永久の余命宣告 序告
/
永久の余命宣告 一告
/
薄暗い森、霧が漂う湖の畔。
私は森の中を探し回っている。はぐれてしまった友達を探して。
かくれんぼの最中だけど、もう暗い。きっと近くにいるはずだ。
彼女はいつだってそう、私の心配なんか知らんぷりだ。
「ひさしぶり」
「はじめまして」
だけど、会うのはいつも違う人。
いつも笑ってる。だけど、気配が強すぎて好きになれない。笑顔とは裏腹に怖い人。
きっとみんなが噂していた、怖い妖怪に違いない。
「今日はどうしたの?」
「友達を探してます」
だから、私はお馬鹿さんなふり。
女の人は「そっかぁ」と頷いて、親しげに近づいてくる。
馬鹿な妖精のふりをして初めて会うように、一歩引いて接する。
「一緒に探してあげようか?」
上手な微笑み、私に目線を合わせて屈んでくれる。
私に警戒されまいと優しくしてくれるけど、それはこの人が私よりも恐ろしい奴なんだって、この人自身がわかっているからだ。
「この辺は危ないよ、一緒に探しましょう」
白い肌、すらりとしたお腹に背中。私よりもうんと高い背丈。
私はこの人に、頭のてっぺんから足の先まで負けてそう。
「私一人でも大丈夫」
そう言ってから、返事なんか聞かずに通り抜けて見えなくなるまですっ飛んだ。あそこにいたらどうにかなっちゃいそう。
後ろをちょっとだけ振り返ると、その女の人は、こっちを見つめて寂しそうに佇んでいた。追ってくる気はないみたい。
今日も見つけられなかった。
また明日、また明日探せばきっと見つかる。
時間はずっと先まであるんだから。
彼女と私のかくれんぼはまだ終わらない。
「永久の余命宣告」 序告
「みぃつけた」
「・・・・」
「チルノちゃんみぃつけた」
大木の木の股で女の子がじっと隠れている、友達の宣告にも関わらずじっと動かない。まだ隠れているつもりでいるのだ。
こんなときの彼女は変な意地を張る。捕まえて空の下に引っ張り出すまで負けを認めない。
「えいっ」
「あ~っ!」
両脇を抱えて引っ張り出すと、素っ頓狂に抗議らしい声を上げた。
「なんでわかったのさ」
「頭隠して、尻隠さず」
木の股に頭を突っ込んで尻がひょっこり飛び出していた。茶色い木の股から覗く彼女の青い衣装は遠目にもよくわかる。
「じゃあ、だいちゃんが鬼だったから、次はあたいが鬼ね」
「わあ! 待って待って! 今日は鬼ごっこは終わり!」
「なんで?」
「当たり前! もう何日探したと思っているの? チルノちゃん三日も隠れてたんだよ! 三日だよ三日! 鬼ごっこはもうお終い!」
チルノと呼ばれた妖精は首を捻った。
「だからどうした?」と言いたかったが、友達の、だいちゃんと呼ばれた友達がこの遊びに飽きてしまったのなら仕方がない。
「ほら、帰ろう」
「うん」
友達に手を引かれてほとんど見覚えのない景色を帰る。
鬼ごっこという名の迷子だ。
彼女たちの主だった棲家は紅魔の湖の傍、そこの一角に妖精たちのたまり場になる場所がある。
紅魔という、ひときわ強い妖気の場所があるためか、そういう場所に妖精たちは集まりやすい。
「みんなぁ!」
「お、だいちゃん!」
「あぁ! チルノちゃんだ!」
「どこいってたんだよ」
チルノが手を引かれて連れて行かれた先には、遊び仲間たちが集まっていた。その集団に手を振りながら、仲間達の輪に入る。
「やっと見つかった」
「心配させないでよ」
「なにをさ?」
妖精たちがチルノを取り囲みそれぞれに文句をつける。
どうやら、行方不明になったチルノを仲間達で捜索していたらしい。妖精たちはそれぞれに連絡を取り合ってチルノが見つかった事を知らせ合った。
「もぅ! 今度から紅魔館より遠くに行くの駄目だから!」
