一度は経験がある、物忘れ。
大事なことから些細なことまで、人は簡単に忘れてしまうことがあります。
些細なことならいいのですが、とても重要なものを忘れてしまうと大変な苦労をしてしまうことがあるようです。
とある午後。
陽気な春のぽかぽか。
「はぁ、平和ねぇ」
異変も無いし、気候も穏やか・・・賽銭も久しぶりにあったし。
とても平和だし幸せ。
何かとうるさい、厄介事しか持ってこない白黒もこないし。
紫も姿を見せないし。
「あら?煎餅が」
器に入れてあったお茶請けが無くなる。
確か、この前買ってきたはず。
「んっと、確か・・・この辺に」
居間にある戸棚を開く。
「あれ、ここにおいてあったはず・・・」
今度はその下の戸棚。
「ない、」
違う部屋の棚、流しの下。
「ない、ないないない!」
なんだか、やけになり箪笥から押入れからひっくり返すが、出てこない。
いや、落ち着け自分。
必ずあるはずだ、あの煎餅は最近買ったはず。
いつもなら、居間の戸棚に入れるし。
私の習慣だ。
「でも、他の場所にも置いてなかったし」
顎に手をやり、縁側をウロウロと歩く。
(ほんとに買ったっけ?)
ふと、疑問が頭をよぎる。
買ったのならレシートとかあるはずだ。
そう思い立って、ゴミ箱を漁ってはみたものの目当てのものは発見できず。
もう一度縁側に座り込み、お茶を飲む。
「そうよ、煎餅ごときで何ムキになってるのかしら」
やれやれと、自分を馬鹿にする。
「・・・・」
ごく、自然と手が伸びる。
「だー!!煎餅!」
無いと無性に気になる、気になってしょうがない。
「まてまてまて、今私が欲しいのは煎餅じゃなくてもいいのよ、他のものでも!そうよ!」
自分に言い聞かせながら立ち上がる。
もう一度台所に向かい、他に何かないかと探す。
「饅頭とか・・・ないわよねぇ」
もう一度戸棚をひっくり返すものの、出てくるのは塩やら砂糖やらだ。
「何もないわね」
情けないほどの貧乏。
なんでこう、うちは貧乏なのかしら・・・
「はぁ・・」
結果的に、自分の貧乏加減が分かっただけで何も進展はない。
もう一度縁側に戻る。
残りのお茶を飲み干し、腕組みで目をつぶる。
(煎餅・・・どこに置いたのかしら)
ここ2,3日以内に買ったはず、その後・・・
(思い出せない!)
「あー!イライラするわね!」
不貞寝でもしてやろうと思い横になるが、茶色く丸い醤油の香ばしい香り・・・海苔のパリッとした歯ざわり、適度な塩分がお茶をすすめるアレ・・・
どうしても煎餅のイメージが頭を離れない。
「新しく買いに行くっていう手もあるけど」
貯蓄がなぁ、あんまり無いし。
それに見つからないからっていう理由が悔しい!
今度は胡坐でもしてみる。
「必ず、どこかにあるはず!」
必ずある、と自分に言い聞かせ新たな作戦を模索する。
食べてしまったという線は無い。
「そこか!」
おもむろに立ち上がり、天井裏を覗きにかかる。
「ここか!」
今度は畳をめくってみる。
「うがぁぁ!」
柱に頭突きをして、イライラを発散させてみても事態は変わらない。
「はっ!」
閃いた!こう、分かりやすい電球が頭に!
まだ、境内を探してない!
もう、訳が分からなくなりつつあるのは自分でも分かってる。
「どっせーい!」
石畳もめくってみるが、出てくるのはグロテスクな虫ばかり。
鳥居にも上った、屋根にも上った、瓦もめくった。
挙句には地面まで掘り返してみた。
「うふふふふふふふふ・・・どこへいったのぉ~私の煎餅」
頭のネジが抜けたような気がした。
「まさか!新たな異変か!神隠しか!スキマかぁ!」
思わず膝をつき、天に向け声のあらんかぎり叫んでみた。
「ぬぁー!煎餅!」
叫んだところで、空から煎餅が降ってくるわけでもないし。
「誰か、私の煎餅を返してぇ・・・」
地面を両手で叩き、シリアスっぽく言ってみても事態は変わらない。
「お~い、霊夢?」
誰か呼んでる・・・誰?
