Coolier - 新生・東方創想話

コンスタント・ディケイ

2012/04/07 23:26:48
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――あや。
―――あや。

呼んでいる。
真っ暗だ。何も見えない。
見えないのに、呼んでいる。“あや”を呼んでいる。ここはきっと、阿求が夢。
ふらふらと彷徨うのは、阿求。まるで蝶のように意識は中空に浮かんでいる。阿求は誰だ。いつの阿求だ。何も分からない、無明の底。

――あや。
―――あや。


――約束よ、あや。いつかきっと、遂げて見せるから――。








* * *


「夢を、見るのです」

雨ばかりが畳の匂いを際立たせる六月のいつだったか、そのように告白したのを阿求は覚えている。その日は少し身体の調子も良かったから、上半身を起こして文に応対した。

「夢、ですか」
「ええ。ここのところ毎晩、同じ夢を」
「はあ。して、その内容は」

阿求は少し口ごもる。この妖怪のことだ。どうせ阿求をからかうに違いない。ましてや、彼女の名を夢で呼ぶなど、文でなくても何か言う。

「言えないような内容で」
「いいえ、違います。……ええと、その、名を呼ぶのです」
「ほう、誰の名を」
「……“あや”、と」
「ははあ、私のことを夢に見るほど恋しく思っていらっしゃる」
「それはありえません、絶対に」
「あややや、や。これは手厳しい……」

そうは言っても文はニヤニヤとその顔を崩さずにいる。やはり言うべきではなかったか。はあ、と阿求の溜息。この女と来ればいつもこうだ。いつの間にか調子を握られてしまっている。

「けれども、これでは新聞のネタに出来そうもありませんね」
「貴方は私まで餌にしようとしていたのですか」
「日頃からあらゆるものに注意を向けるのが一流のブン屋というものです」

えへん、と胸を張る文。これだから阿求は文の生きてきた千年を信じることが出来ない。それほどに文は長寿を感じさせないのだ。妖怪って恐ろしい。初対面で少女を名乗られても、きっと気が付かないだけの容貌、仕草。阿求よりか余程少女らしい。
阿求が幻想郷縁起に記した以上のことを知る妖怪は、文くらいのものだ。種類は違うが同じ文筆業。お互いに情報を交換することもある。阿求はそれでいいと思っていたし、文もそれでいいと思っているから阿求のところに顔を出すのだろう。

「しかし、まあ、これは……」
「文様、しつこいですよ」

大体、夢なんて何が出てくるか分からないものじゃないか。いちいち内容など指定も出来ない。けれども毎日のように同じ夢と言うのも気味が悪いわけで。生きてきた年月だけは長い文に相談したと言うのに、全く。

「何か心当たりはありませんか。毎日同じ夢を見ると言うのは、どうにも」
「それは私と阿求さんの情事の件についてで」

「存在しないでしょうに」
はあ、この女に聞くのではなかった。
諦めと呆れだけが胸の中に渦巻く。せめて八意様に聞けばよかった、などと考えて少し冷めた茶を啜る。不味い。

「けれども」
文が急に真面目な顔になって口を開く。阿求は口元の茶碗を離す。雨音は止まない。文が笑っていても、そうでなくても。条理というものは、何者にも染められない。

「それは、阿求さんだったのでしょうか」
「……と、言いますと」
「いえ、夢とは不可解なもの。その中で自らというものは無いと同じですから」
「つまり、私以外の立場から、誰かを呼んでいると、そういうことですか」
「まあ、と言ってもあくまで私の推測に過ぎませんが」

あっけらかんと言ってのける。先ほどまでのおどけぶりは何処へやら。そのままずずっと茶を啜る。唇の艶が目立つ。ああ、これでこそ、千年の歴史そのもの。話した甲斐があった、とも言える。それにしても先ほどのからかいは余計であったと思うけれど。
しかし、阿求以外の主観、と言っても考え付く者が無い。ならば阿求は誰だ。誰が阿求だ。或いは、阿求でない阿求――代々の御阿礼の子のいずれか――か。そういえば、先代阿礼乙女の名も阿弥と言ったか。もしかしたならば、それか。それこそ、文ではなく。

それこそ、阿求に知る術は無いのだが。





* * *






――あや。
―――あや。
暗闇は何処かへと消え、馴染みのある畳の匂いが広がっている。
阿求は座し、ただ目の前を見つめている。何も無いのに、目の前を見つめている。
それだけだ。それだけだった。

雨はざあざあと降り続いている。






* * *


ぼお、と頭の芯が茹でられている様な、けれども、寒い。寒くて寒くて堪らない。
ごほごほと咳をする。その度に、ズキンと頭痛。背中も痛い。この冷え冷えとした全てが胸より下を支配しているみたいに、鳥肌が止まらない。
布団を口元にまで引き上げて、胸の間に手を置く。汗ばんだ、細い手。トクトクと音がする。稗田阿求が生きている証。阿求は感じる。私はまだ、生きている、と。

