日も落ち薄暗くなった命蓮寺の墓地の片隅。そこにある墓石の裏に蠢く、水色と紫の影。
今日も今日とて、多々良小傘は人間を驚かせるために一生懸命だった。息を殺し、誰かが通りかかるのを待ち受ける。
しかし小傘は気付いていなかった。夜闇に紛れ、上空から接近してくる、黒い影の存在に。
「よっ、調子はどうだい?」
「うひゃあ!?」
獲物を狙って集中するその時こそ、最も隙だらけになる瞬間。
突然後ろから声をかけられ、小傘は驚き飛びあがったのだった。
「はっはっは、小傘は相変わらず脇が甘いなあ」
「ぬ、ぬぬぬぬぬぬぬえちゃん!?」
墓石の上にぺたりと腰をおろし、小傘の事を笑うのは封獣ぬえ。人を驚かそうとする妖怪がこうもあっさり驚かされて、可笑しくて仕方が無いのである。
そんなぬえの態度に、小傘は両手を突き上げてぷんすか怒る。
「ちょっとぬえちゃん! 他人の大切な食事時間の邪魔をしないでよ!」
「へ~食事時間ねえ? さっきからずっと見てたけどさ、食事風景になる気配もなかったんだけど?」
「うっ……それは、これから一気にお腹いっぱいになる予定で……」
「今日は望み薄な気がするな~」
強がってはみるものの、残念なことにぬえの言う通りであった。
今日はまだ誰一人として驚かせていないのである。
ただ、これには小傘の実力如何に関わらず、もっと別の深刻な事態が原因であった。
「だ、だってしょうがないじゃない! 今日は誰も通りかからないんだもん!」
いくら驚かそうと頑張っても、まずもって驚かす対象が現れないことにはどうしようもない。
待てど暮らせど、今日は人通りがちっともできないのだ。
だがそんな小傘の言い分も、ぬえにしてみれば大穴の空いた理論に過ぎない。
「そりゃそうでしょうよ。ここは墓場なんだし、待ってるだけじゃ人間なんて来ないよ」
「うぐっ……」
結界で区切られた狭き幻想郷とはいえ、ここはその幻想郷の一角に建つお寺の、その墓地の片隅に過ぎない。
そこで待っているだけでは、人間に出くわす確率はかなり下がってしまう。
「墓場の雰囲気と合わせて人間を驚かせるっていうあんたの発想は悪くないけどさ、ここに閉じこもって待ってるだけじゃ駄目だって」
「うぅ……」
ぬえの意見はもっともだった。それだけに、小傘は何も言い返すことはできない。
しまいには、膝を抱えて落ち込んでしまうのだった。
「だって…だってさ……お墓以外じゃ誰も驚いてくれないんだもん。子供だましとか言われちゃうし……」
「あーあーごめん言い過ぎた。だから泣かないでよ」
目頭がうるうるしてしまった小傘に、流石のぬえも罪悪感を覚えた。
別に泣かせるつもりじゃあ無かったんだけどなあ、と軽く後悔する。悪戯はするけど。
仕方ない、とぬえは小傘の目の前に、紐がくくりつけられた土瓶をぶら下げる。
「これでも飲んで元気出しなよ」
「……何これ?」
「これは『お湯』だよ『お湯』。最近暖かくなってきたけど、夜はまだ肌寒いかもしれないし。頑張る小傘にちょっとした差し入れだよ」
「うう…わたしのために……ありがとぬえちゃん!」
「どういたしまして。さあ飲んで、温まるよ」
「うん!」
感動した小傘は土瓶を受け取って、中身をぐいっと飲んだ。
その様子を見ていたぬえは、にやりと笑った。
「ふぅ、神奈子様も諏訪子様もお眠りになられたみたいだし、わたしもそろそろ寝ようかな」
ここは夜の守矢神社。
戸締りを終えた早苗は、そう言いながら台所へと向かっていた。
寝る前に一杯水を飲む、というのが習慣なのである。
「あれ? 今外から何か聞こえたような……」
玄関前を通りかかったところで、怪しい物音が聞こえた。
動物の鳴き声でも風の音でもない、不審な音。それも結構大きい。
「まさか泥棒? でも……」
泥棒にしては物音が大きすぎる。隠れる気なんてこれっぽっちも無さそうだ。
