「さ~く~や~」
「御呼びでしょうか?」
眠そうで、そうでもない目をした吸血鬼が
仕事が片付いて、溜まるのをまっているばかりのメイドに
ぐだーっと話しかけていた。
「手伝って~」
「またですか……」
いきなり助けを求めている彼女は最近話を書くのに夢中らしい。
とは言え、好きなことが上手くいく訳もなく、
人の書いた物を読んでは、『私もいつか……』
…と、想いを馳せるばかりである。
「だって一人で書いてるとクチャクチャになっちゃうじゃない!」
「私そこまで文才はないのですが……」
「いいのよ、読みにくい~とかわかりにくい~とか教えてくれるだけでも有り難いのよ?」
「そんなものなんですか。」
「書けばわかるわよ……たぶん。」
『私だけなのかなぁ?』
そんな思考が脳裏をよぎったが忘れることにしよう。
恐れていたら良い作品は書けないのだ。
それでも恐いものは恐いのであって、
このチビッコ作家にはアシスタントが必要なのだ。
「うーん、ここではこんな感じで喋らせてぇ……っと!」
「そういえばお嬢様、少しお聞きしてもよろしいでしょうか?」
「ん?なにかしら?」
「お嬢様はなぜ執筆をしようと思ったのですか?」
「あぁそれね、うーんと……」
小さな夜の主は可愛らしく小首を傾げ、
しばらくの間考えを巡らせている様だった。
懐かしんでいたのか、単に忘れていただけなのかはわからないが。
「なんなのかしら?他の話に飽きたんじゃないんだけど、頭の中に『こんな話があったら……』みたいなのが沸いてくるのよ。」
「はぁ……」
「それで、最近になってもう我慢できなくなっちゃって……」
「なるほど。」
「んで、今こうして書いてるって訳よ。」
「つまりは思いつきだったんですね。」
「まぁね、それに私って想像力が良いでしょ?」
『あの能力』は果たして想像力なのだろうか?
と言うかそうだとするとまたややこしくなりそうだ。
「そうなんですか、聞かせてくださって誠に有り難うございました。」
「そんなに堅くなんなくてもいいのに、あと理由だけどね、昔の私達の事が書きたかったの。」
「それは何時のはなしですか?」
「いつかしらね?」
鋭い歯を覗かせてイタズラぽく笑う少女
「……わかりました、それでは続きを書きましょう。」
「そうね、なんか今日は調子が良い気がするわ。」
再び作業に戻る二人
カリカリと文章を綴る音が響きわたる。
「……こうして見ててくれる人がいつも居れば良いんだけどな……」
「私は何時でも側に居ますよ?」
「…そうね、ありがとう咲夜。」
そう言う彼女の声音は、なぜか少し悲しそうだった。
「ねぇ咲夜……この文章、フランとか美鈴でも読めるかな?」
「えっ?そうですね、きっと読めると思いますよ?」
「そう……きっと、きっと読めるわよね……」
幼げな少女の紅い瞳は、
堪えきれなくなった涙を流していた。
「泣いているのですか……?」
「泣いてなんか……なぃ…わょ…いじわる……」
「そうかもしれません。しかし、今は泣いてもいい……そんな気がしましたから。」
「誰がそんなの決めたのよ……」
紅い瞳はまだ濡れてこそいるものの
もう涙は溢れていなかった。
「お嬢様も強くなりましたね。」
「ごめん、ちょっとだけ待って。」
そう言ってメイドに背を向ける主人。
「やっぱりね、私は強くなんかないし、強くなれないのよ……」
「……そうだと思ってもそれを貫いた貴方は、十分強い人だと思うわよ。」
「もっとも、貴方が人より強くいたいなら知らないけどね。」
「主に向かって『貴方』は失礼じゃないかしら、咲夜?」
「それで良いんですよ、お嬢様。」
反対を向いている少女にその顔はわからなかったが
普段が完璧な彼女には珍しい
優しい笑顔が浮かんでいるように想えた。
「……今の貴方を見ていると、なんだか救われた気がするわ。」
振り返った先には
一番信じれる
最高の笑顔があった。
「理解できませんが?」
「そうね、『コレ』が出来たら二番目あたりに読んでもらおうかしら?」
「話が噛み合ってない気がしますが、一番はパチュリー様ですか?」
動かない大図書館の名をもつ七曜の魔女
パチュリー・ノーレッジ
おそらくこの館でなら一番本に詳しいだろう。
「パチェになら試作を読ませるわよ、それが完成してからの二番目。」
「なら一番目は誰に?」
「バカで弱くてトロくて、でも諦めなかった子……って言ってもわかんないでしょ?」
「はい、全く。」
わからなくて良かった。
わかったならそれでも良かった。
読んだら気付くかもしれない。
気付かないかもしれない。
「貴方が”気付け”なくても、その子が”気付け”ば良いのよ。」
「……なら本を完成させなくちゃ意味がないですね。」
「内容はわからない様にするから、手伝ってよね?」
「わかってますよ。」
部屋の中には二人の姿
小さい方の少女の双眸は
笑いながら濡れていた。
from E.Y.S.M for R.S
「御呼びでしょうか?」
眠そうで、そうでもない目をした吸血鬼が
仕事が片付いて、溜まるのをまっているばかりのメイドに
ぐだーっと話しかけていた。
「手伝って~」
「またですか……」
いきなり助けを求めている彼女は最近話を書くのに夢中らしい。
とは言え、好きなことが上手くいく訳もなく、
人の書いた物を読んでは、『私もいつか……』
…と、想いを馳せるばかりである。
「だって一人で書いてるとクチャクチャになっちゃうじゃない!」
「私そこまで文才はないのですが……」
「いいのよ、読みにくい~とかわかりにくい~とか教えてくれるだけでも有り難いのよ?」
「そんなものなんですか。」
「書けばわかるわよ……たぶん。」
『私だけなのかなぁ?』
そんな思考が脳裏をよぎったが忘れることにしよう。
恐れていたら良い作品は書けないのだ。
それでも恐いものは恐いのであって、
このチビッコ作家にはアシスタントが必要なのだ。
「うーん、ここではこんな感じで喋らせてぇ……っと!」
「そういえばお嬢様、少しお聞きしてもよろしいでしょうか?」
「ん?なにかしら?」
「お嬢様はなぜ執筆をしようと思ったのですか?」
「あぁそれね、うーんと……」
小さな夜の主は可愛らしく小首を傾げ、
しばらくの間考えを巡らせている様だった。
懐かしんでいたのか、単に忘れていただけなのかはわからないが。
「なんなのかしら?他の話に飽きたんじゃないんだけど、頭の中に『こんな話があったら……』みたいなのが沸いてくるのよ。」
「はぁ……」
「それで、最近になってもう我慢できなくなっちゃって……」
「なるほど。」
「んで、今こうして書いてるって訳よ。」
「つまりは思いつきだったんですね。」
「まぁね、それに私って想像力が良いでしょ?」
『あの能力』は果たして想像力なのだろうか?