「行ってないよ、紅魔館と反対の方に行ったんだもん」
「長さのこと!」
「かくれんぼはしばらく止めとこうよ」
「またチルノがいなくなると困るからな」
チルノを中心にして、妖精たちは作戦会議を始めた。
妖精たちに上下はない、普通は一様に同格で、一様に仲が良く、一様に遊ぶ。
だが、チルノはここらあたりでは妖精たちのお山の大将をしていて、妖精たちが困ったときはチルノに相談しに行ったりした。
馬鹿はお利口さんより強し、というのもあるにはある。チルノの考えなしの強固な発言に押されるままに、なんとなくそうなる。
「今日はなにしよう」
「誰かいい考えあるか?」
「かくれんぼ!」
「だから、それは駄目!」
だがそれ以上に彼女は妖精の中では破格な力を持っていて、あの巫女や魔法使いに一杯喰わせることもできなくはないのだ。
人間にいたずらを仕掛ける時も、チルノは誰よりも率先して実行したし、妖精たちの喧嘩の仲裁、周辺の妖精治安を守ることもなくはない。
それは妖精たちにとって、チルノが大将であることに不安を感じさせなかった。
つまりはガキ大将だ。
「みんな、見て見て!」
だいちゃんが両手に風呂敷を精いっぱい抱えて戻ってきた。
「なんだそれ?」
「おお!」
「私にも見せてよ!」
単純な妖精たちは新たな何かに興味を奪われてそれに殺到する。だいちゃんは仲間の輪にその風呂敷をどさりと置く。
「わあ!」
「綺麗!」
風呂敷を解くと、そこから綺麗な丸い球がいくつかころころと転がった。それには花の刺繍がしてあったり、色とりどりな模様があったりと中々綺麗。
ほかにも、風車や車のおもちゃといった、子供用の遊具がちらほらある。
「おもちゃ、皆の分はないかもしれないけど、かわりばんこで使えばいいよね」
「やらせて、やらせて!」
だいちゃんは「遊び方はね」と手毬を取って、それをつく。唄に合わせて鞠をぽんぽんとつくと、面白いようにはねた。
「どこからとってきたきたの?」
「盗んでないよ、買ってきたの」
「うそだぁ!」
妖精の中では、かなり稀だが、だいちゃんには金銭感覚というか、ほかの妖精よりも少しだけ賢い。
チルノほどではないが、少しだけ力が強く賢かったのでチルノの副官、妖精の参謀という立ち位置で妖精たちに知られていた。
「チルノちゃんと氷を売ったの、すぐに売れちゃった」
「そんなんで売れるの? 氷だよ?」
「おい、チルノそうなのか?」
「わかんない・・・氷って売れるの、だいちゃん?」
「一緒に里まで行ったじゃない、これで皆を驚かせようって」
これだけの遊具をそろえるには中々の大金が必要だが、だいちゃんには妖精のくせに企画力みたいなものがあって、夏に人間が氷をほしがるという話を聞いてこれを思いついたらしい。
里の広場で商売を始める妖精というのも珍妙で、話題があったのか氷はすぐに売れた。
チルノは訳もわからず、氷を作ると人が集まるのが面白いというだけ。だいちゃんも喜ぶから嬉しいで、記憶はあいまいだ。
ふなばやまにはたぬきがおってさ
それをりょうしがてっぽでうってさ
綺麗な遊具を手に取った妖精たちは今し方教えられた通りに遊び始めた。人間の子供でもこれだけの遊具を持てるのは結構裕福な方だろう。
チルノだけでは氷は売れなかった、だいちゃんの知恵が初めてあってお金を手にすることが出来たのだ。
「ほら、チルノちゃんも遊ぼう?」
だいちゃんが、いちばん綺麗な鞠を手に取った。ほかの妖精が遠慮したところを見ると一番いいところは大将に譲るということだろうか。
妖精社会は人間の子供社会、その一番原始的な部分に似ている。
ただ、ここではチルノという良質な大将格のおかげでいじめもないし、不公平もほとんど生じなかった。