いっそ泥棒ならまだ良かった。撃退すればいいだけの話であるし、撃退するだけの力には自信があった。
しかし、今回は相手の正体がいまいちつかめない。その分不気味だ。
「悩んでいてもしょうがないか。とりあえず玄関の隙間から……」
そう呟いて、外にいる何者かに気付かれないよう、音をたてずに玄関の鍵を開ける。
そして少しだけ戸を開き、恐る恐る隙間から外を覗いた。
「ああ~~~いえ~~~~! わちきの驚かせ力は~~はっせんいじょ~だ~~~~!!」
小傘が歌っていた。歌いながら踊っていた。
早苗はずっこけた。一人でおおいにずっこけた。
緊張して覗いてみれば、なんともたわけた歌を大声で口ずさむ顔見知りの姿。
さっきまでの無駄な緊張感を悔みつつ、早苗は戸を開けて小傘の元まで歩み寄った。
「何をやってるんですか小傘さん! そんな大声を出したら近所迷惑でしょう!」
「んあ? 出たな早苗ぇ!」
「だから大声出しちゃ駄目ですって!」
夜という事もあり、なるべく声が大きくなりすぎないよう気を付けながら注意する早苗であったが、小傘はお構いないしに大声をあげ続ける。
呆れる早苗に、小傘は一歩ぐいっと近付いた。
「ふはは! ぬえちゃんに貰ったお湯を飲んだら体ポカポカいい気持ちなのだ! 今日は早苗だって驚かせそうな気がするぞ!」
「お湯? …ってわわっ、お酒くさっ!?」
小傘から放たれたアルコールのにおいが早苗の鼻をついた。間違いなく、かなりの量のお酒を飲んでいる。
そこで早苗はふと気が付いた。紫の傘を持つ手とは反対の手に小傘が持っている土瓶に。
その土瓶には、太く大きい字でこう書かれていた。
『般若湯』
「はぁ、大体の事は理解できました」
「早苗の戦闘力は19万8000。対するわちきの驚かせ力は53万!」
「インフレすごいですね。じゃなくって、ああもう小傘さん落ち着いてください」
「うへへへ。早苗ちゃ~ん、もう一軒付き合ってよ~」
「きゃ!? そ、そんなにひっつかないでください!」
べったり抱きつく小傘に赤面する早苗。
こんなやり取りが為されているすぐ隣で、地面に横たわっている枯れ枝はほくそ笑んでいた。
いや、枯れ枝というのは早苗の目にそう映るだけであって実際は違う。
(お~あの早苗がこんなに戸惑ってる。こりゃあ面白い)
その正体は、小傘に般若湯を飲ませた犯人。封獣ぬえであった。
正体不明の種、実に便利である。
(小傘ってば酔っ払うとかなり面倒な上に、何言い出すか全く予測できないからね。きっと今の小傘はお腹膨れてるんじゃないかな)
確かにその通りであった。
酔いに任せて行動する小傘は、早苗の手に負えるものではなかった。
小傘の一挙手一投足に、早苗は困惑し驚かずにはいられない。その分だけ、小傘は満たされていった。
「なんかお腹も心もいっぱいだ~。早苗だいすき~ちゅ~」
「わあっ!? そ、そんな、駄目ですって」
「ジョーダンだよジョーダン。あはは、今日の早苗は可愛いな~よしよし~」
素面なら絶対に起こりえないような状況。
横で見ているぬえにとっては、赤面する早苗の姿が非常に愉快。そしてそれと同時に、嬉しい事がもう一つ。
(しょげっぱなしの友達を見てるのも気分のいいものじゃないし、たまにはね)
人間を驚かせるということに関してはあまり芳しくない様子の小傘。
人の役に立つ方法を模索することで傘としての気持ちは満たされているかもしれないが、妖怪としてはやっぱり驚かせたい気持ちだって強いだろう。
アルコールの力を借りるというのは不本意かもしれないが、これで少しは妖怪として満たされるだろう。
(……ま、本音を言っちゃえば早苗への悪戯がメインだけど)
比にすれば
(早苗への悪戯):(小傘への協力)=7:3
このダイヤグラムは崩せない。
ぬえだって妖怪だ。悪戯をして退治された事もあるし、その逆襲も兼ねて小傘をけしかけてみた。
(いやしかし、思った以上に効果あったなあ)
