「聞いてよ永琳。今日レミィがさぁ」
「あらあら、またレミリアの話ですか?」
私は最近紅魔館に頻繁に遊びに行っている。
そして、帰ってくると必ずその日あった事を永琳に話す。
これはすでに毎回行われる出来事であった。
永琳は私の話を笑顔でずっと聞いてくれた。
「姫に新しいお友達が出来て本当に良かったですわ」
「友達どころではないわ。私の親友よ」
そう、私の親友。
親友と言えるのは初めてじゃないかしら。
昔お世話になった地上人達は友達とは違うし、永琳はどっちかというとお母さんみたいな感じだものね。
イナバ達はどっちかというとペットだし。
「ねえ永琳、私は友達とずっと一緒にいたいのよ。ううん、勿論永琳もね」
「そうですね。私も姫にはずっと笑っていてほしいですよ」
「うん、だからね。永琳」
私はずっとレミィと一緒にいたい。
そして、永琳は私の言う事を何でも聞いてくれる。
だから私はこう言うのだ。
「ねえ、永琳。蓬莱の薬はまた作れるかしら」
永琳の笑顔が凍る。
それは予想していたことだ。
私はそんな永琳を気にせず話を進める。
「永琳。私は欲張りになっちゃったのよ」
「…姫」
昔は永琳さえいれば何でもよかった。
永琳だけはずっと一緒にいてくれる。
それだけで十分だったはずなのに。
「ごめんなさい永琳。永琳が一緒にいてくれるから私は不老不死になっても生きてこれた。でもそれだけじゃ足りなくなってしまったのよ」
「…そうですか」
永琳が少しだけ悲しそうな顔をする。
それはどちらが理由なのだろう。
私がこんなことを言ったから?
永琳だけじゃ物足りなくなってしまったから?
「…あの蓬莱の人の形、藤原妹紅は?」
「妹紅はね。なかなか強くなったけれど所詮は地上人なのよ。そうね、私は妹紅にも物足りなさを感じてきたのだわ」
そう、妹紅はどこまで行っても地上人。
成長することをとうの昔にやめてしまっただけのただの人だ。
地上人にしては強いし当初は私を憎んでいたけれど…。
「最近、妹紅とは慣れ合うようになってきてしまったのよね。最初は妹紅には期待していたけれど…私には刺激と言うものが必要なのよ」
妹紅は最近私と慣れ合うようになっていた。
一緒に釣りをしたり。
私が当初思い描いていた関係とは段々変ってきてしまった。
私が妹紅に無理矢理蓬莱の薬を飲ませた訳ではないのだから、そもそも薬の事で私を憎むのもちょっと違うのだけれど。
妹紅は所詮どこまで行ってもただの人だった。
憎しみも怒りもそのうち忘れて行ってしまうただの人でしかなかったのだ。
良くも悪くもただの人だったのだ。
「それで、レミリア、ですか…」
永琳は察しが良い。
私が何をしたいのか、すぐに理解してくれる。
「ですが姫。よろしいのですか?レミリアは姫のお友達なのでしょう?」
「そうね、お友達よ。でもね、私はレミィとお友達以上になりたいのよ」
レミィはまだまだ子供だ。
強さも私には全然及ばない。
しかし、子供としては破格な強さを誇る。
恐らく本気で戦えば現時点でも妹紅よりずっと強いだろう。
吸血鬼と言う種族だからなのか、レミィ自身の才能のお陰なのか分からないけれど。
そして、子供だからこそ伸び代が果てしなくあるのだ。
「私がレミィに蓬莱の薬を無理矢理飲ませるの。そうしたら私はレミィに恨まれるでしょうね。そうね…口付けで飲ませるのが一番良いのかしら」
想像するだけで顔がにやけてきてしまう。
あの深紅の瞳が憎悪の色となって私の身体を突き刺すのだ。
想像するだけで快楽が溢れてきてしまう。
「うふふふ…素晴らしい殺し愛が出来そう。最高よ」
レミィは屈辱に思うでしょう。
私の力に屈服して無理矢理不老不死になってしまったら。
あそこまでプライドが高いんだから。
「レミィはずっと私の事を追っかけてきてくれるでしょうね。ねえ、永琳。それは愛と何が違うのかしら」
レミィはずっとずっと私の事を追いかけてきてくれるだろう。
私を殺す為に。
終わらない永遠の殺し愛。
私はそれをあの吸血鬼に期待していた。
「なんて楽しそうな刺激的な日々なのかしら。そうしたら私にだって永遠に生きてる価値だって出てくるものなのよ」
レミィは私の退屈を癒してくれるだろう。
レミィは私を憎んでくれるだろう。
レミィは私を殺してくれるだろう。
「それにただの人間だった妹紅でさえ強くなったのよ。レミィに飲ませたらどれだけ強くなれるか」
あの吸血鬼の潜在能力は半端なものではない。
子供の今でさえ、幻想郷のパワーバランスの一角であるのだ。
大人に成長したらどれほど強くなるのか。
それが楽しみで楽しみで仕方なかった。
「今のレミィはまだ弱い。月人の足元にも及ばない。でもまだあんなに子供なのにあんなに強い。吸血鬼って凄いのね」
吸血鬼なんて三流の悪役かと思っていた。
深く反省しなければいけないわね。
私は運命に感謝しているわ。
あの吸血鬼と出会えたことにね。
「もしかして、レミィが私の運命を操ってくれたのかしら?」
もしそうならば私とレミィは相思相愛だ。
笑顔が自然と溢れて止まらなかった。
「…姫、本気で使うつもりなのですか?」
「…さあ。今は分からないわ」
今はまだ使えない。
レミィはまだ弱いのだから。
今のレミィじゃ殺し愛は楽しめない。
「1000年後、2000年後、私がどう思っているかによるわね」
もしかしたらレミィに飽きてしまうかもしれない。
レミィは私の想像通りの力まで達しないかもしれない。
それはその時決めることだ。
1000年後には1000年後の私がいるのだから。
「ねえ、永琳」
「姫…」
「私はもう壊れているのかな?」
永琳は私の言葉ににっこりと笑った。
続いて欲しかった
殺すぐらいなんだからもっとドロドロしてそう。
でもこのぐらいの方が不気味さが際立っていいですね。
度が過ぎると血腥くなっちゃう予感もするから。
アトガキを含めるか含めないかで主題がずれそうですね。
この手法、流行ってるのかな。