Coolier - 新生・東方創想話

射命丸文と低速飛行縛りの日々

2012/05/11 20:33:42
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◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆
【射命丸文と高速飛行依存症】

 射命丸文は上機嫌で大気を切り裂き、妖怪の山の上空を飛行していた。
「る~ら~ら~ら~らら~♪ る~ら~ら~らら~♪ らら~ら♪ る~ら~ら~ら~ら~♪」
 鼻歌を歌いながら、遙か遠くに沈み行く夕日を眺める。
 ほろ酔いで熱い頬に、冷えた風が堪らなく心地いい。
 博麗神社に寄った際、萃香の酒に付き合わされたのだが、これがまた実に美味であった。何でも、新しく生まれたばかりの品種の酒虫によるものだそうで、まだあの酒を飲んだことのある者はあまりいないらしい。
 萃香曰く評判は上々で、これから先遠くない間にその酒虫も量産されるだろうという話だったが、それが実に待ち遠しい。酒を飲むまでは、長く付き合わされるんじゃないかと心配したが、稀少なために量が少なくてあまり飲めなかったのが本当に残念だったくらいだ。
 こんなにも美味しいお酒のことを記事にしない道理も無い。早く家に帰って記事を書きたいと、彼女は思っていた。
 が――
「うぇっ!?」
 文は目を見開いて悲鳴を上げた。
 突如として、目の前……周囲に無数の、色取り取りの弾幕が浮かぶ。それは、蓬莱産輝夜の「金閣寺の一枚天井」とフランドール・スカーレットの「スターボウブレイク」が同時に展開されたかのような密度だった。
 慌ててそれらの弾幕を避けようとするが、不意を付かれたのと非常識なほどの弾幕の密度、そしてほろ酔いのためにそれは出来なかった。
「あややややややややややややややややややあああああああああああぁぁぁぁぁぁ~~~~~~~~~~~~~~っ!?」
 残機フルカウントから一瞬にして満身創痍となるような被弾をして、堪らずに文は停止する。その途端、何者かに背後から羽交い締めにされた。

◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆

 射命丸文の気分は最悪だった。
 彼女の目の前には犬走椛がいる。
「もみっちゃ~ん、そんなに固いこと言わなくてもいいじゃないですか~? 私と椛の仲でしょ~?」
 両手を合わせて文は椛にお願いするが、椛はじっとりと重たく睨み返してくるだけであった。
「公私混同はしません。と言うか、そもそも私と文さんがどんな仲だって言うんですか? まったく、スピード違反の上に飲酒飛行まで……。分かっていると思いますけど。飲酒飛行時の法定速度を基準にしているので、罰則はより重くなりますからね?」
 そう、ここらは昔から人通り……というか天狗通りが活発な区域のため、スピード規制がされていた。その上、交通安全強化キャンペーンだとか何だとかで、監視の目が更に厳しくなっていたのだった。取り締まり強化については、他の天狗が出している新聞でも見掛けたのだが、すっかり忘れていた。
 警備隊に見付かって……しかもよりによって椛に見付かって、交通違反者用の特性スペルカードを喰らったのであった。
「そ、そんなぁ? 椛ぃ~。お願いしますよ。フィルムを買いだめしちゃって、今月は厳しいんですって、せめて、そこだけでも……本当に、勘弁して下さいっ!」
「ダメですっ! 違反は違反ですっ!」
 椛は反則切符を切り、文に渡した。
「はいこれ。え~と、今度の受付は……三日後ですね。三日後に、これ持って詰め所まで来て反則金を支払って下さいね? あと、講習もです。それと、しばらくの間は単独飛行も禁止です。ましてや、その間のスピード違反なんて、以ての外ですからね? そんな真似をしたら、追徴金が更に重くなるので気を付けて下さい」
「ちょっ? ……厳しすぎやしないですか? そりゃあ、ほんのちょっとスピード出し過ぎたかも知れませんけどね? ですが――」
「文句があるなら、大天狗様達に言って下さい。私は規則を守るために働いているだけです」
 文の額に血管が浮き上がる。こっ……このワン公が、人が下手に出ればでかい顔しやがって……。そんな怒りがふつふつと湧き上がる。
「何ですかその反抗的な目は? 反省の色が見えないんですけど?」
「くっ! この……おおおぉ」
 文の肩がぷるぷると震えた。必死に怒りを堪えるが。
「だ、だいたいっ! どうして私だけ何ですかっ! 不公平じゃないですか。ほらっ! あいつも、あいつだってっ! みんなじゃんじゃん違反しているでしょーがっ!」
 文は上空を飛び交う天狗達を指差す。椛もまた、その指の先に視線を向けた。
 しかし、椛は嘆息して肩をすくめるだけだった。
「まあ、そうなんですけどね? でも、捕まったのはそういう運命だったということで、受け入れて下さい。それじゃあ、私はまだ仕事があるので」
 そう言って、再び椛は上空へと戻っていく。そして、次の違反者に向かって突撃していった。
「椛の馬鹿~っ!」
 椛を見上げて、文は捨て台詞を吐くことしかできなかった。

◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆

 椛に捕まったその翌朝。
 文の自宅。その玄関の外から、足音が近付いてくる。
「文~? 来たわよ~? 私だって暇じゃないんだからね~? 感謝しなさいよ~?」
 扉の奥からはたての声、そしてノックの音が響いてくる。更には「まったく、私と文は別に友達なんかじゃないってのに、これだから大天狗様は……」などと愚痴も聞こえてきた。
 文の監視役としてはたてが命じられた形である。その話は文も大天狗からの従僕から伝えられている。友達なんかじゃない云々というのは、彼女と同意見だが。確かに最近は一緒にいることは増えてきたので、何も知らない者が見ればそうも見えるのかも知れないが。あくまでも、敵同士だ。
 まあ短い間とはいえ、はたてにネタを独占される形にはならないだけ、マシかも知れない。はたてには監視役ということで特別手当が出るというのが忌々しいけれど。
「鍵は開いてますよ。そのまま入ってきて下さい」
「そう? じゃあ、お邪魔するわよ?」
 がらがらと扉がスライドして、はたてが顔を出した。
「……え?」
 そこで、はたての動きが止まる。
 そして数秒の間、見つめ合う。
 ……何が気まずいのか、はたてが頬を赤らめて顔を背けた。
「ご、ごめん。お楽しみ中だったみたいね。まさかあんたにそんな趣味があったなんて……。でも、そういうのは……趣味は人の勝手だし私も頭ごなしに否定はしないけど……さ。だけど一人でっていうのは危険だって聞いたこともあるし……気を付けなさいよ?」
「……は?」
 今度は文が目を丸くした。一体はたては何を言っているのだろうか?
「はたて? あなた一体何を考えているんですか?」
「何って、そりゃ……文の特殊な性癖?」
 そんなことをはたてに言われて、文は改めて自分の体を見る。自分の全身を麻縄で巻き付けるというか縛り上げるというか、そんな格好であった。
 文は顔を赤らめる。
「一体何を勘違いしているんですかエロ天狗がっ! 私にそんな趣味とか興味とかあるわけないでしょうがっ! 全然違いますっ!」
「じゃあ、何でそんな格好してんのよっ!」
「ちょっとした実験です。その……なんていうか、翼が疼くんですよ」
「あ……あんた、翼で感じるの?」
「いいかげん、そっちの思考から離れなさいってのこの発情天狗っ!」
 引きつった表情を浮かべるはたてに、文は怒鳴る。
「まったく違います。これは、あくまでも家の中で飛ぶ気分を味わえるように、この紐の端をどこか適当なところに固定して……凧の要領でですね? ここに来たあなたは分かっていると思うけど、私は椛に捕まったせいで一人で飛ぶことが出来ないんです。それでこう……何だかストレス溜まるんですよ。それで、家の中だけで何とかストレス解消出来ないかなと。って、何ですかその顔は?」
 見ると、はたてがにやにやと笑みを浮かべていた。あまつさえ、メモ帳を取り出している。
「あ~、そういう言い訳なんかしなくてもいいから。分かってる。分かってるから……うん。よく分かってる。うぷ……ぷぷぷっ!」
「あなた、一体何をネタにしようとしているんですかっ!? 真実と違うことを捏造しようなんて、新聞記者として恥ずかしいとは思わないんですか?」
「何を言っているのよ? 新聞記者は『真実』を書くのが仕事に決まっているじゃない」
「……いや、そこできりっとした顔されてもわざとらしいというか」
 流石にはたての性格上、これは冗談だと文も思うが……。この引き籠もり記者は、スキャンダラスな紙面を作るよりも、中身の充実した紙面を作ることにこだわるため、あからさまな捏造はしない。その程度には、文もはたてのことを理解している。
 あくまでも、からかっているだけだろう。日頃から彼女のことをからかっているので、その仕返しのつもりか。
 文は嘆息した。
「まあいいです。それはともかく、ちょっとこの紐の端を持っていてくれませんか? 柱に結ぶのが面倒なので。あとどうも、長さの調節とかもさっきから上手くいかなかったんですよ」
 文ははたてに近づき、紐の端を彼女に手渡した。
「まあ、それはいいけど」
「じゃあ、頼みましたよ? 絶対に手放さないで下さいね?」
「あーはいはい。分かっているわよ。あんたじゃないんだから、そんな意地の悪いことしないわよ」
 はたてが自分の腕にぐるぐると紐を巻き付けていくのを文は振り返って眺める。これならそうそう簡単に手放されることもないだろう。
 長さも丁度いいだろう。はたてが部屋の端に立って、文が部屋の真ん中当たりにいる格好だ。
「じゃあ、いきますよ? 準備はいいですか? はたて」
「ええ、こっちは大丈夫よ。でも、ゆっくりやんなさいよ?」
「分かってますって。最初は手加減していきます」
 そう言って文は宙へと舞った。
 通常、やらないくらいにゆったりと羽ばたく。
 後方で自分を束縛する紐がぴんと張るのを感じ取る。部屋の中に台風のような風の音が巻き起こった。
「ちょっ!? ち……文? 本……に手……してる? 何か風……凄い……ど?」
 はたての声が聞こえた気がするが、気のせいだろう。
 しかし、やはりどうも物足りない。今はせいぜい、空中に浮かんでいるという程度の感じしかしない。もう少し力を込めてみたいところだ。
 文は意識的に、大きく翼を広げて羽ばたいてみせた。羽ばたきの回数をさっきの三倍程度に。これで全力の25~30%程度くらいだと思う。
「あ、文あああああああああぁぁぁぁぁ~~~っ!? 待って、ちょっと待ってええええええええええぇぇぇぇ~~~~っ?」
「え?」
 はたての悲鳴が聞こえた気がする。
 そして、何だか自分の体が前に……じりじりと壁に近付いているような?
 そう思った次の瞬間、紐の抵抗が消えて文の目の前に壁がいっぱいに広がった。
「ぶべっ!?」
「ふぎゃっ!?」
 顔面から文は壁に衝突する。そんな彼女の頭の上から、はたての悲鳴が聞こえてきた。
 床に墜落する文の隣から、同じく何かが落下する衝撃が伝わる。
「いったぁ~。は……はたて、何しているんですか? あなたもっとしっかり持っていなさいよ」
「あ……文の方こそ、もっと手加減しなさいよ? 何なのよあんたの翼は? ロケットエンジンかなんかなの?」
 文は目を開けて、すぐ隣で自分と同じような格好で悶絶するはたてを見た。その手には相変わらず紐が巻き付いている。
 それを見て文は理解する。はたては別に、紐をいきなり手放したわけではなかった。自分の生み出した推進力に負けて、文と一緒に壁まで吹っ飛んできたのだった。
「くっ……。これは……なるほど、そういうことですか。残念ですがこの方法は失敗みたいですね」
 文ははたてから目を離し、自分の机へと目を向けた。そこははたてのいた場所とは別の角であったが、机が横倒しにされていた。自分の生んだ風のせいだろう。
「はたて、取り敢えず永遠亭に行きましょう。すみませんが、一緒に来てくれますか?」
「そうね、永遠亭に行くってのは……私も賛成」
 頭の上でピヨピヨとひよこを回しながら、はたては同意した。

◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆

 永遠亭にて。
 はたてと一緒に並んで、文は永琳から額に出来たたんこぶを治療してもらう。ぺたぺたと薬を塗ってもらって、絆創膏が貼られた。
「はい、これでいいでしょう。こぶも大きくないし、しばらくしたらすぐに引っ込むと思うわ」
「ありがとうございます。あ、あとですね。永琳さんにもう一つお願いがあるのですが?」
「お願い? 何かしら?」
 治療を終えて、後は治療費を支払って帰るだけ。そう永琳は思っていたのだろう。右手を挙げる文に、彼女は小首を傾げた。はたても同様の表情を浮かべて、疑問符を浮かべている。
「こう……飛べる薬ってありませんか? 最高に爽快でハイな気分になれるヤツ」
 そう文が言った瞬間、診療室に乾いた音が二回響いた。
 文の顔があさっての方向を向いて、彼女は訳が分からないままに頬に手を当てる。頬が熱い。
 永琳が電光石火の速さで平手打ちをしてきたのだと、混乱しつつ理解する。
 思わず非難の声を上げようとするが、永琳の顔は何も言わさないほどに怒りに染まっていて、目も真剣だった。そんな永琳に、文は気圧される。
「そんな話を一体どこから……永遠亭はそんな薬は間違っても扱いは……。いえ、そんなことよりあなた達、いったい何てものに手を出したのです」
「え? ……え?」
 がしっと、永琳が文の両肩を掴む。
「いいですか? 天狗の好奇心が強いということは私もよく知っています。しかし、この世の中には絶対に手を出してはならないものというのがあるのです。そんなものに手を出したら、確実に人生をボロボロにするんですよ?」
「いや……あの~? 永琳さん?」
 くっ、と永琳は苦々しい表情を浮かべた。
「麻薬、覚醒剤。ダメ、絶対っ!」
「ま、麻薬?」
 文とはたては目を丸くした。
 永琳が診察室入り口に立つ鈴仙に顔を向ける。
「ウドンゲ。緊急入院です。急いで地下隔離病棟の準備をしなさい。拘束衣と猿ぐつわの用意も」
「はいっ! 分かりました。目隠しとかは必要ですか?」
「そうね、あるなら用意しなさい。それと、これは後でいいわ。電気ショック装置と鞭、ロウソク。三角木馬も持ってきて」
「分かりました。すぐに準備します」
 真剣な表情で頷く鈴仙に、文とはたては冷や汗を流した。
「まま……待って、待って下さいいいいいぃぃぃぃっ!? 私達、別に麻薬とかそんなのに手を出してませんってば!? 以前取材させてもらった、リラックス出来る夢を見られる薬みたいなのが欲しいんですって。色々と事情があって、思いっきり飛べなくてストレス溜まっているんですよ」
 慌てて文が永琳に自分の要求を言い直した。
「え? あらそうなの? 吃驚させないでよ」
 やれやれ人騒がせなと、永琳は小さく嘆息した。でも、どこかがっかりしているようにも見えるのは気のせいだろうか? あと、鞭やロウソク、三角木馬でどんな治療をする気だったのだろう? 天才の考えることは理解出来ないと、文は思った。
「あ~や~っ! あんたが、紛らわしいことを言うからっ! 私、思いっきり叩かれ損じゃないっ!」
 恨みがましくはたてが睨んでくる。文は苦笑いして誤魔化すが。
「でもあなた、胡蝶夢丸は性に合わないって言っていなかったかしら? ストレスが溜まっているっていう話だけれど、普通の胡蝶夢丸の効果だと、リラックスするどころかますますストレスが溜まりそうねえ」
「ええまあ、そうですね。だから、さっきみたいな言い方をしたわけでして……」
「やっぱり、スリリングな夢の方がいいのかしら? 精神に効果のある薬って、人里であまり売れなかったから、そんなに開発してないのよねえ。結局、効果のありそうな薬って、胡蝶夢丸ナイトメアくらいかしら? 以前とは精神状態が違うみたいだし、普通の胡蝶夢丸の方がいい結果を出すかも知れないけれど……。両方飲んでみる?」
「そうですね。じゃあ、それで……両方試してみます」
 永琳は頷いて、鈴仙に薬の用意を指示した。
「でも、どのみち薬に頼りすぎるっていうのはよくないし、あまりにもストレスが溜まるようなら命蓮寺あたりにでも行って、雑念を払って精神の調整をしてきた方がいいわよ? 高速飛行依存症とでも言うのかしらね? そんな感じで、生活に支障が出るくらい精神のバランスが崩れるようなら、そのときは改めて相談に乗るけど」
 分かりました、と文は頷いた。流石に、そうそうまた病院にお世話になるほどひどくはないと思いたいけれど。

◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆

 それから一日が経過した。
 永遠亭の薬はやはりよく効く。
 たったの一日ですっかりこぶも引っ込んだ。これははたても同様だった。
 だが、文の機嫌は悪かった。
「そんな、朝っぱらからむすっとした顔しないでよ。見ているこっちまで嫌な感じになっちゃうじゃない」
 監視役として訪問したはたてが、小さく嘆息する。
「すみません。分かってはいるんですけどね? どうもこう……イライラが」
 文は自分の眉間を人差し指で撫でてみる。見事に皺が出来ていた。目もつり上がっていることだろう。
「永遠亭からもらった薬、効かなかったの?」
「いえ? 効きましたよ? 効いたんですけれどね?」
「けれど?」
 文は大きく溜息を吐いた。
「まずは普通の胡蝶夢丸を試したんですが、やっぱりあれですね、私の性には会わなかったようです。見られたのはふわふわとお花畑で蝶のように舞う夢でした」
「へえ? 私、そういう夢だったら大歓迎なんだけどなあ?」
 ふんっと、文は吐き捨てるような息を吐いた。
「冗談じゃありませんよ。あんなのんびりもったりとした夢なんて、スピード感も爽快感もあったものじゃありません」
「そうなんだ。で? それじゃあナイトメアの方はどうだったの? 不満だったのは分かるけど」
「あれも最悪でしたね。ふわふわとお花畑を舞っていたところに――」
「ところに?」
「――風見幽香さんのような人影が現れてですね? 全力で私を追っ払いに掛かるんですよ。しかも翼はろくに動かせないような状態で」
「あー、あるある。怪物に追いかけられて逃げているのに脚が思うように動かなかったりするわねー」
「ええ、そんな感じです。もう本気で死を覚悟しましたよ。というか捕まって拷問フルコースどころか、なるべく苦しむ殺し方をされるという直前で目が覚めました。もう、二度とこれは飲みたくありません」
 憎々しげに、文は薬の入った袋を睨んだ。
「じゃあどうする? 永琳さんが言っていたとおり、命蓮寺にでも行ってみる?」
「……そうですね。家に籠もって酒を飲んでいるよりはマシかも知れません」
 飲酒飛行を見つかったらまた罪状と反則金が重くなる。いっそのこと、一日中飲んだくれていようかとも思ったが、おちおち出かけられなくなるのも嫌なので、飲んでいないのだった。
 文は深く溜息を吐いた。はたてがいる限りは安全飛行なので、思い切ったスピードは出せないのだが、それでも命蓮寺まで飛べれば少しはすっきりすることだろう。

◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆

 聖白蓮は快く文の訪問に応じてくれた。
 命蓮寺に住まう妖怪達と一緒に、文とはたては座禅を組んでいる。
 だが、文は不公平だと思った。
「喝っ!」
 その瞬間、乾いた音と痛みが彼女の方から伝わった。
 文は背筋を正した。
 そして、これは失敗だったなあと思う。
 不公平というのは、さっきからずっと自分ばかりが叩かれていることだ。実際、雑念が払えていないというのは自覚しているのだが。
 鬼がいた頃は禅の修行に付き合わされたり、山伏の真似事なんかもしたことはあったが……どうも、その頃のようにはいかない。精神が乱れまくっていると思う。
 その上、はたてもそんな経験があったのか、彼女はほとんど叩かれていない。それがまた悔しいし妬ましい。ちゃらけた格好をしているくせに……。
「喝っ!」
 嫉妬の感情が表に出てしまったのだろう。また肩を叩かれた。
 文は心の中で涙を流した。

◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆

 聖に礼を言って、彼女らは命蓮寺から飛び立った。
 礼を言ってはいたが、むくれている文をはたてが宥める格好であった。文にも感謝の気持ちが無いわけではないのだが。
 こう、はたて如きに……機嫌を損ねた妹が姉によって宥められる図をやったような感じで、それもまた面白くない。
 聖はやはり、そんな文の心情を見透かしていたのだろう、微笑みながら見送っていた。修行が足りないなどとお説教を言うこともなく。
「もぅ~。文? いつまでそんな顔しているつもりよ?」
「いつまでなんでしょうねえ? どーせ、私は修行が足りないですし」
「いや、そんな拗ねられても……」
 困ったなあと、はたては頬を掻いた。しかし、そんなことを言いながらも、どことなく機嫌がいいように見えるのは、やはり自分よりも叩かれなかったことによる優越感だろう。妬ましい。
「でも、他に何かいい手は……。う~ん、香霖堂にでも寄ってみる? 何か気が紛れる道具でもあるんじゃない?」
「そうですねえ。あるといいんですけど」
 しかし、あまり期待出来そうにないと、文は思った。ただ、無ければ無いで、無いことを確認出来ればそれでいいかなと思う。このまま家に帰ったところで、何も面白くないわけだし。

◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆

 返ってきたのは、霖之助の唸り声だった。
「『爽快に空を飛ぶ気分を味わえる道具』って……流石にそんなものは扱ってないよ。悪いけれど」
 ニーズに応えられない無念さと呆れが混じった表情を浮かべて、カウンターの上で霖之助は頬を掻いた。
「ですよねー」
 分かっていた。予想通りだ。しかしそれでも、心のどこかで一抹の期待はしていたのだろう。文は小さく肩を落とす。
「じゃあ、何か暇つぶしの道具でもある? こう、熱中出来るようなものがあるといいんだけど」
「どうだろう? どんな遊びだろうと、それなりに面白いと思えば熱中していくものだと思うけれど。別の言い方をすれば、どんなものでも楽しもうと思えば楽しめるだろうし、そんな気分でなければ何をやっても楽しくなれないんじゃないか? いや、だからこそ気分転換としてそういう遊びや遊び道具が必要なんだっていうのも確かだがね」
 ふぅむと、霖之助は顎に手を当て、はたてに応える。
「遊び道具の類は、そっちの角の方に置いてあるから、適当に見ていくといいよ。昨日か一昨日あたりに、河童のにとりが大量に購入していったから、在庫が少ないけれどね。他にも、暇潰しなら本を買うというのもお勧めするよ」
 にとりが購入したのは、改造、分解してまた何か新しいものを作るための材料にするつもりだろう。それはそれで少し気になると文は思った。
 文は遊び道具の置かれたコーナーに目を向ける。これといって、あまり目を引いた物は無かった。
 続いて、本棚にも目を向ける。
「……哲学書だとか、研究書だとか、あれは……技術書ですか? そんなのばかりですね。せめてもっとこう、漫画や娯楽小説の類は無いんですか? ここに残っているのを読んだら、寝るだけになりそうです」
「いいじゃないか? 寝て時間を潰すのも暇潰しだ。そういう使い方にも、お勧めだよ? ああ、あと娯楽小説や漫画の類は地底の火車がついこの前に買い占めていったんだ。何でも主人がそういうのが好きらしくてね」
 しばらくはそういう書物を強化して仕入れてみようという霖之助の経営方針を聞き流しながら、文は嘆息した。

◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆

 その夜。
 文は自室ではたてと飲んだくれていた。飲んでいるのは先日に萃香と飲んだものとは違う。文が気に入っている酒蔵のものの一つだ。
「と、いうわけでですね? 椛がですね? ほんっとーに非道いんですよ? 白狼天狗のくせにっ! 私の話をぜんっぜん聞こうともしないでっ! 聞いてます?」
「あーはいはい、聞いてる。聞いてるからー。そんなに泣かないの」
 文ははたてにもたれ掛かりながら、えぐえぐと泣いていた。よしよしとはたてが頭を撫でてくる。はたてのくせに生意気だと思うが、酔っている今は許してあげよう。撫でてくる手が妙に優しくて気持ちいいし。
「分かりますっ? この悔しさがっ! 翼がね? 疼くんですよ。私を解放しろって、もう一人の私が頭の中で囁くんです」
「まあねー。確かに風を切って飛ぶのは気持ちいいものねー」
「でしょーっ? そうなんですよっ! 最高なんですよ。あの青い空をっ! 風を切って飛んでいくあの感覚。それがですね? 生きている実感を最高に感じるっていうかっ! それをあのワン公どもは、分かってないっ! 全然分かってないっ!」
「はいはい、飲み過ぎないでねー? 明日に残しちゃダメよ~? 明日は講習なんだからね? 遅刻出来ないんだから。はい、お水」
 はたてからグラスを受け取り、文はぐびっと一気に中身を飲み干した。ひっくとしゃっくりをする。
 そして、はたてが作った山菜の天ぷらを摘む。肴係はじゃんけんで決めて、勝った結果なのだが……これがまた意外と美味だったりする。いい嫁になるんじゃないかと思った。絶対に口に出しては言わないけれど。
「ふっふ~ん? どう? 結構いけるでしょ?」
 どんなもんだと、隣ではたてが嬉しそうに笑顔を浮かべている。
 あ……と、文は我に返った。気付けば結構食べていたかも知れない。口には出さなくても、態度が雄弁に語っていた。
「ふん、ま……まあまあですね」
「ふふふっ♪」
 妙に気恥ずかしく、文はむくれた。
「……でもさ~、文?」
「なんですか?」
「あんたが飛ぶのが好きなのは分かったけど、気をつけなさいよ? あんたがそんなんで、もし事故に遭って新聞書けなくなっちゃったらさ……私も張り合いが無くなっちゃうし」
「何ですかそれ?」
 照れくさそうに、はたてが頬を掻いている。
「私達は、ダブルスポイラーだっていうことよ。言わせるな恥ずかしい」
「……はたて? あんた、酔ってますね?」
「ええ~そうよ。酔っているわよ。コンチクショーっ!」
 それだけ言って、はたてはごろりと横になった。
「ちょっと、はたて? はたて? もしも~しっ?」
 むにゃむにゃぐ~ぐ~と、赤ら顔ではたてが眠っていた。どうやら、思っていたよりも飲ませすぎたらしい。平気そうに見えたけれど、無理していたのだろうか。
「はぁ……。ど~するんですか、この後始末は」
 酒瓶だらけの自室を見て、やれやれと文は嘆息した。その口には、ちょっぴり笑みがこぼれていた。

◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆

 変わらない景色。感じることの出来ない風。
 全力で翼を羽ばたかせながらも、やはりどこか物足りないと文は思う。
 視界が灰色に染まり、精神が腐っていく気がする。
「どうだい? 調子は?」
「あまり面白くはありませんね。いえ、にとりはよくやってくれたと思いますけれど」
 河城にとりの工房……ここなら結構スペースがある。そこで文は壁に繋がった鎖が取り付けられたベルトをして、飛んでいる。自室で麻縄を使ってやろうとしたことをそれぞれ強化してやっている形だ。
 香霖堂でにとりが買った遊び道具がどんなものだったのかを帰りに寄って見に来て、そのついでに頼んだ物だった。にとりは一日で作ってくれた。
「文~? そろそろ講習の時間だよ~? 早く行くよ~?」
 工房の入り口から、はたてが顔を出した。
「分かりました。では、今からそちらに行きます。にとり、有り難うございました。さっきはああ言いましたけど、またあとで来るかも知れません。そのときはよろしくお願いします」
「分かった。じゃあ、そのときまでにもうちょっとそれっぽい装置が作れないか考えてみるよ」
「有り難うございます。無理を言って済みませんね」
 にとりに力無く微笑んで、文はベルトを外した。

◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆

 講習は実に退屈だった。高額の反則金の支払いに、悔しさがぶり返す。椛の顔を見ると尚更だ。
 文は眉間に皺を寄せて、イライラと歯噛みする。翼が疼いてどうにも我慢ならない。
 講義室の後ろの席で頬杖をついて、文は椛が朗読している紙芝居を眺める。他の受講者は、よく真面目に聞いていられるものだ。
 一度居眠りしたが、すぐに起こされた。「ちっ、五月蠅いですね。反省してまーす」と心を込めて謝罪しておいたが。
「――こうして、空中で激突した松之助さんは三ヶ月の入院生活をすることになりました。慰謝料は支払われましたが、まだ後遺症のため仕事に復帰することは出来ない状態です」
 誰が書いたのか、紙芝居の絵は下手くそだと文は思った。こんな絵と幼稚なストーリーで感情移入出来る訳がないだろうと、毒づく。
「法定速度を守ってさえいれば、避けることが出来たかも知れない事故。それは加害者にとっても、被害者にとっても決して癒されることのない深い傷跡を残すことになります。ですので、ここにいる皆さんもこれからはこのことをよく心に刻んで、飛行するようにして下さい」
 これでようやく講義は終わりのようだった。
 文は大きくあくびをして、舌打ちした。

◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆

 文は耳を疑った。
 一瞬、言葉を失う。そして、続いてその言葉を理解するにつれ、怒りが一気に湧いた。
「ふざけないで下さいっ! あんた、一体何を言って」
 文は椛に怒鳴り、彼女を睨み付ける。だが、椛もまた引かない。睨み返してくる。
「なんで……そんな、私だけ? 私だけですか? そんなの、あまりにも不公平じゃないですかっ! 講習だって受けたし、反則金だって払ったんですよ? そんなの、聞いてないですっ!」
 詰め所の前で待っていてくれたはたてが、駆け寄ってくる。
「ちょっと文? どうしたのよ? そんなに怒って」
 怒りに文の肩が震えた。
「こんにちは、はたてさん。文さんの監視役を引き受けてくれているんですよね? ありがとうございます」
「え? ええまあ」
 会釈する椛に、はたては頬を掻いた。
「それで、どうしたのよ?」
 椛は苦虫を噛みつぶしたような顔で、溜息を吐いた。
「実はですね? 講習時の文さんの態度があまりにも悪かったんです。反省の色が全然見られなくてですね? 勘違いしないで下さい。私だって、好きでこんな事言っている訳じゃないんですよ? でも、反省してくれないと……このままだと、いつ事故を起こすか……危険なんですよ。なので、規則なので……残念ですけど、文さんには来週にもう一度講習を受けてもらうことになりました」
「そうなの? じゃあ、単独飛行の禁止期間は?」
「期間は延長ということになります。はたてさんには悪いですが、その間にも文さんの監視役をしてもらうことになると思います。手当は出ますけど」
「そう……なんだ」
 椛は頷く。
「私も、別に文さんが憎くてこんなことを言っている訳じゃないんですよ? あの場にいた他の警備隊のメンバーの意見を集めた結果です。私一人だけでどうこう決められるものじゃないんです」
 文は俯く。ちょっぴり涙が滲んだ。
 またあの退屈な講習を受ける? それだけじゃない。一人で、全力で飛ぶのが……禁止期間が延長されるだと? 冗談じゃないっ!
 翼が疼く。これ以上の我慢は……もう気が狂いそうだ。
 だいたい、事故を起こしかねないって何だ? 空を飛んで何年になると思っているんだ? 舐めるな。
「文……残念だったね」
 はたての同情する声が聞こえる。そして、優しく方に手が置かれた。
 しかし、文はそれを振り払った。
「文?」
「……冗談じゃないです」
「え?」
 震える声で、文は唸る。
 何もかもが苛立たしい。自分の声なのに、自分でも聞いたこと無い様な声だった。
「もう、限界だって言っているんですっ! 何なんですかっ! みんなでよってたかってっ!」
 文は顔を上げて、感情のままに叫んだ。
「文っ! 何を言っているの? 落ち着いてよ?」
 はたてが慌てて両肩を掴んで揺すってくる。
 だが、その手も文は振り払った。
 そのまま、右手を大きく振り下ろす。
 乾いた音が響いた。
「あ……や?」
 文の前で、赤くなった頬に手を当てて、はたてが呆然とする。
「あなたは……あなたはいいですよねっ! 私の監視期間が伸びるだけ、手当が貰えるからっ! 同情するふりして、心の中ではさぞせいせいしているんでしょう?」
「なっ? 何言ってんのよ? そんなわけないじゃないっ!」
「五月蠅いっ! 五月蠅い五月蠅い五月蠅い~っ!」
「ちょっとっ!? 文っ?」
「文さんっ!?」
 文ははたてを押しのけ、その場から助走する。
「待ってっ! 待ちなさいよ文~っ!」
 規則なんか、もう知るものか。
 文は全速力で、その場から飛んで離れていった。あっという間に、はたての声が後ろへとすっ飛んでいった。

◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆
【射命丸文と杜子春】

 巨木の枝に座って、文は妖怪の山を見下ろす。
 広々と広がる樹海と、九天の滝を眺めながら文は溜息を吐いた。
「失礼。何か、お悩みですか?」
「はいっ!?」
 不意に声を掛けられ、文はびくりと体を震わせた。
「ええっと……あなたは確か……仙人の」
 声のした方を見ると、道服を着た女が大鷲に乗って飛んでいた。
「茨華仙です」
 にっこりと笑顔を浮かべて伝えてきた名前を聞いて、文は思い出す。そうだ、この山に住んでいる仙人だ。近頃は博麗神社でもよく見かけている気がする。
「すみません。お節介かも知れませんが、ひどく落ち込んだ顔をしていたので声を掛けさせてもらいました」
「ああ……そう……なんですか。すみません、ご心配をおかけして」
 文は額に手を当てて、力無く笑った。
「いえ……大したことじゃないんですよ。恥ずかしい話ですが、先日にスピード違反で捕まっちゃいましてね? 規則で、飛ぶのに色々と制約があるんですよ。スピード制限とか一人で飛んじゃダメとか……。それで、ストレスが溜まって……イライラが、もう我慢出来なくて、それで馬鹿な真似しちゃって……はは、何を言っちゃってんですかね?」
「高速飛行依存症?」
「そんなものかも知れませんね。自分でも、まさかここまでストレスが溜まるなんて思ってもいなかったんですが」
 永遠亭に行って、永琳に相談した方がいいのかも知れない。文は自嘲した。
 体を抱くようにして、文は自分の翼の根本を掴む。いっそのこと、折ってしまった方が気が楽になるのだろうか? そんなこと、出来るわけがないと分かっているけれど。

“思いっきり飛びたいですか?”

 その言葉は、ぞくりとするほどに文の心に染み込んだ。
「……ええ、飛びたいですよ。全力で、全速力で。一人で、思いっきり」
 口に出せば、その渇望はより明確に感じ取られる気がした。

“その願い、叶えてあげましょうか?”

「それ……そんなこと、出来るんですか?」
「ええ、出来ますよ」
 優しげに微笑む仙人が、文にはまるで女神のように思えた。

◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆

 華扇の許しが出て、文は目隠しを外した。
「ここ……は?」
 文は周囲を見渡した。ここがどこかはよく分からないけれど、妖怪の山のどこかだろう。仙人の特別な術を使うからということで目隠しをされて連れてこられたはずなのだが……。文はちょっぴり肩透かしをされた気になる。
「山の一角に、特別な結界をはらせてもらいました。人払いと不可視の効果があります。 近付けば分かると思いますが、私達を中心に四方の四半里程度の距離に境界となる御札が有ります。この中にいる限りは、決して見つかることもなければ、他の妖怪にぶつかる心配もありませんよ」
「そんな結界が?」
 文は華扇の説明を聞いて色めき立った。
「じゃ、じゃあこの結界の中なら、どれだけでも……思いっきり飛んでも大丈夫だっていうことですか?」
「はい、その通りです」
 頷く華扇に、文は瞳を輝かせた。
 喜びに打ち震える。
「ただし、文さん? 一つ守って欲しいことがあります」
「何でしょうか?」
 華扇は人差し指を立てて、真剣な表情を浮かべてきた。これは絶対に破ってはいけない約束だということを念押ししているのだろう。
「いいですか? 出入りは可能になっていますけど、絶対にこの結界から出てはいけませんよ? 結界の外に見えている景色は、ダミーです。そして、この結界の外は人通りの少ない区域ですが、それでも絶対に安全というわけではありません。結界から出た拍子に、近くを飛んでいた別の天狗と激突する可能性は0ではないんです。ですから、気をつけて下さい」
「そんなことですか? 分かりました。絶対に出ないように気をつけます」
 文は頷いて、胸を拳で叩いた。

◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆

 華扇は自宅に帰って休むということで、結界の外へと出て行った。飛行に満足したなら、文に渡した御札を通して呼ぶようにという話だった。
 文は早速、結界内で飛び回る。思う存分、翼を広げて力強く羽ばたく。
 高速で移り変わっていく景色。大気の壁をぶち破っていく爽快感。久しく味わっていなかった快感に、彼女は酔いしれる。
 日常的に味わっていた、高速で空を駆け回るという感覚が、こんなにも素晴らしいものだったのだと、文は再確認した。
 鬱々としていた機嫌が、嘘のように晴れ晴れとしたものへと変わっていくのを自覚する。
 と、同時に冷静さを取り戻す。
「……はたて達には、後で謝らないといけませんね」
 文は小さく嘆息した。
 単独飛行禁止を破ってしまって、罰則がより重い物になってしまったこともそうだが、癇癪を起こしてはたてを叩いてしまったことが、胸にしこりとなって残る。
 イライラが我慢出来なかったとはいえ、誰が悪いかと言われれば自分が一番悪い。それは文だって自覚しているつもりだ。
 どうやって謝ればいいだろうか? 萃香からごちそうしてもらった酒のネタを教えるというので、許してくれるだろうか? でも、叩き返されるくらいは覚悟した方がいいかも知れない。
 自分の馬鹿さ加減が、少し嫌になる。
「それにしても……」
 文は空中に停止した。すぐ右隣には華扇が配置した御札が浮かんでいた。
 結界内での飛行を開始して、だいたい三十分くらいなのだが……。
「ここ、私にはちょっとだけ狭い気がしますねえ」
 あと1.1倍くらい広ければいいのにと思う。御札が浮かんでいる……結界の境界にそって飛んでも、ゆっくりとカーブを描くために自身の最高速には到達しない。直径を通って直進しても、最高速に達する手前で減速しないと結界の外に出てしまう。それだけがちょっぴり物足りない。
「外って、どんな感じなのですかね?」
 ゆっくりと、文は境界の外に顔を出した。
 文は拍子抜けする。どうということもない、無人の空だ。人通りの少ない区域だと聞いていたが、その通りのようだった。
「ふむ……」
 どうも、この様子ならちょっとぐらい結界の外に飛び出してもまず他の誰かに見つかったり、ましてやぶつかるということは無さそうだ。
 文は再び移動を開始する。境界に沿って、徐々にスピードアップをしていく。
 一週……二週……三週を回ったところで、文は左に大きく旋回した。
 そして、一気に加速しながら一直線に結界の中を横切っていく。
 十秒にも満たない時間で、文は旋回した場所とは反対側の境界へと到達する。
 そのまま、文は結界を破って外に出た。
 誰もいない。やはり無人の空間だ。
「これならっ!」
 文はにやりと笑みを浮かべた。
 最高にスピードが乗ったところで、急上昇をする。そしてロールして反転し、急下降。インメルマンターンを実行する。
 そして、重力を利用して再度加速したところで、再び結界の中へと戻った。
 一直線に、結界の中を横切っていく。瞬く間に、目に映る光景が切り替わっていく。
 ぞくりとした興奮。堪らない。そうだ、この圧倒的なスピード。これこそが自分なのだ。
 境界を再度、飛び越える。

“……え?”