自らの運命を嘆くことに、阿求は既に飽いていた。生きるのが長ければ幸せになれるとは思えなかった。転生のために幸福という幸福のほとんどを削りとられている身の上だ。縁起を記せるだけ、まだいい。

この身体に生まれたと言うことは、罰なのだ。御阿礼の子への、罰。限りある人の命を永遠なるものとしようとした、稗田への罰が全て阿求の身に降りかかっている。それこそ、閻魔への従事や短い寿命でも足りず、こうして日々阿求の身を蝕み続ける。

カリリ、と畳を爪で掻く。苦しいときにはこうして爪の間に井草が入るものだ。そうして、起きてみれば血が流れているのも良くあること。痛いのは、正しい。阿求が生きていると言うこと。心臓の鼓動も、痛みも、熱も、生きているという何よりの証明。

ゴホゴホと咳を吐く。痰が絡む。もしかしたなら、先代達よりも早くガタが来ているのかもしれない。兎に角、幻想郷縁起を纏めなければ、そうして、転生。次の御阿礼の子に託して、消える。掻き消える。亡霊のように残る選択肢も無く、ただただ次の人柱の下に押し潰される花として。雨の音が煩い。花に入る湿った土の匂いは間違いなく阿求の肺を蝕んでいる。けれども、またいつか忘れる。この土の匂いも、清清しい朝とともに忘れる。それこそ、阿求にとっての先代たちのように、掻き消えてしまう。いつかの阿求のように、消えてしまう。

「私は何処に消えるの」

或いは、十冊目幻想郷縁起の中か。
或いは、次代御阿礼の子の中か。

天井を暈して見ていると、急に視界がぐらりと傾いた。胃の底から熱いものがこみ上げてくる。手で口を押さえて、縁側に這う。そうして、吐いた。胃液だけを吐いた。水溜りの中につんとする匂いの異物が混入する。汚れてしまった指先を懐紙で拭いて、はあはあと肩で息をする。暫くそのまま、縁側でうな垂れていた。
風が吹いて雨が顔に降りかかる。生理的な涙は暖かい。雨粒は冷たい。だから、まだ生きてる。
生きている。
涙が止まらない。

「私は、何処に消えるの」

生きているのに、涙が止まらない。まだ、生きていたいのかもしれない。不幸せを嘆くのには飽いた。けれども、まだ生きていたかった。それが業となり、このように阿求の身を蝕んでいる。もしかしたなら、そんな自分は嫌いなのかもしれなかった。間違いなく言えることは、阿求は弱く、愚かな人間でしかないということ。

「消えてしまいたいの」

突然、女の声が産まれる。何も、初めてじゃない。けれども、驚いた。妖怪の中の妖怪。賢者と称される妖怪。幻想郷そのもの。八雲紫が阿求の後ろに立っていた。彼女は決して門を叩かない。それが隙間妖怪としての矜持なのかもしれないけれど、薄気味悪いことは間違いない。それを気にする余裕は阿求にはないのだけれど。

「紫……様」
「貴方は消えてしまいたいの、阿求」
聞かれていたのか、言葉を。相変わらず趣味が悪い。
「……いいえ、私は生きているのです。ならば、消えてしまいたくはありません」
「それは、死にたくないということ」
「いいえ、いいえ。それは違います。私の死は、稗田の先に豊穣をもたらす。ならば避ける所以はありません」

御阿礼の子が産まれれば、稗田家は確かな繁栄を維持することが出来る。幻想郷縁起は幻想郷に生きる人間にとって必要なものであるから。人間に残された神秘が、稗田そのものであるから。それが罪に塗れていようと、違いなく妖怪に対抗する特別。それは、これまで積み重ねてきた何か。これからも積み重ねていくであろう何か。正しさなど知らない。

「稗田の将来のために、次の御阿礼の子のために、貴方は死ぬの」
「ええ、きっと」
「そう、そうなの」

紫は顔を落としてふっと笑う。安心したとも嘲るとも取れる、魔性の笑み。
阿求は紫のことを何も知らない。それこそ、存在と能力程度しか。紫はふらりと現れてそうかと思えば消えてしまう。幻想郷縁起の内容を検閲するという役柄以外に接点も無かったから、阿求も深く知ろうとはしなかったのだ。だから、どのように笑うのかも、知らなかった。

「阿弥は、死にたくないと泣いていたのに」

“あや”。
“阿弥”。

もしかしたなら、夢の中の私は、阿弥。
いいや、“あや”は呼ばれている。常として、呼ばれている。
誰に呼ばれている。それは、阿求。
ならば、阿求は、誰?

