この作品は、続きものです
できれば 前回 & 前々回 の内容を見てから
鑑賞することをお勧めします
それ以外にも、珍カプだとか、名前が違うとか、作者に文才がないとか
あるので、それでも OK だという人は
下へいくんだZE
あの時、私が少女に出会うことなくこの職に就いていたのならば
この瞳に映る世界をどれだけ美しく見ることができただろう
この世に罪のない生物がいる事をどれだけ喜ぶ事ができただろう
少女の事を恨んでる訳ではないが
ただ、ただ
どこか心に穴が開いているのだ
ただ、ただ
小さな穴が己に虚しさを感じさせるのだ
やはり、私は閻魔に向いてないと思った
[ 手から零れ落ちた なに か ]
「私が貴方を名づけます」
私の言葉が、橋に、地底に、世界に、響く
彼女はこの言葉を聴き、目を丸くしている
私は、自分の手に力を込めて大きく息を吸った
その息が喉を小さく乾かした
『 』
そう彼女に向けて放つと気持ちが楽になった
私の、初恋で
私を、恨んでいて
私の、世界を変えた少女
60年たった今でも忘れる事の出来ない少女の名前
彼女もその名の意味を知っているからか
すぐに、気の抜けた顔からいつもの意地の悪い顔に戻し
「いいわよ」
と、すんなり私に返した
私また彼女の罠にはまってしまったのかもしれない
だが心のどこかでは、それでも良いと思っている自分がいる
そんな事を考えながら変わる事のない彼女の顔を見ていたら
今までの、疲れと、恐怖と、安堵のせいか
私の世界が少しづつ、少しづつ、傾き、歪んでいった
[ 星は、きれいだった ]
今、私は始めて見る場所にいた
ポチャンッ・・・
どこからか水の音が聞こえてくる
だけれど『 ここ 』は、暗くて何も見えない
「誰か、誰かいないのですかー」
映姫が声を上げて叫ぶ
だが、映姫の 望む誰か は声を返してくれない
それどころか、己の声でさえ反響して帰ってくる気配さえ皆無
バチャッ、バチャッ、
映姫は浅い水の中を走りだした
ここ以外のところに行けば誰か一人ぐらいは居るかもしれないと
小さな希望を持って
だが、水に足をとられうまく前に進まない
だんだんと息が荒くなる
そしてとうとう映姫は水の中に倒れこんでしまった
( もうこのまま沈んでしまってもいいでしょうか )
映姫が、己に諦めを問いかけるたびに水は、深くなっていく
それでも、映姫は動こうとせず体は深みへと沈んでいく
ごぼっ
ここまで来るともうすべてがどうでも良いと感じられた
映姫はただ、沈んでいく
息が出来ないはずなのに
とても苦しいはずなのに
誰かに会いたいはずなのに
映姫の体は指ひとつとも動く気配はない
冷たくて、寂しくて、暗い、水のそこ
沈んでいく途中、水のそこには、見覚えのある少女が見えた
濃い緑に光っている底には、
少女が私を見つめながら手招きして笑っていた
( ああ、まだ私は許されていなかったのですね )
その少女の顔を見て映姫が感じた事は
恐怖や恐れなどではなく
罪が償えると言う
安堵だった
[ いくつになっても変わらない事 ]
気がつくとそこは水の中ではなくいい感じにスプリングの利いたベットの上だった
周りには、机、本棚、写真、
写真には、笑顔の彼女とさとり達が映っていた
「めずらしいですね」
映姫は棚の上の写真を手に取った
いつも意地の悪い笑いしか見せてくれない彼女が普通に笑っているのが新鮮で
思わず顔がほころんでしまった
「人の写真見て笑うなんて気味が悪いわ」
私が笑っていると、彼女がいやそうな顔をして言った
ここは彼女の家なのだろうか
私は、おぼろけな頭で彼女の名前を呼んだ
「 み、お? 」
と、私に呼ばれた彼女は
私から写真をとると
「そうね、今はその名前だわ」
と言いソファーに座った
[ だれかに助けてほしかった ]
しばらくの間、沈黙が部屋に続いた
だが、普段の自分なら耐えられない沈黙でも
なぜか、心地よかった
まるで詩文がこの空間の一部になったようなそんな感覚がした