しみじみ思いながら、隣の様子を見る。
小傘は早苗にひっついたまま離れようとはしない。
「ママ~、早苗ママ~」
「何でママですか? 貴女を産んだ憶えはありません!」
「ひどいよ~あの夜の事はただの遊びだったの~?」
「それ意味合いが変わっちゃってませんか!?」
支離滅裂にもほどがある小傘に、ただただ早苗は戸惑うばかりだった。
さしもの早苗も、酔っぱらい相手ではペースが乱されてしまうのだろう。
(それにしても面白いなあ。文屋の写真機とかいうやつがあれば是非とも撮っておきたいなあ)
そしたら何度も見返して、何度も笑う事ができそうだ。
いっそこの場で思いっきり笑い飛ばしてもやりたいが、早苗に気付かれるとまずいので必死に堪えていた。
だがそれも直に終わりそうである。
「すー、すー…」
「ちょ、寝ちゃったんですか!?」
小傘は早苗に抱きついたまま、寝息をたて始めてしまった。
早苗には一気に体重がかかり、慌てて力を入れて小傘の体を支える。
「もう、こんなところで寝ちゃってどうするんです?」
「ううん…うにゃ~……」
早苗の問いかけにも、小傘はぶつぶつと呟くだけで応答しない。
困った早苗は、頭を抱えながらため息をついた。
「まったく、仕方ないですね。…よいしょっと」
不満そうにしながら、それでいてどこか楽しそう。そんな顔をしながら、早苗は小傘を抱えあげた。
そしてそのままくるりと方向転換し、神社の方へ歩いていく。
(あ、泊めてあげるんだ。まあ放っておくわけにもいかないだろうしね。さて、わたしはどうしようかな……)
早苗たちの様子を黙って見ていたぬえ。彼女には今、二つの選択肢がある。
一つ、もう十分楽しませてもらったし、このままおとなしく帰る。
二つ、多少リスクは伴うが、このまま潜入し二人の様子を窺い続ける。
(にしし。そんなの最初から決まってるじゃない)
楽しいことはとことんやる。それがぬえのモットーだ。
というわけで、バレないよう細心の注意を払いながら早苗たちの後をつけ、潜入を開始した。
「ぐ~……」
「ふぅ、とりあえずこれでいいでしょう」
早苗の部屋。
寝るために敷いておいた布団に小傘を寝かしつけ、早苗は小傘の枕元に座って一息つく。
「わたしの寝る場所が取られちゃいましたね。さて、別の布団を出しますか」
小傘を起こしてしまわないよう小声でそう呟きながら、早苗は小傘の顔を覗き込む。
ずいぶんと幸せそうな寝顔をしていた。
「…柔らかそうなほっぺ」
ほとんど無意識に放たれた言葉。
その独り言とほぼ同時に、早苗は人差し指で小傘の頬をつんつんと突いていた。
「すごく柔らかい……」
小傘の頬の柔らかさは、早苗の想像をずっと越えていた。
程良い弾力性で、ぷにぷにとしたほっぺた。
最初はただの好奇心で触っただけだった早苗も、やみつきになってしまった。
「こ、これくらい別にいいですよね? 今日は小傘さんに迷惑かけられたわけだし」
誰に向けているのかよく分からない釈明をしながら、早苗は小傘の頬をつっつき続けた。
ただつっつくだけではなく、たまには擦ってみたり、軽く揉んでみたりする。
いずれにしても、心地よき柔らかさ。至高のほっぺ。
「……んぁ、早苗?」
「あ、ごめんなさい起こしちゃいましたか。」
しまったなと、早苗は心の底からそう思った。
起こすつもりは全く無かったのであるが、いささか調子に乗りすぎてしまったらしい。それだけ小傘の頬に魅了されてしまったと考えると、少し気恥ずかしい。
そんな早苗の内心など露知らず、小傘は眠たそうに大きく欠伸をしながら、上半身をむくりと起き上がらせた。
「んん……」
「ごほん。えーっと、どうです小傘さん、酔いはさめましたか?」
わざとらしく咳払いをして、気を取り直してから早苗は尋ねた。
しかし当の小傘はと言えば、じーっと早苗の顔を見たまま動かない。
「どうしたんですか? どこか体の具合でも悪いんですか?」