疲れきった気持ちだったけど、顔を上げた。
「よっ」
「魔理沙か・・・ちっ」
「今、舌打ちが聞こえたんだが」
「気のせいよ、気のせい・・・」
「つうかさっきから呼んでたのに、気づかないんだから」
「そうなの?」
いつから?と聞くと、私が石畳をめくってるあたりからだそうだ。
「なんか凄い形相で、地面とか掘ってたけどどうしたんだぜ?」
「煎餅・・・」
「は?」
勢いで魔理沙の胸倉をつかみあげる。
「煎餅よ!煎餅!あの丸くていい香りのするお茶請けの定番!日本人の心!煎餅が無いのよ!」
「まぁ、落ち着け・・・な?落ち着けって」
「きっとこれは異変よ!煎餅の神隠しよ!私を餓死させる気よ!」
「って、お前の主食煎餅かよ・・・」
怒りが収まらない私を魔理沙が制すると、なにやら取り出した。
「じゃぁ、これお前が落としたものだったのかな?」
そういうと、袋に入ったものを指差しながら私を見る。
「煎餅!」
それは間違いなく煎餅だった。
まだ、封は切られていない新品の煎餅。
「ど、ど、どこでそれを!」
「あぁ、こないだ人里の近くで拾った」
本当に私のものかどうかは怪しいが、まず私のだろう・・・
冷静に考えて煎餅が落ちているわけが無い!きっとそうだ、私のものだ!私が落としたんだ!
「今日の霊夢、やけに元気だな」
「魔理沙~、あんた最高!大好きー!」
「ちょ、何だよいきなり抱きつくな!」
「うふふふふふ、さぁ食べましょう、煎餅を!」
「目が怖いぞ?」
「気にしない気にしない」
ひったくるように、魔理沙の手から煎餅の袋を奪い取り、スキップしながら家へと向かう。
魔理沙も縁側に座りお茶を待っている。
「ふんふんふ~ん♪」
鼻歌交じりでお湯を沸かし、湯のみを用意する。
茶葉が入っている筒を手に取る。
「いやぁーーー!」
思わず叫んだ。
「どうした霊夢!」
「茶葉が・・・茶葉が・・・」
魔理沙が拾った筒の中には何も入っていなかった。
いまさらながらに思い出す・・・茶葉の残りも少なかったなって。
人の記憶は消えやすいもの・・・嬉しいことがあったりすると、忘れやすいのでしょうか?
例えば好きなものを手に入れた時とか・・・
あなたも何か大切なこと、忘れていませんか・・・?
大事なことから些細なことまで、人は簡単に忘れてしまうことがあります。
些細なことならいいのですが、とても重要なものを忘れてしまうと大変な苦労をしてしまうことがあるようです。
とある午後。
陽気な春のぽかぽか。
「はぁ、平和ねぇ」
異変も無いし、気候も穏やか・・・賽銭も久しぶりにあったし。
とても平和だし幸せ。
何かとうるさい、厄介事しか持ってこない白黒もこないし。
紫も姿を見せないし。
「あら?煎餅が」
器に入れてあったお茶請けが無くなる。
確か、この前買ってきたはず。
「んっと、確か・・・この辺に」
居間にある戸棚を開く。
「あれ、ここにおいてあったはず・・・」
今度はその下の戸棚。
「ない、」
違う部屋の棚、流しの下。
「ない、ないないない!」
なんだか、やけになり箪笥から押入れからひっくり返すが、出てこない。
いや、落ち着け自分。
必ずあるはずだ、あの煎餅は最近買ったはず。
いつもなら、居間の戸棚に入れるし。
私の習慣だ。
「でも、他の場所にも置いてなかったし」
顎に手をやり、縁側をウロウロと歩く。
(ほんとに買ったっけ?)
ふと、疑問が頭をよぎる。
買ったのならレシートとかあるはずだ。
そう思い立って、ゴミ箱を漁ってはみたものの目当てのものは発見できず。
もう一度縁側に座り込み、お茶を飲む。
「そうよ、煎餅ごときで何ムキになってるのかしら」
やれやれと、自分を馬鹿にする。
「・・・・」
ごく、自然と手が伸びる。
「だー!!煎餅!」
無いと無性に気になる、気になってしょうがない。
「まてまてまて、今私が欲しいのは煎餅じゃなくてもいいのよ、他のものでも!そうよ!」
自分に言い聞かせながら立ち上がる。
もう一度台所に向かい、他に何かないかと探す。
「饅頭とか・・・ないわよねぇ」
もう一度戸棚をひっくり返すものの、出てくるのは塩やら砂糖やらだ。
「何もないわね」
情けないほどの貧乏。
なんでこう、うちは貧乏なのかしら・・・
「はぁ・・」
結果的に、自分の貧乏加減が分かっただけで何も進展はない。
もう一度縁側に戻る。
残りのお茶を飲み干し、腕組みで目をつぶる。
(煎餅・・・どこに置いたのかしら)
ここ2,3日以内に買ったはず、その後・・・
(思い出せない!)