「阿弥を、知っているのですか」
「貴方の先代よ。編纂には私も関わることになっているのだから、当然でしょう」
「ならば教えてください。阿弥とは、どのような女性だったのですか」

知りたかった。理由などは無かった。あえて言うなら、夢のせいかもしれなかった。胡蝶の夢。夢と現の区別もつかなくなるなんて、情けのないことだ。けれども、知っておきたかった。夢の中で呼ばれているのかもしれない女性のことを。

「貴方と同じで身体が弱くて、けれども暗くは無かったかしら」
それだけよ、と紫は言う。妖怪である彼女にとって、阿弥とはそれだけの存在なのかもしれない。けれども、その生まれ変わりである阿求にとっては違う。彼女を知りたい。彼女の生き方。彼女の思い。もしかしたなら、阿弥とは弱い女性だったのかも。たったそれだけのことも阿求は知らないのだ。

「とても人間らしい子だったわ。優しくて弱くて、悲しい子」
「最期はどのようにして」
「心を病んで、泣きながら死んだ」
「そうなのですか」

そんなこと、誰も教えてはくれなかった。家の言い伝えにも残っていなかった。
阿弥はたった今、稗田の家で息を吹き返したのだ。無というものから、知識として。
阿求もいずれそうなってしまうのか。知られるかどうかも分からない、ただの歴史として。名前だけ残して。その生き様も、思いも、何もかも忘れ去られて。

「あなたも、そうならないといいけれど」

そうとだけ言い残して紫が空間を裂く。そうして、その中に消えていく。

「待って」

貴方にはまだ、聞きたいことがあるのに――。








* * *


――あや。
―――あや。

阿求は泣いていた。
阿求で無い阿求は泣いていた。“あや”を呼んで泣いていた。
そうして、縁側から降りて、傘も差さずに歩く。空も泣いている。どうして泣いている。

――お呼びですか。

そう、聞きなれた声。それは、射命丸文。
雨に黒い髪を濡らして、ちゃぷちゃぷと歩く。阿求に向かって歩く。

――あや。
――はい、私は文です。……いいえ、私があやです。
――……そう、貴方があやなの。

“あや”は、文?
阿求は自らの口が開くのを感じた。勿論、これは阿求ではないのだけれど、その主観の中に阿求を落とし込んでいるのなら阿求であると表現してもいいはずだ。

――けれどね、あなたはあやではないの。

“あや”では、ない。
ならば、“あや”は阿弥。それとも、別に。

――しかし、私もまた、あや。私が文である限り、あやの生きていたことを覚えている生きた証人で無ければならない。少なくとも、あやが何者でもなくなってしまわないためには。
――貴方は有限であるというのに。
――ええ、しかしこの世界もまた有限だ。であるならば、さしたる問題は無いでしょう。
――そうね、そうであるのかもしれない。

そうして、考える。文は、阿弥のために生きているのか。それは、今もまだ。
ならば、文にとっての阿求は、一体――?


――私は、阿弥のために生きるのです。それは、きっと貴方も。





* * *



「ええ、確かに私は阿弥と親しかった」

夢の話をした。夢の中、ずぶ濡れた文の言葉をそのまま伝えた。求聞持の能力は便利だ。それが阿求の空想なのか、阿求の中の誰かの掠れた記憶なのか、それを聞いてみるつもりだった。そうしたなら、阿弥との関係をあっさりと認めたのだ。

「貴方の見たという夢は、きっと過去そのものでしょう」
「ならば、文様の言葉は」
「ええ、全て真実です」

文は、阿弥のために生きている。
先ほどまでの雨は止んで、けれども空は曇ったままだ。泥の匂いが外から香ってくる。蓮の話を思い出す。実際に見たことはないけれど、泥の上に咲く花。その泥は、きっと御阿礼の子。蓮は、阿求であり、阿弥。

「阿弥は、心を病んで死んだと、八雲様が」
「はあ、あの方が」
「どんな最期でしたか」
「どうして」
「知りたいのです。私は阿弥のことを、何も知らない」

阿求もいずれ阿弥になってしまう。ものも言えぬ屍に、思い出されることの無い記憶に。意味のない同情も同じだった。そんなものはただの自己満足でしかない。
もしかしたなら、救われたかったのかもしれなかった。いつか同じように、誰かに思い出してもらえることを期待していたのかもしれなかった。だから、阿弥に執心している。たったこれっぽっちのきっかけだというのに、どうしようもない浅ましさだ。


「阿弥は、頸を切ったのです」

頸を、切った。
病で死んだのではないのか。頸を切って死んだのか。心を病んだというのを思い出せば、なるほどそうであってもおかしくはない。けれども

「阿弥は、死にたくないと言っていたのではないのですか」

紫は死にたくないと言って泣いていたと言っていたのだ。死にたくない者が自ら頸を切るだなんて。自決するだなんて。矛盾した話ではないか。

「ええ、死にたくないと言っていました。けれども彼女は頸を切ったのです」
「それは、どうして」

問う。そうして、沈黙。
天狗ははあ、と息を吐く。それだけが沈黙を破った。

「きっと、阿求さんも分かりますよ。そう遠くない先に……私、千年ほど生きてきましたが、妖怪ってのはなかなか死ねないもので、それどころか病もない。怪我もすぐに治ってしまう。生きることに飽くことにも、もう飽きました。けれども、阿弥は違った。ただでさえ短い人間の命。その中でも短い時しか生きることが出来ないと、決められていた」