チルノは頭が弱いが、それは妖精なら当然の事。
妖精たちは安心して、チルノの周りで遊んだ。
にてさ やいてさ くってさ
それをこのはでちょいとかぶせ
「やだ」
「え?」
「そんなの別にいいもん!」
チルノは綺麗な遊具に目もくれずにその場から逃げた。ひやりとした風を残してまた森の中に消えていく。
「あれっ?」
「チルノはどこいった?」
「わ、わかんない、なんだか怒ってた」
「まずいって、この辺最近すげぇおっかないヤツでるらしいし」
「ていうか、チルノにそれを相談するために探したんだろ」
「あっ」
「なんで忘れるのよ!」
「おまえもだろ!」
「うるさい!」
「おもちゃを持って来ればチルノちゃん夢中になると思って・・・」
いつものチルノなら、かじりつき夢中になってだいちゃんに遊び方を教えてもらうはず。ふらふらと遊びまわるチルノをくぎ付けにできるはずだった。
「わたし、探してくる!」
「駄目だって、もうお日様沈みかけだ、今行ってもみつかりっこないよ」
飛び出そうとするだいちゃんを仲間が止めた、今行けばおっかない奴に追いかけられてしまう。チルノも見つからない。
「また明日探そう」
「・・・・」
「大丈夫だって、チルノなら平気さ」
「でも・・・・」
「早く帰ろう」
渋るだいちゃんを宥めすかし、仲間であつまり、安全な棲家に戻っていった。
*************
「なにさ! あんなの全然つまらないもん!」
薄暗い森の中、チルノは独り言を散らかしながらほっつき歩く。
自分はかくれんぼがいいのだ、皆で遊ぶから面白いんだ。
あんなおもちゃ、あれじゃあ、ひとりぼっちで遊んでるのと何も変わらないじゃないか。
チルノ自身なんでこんなに怒っているのかよくわからない。
「だいちゃんのばかぁ」
深い藪を足で蹴りつける。なんていらいらするんだろう。
だいちゃんは頭がいい、自分では思いつかないことを思いつく。しかも思いつくことが面白い。
この間人間を驚かせた時も痛快だった。 慌てふためく人を見てにやにや笑いが止まらなかった。
私は、おもちゃの代わりにみんなと遊んでるんじゃない。
気が付くと、周りは真っ暗になっていた。
太陽の代わりに月が上がっている。そろそろ戻らないと。
「えーと」
チルノはあたりを見渡す。しかし暗闇の中、その上見慣れない場所とあっては帰りがどの方向なのかよくわからない。
「どこだっけ?」
普通、幻想郷で夜中に出かける奴は相当な腕利きか、余程の馬鹿と相場は決まっている。
夜中は月に誘われて妖怪がうろつき迷子を喰ってしまうからだ。不慣れな道を夜中に歩く奴の運命は大体のところ決まっていた。
森の闇の深いところから声が聞こえてくる。
「そこにいるのはだぁれ?」
「あんたこそだれさ」
金髪、黒い洋服。
チルノとは歳のあまり変わらなさそうな少女だ。
だが、闇の中でも紅く光る瞳が、その少女が尋常の者ではないことを教えてくれる。
「怖い妖怪、闇の妖怪だよ」
「・・・ああ、あんたね」
チルノはしばし逡巡の後に思い出した。
こいつは何度か見た覚えがある。ルーミアとかいう妖怪だ、人喰い妖怪のルーミアだ。
周りを必要以上に暗くしていた妖怪がチルノの正面に近寄ってきた。
「あたいに何の用さ」
「何って、お腹が減ったってだけ」
「あっそう」
チルノは「じゃあね」と適当にいなしてその場を去ろうとする。だが、ルーミアはチルノの歩きに回り込んで行く手を遮った。
「なに?」
「妖精ぐらいなら、腹の足しになるかなって」
「ふーん」
妖精に死ぬということはない。
厳密に言うなら死ぬこともあるらしいが、一日もすればどこかで生まれ変わってまた元気に遊びまわるのだ。妖精は死ぬということを基本的に怖がらない。