「あー!イライラするわね!」
不貞寝でもしてやろうと思い横になるが、茶色く丸い醤油の香ばしい香り・・・海苔のパリッとした歯ざわり、適度な塩分がお茶をすすめるアレ・・・
どうしても煎餅のイメージが頭を離れない。
「新しく買いに行くっていう手もあるけど」
貯蓄がなぁ、あんまり無いし。
それに見つからないからっていう理由が悔しい!
今度は胡坐でもしてみる。
「必ず、どこかにあるはず!」
必ずある、と自分に言い聞かせ新たな作戦を模索する。
食べてしまったという線は無い。
「そこか!」
おもむろに立ち上がり、天井裏を覗きにかかる。
「ここか!」
今度は畳をめくってみる。
「うがぁぁ!」
柱に頭突きをして、イライラを発散させてみても事態は変わらない。
「はっ!」
閃いた!こう、分かりやすい電球が頭に!
まだ、境内を探してない!
もう、訳が分からなくなりつつあるのは自分でも分かってる。
「どっせーい!」
石畳もめくってみるが、出てくるのはグロテスクな虫ばかり。
鳥居にも上った、屋根にも上った、瓦もめくった。
挙句には地面まで掘り返してみた。
「うふふふふふふふふ・・・どこへいったのぉ~私の煎餅」
頭のネジが抜けたような気がした。
「まさか!新たな異変か!神隠しか!スキマかぁ!」
思わず膝をつき、天に向け声のあらんかぎり叫んでみた。
「ぬぁー!煎餅!」
叫んだところで、空から煎餅が降ってくるわけでもないし。
「誰か、私の煎餅を返してぇ・・・」
地面を両手で叩き、シリアスっぽく言ってみても事態は変わらない。
「お~い、霊夢?」
誰か呼んでる・・・誰?
疲れきった気持ちだったけど、顔を上げた。
「よっ」
「魔理沙か・・・ちっ」
「今、舌打ちが聞こえたんだが」
「気のせいよ、気のせい・・・」
「つうかさっきから呼んでたのに、気づかないんだから」
「そうなの?」
いつから?と聞くと、私が石畳をめくってるあたりからだそうだ。
「なんか凄い形相で、地面とか掘ってたけどどうしたんだぜ?」
「煎餅・・・」
「は?」
勢いで魔理沙の胸倉をつかみあげる。
「煎餅よ!煎餅!あの丸くていい香りのするお茶請けの定番!日本人の心!煎餅が無いのよ!」
「まぁ、落ち着け・・・な?落ち着けって」
「きっとこれは異変よ!煎餅の神隠しよ!私を餓死させる気よ!」
「って、お前の主食煎餅かよ・・・」
怒りが収まらない私を魔理沙が制すると、なにやら取り出した。
「じゃぁ、これお前が落としたものだったのかな?」
そういうと、袋に入ったものを指差しながら私を見る。
「煎餅!」
それは間違いなく煎餅だった。
まだ、封は切られていない新品の煎餅。
「ど、ど、どこでそれを!」
「あぁ、こないだ人里の近くで拾った」
本当に私のものかどうかは怪しいが、まず私のだろう・・・
冷静に考えて煎餅が落ちているわけが無い!きっとそうだ、私のものだ!私が落としたんだ!
「今日の霊夢、やけに元気だな」
「魔理沙~、あんた最高!大好きー!」
「ちょ、何だよいきなり抱きつくな!」
「うふふふふふ、さぁ食べましょう、煎餅を!」
「目が怖いぞ?」
「気にしない気にしない」
ひったくるように、魔理沙の手から煎餅の袋を奪い取り、スキップしながら家へと向かう。
魔理沙も縁側に座りお茶を待っている。
「ふんふんふ~ん♪」
鼻歌交じりでお湯を沸かし、湯のみを用意する。
茶葉が入っている筒を手に取る。
「いやぁーーー!」
思わず叫んだ。
「どうした霊夢!」
「茶葉が・・・茶葉が・・・」
魔理沙が拾った筒の中には何も入っていなかった。
いまさらながらに思い出す・・・茶葉の残りも少なかったなって。
人の記憶は消えやすいもの・・・嬉しいことがあったりすると、忘れやすいのでしょうか?
例えば好きなものを手に入れた時とか・・・
あなたも何か大切なこと、忘れていませんか・・・?
拾い物は体に毒かもしれません。
霊夢たちに言ってあげてください。
冷静という言葉の意味を考えさせられます。突っ込みどころは拾い食いだけじゃない!
分量的にエピグラフは要らないような気がします。最後だけのほうが効果的かと。