 文は目を疑った。
 それはほんの一瞬のことだけれど、脳裏に焼き付くのを自覚する。

“何で?”

 すぐ目の前に、はたてが現れた。恐怖に目を大きく見開いている。このままだと、直撃する。
 文は身をよじって目を瞑った。
 翼に柔らかい物が当たった。はたての体のどこかだ。
「うわっ!?」
 文は姿勢を崩した。くるくると、糸の切れた凧のように回りながら落下する。全身が総毛立つ。このまま地面に叩き付けられたら、ただで済まないどころではない、即死だ。
 姿勢を制御しようとする。しかし、翼が動かせない。はたてにぶつかった衝撃で、ひねってしまったらしい。
 為す術もなく、文は重力に引かれて落下することしかできない。彼女の心臓が凍り付く。
 はたては?
 文は回る視界の中で、はたての姿を捜す。彼女は無事だろうか? 無事なら、ひょっとしたら助けてくれるかも知れない。
 だが、そんな淡い期待はあっさりと打ち砕かれた。それどころか、絶望が彼女を襲う。
 はたてが錐揉みしながら、真っ逆さまに地面へと落下していく。ぴくりとも動こうとしない。彼女に手は到底届きそうにない。
 それも、ほんの数秒の出来事。あっという間に木々の中へと文の体が飲み込まれる。
 幾重もの枝にぶつかる。
 そして、地面に……正確には背の低い木の上に文は背中から叩き付けられた。
 ベキベキという音が、背中から響いてくる。
 その瞬間、文の息が止まった。大きく目を見開く。
「う……ぎ……ああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~っ!!」
 反射的に体を丸めて、文は叫んだ。
 翼の感覚がおかしい。というより、あり得ない。耐えきれない激痛もそうだが、喪失感の方が大きい。頭の中で、痛みと共に翼の形のイメージが……手で握り潰した紙くずになっている。
 これは絶対に振り返って見てはいけないと、遠のく理性で考える。見れば立ち直れない。
 命がまだあるという安心感どころではなく、ぼろぼろと文は涙を零した。
 でも、泣いている場合ではない。はたての様子を見ないと。
 文は激痛を堪えて、体を起こして顔を上げた。
「は……た……?」
 文はその瞬間、痛みを忘れた。
 はたての姿は、すぐに見つかった。目の前の、ほんの十メートル程度前にいた。
 はたては大の字になって寝ていた。その頭から大量に赤い血を地面にまき散らして。ぴくりとも動かず、彼女の目は大きく開かれて、文を向いていた。
 嘘だと思った。信じたくなかった。
 文は目の前の現実を確かめようと、四つん這いのままはたてへと近付く。
 視界が滲む。何もかもがぐちゃぐちゃだ。
「ねぇ? はたて? 大丈夫……ですよ……ね?」
 文ははたてに辿り着き、彼女の胴体に両手を当てた。そして、小さく揺すってみる。しかし、彼女の反応は無い。
「はたて……お願いですから、気をしっかり……して下さいよ。ねえ?」
 はたての体から、体温が伝わってこない。僅かに残っていた温もりが、あっさりと抜けていく。
 どれだけ呼びかけを続けても、はたてはあさっての方を向いたままだ。
 山の奥深く、文がはたてを呼ぶ叫び声が何度も木霊した。

◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆

 あの後、文が持っていた御札を通して騒ぎを聞いた華扇が駆けつけた。そしてそのまますぐに永遠亭に向かった。
 文の翼……右の翼の治療はしたけれど、もう二度と使い物にはならないだろうという話だった。骨折した箇所が多すぎる上に、神経もズタズタに切断されているということだった。見た目だけでもまともに見えるようにと、今は添え木で固められているが。
 それでも、まだ命があっただけマシなのだろう。
 はたては、治療の必要は無かった。
 はたても一緒に連れて行ったけれど、死者を蘇らせる治療は永琳にも出来なかった。頭から地面に落下したのだろう。頭は割れ、首の骨も折れていたそうだ。即死だったに違いない。
 はたては、自分を捜しに来たというのに……。
 それから、一週間が経っていた。
「文さん。入りますよ?」
 自室への入り口の向こうから、椛の声が聞こえてくる。返事はしない。する気力も無い。鍵は開いている。
 文は筆を止めて、机の上の紙を引き出しの中にしまった。
 椛の嘆息が聞こえた。
 がらりと音を立てて、椛が扉を開いた。そのまま、部屋の中に入ってくる。
「お邪魔します。文さん」
「いらっしゃい。……すみません、椛。講習……の日でしたよね? サボってしまいました」
「そうですね」
 非難するわけでもなく、ただそれだけを言って椛は伏し目がちに頷いた。
「ですが、今日来た用事はそれではありません。これを渡しに来たんです」
「何ですか?」
「罰金と、慰謝料の請求書です。金額が金額なので、すぐに払えという話ではありませんけれど」
「分かりました。ご苦労様です。椛」
 文はぎこちなく笑おうとして……やっぱり笑えないまま、椛から差し出された封筒を受け取った。
「すみません、文さん」
 沈痛な面持ちで、そう言ってくる椛に、文は首を傾げた。
「どうして、椛が私に謝るんですか? 謝るのは、むしろ――」
「私が、あのとききちんと文さんを止めていたら、ひょっとしたらこんなことにはならなかったかも知れないからです。もっと、文さんには別の言い方があったのではと……私は、こんな事故を防ぐために働いていたというのに」
 文は首を横に振った。
「それは違いますよ、椛。あなたはよくやっていました。私が素直にあなたの話を聞いていなかったのが悪いんです。これは……自業自得ですよ」
 文は自嘲した。
 そして、椛の……職務を通じて悲劇を減らそうという、彼女なりの正義と優しさに気付く。そうだ、この白狼天狗の融通の利かなさも頑固さも、すべてはそういうのが根元なのだろう。以前は、煩わしいと思っていたけれど。
「椛、ありがとう。そして、ごめんなさい」
「……いえ」
 椛は小さく首を横に振った。
「用件はそれだけです。あと、来週はちゃんと講習に来て下さいよ? 絶対ですよ?」
「はい、分かりました」
 折り目正しく一礼をして去っていく椛に、文は頭を下げて見送った。こんな自分は、どのみち天国には行けないんだなと思いながら。

◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆

 その日の夜。妖怪にとっては夜こそがもっぱらの活動時間ではあるが、天狗の大半は眠っている。
 文は妖怪の山の中腹にある、地下へと続く巨大な穴の縁にいた。はたての代わりの監視役には、見つかっていないはずだ。
「おかしなものですね、はたて。あんたなんて、正直言って鬱陶しいだけだと思っていたのに。いなくなってみると、こんなにも寂しいなんて」
 新聞を書く? とてもじゃないけれど、そんな気分にはなれそうになかった。どのみち、翼が死んでいる以上、取材に出ることももう不可能だろうが。
 ついこの前、彼女と飲んでいたときのことを思い出す。というより、ここ数日はそのときの事ばかりを思い出していた。
 自分一人だけで飛べなくて鬱々としていた間、あのときだけは楽しかった気がする。
「あれですかね? やっぱり私達はダブルスポイラーだったと……そういうことみたいです。いつの間にか……」
 けれどももう、二度と一緒に飲むことも、新聞ランキングを競い合うことも、彼女の揚げた天ぷらを食べることもあり得ない。そして、叩いてしまったことを謝ることも出来ない。
「椛、嘘を吐いてごめんなさい。来週も……これからもずっと講習をさぼり続けることになりそうです」
 罰金と慰謝料は、住んでいる家と家財道具その他すべてを売り払って、それを充てるように手紙に遺しておいた。足りるかどうかは、難しいところだけれど。
「はたて、私がそっちに行ったら……って、無理なんでしたね。うん、私はこっちを選ぶから」
 ここから行けるのは地獄。それも旧地獄だ。はたての行く先とはまるで違う。
 もしもあの説教マニアの閻魔に見つかったら、さぞや長いお説教を喰らうことだろう。自分でもそうだと思う。こういうのは何の解決にもなっていないと、頭では理解している。
「けれど私は、もうこれ以外に謝る方法が思い付かないから」
 もう、この世に未練は無い。
 今まで興味を持っていた何もかもが、すべて色褪せているように思えた。これまで取材してきた者達も、萃香の酒も。きっとこれはもう治らない。精神がこうまで病んでは、どのみち命は長くないだろう。
 文は嘆息めいた息を吐いて上体を倒した。そのまま穴の中へと落下する。これでもう、助からない。
 頬を撫でる風が気持ちいいなと思いながら、文の意識は真っ暗な闇の中に消えていった。

◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆

 小鳥のさえずりが聞こえる。
 真っ暗闇の中で、旧地獄にも意外な面があるものだと文は思った。
 だが、どうやらそうではないようだった。文は自分の頬が濡れているのを感じた。死んでいるのなら、そんな……触覚は無いだろう。
「よっ……と」
 女の声と共に、文の目の前の視界が開け、光が飛び込んでくる。目隠しが外されたのだと文は理解した。
「あれ……? ここ? 私……」
 文は切り株に座りながら首を上げる。悪戯っぽく笑う仙人の顔がそこにあった。
「ご機嫌いかがですか?」
 そう訊かれて、ようやく文は今までのことを理解する。
 目隠しをされて結界の中に連れて行かれたのではない。夢を見させられていたのだ。
「気分ですか? 最悪ですよ。ありったけの胡蝶夢丸ナイトメアを飲んだ方が、まだ気分はいいかも知れません」
 そう言いつつも、文は安堵する気にはなれなかった。あれは本当に、自分に起こりえた話のように思えたから。そして、こんな体験でもなければ、自分はいつまで経っても考えを改めなかったに違いない。
「でも、気分は最悪ですが感謝します。まったく、仙人っていうのは意地が悪いんですね。杜子春に出てくる仙人もびっくりですよ」
「そうかしら? あの方に比べたら、私なんて優しい方だと思いますよ?」
 肩をすくめてみせる文に、華扇はくすくすと笑みを漏らした。
 ほら、と華扇が水で濡らした手ぬぐいを渡してくる。顔中が涙と鼻水でべちゃべちゃになっていた。間違ってもこんなところ、はたて達には見られたくない。
「今、私のペットがはたてさんを呼びに行っています。もうすぐ彼女もここに来るでしょう」
 もうすぐ来る? 文は慌てて顔を拭った。
「あら? 噂をすれば何とやらですね。さすがは天狗。早いわね」
「あ~や~っ? どこ~っ?」
 いくらなんでも早過ぎでしょーがっ! 文は内心毒づいて、急いで華扇に手ぬぐいを返した。
「あ、いたいた。ようやく見付けたわ」
 すたっ、とはたてが舞い降りる。その肩には鮮やかな紅の羽を持つ小鳥が留まっていた。この鳥が華扇のペットなのだろう。
「椛から伝言よ? 単独飛行禁止を破ったから、反則金追加だって。……って、何て顔してんのよ? そんなにも財布が厳しいの?」
「いえ、そんなのじゃないです」
 本当にこれは夢じゃない。
 死なせてしまったと思ったはたてが、今こうして生きて、自分を迎えに来ている。分かっていたけれどそれが確認出来て、ひどく嬉しいだけだ。
「何て言うかその……本当に、ごめんなさい。はたて」
 そんなつもりは無いのに涙腺が弛む。慌てて文は腕で涙を拭ったが。
「あー? 私を叩いたこと? ええ、そりゃーもう、怒っているわよ? 怒っているけど……いや、でもだからってそんな泣くほど怯えなくてもいいじゃない? 私をなんだと思っているのよ? ちょっと文? 文~っ?」
 拭っても拭っても涙が止まらない。出来ることなら、一目散にここから逃げ出したかった。けれど、単独飛行禁止のためにそれが出来ない。
 羞恥で顔を真っ赤にしながら文は涙を流し、はたては疑問符を浮かべる。
 そんな自分達を実に楽しそうに見て笑う仙人の声が、文の耳に届いた。

◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆

 結局、文は永琳から高速飛行依存症という診断が下されることになった。とはいえ、椛に捕まる前から生活に支障をきたしていたわけでもないので、それほど深刻なものでもないだろうという話だった。多分、高速で飛ぶのが完全に禁止されるという状況下に陥ったために、禁止されるとよりやりたくなるという心理が働いてなおさらストレスが溜まってしまったためだと永琳は言っていた。
 週に一回のカウンセリング……のんびり飛行もいいものだという認識の植え付けや、にとりが改良している「自宅で楽々飛行気分マシン」のテスト……そんなこんなで、彼女の高速飛行依存症はすぐに完治したのであった。
 まあ、それでもにとりのテストにはまだ付き合っていたりするのだが。自分が言い出しっぺな訳だし。
 文はにとりの工房から出て、空を見上げた。白狼天狗達が群れを成して飛んでいる。
「何だか、騒がしくありませんか?」
「そうねー。確かに」
 隣にいるはたても同意してくる。彼女もまた、にとりの作っている「自宅で楽々飛行気分マシン」を今度の新聞のネタにしようとしていたりする。間違っても、負ける気はないが。
 と、その中に見知った影を見付けた。文は手でメガホンを作る。
「おや、椛じゃないですかーっ! どうしたんです? 何事ですかーっ?」
 声が聞こえたのか、椛が空中で停止した。
「霧雨魔理沙がまた無断侵入してきたんですっ! それも、とんでもないスピードでっ! 明らかにスピード違反ですっ! いや、人間を我々の規則で取り締まるというのも違いますけどっ! それだけじゃなく、もうこれがとんでもない暴れっぷりらしくて……。とにかく、急いでいるんですっ! すみませんっ!」
「そうですか、頑張って下さいーっ! お勤めご苦労様ですっ!」
「な、何ですかいきなり?」
 文が手を振ると椛が面食らったような顔を浮かべた。
 気恥ずかしそうに椛はしばし頭を掻く。
「え~とその……頑張ってきますっ! それではっ!」
 それだけ言って、椛は現場へと急行していく。彼女らの進行方向の先で、大きく光が弾け、爆炎が巻き起こった。もはや異変の解決屋どころか、魔理沙こそが異変じゃないのかこれは?
「あやや? はたて?」
 ふと気付く。いつの間にか隣にいたはずのはたてがいない。
 再度上空に目を向けると、椛のすぐ後ろで、はたてが文に振り返ってアカンベーをしていた。魔理沙をネタにしようというのだろう。そうだ、その手があった。
「あっ、あんにゃろうっ!」
 はたてのくせにこの私を出し抜こうとは百年早い。文もまた現場に急行する。今度は、交通安全を喚起する記事でも書こうと思いながら……。