天狗の目は、何処を見据えているのだろう。少なくとも、阿求でないことは事実だ。千年もの間腐り落ちることなく存在を続けてきたそれは、阿求の見る限り何を写しているわけでない。――きっとこれは、文の懐古の表れなのだろうな、と思うことにした。煙草こそ持っていなくても、酒の力に頼らなくても、文は阿弥を思い出している。そうして、寂寥に抱かれている。何物も得ることの出来ない空虚の中に、ただ身を浸している。

「きっと……きっと、ね。阿弥は怖かったのですよ。死ぬことより、もっと先にあることが――あらゆる暴虐や殺戮よりもっともっと恐ろしいものが」

死ぬことより、もっと先にあること。
もしかしたなら、阿求は思う。もしかしたなら、嘔吐物とともに吐き出したそれは、阿弥も感じていたのではないか。それはきっと死より先にしか訪れないものだ。


「それは、忘却ですか」

阿弥も、救われたかったのだろう。そうして、阿求も同じことを望んでいる。
御阿礼の子には、何も無い。たとえば、完全なる死が無い。別の命にもなれない。亡霊となることはできない。そうして、誰にも覚えていてもらえない。

「ええ。私に知る術はありませんが、きっとそうなのでしょう。何より、貴方がそう信じることが出来るほどに、阿弥は稗田の中から消えてしまっている。阿弥が頸を切ったとも、心を病んだとも、何も知らされてはいなかったのでしょう」

それは、御阿礼の子が絶望することを防ぐため、かもしれない。
先代の自分が自殺したなど、知ってしまったなら生きる希望も何も失ってしまうかもしれないから。そうして抹消したという行為が絶望を誘うとは考えもしないで。

「ただでさえ寿命の短い御阿礼の子が、自ら命を絶つなんて酷く疑わしいことです」
「人々に印象を植え付けるために、自ら死んだと」
「きっとそうなのだと思います。死ぬことよりも、忘却を恐れた」

それはきっと、人間にたった一つ残されるはずの救いですから。
きっと人間は心臓が止まったときに死ぬのではない。誰にも忘れ去られたときに死んでしまうのだ。使い古された言葉だ。けれども、それを救いとしなければ、人間は死を迎えることが出来ない。気が狂ってしまうから。

「稗田家も必死でね、阿弥の死が自殺であると隠そうと躍起になっていましたよ。無駄なことでしたがね」

風の音がする。
文は湯飲みを片手に、その中を見つめている。そこに文の顔が映っているのか。であるとするなら、彼女のその妖怪らしくもない優しげな顔が彼女自身を見ていることになる。その顔を向けるべき相手を間違えたまま、水面に映った文。

「私は、ね。阿求さん。彼女と同じ“あや”という音を持っている。今となってはそれが産まれ持ってのものなのか、いつだったか適当に名乗り始めたのかそんなものは覚えていませんが兎に角、これは何かの縁だと思うのですよ。あの頃私は、人間よりも長く、生きることにも飽くほどの時間を生きることを嫌っていました。ぱぁ――っとね、消えてしまいたかったのですよ。それこそ、花火のように」

けれども、消えることの出来なかった、文。
それは、阿弥のために。きっとそうだ。

「決めたのですよ。私のこの長すぎる命で、阿弥のことだけは忘れないように。それが射命丸文の使命であると」
「……けれども、それは」
「ええ、酷く辛い事です。忘れないように心に留めておくというのは、ひどく。求聞持の能力を持った貴方が羨ましい。――時々ね、頭の隅が擦れて削れるような、妙な錯覚に襲われることがあります。そんなときには、阿弥のことを必死で思い出す。忘れていないか、記憶は完全か。阿弥のそのままを記憶しているかどうか、酷く不安になりながら」

きっとこの世で文の苦しみを、誰一人として理解することは出来ない。それは誰にだって言えることだろうけれど、そうとしか形容できないのだ。
そうして、阿求に悟らせるにはあんまりに充分すぎた。阿求は文の重荷にはなれないこと。阿弥のように、文に覚えていてはもらえないこと。文の世界の中ではきっと阿弥が殆どで、阿求は居場所が無いということ。
阿求は阿弥よりも救いの無い、忘却の檻に閉じ込められることが決められたも同じだった。そうして刑の決定の言葉を告げられることも無いまま、自らの中で覚悟をすることを求められているのと変わりも無い。それは何より、文の優しさのために。