「貴女は食べてもいい妖精?」
「・・・」
それでも痛いのは嫌なので、いつもなら三十六計逃げるにしかずというところだ。
妖精は知的な存在の中では最下等の存在である。当然、妖怪と正面切って喧嘩すれば負ける。それはチルノも分かっている。
普段通りでないチルノは喧嘩上等と、氷の翼を力いっぱい広げた。
「じゃぁ、いっただきまーす」
チルノの威嚇も意に介さず、無造作に近寄る妖怪。
にやにやと見下した薄ら笑いが癇に障った。
「なめやがって! ぶっとばすよ!」
喉を、空気を裂くように張った。
特に考えはない、ただいらいらしてたから声を張り上げただけだ。いつも通りだ。どうせ死んでも、一回休みになるだけだ。
「・・・・」
にやにや薄ら笑いを張り付けたまま、ルーミアは止まった。チルノを馬鹿にするように、けたけた嗤いつづける。
チルノは酷く侮辱された気分がして、妖怪を睨みつける。
「そんなに叫んで、怖いのかー?」
「やるのか、やらないのかどっちさ!」
ルーミアは「んー」とちょっと考える、この間に逃げればいいのに、その考えは不思議と浮かばなかった。
「まぁ、いっか、見逃してあげる」
そういうか言わないかの間に、ルーミアは闇に溶け込んだ。
「あっ」
もう一度ルーミアがいた場所に目を凝らしても、姿は見えなかった。
「どこいった!」
叫んでも返事は帰ってこない。
からかわれるだけ、からかわれた。
馬鹿にするために現れたようなもの、今日はなんてひどい日なんだろう。
ちょっと、情けなくなってきた。何のためにここに来たんだっけ。
おもえば、勝手に私がいらいらして飛び出しただけだった。
今日は厄日だ、明日はどうやってだいちゃんに謝ろう。
考えれば考えるほど、暗い方に行ってしまう。こんなことは彼女の人生で初めての事だった。
「変な妖精もいるものねぇ」
「今度はなによ!」
またルーミアが戻ってきたのかと思ったが、どうやら違うらしい。 さっきとは気配が全然違う。
もっと大きくて、穏やかだ。
「ずいぶんな挨拶じゃない・・・今晩は妖精さん」
今度は空から別の声が降ってきた。
「死なないとは言え、命を粗末にするのは感心しないわ」
「あんたに関係あるもんか」
どうやら、声の主は先ほどのやり取りを見ていたらしい。するすると空から降りてきて、チルノの低い視線に合わせるように屈み、微笑んだ。
ルーミアとは違って、優しい笑顔だ。
「私の事は知ってる? チルノちゃん」
「知らない、あんた誰?」
「八雲紫よ、よろしくね」
細い指で冷たい髪の毛を撫でる、チルノもあまり嫌な気分はしない。
「この辺は危ないわ、夜中に出歩くなんて悪い子ね」
「平気、だってあたいサイキョウだもん」
「ふぅん・・・そうなの」
少しだけいつもの調子を取り戻したチルノ。いつものように無い胸を精いっぱい張った。
「見てたわ、まさか妖怪をやっつけちゃうなんて」
「えっ?」
紫は、ぱらぱらと柏手を叩き、優しく微笑みかけた。
「チルノちゃんて、本当にサイキョウなのね」
「えっ、っと・・・あったり前の真ん中! あたいはサイキョウだからね!」
不意のことだったが、ほめられると嬉しい。ルーミアを追い払ったつもりはなかったが、そうだというならそうなのかもしれない。
今までの陰鬱な気分もどこかに飛んで行って、チルノは上機嫌だ。
紫は月明かりがよく当たる傍の巨石に腰掛ける。
「おいで、おいで」とチルノにも腰掛けるように動作で促した。
紫の柔らかな笑顔、警戒を解いたチルノは気分よく隣に腰掛けた。
「この辺は、こわーい妖怪が出るの、妖精を食べちゃう怖い妖怪」
「だから危ないの」と紫は付け加える。
「ルーミアのこと?」