と言うかそうだとするとまたややこしくなりそうだ。
「そうなんですか、聞かせてくださって誠に有り難うございました。」
「そんなに堅くなんなくてもいいのに、あと理由だけどね、昔の私達の事が書きたかったの。」
「それは何時のはなしですか?」
「いつかしらね?」
鋭い歯を覗かせてイタズラぽく笑う少女
「……わかりました、それでは続きを書きましょう。」
「そうね、なんか今日は調子が良い気がするわ。」
再び作業に戻る二人
カリカリと文章を綴る音が響きわたる。
「……こうして見ててくれる人がいつも居れば良いんだけどな……」
「私は何時でも側に居ますよ?」
「…そうね、ありがとう咲夜。」
そう言う彼女の声音は、なぜか少し悲しそうだった。
「ねぇ咲夜……この文章、フランとか美鈴でも読めるかな?」
「えっ?そうですね、きっと読めると思いますよ?」
「そう……きっと、きっと読めるわよね……」
幼げな少女の紅い瞳は、
堪えきれなくなった涙を流していた。
「泣いているのですか……?」
「泣いてなんか……なぃ…わょ…いじわる……」
「そうかもしれません。しかし、今は泣いてもいい……そんな気がしましたから。」
「誰がそんなの決めたのよ……」
紅い瞳はまだ濡れてこそいるものの
もう涙は溢れていなかった。
「お嬢様も強くなりましたね。」
「ごめん、ちょっとだけ待って。」
そう言ってメイドに背を向ける主人。
「やっぱりね、私は強くなんかないし、強くなれないのよ……」
「……そうだと思ってもそれを貫いた貴方は、十分強い人だと思うわよ。」
「もっとも、貴方が人より強くいたいなら知らないけどね。」
「主に向かって『貴方』は失礼じゃないかしら、咲夜?」
「それで良いんですよ、お嬢様。」
反対を向いている少女にその顔はわからなかったが
普段が完璧な彼女には珍しい
優しい笑顔が浮かんでいるように想えた。
「……今の貴方を見ていると、なんだか救われた気がするわ。」
振り返った先には
一番信じれる
最高の笑顔があった。
「理解できませんが?」
「そうね、『コレ』が出来たら二番目あたりに読んでもらおうかしら?」
「話が噛み合ってない気がしますが、一番はパチュリー様ですか?」
動かない大図書館の名をもつ七曜の魔女
パチュリー・ノーレッジ
おそらくこの館でなら一番本に詳しいだろう。
「パチェになら試作を読ませるわよ、それが完成してからの二番目。」
「なら一番目は誰に?」
「バカで弱くてトロくて、でも諦めなかった子……って言ってもわかんないでしょ?」
「はい、全く。」
わからなくて良かった。
わかったならそれでも良かった。
読んだら気付くかもしれない。
気付かないかもしれない。
「貴方が”気付け”なくても、その子が”気付け”ば良いのよ。」
「……なら本を完成させなくちゃ意味がないですね。」
「内容はわからない様にするから、手伝ってよね?」
「わかってますよ。」
部屋の中には二人の姿
小さい方の少女の双眸は
笑いながら濡れていた。
from E.Y.S.M for R.S
自分の書きたい物を書くのはとても大切です。書き始めたばかりなら尚更です。
そこから「書きたい」だけでなく、「認められたい」という気持ちが大きくなった時、自分の作品を読む人のことを想像してみてください。
自分の作品を客観視するのは難しいですが、書く上でとても大切なことです。これから頑張ってください。
レミリアが涙を流したあたりで、フランは既に死んでいる設定なのかとおもった。紅魔館といえば、実は未来の話でした、というのが印象に強いから。後にでてくる設定から、コレはソウジャナイとわかるけれど。読者に伝わってる情報を管理してるんなら要らないお節介だろうけど。
一行書いては一行の空白を入れる書き方は、創想話にはあまり無い書き方で、抵抗があった。
あふれ出る愛情を昇華しようという、チャレンジ精神を評価したい。
他の方の作品や、コメント欄を読むと上達に貢献すると、思います。
たくさん文章を読むと、文章をひねる能力も向上します。遅筆を直したい時はもう書きまくるしかないですけど。
とにかく、たくさん読んでください。ここはピンキリ揃ってますので、文章の良し悪しを知ることができます。
最後にひとつ。重要なのは、楽しむことです。本気の愛があれば能力なんて後からついてきます。これはマジ。
欲を言えば、もう少し分かりやすく書いてほしかった