「…早苗」
「えっ?」
次の瞬間、早苗の視界は空転した。何が起きたのかよく分からない。
分かったのは、自分が床に仰向けに倒れているという事実と、目の前には赤と青の瞳があるという事実の二つのみ。
「えへへ、早苗つーかまえた」
「あ、あの小傘さん。まさか貴女まだ酔って……」
「んっふっふ~」
どうやら早苗の予想通りであった。
小傘の目は先ほどの境内の時とさほど変わっていない、酔った目をしている。
そしてまた、同じく酔った様子の笑みを浮かべた顔を、そっと早苗の方へと近付けた。
「んちゅ~~」
「わぁ!? ちょ、ちょっと待って、待ってください小傘さん!」
止めようにも両手は小傘にしっかりと掴まれていて、身動き一つ取れない早苗。
人間の早苗と妖怪の小傘。単純な力比べなら差は歴然だった。
もう駄目か、と目を瞑る早苗であったが、予想に反して何も起きない。恐る恐る目を開けると、小傘は目を潤ませていた。
「うぐっ…ひっく……」
「えっ……えっ? な、何で泣いてるんですか?」
「えぐっ…だって、早苗ちゅーしてくれないから、わたしの事嫌いなんだって思って……」
小傘の目から零れた滴が、早苗の顔に落ちる。
さっきまでとは違う。酔った勢いの悪ふざけでは無さそうだった。
「ま、参ったな……」
どうしたものかと早苗は悩む。小傘の事は嫌いではない。というより、好きだった。
お調子者で、おっちょこちょいで、いつも失敗ばかりだけど、いつも一生懸命で、屈託のない笑顔を向けてくる、可愛い妖怪。
その愛らしさからついつい意地悪してしまう事もあるけれど、やっぱり早苗は小傘の事が好きだった。
これ以上、泣かせたくはない。
「あの、小傘さん」
「ふぇ……?」
早苗が言葉をかけると、小傘は右手で涙をぬぐった。
そのおかげで自由になった左手で小傘の頭を優しく撫でながら、早苗は小傘に語りかけた。
「いいですか小傘さん。わたしは貴女の事が嫌いではありません。いえ、むしろ好きです」
「えっ?」
「でも、その、ちゅ……ちゅーとかはまだ駄目ですよ? も、物事には順序というものがありますから」
早苗の言葉を、小傘は黙って聞いていた。
一体どんな反応をされるのかと気が気でない早苗にとっては、その沈黙が一番きつかった。顔は赤く染まり続ける。
それからしばし間をおいて、小傘は急に頭を早苗の胸に預けた。
「こ、小傘さん?」
「早苗が好きって言ってくれたから…わたしはそれだけでまんぞ、く……すぅすぅ」
「ね、寝ちゃった……」
小傘は早苗にのしかかったまま眠りの国へ旅立ってしまった。
これでは布団に入ることもままならないが、まあいいかと早苗は思う。この季節、よもや風邪をひくと言う事もあるまい。
ともあれ、今度こそ起こしてしまわないよう、早苗は小傘の髪をやんわり撫でる。
その時だった。部屋の片隅から、押し殺したような奇妙な笑い声が聞こえてきたのは。
「ぷ…くくくくくく……」
「だ、誰かいるんですか?」
「あーあ、バレちゃったか。仕方ない」
笑い声のする方に顔を向けると、そこには変な形をした置物のようなものがあった。
夜の暗さもあって今まで気付かなかったが、早苗には見覚えのないものであった。
しかし、その声にははっきりと聞き覚えがある。
「その声は、ぬえさん!」
「当たり~」
もはや姿を隠す意味もないと、ぬえは元の姿に戻った。黒い服に、左右非対称の翼。
そして慌てる早苗の顔を見て、にやりと笑った。
「ど、どうしてここに!?」
「ん~、酔った小傘を早苗に会わせたらどんな風になるかなって思ってさ。それでずーっと様子を見てたんだけど、いや~面白いもの見させてもらったよ」
「ずーっと見てたって……まさかさっきのも全部聞いて……!?」
「ピンポーン。ご名答」
ぬえの一言一言に、早苗はどんどん顔を赤らめる。
その様子が可笑しくて、ぬえはまた笑った。