「夢の中の貴方、誰だかお分かりになりましたか」
「もしかしたら、という方なら」
「その人はね、きっと私よりも救われませんよ。どれだけのことをしても、報われない戦いをしている。それこそ、たった一人でね」

文は茶を飲み干した。そのままきっと帰るのだろう。愛用の写真機を肩に下げる。
本当は文は、妖怪なんかよりずっと残酷な人なのだと、やっと気が付いた。
阿求をこうして尋ねてきたのは、きっと阿弥を感じるため。阿求の顔に、苦しむ様に阿弥を思い出していたのだろう。忘れないように。そうして、それが阿求にとってのなんとなくの安寧と置き換わって、けれどもそれを今、これまで積み重ねてきた言葉よりもずっと少ない言葉で崩してしまった。或いは、酷く遠まわしに死刑宣告を残していった。
きっとこれからも文の傍らにあるのは阿弥で、阿求は、他の御阿礼の子はそれを彩るための蓮に過ぎない。いつか泥に沈むと知ってしまった、憐れな花。

「それでは、また」
「ええ、また今度」

本当に、今度はあるのか。
文は風とともに去っていく。文の言う頭の隅が削れてしまうような錯覚を阿求は感じたような気がした。痛みの正しさなんて、嘘だ。ただの欺瞞だ。生きていることの確かめ方を忘れていないか考える。求聞持の能力は絶対だ。けれども、もう無駄なことなのだ。


「さようなら、残酷な人」


阿求にはもう、なんとなしの安寧を抱くための術がない。












* * *





――あや。
―――あや。

呼んでいる。
私は呼んでいる。

それは、何のために。


いつだったか忘れてしまった思い出を、歪めてしまった思い出を、繰り返す。
夢のようにあやふやに、胡蝶の夢のように愚かしく。

きっと私は愚かなのだ。
愚かしさの故に幸せを夢見ているのだ。

私は、誰。

そう、私は!
私は、貴方なのだ。
いいや、違う。貴方になりたい。貴方を夢見ている。
少なくとも、今だけは貴方と同じ、御阿礼の子。








「いいえ、それは違います」

世界は夢のような虚像ではなかった。やはりざあざあと雨が降っていて、冷たい。だから残酷だ。その証拠に、阿求の目の前に立つ紫は泣いているではないか。

「貴方は爪の間から流れる血を見て背のぞくりと冷える感覚をきっと知らない。心臓の音がもたらしてくれる安心も、嘔吐の時に流れる涙を拭いた後の感触も、何より、死後のことを考えたときのどうしようもない恐怖を貴方に知る術はない。だから、違うのです」

残酷で救いの無い言葉を紫の前に並べる必要が、阿求にはあった。紫の全てを一部の隙も無く否定して、阿求は本当にひとりぼっちにならなければならない。阿求の弱さを見ないために。そうでもしなければ、本当に紫の思い通りになってしまいそうだから。

「私は確かに御阿礼の子です。けれども私は、阿弥じゃない」

阿弥の代わりだけは、どうしても嫌だった。だって、阿弥は阿求の憎むべき存在だから。阿求にとっての希望は、阿弥と同じ希望は、けれども阿弥に既に奪い去られていた。もう手を伸ばしても届かない。小さな地獄に突き落とされたも同じだった。そんな女の代わりにはなりたくない。
紫がその能力を使って、阿求の夢の中に自らの記憶を流し込んでいるのだと気が付いたのは文と話しているときだ。文と同じかそれ以上長く生きていて、かつ稗田と接点のある妖怪など紫ぐらいしかいない。

「違うの、それは、違うの」
「いいえ、私は阿求です」

否定する。救われた者と、救われなかった者。あまりに遠すぎる二人だ。
けれども、賢者は口を開く。泣きながら言葉を紡ぐ。

「ええ、貴方は阿求。けれど私は、阿弥を夢見ているのではない。貴方が欲しいの」
「私、ですか」

矜持も何も関係ない。無様に賢者は泣いている。誇りも何も捨て去って、人間のために賢者は泣いている。雨に濡れても、泥が掛かっても構わない。兎に角途方も無い歴史が阿求の目の前で崩れ落ちているのだけは事実だった。

「だって、阿弥は私を置いていってしまったもの」

何を言っている。
この妖怪は人間が死んでいくのなんて、何度も見てきたはずだ。なのに。
今更、人間と妖怪が同じ時を歩めないことに疑問を抱くようなこともあるまい。なのに

「愚かしいと理解はしているの。ええ。人間と妖怪は同じ時を歩めない」

自嘲気味に笑う紫。上目遣いで阿求を見る。雨が二人を濡らす。前髪が重く視界を遮ろうとしていたから、掻き揚げた。そうしてやはり見える紫。それが涙なのか、雨粒なのか。


「けれど、阿弥には死なないという選択肢が、確かにあった」



どういう、事だ。

それでは、全ての前提が崩れてしまうではないか。
阿弥は人間で、短い時しか生きることが出来ないから、孤独だった。
孤独だったから、せめて覚えていてもらおうと自ら死んだ。
そうして、私に転生した。
それは全部、阿弥の御阿礼の子としての短い命が前提となっている。それを、全部ひっくり返してしまうではないか。

