迷いの竹林奥深く、永遠亭で一人の少女の叫びが響いた。
「輝夜・・・お願いだ!なんでもする!だから・・・だから刻を止めてくれ!」
「なんでも・・・ね。いいわよ。その願い、かなえてあげる。汚く、みすぼらしく足掻く姿を私に見せて頂戴」
――――――
同刻、幻想郷内の僅かな変化に気付く4つの陣営があった。
魔法の森からは星の魔法使いと七色の人形遣いが
冥界からは半人前の剣士と白玉楼の姫が
博麗神社からは楽園の巫女と境界の妖怪が
紅魔館からは人間のメイドと紅い悪魔が
「さすが星の魔法使いね、私だけじゃ気づけなかったかも」「お前に褒められると褒められてる気がしないぜ」
「妖夢、準備はできてるわね」「はい、幽々子様。いつでも出向くことができます」
「霊夢、異変よ」「はいはい。ったく・・・面倒くさいことになりそうねー」
「今夜は永くなりそうね、咲夜」「そうですわねお嬢様。時間を操るのは私だけで十分ですわ」
それは一人の蓬莱人が起こした、悲しく憐れな異変の始まり――――――
――――――
13代目の博麗の巫女が亡くなってから200年ほどして、今代の巫女は13代目と名を同じくする者が担当していた。博麗霊夢である。
「霊夢ー酒が無くなったぞぉー」
「あのね、萃香。ここは居酒屋じゃないの。分かる?」
「そんなの関係ないだろぉー。お酒持ってこーい!」
「ったく親父かっつうの・・・はいはい今持ってきますよー」
200年前と変わらず博麗神社は妖怪達のたまり場となっていて、相変わらず参拝客はいないのだった。
ちなみに酒はないので、適当に水を入れた瓶を萃香に渡す。
でもこの鬼、確か酒が出てくる瓢箪持ってなかったっけ・・・?
「はいお酒」
「おお!ありがとう霊夢!一生感謝するぞぉ!」
「(・・・・・・ま、水なんだけど。酔っぱらいはあしらいやすくていいわ・・・・・・)」
「酒はいいなー♪何もかも忘れさせてくれるー♪」
「・・・・・・」
そういえばこの鬼も異変を起こしたことがあったんだっけ、と霊夢は思う。
13代目の巫女が亡くなってから、異変が起こる頻度はめっきり減ってしまった。
13代目の巫女は、歴代の博麗の巫女の中でもずば抜けて実力が高く、幾度も異変を解決してきた・・・と今代の霊夢は聞かされている。
それもあってか13代目の巫女の存在は妖怪達の中でも大きく、妖怪達も安心して異変を起こせていたのであった・・・らしい。
「異変ねぇ・・・もし起きたら私に解決できるのかしら?一応修行もしてるけど・・・」
「お。私の異変の話を聞かせてやろうか」
「あー長いからいいわ」
「あれは250年程前のことでな」
「(また始まった・・・・・・)」
「人を集めて宴会を頻繁に起こしてね」
「(これだから年寄りの話は嫌いなのよ・・・)」
「むぅ・・・今私のこと年寄りだと思ったろう」
「そういうとこだけは鋭いのね」
「だてに鬼やってないからね」
「鬼なのと勘が鋭いのは関係ない気もするけどね」
「で、話の続きなんだが・・・・」
「(掃除の続きするか・・・・・・)」
そういえば、私の名前は13代目の巫女と同じらしい。13代目も博麗霊夢、私も博麗霊夢。
名前を付けたのは、スキマ・・・もとい八雲紫なのだが、ややこしくてたまらない。全く、妖怪の考えることは理解しがたい。
おかげで人里の人間には信頼されるわ妖怪達には恐れられるわでたまったものではない。
私は博麗霊夢という一個人であって13代目の博麗霊夢ではないのに。
「なぁ霊夢」
「なぁに萃香」
「あんたは13代目の霊夢とそっくりだよ」
「へー、まぁ私も霊夢だからじゃない?」
「いやそういうことじゃなくて、言動も性格も力も瓜二つさ」
「ふーん、見たことないし、あんたらの言うそっくりって言うのも買いかぶりじゃないのー?」
「そーやってひねくれてるところとかそっくりさ」
「はいはいそうですか」
この鬼は本当に勘がいいな。励ましているつもりだろうか?