「じゃあわたしはそろそろ帰るね。いつまでも仲良くねお二人さん」
「あ、ちょっと待ちなさい」
手をひらひらと振って部屋から立ち去ろうとするぬえ。
追いかけたい早苗ではあるがそれは無理だった。小傘がしっかりとしがみついているため身動きが取れないのだ。
それも織り込み済みなぬえは余裕をもって部屋を後にする。障子戸を開き、部屋を出ようとしたところで早苗たちの方を見た。
「あ、そうそう。小傘ってば酔っちゃうとその間の事すっかり忘れちゃうんだ。小傘に悪気があるわけじゃないから許してあげて。じゃあ、頑張ってね」
それだけは本当に申し訳なさそうに言って、そしてぬえは出て行った。
ピシャンと障子戸が閉められ、残された早苗は若干震えていた。
「え…それじゃあひょっとして、小傘さん全部忘れて……」
思い切って全てをさらけ出したのに、憶えてもらえてないかもしれない。
そう考えると、悔しくて悲しくて。
「ぐぅ…早苗ぇ……」
「小傘さん……」
そんな折、小傘が早苗の名を呼んだ。
あくまで寝言ではあるが、早苗にとってその声はずいぶんと心地良かった。
憶えてはいないかもしれないが、これで二人の関係が崩れてしまったわけではない、早苗にはそう思えた。
「ぬえさんじゃありませんが、頑張る他なさそうですね」
「むにゅう……」
気の抜けた小傘の寝言に苦笑しつつ、早苗も体の力を抜いて、眠りに身をゆだねた。
翌朝。
「さ、早苗? 一体何がどうなってるの?」
目を覚ますと同時に、小傘は困惑の声をあげた。
その声に、早苗も目を覚ます。
「ううん…おはようございます小傘さん……」
「お、おはよう。じゃなくて、全然状況がつかめないんだけど」
「ああ、やっぱり憶えていないんですね……」
小傘の様子に、早苗は落胆する。
もしかしたら憶えているかもしれない。そんな一縷の望みをもってはいたものの、やはり駄目だったようである。
「まあ色々ありましてね。簡単に言うと、お酒に酔ってしまった小傘さんがここで眠ったということです」
「そうだったんだ。ごめん、わたし酔っ払っちゃうと何も憶えてなくて……どうしてお酒飲んだのかも思い出せないや」
「気にしないでください。そんな事もありますよ」
本当なら、憶えていてほしかった。そうは思うものの、だからと言って小傘を責めるわけにもいかない。
何とも気まずいのであるが、ふとここで早苗は違和感を覚えた。
小傘の様子が変なのだ。酔って迷惑をかけた後ろめたさよりもむしろ、妙に顔を赤らめたりして恥じらいの雰囲気を醸し出している。
「どうしたんです小傘さん? やけにもじもじしていますが」
「あ…えっと、その……お、怒らないで聞いてくれる?」
「はい。とにかく言ってみてください」
こくんと首を縦に振った早苗に、小傘は胸をなでおろした。
そして緊張した面持ちのまま、ゆっくりと話し始める。
「ゆ…夢を見たの」
「夢ですか?」
「うん。それでその夢に早苗が出てきてね、言ってくれたの。わたしの事がす…『好き』って……いひゃい、いひゃい」
ほぼ無意識のうちに、早苗は両手で小傘の両頬をつまんでいた。
相変わらずの柔らかい感触を十全に楽しんでから両手を離し、そして一言。
「痛いってことは、夢じゃないんですよ」
「えっ?」
二重の意味で、小傘はどういうことなのか分からなかった。
一つは早苗の言葉の意味。今は起きてるんだから夢じゃない事くらい分かっているのに。
そしてもう一つ。つまんでくるということは自分が変ことを言ったことに怒っているのだと思ったら、早苗はやけに上機嫌なのである。
頬を擦りながら考えてみるも、やっぱり小傘にはよく分からないのであった。
一杯?
微笑ましい雰囲気でした
二人とも可愛かった
小傘の活動範囲に守矢神社が入っていた事で、こがさな派の動力は無限大になったと。
すばらしいな素晴らしい
やっぱりこがさなはいいですね
ごちそうさまでした
こがさな万歳!