度の能力 さん
ガラスの仮面?ええ大好きですとも。
…完結?しらんなあ。

9. 名前が無い程度の能力 さん
えーまり…。
いや私はマリアリ一筋!

11.奇声を発する程度の能力 さん
では次回もハートフルなお話を…

12. 名前が無い程度の能力 さん
終盤まで音楽をほったらかしにして後悔することが
よくあります

14.名前が無い程度の能力 さん
ちなみに私はレミ咲主義者です。
レミパチュ…?

お話ががあるのでぜひトラックに乗って下さい。
行き先?涼しいところですよ。

16.名前が無い程度の能力さん

輝夜→求婚されまくり
アリス→魔女(ちょっとちがうか)
ともなればこのくらいは…

18.名前が無い程度の能力 さん
ありがとうございます。
「えーまりは恋の化学反応」なんてどうでしょうか。
「えーまりは俺のハートがオッベンハイマー」も捨てがたい。

24.名前が無い程度の能力さん
汚いコメントだなぁ!

今回もコメント、評価してくださった方、ありがとうございました。
さて、書きかけのお話がいくつかあるのでそれらを仕上げましょうか。
30.無評価名前が無い程度の能力削除
永琳が…… たまげたなぁ……
32.100名前が無い程度の能力削除
四人は幸せなキスをして終了