「どういう事ですか」

手のひらに汗が溜まっていくような、そんな不快を感じた。顔に掛かる雨を袖で拭く。少なくとも、この女の前では冷静を保たなければ。

「そのままの意味よ。阿弥は死なないという選択肢が、確かにあったの」

雨が、強まったような気がした。ざあざあと音が阿求を支配する。信じる信じないで無く、理解が出来なかった。理解する気も起きなかった。阿求の世界が壊れることが怖かったからだ。文に救われた阿弥。そもそも救われる必要も無かったなんて。
賢者は目元を拭う。そうして、口元を歪ませる。涙目のまま。何かを請うように。


「妖怪になって」


それは、酷く厭らしく。
言葉の中に何かぬめりがあるみたいに、厭らしく。

「え」
「妖怪になって欲しいの、阿求」
「どうして」
「貴方に死んで欲しくないの。だから」

そのぬめりの正体は、きっと優しさだ。阿求はそう理解してしまった。妖怪の、歪で無様な優しさ。だから、酷く気味の悪い、けれど背徳の中の心地よさ。

「そんなことが、出来るのですか」
「ええ、出来るの。人と妖怪の境を弄ってしまえば簡単に」
「けれど、それは」

どうして。
だって紫には阿弥に慈悲をかける理由はあるとして、阿求にかける道理は無い。何故私に死んで欲しくないと言う。やはり、阿求と阿弥を重ねているのか。

「……貴方に、私にそれだけする道理はないでしょう」
「いいえ、あるの。別に、阿弥と貴方を同じに見ているわけじゃない。阿弥は阿弥。もう取り戻せはしない。そんなことは分かっている」
「ならどうして」
「誓いのため。御阿礼の子を、永劫の孤独から救うと、約束したの」

いつかの夢。
いつかの夢を阿求はまだ覚えている。忘れることが出来ない。その夢が、歪んだ紫の記憶なのか、それともたった一つ残された本当なのか。それを知る術は無いけれど。

「そんなもの、どうやって」
「転生という輪廻を破れば、御阿礼の子は生まれない。短い寿命に嘆くことも無い」
「そのために、妖怪になるという業を背負えと」
「ええ。忘却を恐れることも無い。貴方は自らを最後に記録して、妖怪になればいい」

ヒィ、と息を整えるために短く吸い上げた紫。涙はもう流れていないのだろう。粘ついた優しさと苦しさと、それから覚悟がこもった目をしていた。
きっとこの人も、幸せを求めている。そう思えるほどに紫は必死だった。必死で、だから無様で、阿求の前で崩れ落ちたのだ。彼女の言っているのは、きっと彼女のエゴだ。阿求のためなどではない。間違いなく紫自身のための言葉だ――なのに、嬉しかった。

泣いているのは、阿求だった。自分でも気が付かず、唇に流れたそれがやけに塩気がしたから、それで気が付いたのだ。何故泣いているのか、その明確な根拠など分からないけれど、胸の奥は熱い。内側から熱い。


「私は、孤独を感じてはいません。けれど、いつか訪れる孤独が怖いのです」
「ええ」
「短い命を嘆くのにも飽いて、けれども、それでも長く生きれるのなら、そうしたい」
「ええ」
「妖怪になれば、転生は止まるのですよね」
「貴方の業が詰まれるわけだから、転生なんて出来やしないわ」
「ならば、御阿礼の子が生まれることもない」

紫が優しく笑んで頷いた。
阿求は初めて自分を酷く醜く偽善的だと感じた。まさか、これから生まれる御阿礼の子を哀れむみたいな物言いをするだなんて。そんな優しさなどこれっぽっちも抱いてはいないのだ。自分が救われたいだけなのだ。
紫はそれを理解している。気が付かないフリをしている。彼女も同じ偽善者だから。生暖かい馴れ合いのつもりなのかも。

今日は帰るわ。返事を待ってる。紫は背を向ける。空間が開かれる。開かれた空間をまるで欲望の渦だと、そう思ったことがあったけれど今阿求にはその欲望も心地よいものに思えた。自らを酷くおぞましいものと、そう思えたから。












* * *



風が吹いている。
空を飛んでいる。
一面、光ばかりの青空だ。


阿求は、空を飛んでいる。




* * *






そんな、夢を見た。
あんなにもずぶ濡れたのに、調子を崩さなかったのが驚きだ。

久しぶりに、歩いてみようか。そう思って腰を上げる。余所行きの着物を選ぶのも暫くぶりの気がした。水溜りが酷いから、少し高めの下駄を履いていこう。普段は酷く鬱陶しい身体の重みも、今は酷く軽い。あちこち飛び回っても大丈夫な気もした。