 ―END―
 文は書きやすいので割と好きなキャラです。でも、はたてはもっと好きです。料理上手だったり、はたての扱いがいいのはそのせいです。求問口授の扱いでは泣けました。はたてぇ……。
 文はダブルスポイラーによると椛とは割と犬猿という話なので、そんな感じで犬猿にしています。多分、あやもみでラブラブなネタは書くことは無いでしょう(魔理沙とアリスも同様。そういう話を見るのは好きですが)。本気で憎み合ったりはしていないと思うのですけどね? 立場とか職業的なものでちょっと対立することがあるんじゃないかなあと。
 しかし、事故って恐いですよね。自分は幸い、まだ命を失ったり入院したりするような事故に遭ったことはありませんが、ひやりとした経験は何度か有ります。注意一秒怪我一生とはよく言ったものだと思います。拙い話ですが、これを読んで頂いた方が、ちょっとでも交通安全の意識を持って頂けたなら幸いです。
 拙作をお読み頂き、多謝です。
漆之日太刀
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コメント



0.820簡易評価
4.100名前が無い程度の能力削除
サンキュー華扇ちゃん
7.80名前が無い程度の能力削除
華扇ちゃんに僕も説教されたいです!
12.100名前が無い程度の能力削除
ゾクッとしました。
「自分は大丈夫」と言う考えが引き起こす事故。
被害が自分だけならまだしも、相手にも及んでしまったら洒落にならない。
もし相手が亡くなったりしたら…
改めて考えさせられる話をありがとうございました。
この話に限らず、こういう話などを読んで意識を変えてくれる人が増えてくれるといいなと思います。
13.90名前が無い程度の能力削除
スピード違反、酒気帯び運転、ダメ、絶対!
はたてはエプロンとスリッパが似合いそうですよねぇ。

個人的に、「華扇の許しが出て~」と「小鳥のさえずりが~」の前の行間を
他よりも大きめに開けた方が良いかな、と思いました。
14.無評価名前が無い程度の能力削除
おおう、こいつはなんとも教訓的な話。
惜しむらくは、杜氏春の表題で展開が読めてしまう点でしょうか。
15.90ワレモノ中尉削除
夢オチで良かった……。自分も車を乗り回す身なので、考えさせられるお話でした。
16.100月野渡削除
注意一秒怪我一生と、怪我ですまないことになってからでは手遅れです、と。
個人的には研修の教訓映像が免許更新のときに見た映像っぽくてちょい笑えましたw
17.100愚迂多良童子削除
はたてが死んだときは本気で肝を潰したわ・・・
夢オチで良かった、ホントに。
18.無評価漆之日太刀削除
>4さん
華扇さんは説教役としていい仕事してくれるキャラなんだなあと思います。
サンキュー華扇さん
お読み頂いて有り難うございました。

>7さん
映姫様、慧音さんなんかもお説教キャラだとは思いますが、華扇さんは可愛いタイプのお説教キャラだと思います。
真面目なんですけど、そこまでシリアスに成り切れないというか、心に余裕を持って話を聞けるというか。
そんな華扇さんのお説教なら、自分も聞いてみたいです。
お読み頂き、有り難うございました。

>12さん
忘れがちですけど、ついつい気が緩むと「自分は大丈夫」って思っちゃうんですよねえ。
自分もひやりとした体験は、そんな意識のときでした。
自分で経験していない事って、頭で理解していてもなかなか我が身のことだって思えないですし。
だからこそ、ときどきは意識の引き締めが必要なんだと思いながら、こんな話を書きました。
最初は、最初は文が飛べないストレスで徐々に壊れていって、はたてに縛ってもらったり永琳にも縛られたりして、そういう性癖に目覚めていくようなお話を考えていたのですけどね? いや本当に。
12さんも、事故には気を付けて下さいませ。
お読み頂き、ありがとうございました。

>13さん
交通は安全第一ですね。スピード違反、酒気帯び運転は絶対にダメです。
はたてのエプロン&スリッパ姿とか、想像したら可愛過ぎますね。

ちなみに、行間の件はどうして開けた方がいいのか、よく分からなかったり。すみません。
他の場面と、特別に違いがあったようには思えないのですが……はて?? 何故なのでしょうか?
お読み頂き、有り難うございました。

>14さん
何だか説教臭くなってしまいました。恐縮です。
杜子春の表題ですが、はたて死亡の鬱展開で読んでくれる人がそこで読むのを切り上げるのが恐かったのでそうしました。
自分も、表題を付けるべきか悩んだのですが。
いえ、昔の漫画でヒロインが死亡して、実は生きているという場面が出てくるまでえらいのに作者が読者から怒られたというエピソードを見たことがありましてね?
キャラの死亡って、好きな人にはダメージ大きいだろうなあと、ある程度緩衝剤が必要かなと思って表題を付けました。
でも、もうちょっと読んでくれる方を信じる勇気を持ってもよかったかも知れませんね。
お読み頂き、ありがとうございました。

>ワレモノ中尉さん
文も、夢で済んで本当によかったと思っていることでしょう。
もしも我が身に起こったら、シャレにならないですからね。
交通安全に、気を付けて下さい。
お読み頂き、ありがとうございました。

>月野渡さん
研修の教訓ですが、あれは自分も免許更新の講習で見たビデオを思い出しながら書いてました(苦笑)
ためにはなるんですけど、なかなか我が身と思えなかったりしてですね? いや、そんなことではいかんのですが。
くすりとして頂き、嬉しい限りです。
お読み頂き、ありがとうございました。

>愚迂多良童子さん
文も、はたてが死んだときは肝を潰したと思います。
あそこで夢から醒ましてもよかったのかも知れないですが、それだけだと事故ったあとに何が起こるのかっていう体験が不足しそうなので一週間ほどの夢を見させました。
夢で本当によかったと、愚迂多良童子さんと同じく、文も思っていると思います。
お読み頂き、有り難うございました。
20.90過剰削除
夢で良かった……!
はたてが死んだ辺りでメタ的にこれは流石に夢落ちだろうと思っていましたが
それでも本当に夢で良かったと思う
起こってから後悔しても遅いんだよ……

俺も近いうちに車の免許取りにいく予定があるのでなんともタイムリーな話でした
教習所で講習を受けながらまたこの話を思い出してるかもしれませんね
21.無評価漆之日太刀削除
>20
夢落ちってのは、流石にお約束っちゃお約束ですし、予想は付きやすかったと思いますが、やはりこういうのは夢だからいいのだと思います。
現実だとあまりにも救いが無いので。
本当に、起こってからだと遅いと思います。
講習って大切ですよね。たまにこういう意識を新たに出来る機会ってのが必要だと思います。
運転に気を付けて下さいませ。
お読み頂き、有り難うございました。
23.無評価名前が無い程度の能力削除
>18
すみません、13でコメしたものです。
本当に好みの問題でしかないので必要ないとは思いますが、
大きな場面転換があって前節との節目にもなっていますので、
文章だけでなくぱっと見でもそれがわかった方が読みやすいかな、と。
25.無評価漆之日太刀削除
>23さん
なるほど、そう感じられたのですか。
自分としては、サブタイを付けている華扇登場の場面の方が節目として大きいかなと思って、その他の場面転換と揃えたつもりなのですが。
結局、自分の感覚でしか書けない不器用者ですが、そう感じられる方もいるのだと、覚えておきます。
教えて頂き、ありがとうございました。
27.100名前が無い程度の能力削除
夢オチは読めたけど面白かったです
あなたの書く射命丸はやたらトラブルメイカーでよく痛い目に合いますね。そんな射命丸も私は好きです。
31.803削除
某スレで名前が出ていたので……
そのスレで夢ということは事前情報としてありましたがそれでもやはりゾッとしますね。
34.80名前が無い程度の能力削除
なんと言う講習ビデオ…この場合は講習SS?