その励ましが逆効果になることもあるというのに。・・・・・・まぁいいや。
「で、掃除手伝ってくれない?」
「んー、いいけどー?」
「あんたの力、掃除にも便利だからね、はい集めて」
「お酒の提供者には逆らえないよ。ほら」
「ありがと、萃香」
「お酒くれるなら、いつでもやってやるさ」
こうして幻想郷の日常は平和に過ぎていくのであった。―――今夜までは―――
――――――
境界の妖怪、八雲紫が博麗神社を訪ねたのはもう日付が変わろうかとする頃であった。
「霊夢、起きてる?」
「・・・・・・なによ・・・・・・こんな夜中に・・・・・・」
「異変よ」
「へ?」
「あなたが博霊の巫女になってから初めての異変ね。緊張する?」
「異変て・・・別に何もおかしいことなんてないじゃない・・・」
「外に出てみればわかるわよ」
「(面倒くさいなぁ・・・・・・起きたくない・・・・・・)」
このスキマ妖怪、たまに性質の悪いいたずらを仕掛けてくるのである。
今回もその類かと思ったがとりあえず寝巻のまま外に出てみる。
「・・・・・・!」
「気づいた?」
「星・・・いえ、時間が止まってる?」
「正解♪じゃ、準備ができたら呼んでねー♪」
「え、準備って」
「いつも修行してるでしょ?あんな感じでいいわよ」
紫はスキマに消える。
ああ、これが異変か。
不思議なものだ、あれほど起きて欲しくないなと思っていたのに、実際目の当りすると心が昂ぶる。自分の実力を試したくて仕方ない。
とりあえず何事も準備からだ。
いつもの巫女装束に着替え、お祓い棒、陰陽玉、そのほかいくつかの道具を整える。
――――――さて、異変の解決に出かけましょうか。
「輝夜・・・お願いだ!なんでもする!だから・・・だから刻を止めてくれ!」
「なんでも・・・ね。いいわよ。その願い、かなえてあげる。汚く、みすぼらしく足掻く姿を私に見せて頂戴」
――――――
同刻、幻想郷内の僅かな変化に気付く4つの陣営があった。
魔法の森からは星の魔法使いと七色の人形遣いが
冥界からは半人前の剣士と白玉楼の姫が
博麗神社からは楽園の巫女と境界の妖怪が
紅魔館からは人間のメイドと紅い悪魔が
「さすが星の魔法使いね、私だけじゃ気づけなかったかも」「お前に褒められると褒められてる気がしないぜ」
「妖夢、準備はできてるわね」「はい、幽々子様。いつでも出向くことができます」
「霊夢、異変よ」「はいはい。ったく・・・面倒くさいことになりそうねー」
「今夜は永くなりそうね、咲夜」「そうですわねお嬢様。時間を操るのは私だけで十分ですわ」
それは一人の蓬莱人が起こした、悲しく憐れな異変の始まり――――――
――――――
13代目の博麗の巫女が亡くなってから200年ほどして、今代の巫女は13代目と名を同じくする者が担当していた。博麗霊夢である。
「霊夢ー酒が無くなったぞぉー」
「あのね、萃香。ここは居酒屋じゃないの。分かる?」
「そんなの関係ないだろぉー。お酒持ってこーい!」
「ったく親父かっつうの・・・はいはい今持ってきますよー」
200年前と変わらず博麗神社は妖怪達のたまり場となっていて、相変わらず参拝客はいないのだった。
ちなみに酒はないので、適当に水を入れた瓶を萃香に渡す。
でもこの鬼、確か酒が出てくる瓢箪持ってなかったっけ・・・?