「空が飛べるなら、もっと軽くなるのでしょうね」

なんて、独り言。気分は少し浮ついていた。つくづく自分は愚かしい。


ぴしゃぴしゃと水溜りを踏む音がする。夢の中で見た様な青空。きっと今日の夢は、本当に自分の夢だろう。紫の記憶でも願望でもない。阿求の奥に潜む願望だった。幸せになりたかった。色々な幸せが、阿求の頭をぐるぐると回っていて、愚か者はその全部に手を伸ばそうとしている。

何処までも歩いていける。後は、阿求が選択するだけだ。
歩いていく道筋も、行く先も、妖怪になるかどうかも、全部。





* * *





「私、人間をやめようと思うのです」
「へえ」
「転生もやめようと」
「そう」

ずず、と茶を啜るのは霊夢。
自分は彼女と少し似ているのだと阿求は思う。というより、シンパシーを感じていた。役目を負った人間。役目故の孤独。大いなる何かに翻弄された人間として。もっとも、阿求の場合は人間たちの欲で、霊夢はこの世界そのものに選ばれたという点において霊夢に遠く及ばないのだけれど。
私は自由になるのだ、なんて見せびらかしたい子供じみた思いもあったからか、足は博麗神社に向かっていた。何より、縛られている人間に羨まれたかった。優越感に浸りたかった。稗田阿求の下卑た根性が、こうして表に湧いて出てきているのだ。そんなことも理解はしていた。けれど自分は人を外れるのだ。残忍さに任せて誰かに牙を立てることなどどうということもない。

「私は役目を終わらせます。憐れな少女ではなくなるのです」
「良かったわね」
「そう思うとね、身体が軽くて仕方が無いです。しがらみから抜け出すのはいい」

霊夢は眉一つ動かさない。目を閉じて、阿求の言葉を聴いている。この女の取り乱す様を見たいと思った。怒りに震える様を見てみたい。羨ましいとでも言わせてみたい。人間とはこんなにも弱いものなのだと、嘲るだけの根拠が欲しかったのかもしれない。

「霊夢様も役目など放り出して、自由に生きれば良いのに」

だからそう言ったのだ。これまで積み上げてきた清廉さも何もかも捨て去って、紫の言葉一つで腐敗を始めた心を見せてやった。清らかなるものを汚してしまいたい衝動と似ている。随分と堕ちたものだ。胸の内で笑いながらごちる。
すとん、と茶碗を置く霊夢。静かな、けれどもひりひりとした数瞬だった。ゆっくりと目を開けて、阿求を見る。何もかも見透かしてしまうような、優しさと鋭さを持ったその目。

「寂しいのね」
「え」
「不安なんでしょう、阿求」

不安、とはどういうことか。阿求の心は今こんなにも躍っている。役目から解放されることが、酷く楽しみで仕方が無い。なのに

「アンタは不安で不安で堪らないのよ。だから私のところまで来た。気が付いているんだもの。妖怪になって長く生きても、アンタはいずれ孤独になる」
「何故孤独なのです」
「だって、妖怪になったところでアンタはいつか死ぬ。アンタを覚えている奴らも皆死ぬ。アンタを覚えていてくれる人なんて、誰もいなくなる」
「けれど、縁起にはしっかりと刻まれる。私は永劫消えることはなくなるのです」
「縁起はもう必要なくなったじゃないの、妖怪が脅威となる時代は終わった」

だから、縁起なんていずれ風化していく。
それは、稗田の全てに対する否定だった。それから、阿求の苦しみを全て無駄にする言葉だ。

「アンタが生まれてから紫は妖怪の脅威を取り除くため動き回ったって聞くけど、それはアンタの転生を止めるためだったのね。やっと納得が行ったわ」
「ならば、私たちは何だったのですか」
「何」
「私たちが縁起を記してきたのは、無意味だったと、そういうことですか」
「正しくは、無意味になった、だけれど。皮肉ね。紫がアンタを救おうとした末が、アンタたちを否定することになるなんて」

嫌だ。
この女は化け物だ。この女の有り様は化け物だ。どうしてこんなに残酷なことが言えるのだ。こんなにもあっさりと。紫に対する信頼、感謝、それだけじゃない。過去の御阿礼の子の生き様、生まれてきた意味。それら全部を崩し去った。
嫌だ。
嘘だ。
聞きたくない。
そんなこと、知りたくなかった。
私はどうしたところで、忘れることが出来ないのに。








殺してやる。
この目の前の、破壊者を、殺してやる。






夢中になって霊夢を押し倒す。そのまま頸に手を掛ける。両手で押し潰す。この期に及んで抵抗をしないで、冷めた目を向けてくる霊夢。腹が立つ。自分だって弱いひとりぼっちの人間の癖に。縛られたままの人間の癖に。なのに、なのに、否定するなんて。私の希望を、幸せを、喜びも信頼も過去も何もかも全部――。
霊夢が手を伸ばす。阿求の頬に。はっと、手の力を緩める。