「いいえ、ルーミアはたまたまよ。それに、彼女はちゃんと領分を守った分別のある妖怪」
「平気だよ、あたいサイキョウだもん」
チルノは普段通りに考えなしの威勢を張った。チルノが最強かどうかはさておいて、仮に食べられたとしても、一回休みになるからそれほど恐ろしいことでもない。
だが、紫の言葉はそれとは違った。
「駄目、その妖怪はね、ちょっと変わった妖怪なの」
紫はチルノの頬に手のひらを被せ、覆うように撫でた。目を合わせてチルノの視線を逃がさないように。
「その妖怪に食べられた妖精はね、元通りにならないの。だから、お友達にも気を付けるように言って頂戴ね」
「ふーん」と気のない言葉を返した、わが身に関わることながら、どうやら事の重大さをわかっていない風だ。
「そいつをやっつけるためにここまで来たけど・・・・逃げられちゃったみたい」
「手伝ってあげようか?」
ガキ大将特有の世話焼き根性が湧き出てきたのか、相手が幻想郷で一番恐ろしい妖怪とも知らずに生意気な口を叩く。
「そう、ありがとう・・・じゃあこうしましょう、チルノちゃん」
「ん?」
「私がその悪い妖怪をやっつけるまで、チルノちゃんは友達を守ってあげて」
紫が「約束よ」と小指をチルノのそれに絡める。
「それじゃあ、つまんない」
せっかく最強の自分が相談してやっているのに、つれない返事。チルノはぶすっと膨れ面になる。
「大切なことよ、友達がひどい目にあったら悲しいでしょう」
穏やかな声に、ついついつられて「うん」と頷いた。
直感が紫を格上だと認めたのか、普段は悪戯ばかりするチルノもすっかり素直にして、小指にかわいらしい力を込めて握り返す。
「うそついたらハリセンボンのーます」
「ゆびきった」
それが終わると、紫はチルノの耳元に顔を寄せ、囁いた。
「約束よ」
「うん!」
「・・・・」
「チルノちゃん!」
「・・・だいちゃん?」
気が付いたら、湖の畔で寝てた。心配そうなだいちゃんの顔がよく見える。
「心配したんだよ! どこ行ってたの?」
「あれ? 紫は?」
きょろきょろとあたりを見渡しても紫の姿はなかった。
それに景色が見覚えのある場所になっている、というか自分の家と目と鼻の先だ。
「ゆかり?」
「あれ? れれれ?」
首を傾げて考えてみる。 さっきのは一体全体なんだったのだろう?
「チルノちゃん、その小指の何?」
「えっ」
「すっごく綺麗!」
チルノの指には金細工のような細い糸が結んであった。紫と指切りした指だ。
「・・・・」
「どこにあったの? 私もほしいなぁ」
「だいちゃん!」
チルノが突然叫んで、だいちゃんの手をがっしり拘束した。
「わっ!? べ、別にチルノちゃんのを取ったりしないよ!」
「危ないから、一緒にかえろっ!」
「へ? えーと、寝てたのはチルノちゃんの方でしょ?」
「ほらほら、一緒に帰るの!」
チルノはだいちゃんの手を強く引いて、わき目もふらずにに棲家に向かう。
「わぁ! って、ててて! 痛いってば!」
顔を歪めながらも、だいちゃんの顔はどこか楽しそうだ。
この、不思議で、元気なチルノの姿、考えなしの行動がどこか安心させてくれ
る。
けど、どこかではみんなの事を考えていて、やっぱりチルノは頼りになるのだ。
「ほら、遅い!」
「ま、待ってよぉ」
それを空からこっそりと見つめる影がある。
「素直、とてもいい子ね」
紫はくすくす笑って、二人が手を引く様子を見守る。
二人が棲家に戻るのを見届けると、すっとスキマを開いて、その中に消えていった。
紫の追ってる妖怪って誰だろうか。これだけだと評価しづらいので期待込みでちょっと低めに。
犯人?となる妖怪がどのような立ち位置にいるのか、気になります。