「はいお酒」
「おお!ありがとう霊夢!一生感謝するぞぉ!」
「(・・・・・・ま、水なんだけど。酔っぱらいはあしらいやすくていいわ・・・・・・)」
「酒はいいなー♪何もかも忘れさせてくれるー♪」
「・・・・・・」
そういえばこの鬼も異変を起こしたことがあったんだっけ、と霊夢は思う。
13代目の巫女が亡くなってから、異変が起こる頻度はめっきり減ってしまった。
13代目の巫女は、歴代の博麗の巫女の中でもずば抜けて実力が高く、幾度も異変を解決してきた・・・と今代の霊夢は聞かされている。
それもあってか13代目の巫女の存在は妖怪達の中でも大きく、妖怪達も安心して異変を起こせていたのであった・・・らしい。
「異変ねぇ・・・もし起きたら私に解決できるのかしら?一応修行もしてるけど・・・」
「お。私の異変の話を聞かせてやろうか」
「あー長いからいいわ」
「あれは250年程前のことでな」
「(また始まった・・・・・・)」
「人を集めて宴会を頻繁に起こしてね」
「(これだから年寄りの話は嫌いなのよ・・・)」
「むぅ・・・今私のこと年寄りだと思ったろう」
「そういうとこだけは鋭いのね」
「だてに鬼やってないからね」
「鬼なのと勘が鋭いのは関係ない気もするけどね」
「で、話の続きなんだが・・・・」
「(掃除の続きするか・・・・・・)」
そういえば、私の名前は13代目の巫女と同じらしい。13代目も博麗霊夢、私も博麗霊夢。
名前を付けたのは、スキマ・・・もとい八雲紫なのだが、ややこしくてたまらない。全く、妖怪の考えることは理解しがたい。
おかげで人里の人間には信頼されるわ妖怪達には恐れられるわでたまったものではない。
私は博麗霊夢という一個人であって13代目の博麗霊夢ではないのに。
「なぁ霊夢」
「なぁに萃香」
「あんたは13代目の霊夢とそっくりだよ」
「へー、まぁ私も霊夢だからじゃない?」
「いやそういうことじゃなくて、言動も性格も力も瓜二つさ」
「ふーん、見たことないし、あんたらの言うそっくりって言うのも買いかぶりじゃないのー?」
「そーやってひねくれてるところとかそっくりさ」
「はいはいそうですか」
この鬼は本当に勘がいいな。励ましているつもりだろうか?
その励ましが逆効果になることもあるというのに。・・・・・・まぁいいや。
「で、掃除手伝ってくれない?」
「んー、いいけどー?」
「あんたの力、掃除にも便利だからね、はい集めて」
「お酒の提供者には逆らえないよ。ほら」
「ありがと、萃香」
「お酒くれるなら、いつでもやってやるさ」
こうして幻想郷の日常は平和に過ぎていくのであった。―――今夜までは―――
――――――
境界の妖怪、八雲紫が博麗神社を訪ねたのはもう日付が変わろうかとする頃であった。
「霊夢、起きてる?」
「・・・・・・なによ・・・・・・こんな夜中に・・・・・・」
「異変よ」
「へ?」
「あなたが博霊の巫女になってから初めての異変ね。緊張する?」
「異変て・・・別に何もおかしいことなんてないじゃない・・・」
「外に出てみればわかるわよ」
「(面倒くさいなぁ・・・・・・起きたくない・・・・・・)」
このスキマ妖怪、たまに性質の悪いいたずらを仕掛けてくるのである。
今回もその類かと思ったがとりあえず寝巻のまま外に出てみる。
「・・・・・・!」
「気づいた?」
「星・・・いえ、時間が止まってる?」
「正解♪じゃ、準備ができたら呼んでねー♪」
「え、準備って」
「いつも修行してるでしょ?あんな感じでいいわよ」
紫はスキマに消える。
ああ、これが異変か。
不思議なものだ、あれほど起きて欲しくないなと思っていたのに、実際目の当りすると心が昂ぶる。自分の実力を試したくて仕方ない。
とりあえず何事も準備からだ。
いつもの巫女装束に着替え、お祓い棒、陰陽玉、そのほかいくつかの道具を整える。
――――――さて、異変の解決に出かけましょうか。
続き楽しみにしています