「痛いって、全く」

そのまま手を阿求の手に添えて、上体を起こす。ケホケホと咳をして、阿求の手を避けた。
――私、霊夢を殺そうとしていた。
化け物は私だ。霊夢なんかじゃない。化け物の心を持っているのは、私だ。


「好きにしなさい。人間を止めると言うなら、それでもいい」


霊夢の言葉だけが、反響したみたいに消えない。







* * *







ひとりぼっちだ。


文とはきっと前のようには戻れない。
紫は優しいけれど、その優しさを笑顔で受けられる自信が無くなった。

そうだ。
知っていた。
どれだけ長く生きても、妖怪になっても、死んだらひとりぼっちだ。
それどころか、生きていても、ひとりぼっちだ。
でも、死ぬのは怖い。
怖い。

死ぬことは、忘れられることなのだ。
ずっと生きていることなんて、出来ない。
いつかの紫の言葉を思い出した。嘘をついた。どれだけのことを言っていても、死ぬのは怖い。時間が、欲望が、まず身体を殺して、その後記憶まで殺す。跡形も残さず。いずれ縁起だって消える。消えてしまう。

――私は、どうしよう。
――私は、どうすればいいの。


「私は、何処に消えたらいいの」

誰も答えない。
紫も、出てこない。

「私は、どうやって消えたらいいの」

誰か答えて。

妖怪になった先にあるのは、きっと幸せの色をした虚無だ。
でも、人間として死んだ先にあるのは、数多の御阿礼の子の屍だ。

いっそ、全部忘れてしまえたらいいのだ。文の過去も、紫の過去も、阿弥という存在も、全部、頭の中で殺して。でも、出来ない。御阿礼の子の宿命がまだ、阿求を苦しめ続けているから。
痛みの正しさを求めていた。がりがりと畳を掻いた。掻きすぎて、爪がはがれた。
まだ生きている。選択も何もしたくない。
まだ生きている。何時死ぬのかも分からない。





あはは。
あはははは。



「化け物だ、私」


思えば、何もかもがずれていた。何もかもを偽っていた。
痛みで生存を確認すること。忘れられるのが怖いと、死ぬことが怖いのを取り違えたこと。もう消えてしまった人間に嫉妬したこと。後の御阿礼の子の心配をするフリをしたこと。霊夢を見下したこと。全部、全部。おかしい。ずれている。狂っている。


「紫様、私、既に化け物でした」


何も答えない。紫は出てこない。
けれど、今一人でいることが、たったひとつの幸せだ。
化け物は、死ぬか、本当に化け物になるしかないのだ。
鏡台から剃刀を取り出す。そのまま、手首を思い切り切った。



あはは。
あはははは。



「痛い」



せめて死ぬまでは、生きていると感じていよう。
そうして、もし助かったなら、本当に化け物になろうと思う。

欲深くて、愚かで、ひとりぼっちで、救いようの無い、稗田阿求として。
いろいろと実験的な作品です。どうも、カルマです。
前二作と書き方とか大分変えたつもりなんですがどうでしょうか。
何か今回は前作と比べ会話メインなので相当手こずりました。一月かかりました。独白書いてる方が楽って言う。

個人的に長編は苦手なので次はもっと短いの書こうと思います。はい。
カルマ
https://twitter.com/#!/ark11karma
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コメント



0.530簡易評価
1.80春日傘削除
長編お疲れ様です。
色々と唐突であった事を除けば出色の出来ですね。

阿求の事を真剣に考えるとどうしても息苦しくなってしまいます。
きっとこういう過程を何度も辿りながら転生を繰り返すのだと思いました。
3.80奇声を発する程度の能力削除
何とも言えない感じが良かったです
5.90とーなす削除
なんとコメントしたら良いものか……とりあえず、悲しい話でした。
結局自殺という選択肢を選んだ阿求は、もしかしたら阿弥の行動をトレースしただけなのかも……とか考えるとぞっとします。
9.100名前が無い程度の能力削除
これは何と言ったら良いやら。
とりあえず面白かったです。
10.100名前が無い程度の能力削除
なんだろうこの読後感は。
きっとなにも言えないのが正しい反応なんだと思う。
12.80名前が無い程度の能力削除
あらすじはとてもいいです。阿求という対象の切り口が素晴らしかったです。
でも、あと一歩なにかが足りない。それが何なのかはわかりませんが。
なにかが足りないから、阿求の苦しみがいまいち伝わりきらない。
読んで楽しめたのですが、この話も作者さんの力量も、まだまだ伸び代があるんだろうなぁと。
18.100名前が無い程度の能力削除
重いテーマなのに、するする読めた。
考えさせられた。共感できた。自分好みの作品でした。