私はこの心地よさに身を任せながら
60年前の少女の事を思い出していた
□□□
手を三回叩いてから言葉を放つ
それが彼女の習慣だった
『お地蔵様、お地蔵様、今日はとても空がきれいですね』
話す事はとてもたわいない事
『明日も晴れると良いですね』
それでも楽しかった
この時間だけは、自分が人間になれた気がした
こんな毎日がずっと続けばいいと思っていた
だが
この、日常を壊したのは自分
過去は変えられない
いまさら後悔しても遅いのだ
[ けしごむでは消せない物 ]
長い事続いた沈黙ではあったが
彼女の言葉でそれもすぐに崩れた
「ねぇ、閻魔」
彼女が私の名を呼んだ
いや、この場合、役職と言ったほうが正しいだろうか
彼女は私に本当の名を呼ばせない代わりに
私の名も呼ばない
「何ですか?」
まあ、別に構わないが
「まだ、帰らなくていいの?」
彼女が時計を指差すともう、針が12時を回っていた
いつの間にこんなにも時間が経ったのだろうか
私は、ソファーから立ち上がった
「帰るの?」
彼女が、ペラペラと本のページをめくりながら言った
「はい、明日も早いですから」
私はそう淡々と言った
彼女は、持っていた本を置き先に外に出た
私はその後をくっついて歩いた
私が橋の上まで着くと彼女は言った
「もう、誰も恨んじゃいないわ」
私は、その言葉の意味は、わからなかった
だから、彼女に背を向けて
「また、来ます」
と、歩き出した
そのとき体を押す風は冷たかった
[ なにか欲しい物が逢った ]
あの後、急いで家に帰るとそこに友人の姿はなかった
その代わりに机に一枚のメモがあった
そのメモを拾い上げてみて見るとひどい走り書きで
『 妹が寂しがってる気がするので帰ります 』
あの、シスコンめ、
さすがの映姫もこれには、げんなりして
メモをグシャグシャにしてゴミ箱へ投げた
それと同時に、映姫はドッと疲れを感じ
服も変えないまま、ベットに倒れこんだ
「明日も、はやいですね」
映姫は虚ろな目を閉じ夢の世界へと
意識を消した
[ 野良猫がいい ]
朝起きると、機能の疲れがぜんぜん取れていなかった
それでも仕事の忙しい映姫は、休むことなく仕事場へ直行した
それに、家に居るよりも仕事場のほうが落ち着く
やはり習慣は恐ろしいものだと思う
いつもの、椅子に座ると机の上には、大量の書類がおいてあった
映姫は、溜息ひとつ着くとその大量の書類に向かってもくもくと手を動かし始めた
すると部屋のドアから聞き覚えのある声がした
「えー姫様ーいますかー?」
この、なんとも気の抜ける声の持ち主はあの死神しか居ない
映姫はまた溜息をつくとひとつ声をかけた
「入って良いですよ 小町」
そう私が言うと、扉から満面の笑みの部下がやってきた
「どうも、映姫様きょ「サボりに着たんなら帰りなさい」
「ひどっ!?・・・じゃなくて、今日は大事な用事があってきたんですよ」
ふむ、小町の顔からすると本当になにかあるらしい
まあ普段から何があってもそこまでたいした事じゃないんですけど
「で、用件はなんですか?」
私が、小町にそう聞くと小町は目の前に手紙を出してきた
「なんか、映姫様の上司にあたる人からだそうで」
めずらしい、私は率直にそう思った
普通、私の所に来る手紙はさとりからの嫌がらせか、
無造作に増える書類か、ごく一部の部下の文句でしかないのに
上司から来るなんて
私は、いやな予感しかしなかった
その嫌な予感が的中しないように願いながら
恐る恐る、手紙を開けると
そこには
少ない言葉で、ある妖怪の暗殺命令の手紙が入っていた
種族:橋姫
どんな、手を使ってもいい
その妖怪が町を襲う前に暗殺して欲しい
私は、その書類を確認すると易々と判子を押してしまった
橋姫が誰かも知らずに
その行動がどんな悲劇を生むか知らずに
知らなかったでは、済まされないのに
つづく
どうなって行くか楽しみです
ありがとうございます。
これからも精進していきたいです
展開は・・・期待してくださると嬉しいです