―1―
「パチェ、あんた私を殺す気でもあるの?」
私の読書時間にわざとらしいぐらい靴の音をたてて入ってきたレミィは、開口一番物騒極まる難癖をつけてきた。
BGMにしてはレミィの喋りは甲高く派手だから、本を読むのに最適な環境を作ることが出来ない。
本にしおりをいれて、肩肘をつきながら質問に答える事にした。
「殺す理由がないけれど、殺して欲しいなら外に行けばいい。一番手っ取り早いわ」
「いやいや、そこまで本気な話じゃないんだよ。昨日借りた、ポーって吸血鬼の血族が出る漫画」
「ああ……素敵だったでしょう?」
「素敵に吸血鬼が死んでた」
「美しいでしょう?」
「だから、親近感がありすぎたっていうの!」
「大丈夫、死ぬのはまずは妹からだから」
「フランに言っておくからな」
漫画にここまで入れ込んで読むことが出来る、というのはレミィの幼さを感じさせる。
500年の月日では、吸血鬼は子供らしさが強く滲み出てしまう。
書物は魔法使いが書いたものでもなければ、その10分の1の年数もかけられていない。
赤ん坊だ。
だから、とても新鮮で可愛い。
地下大図書館は最適な書物保存環境と、程よいランプを兼ね備えた、究極の読書空間をコンセプトにしている。
テーブルまでこだわり、幻想郷の中でも最高の一室を保持しているという自負がある。
しかし、未だに防音設備だけは整ってくれない。
こうしてレミィがやってきたり、他の魔法使いが忙しなく入ってくるのが原因だった。
私がこうして観察している間も、レミィは喋り続けている。
「おい、パチェ、聞いてた?」
「むきゅ?」
「それ可愛くないからやめろ。またぼーっとしてたでしょ、おまえ」
「大きい問題から片付けていくほうが簡単ね。神子を先に討ち取れば瓦解する。邪仙だけは小ざかしいかも知れないけれど」
「うんうん……前から思ってたんだけれど、聞いてるならそれなりの反応を示して欲しいんだよ」
「興味がない事に、反応を示す事は出来ない」
「うー、理屈はいいんだよ」
こういうところも、子供っぽい。
私は何度目かのため息をついて、肘をついた。
「反応ってね、相応のものが対価も同じように戻ってくるものなの。レミィの話が私を満足させるものなら、反応は大きく異なったものになる」
「それ、私の話がつまらないっていいたい?」
私は穏やかに微笑みながら、その通り、とつぶやいた。
「館の主に向かって、その言いようとは魔法使いは随分偉いんだね」
「道楽で生き続けるのが名誉につながるなら、あなたも大差なくアインシュタインになれるわ」
「アイン?」
「相対性理論は、ヴァンパイアにも必要だと思う」
レミィは咲夜を手を鳴らして呼びつける。
咲夜は0秒でダージリンティーとオレンジが薫るスフレを、銀のティーセットにのせてやってきた。
瀟洒すぎるメイドぶりに、人間ではないなこいつ……と毎度思わされる。
私とレミィは同じようにティーカップから手に取り、喉に通し紅茶の香りを堪能した。
「そんな理論を信奉しているパチェの理論はよっぽど面白くて私に良い反応させてくれるのかね?」
「スフレが美味しいわ。果実感がある」
「話を逸らすな」
「理論は絶対じゃない。また、理論は必ず成功するものではない」
「難しい話はいいからさ、私を楽しませて欲しいんだよ」
「我侭ね。話を聞いてあげるだけじゃ駄目かしら?」
レミィはほっぺたを一度膨らませて、それから舌を出した。
何よ、そのリアクション。
「それじゃさ、今から2時間以内で、ついつい私が腹かかえて笑っちゃうような物語を作ってみてよ」
「急な話ね。コメディをかけってこと?」
「そう、それも2時間でね。それ以上は退屈で眠くなるから待てない」
「断りたいんだけれど、条件は何かしら」
「そうだね……面白くなかったりかかなかったりしたら、明日一日裸で過ごしてもらう」
「むきゅ?」
「それやめなって。一日真っ裸。楽でいいだろう? だからかかなくてもいい」
「私が書く条件は、ここの警備強化とレミィが図書館に二度と来ないという確約」
「ああ、それでいいよ。さくやー! 今の聞いてたー!!」
「はい、バッチリでございますお嬢様。パチュリー様の裸が楽しみですね」
メイドが何時になくニコヤカに登場して、私の怒りは頂点に達した。
そしていよいよ、この吸血鬼を私の知的空間から合理的かつ正当に追い出す機会が出来たわけだ。
「それじゃ、今から2時間。咲夜にバッチリ測かってもらうから」
「かしこまりました、お嬢様」
「賢くないお嬢様にその挨拶をする、というのは疑問符が出てくるわね」
「よーい、ドン!」
黄金の脳細胞が動き出す。
脳みその全てが起動し、電気信号の流れすらもわかる。
レミィが喜ぶギャグの条件を脳内でリストアップし、起承転結の構成を始める。
私の中で7曜日分はあるだろう人格達が議論を交わし、最適を組み合わせる。
レミィの本の好みは、何しろ私が貸し出しているのだから把握しきっていた。
ギャグ小説というのは、長い年月の中でもそう書かなかったものだけれど、経験不足よりもマーケティングが上回るだろう。
ネタとオチ、その間の細かい仕込みまでが瞬時にブロックを作り出す。
目の前の紅茶を一口ふくむ。
もう、書き出すことが出来るだろう。
私は深呼吸を一度してから、ガウンの内ポケットにしまってある万年筆を取り出した。
レミィは突然ニッコリと微笑む。
「どんな漫画が出来るか、楽しみだわ」
むきゅ?
「あのコマンドーがどうこうするヤツよりは面白くないと駄目よ。あれは全然理解できなかったもの」
「……漫画? 私に漫画描けって事?」
「本だったら何でも読んでるんだろ、漫画だって本じゃないか。出来るハズだよね」
「そんな前提条件はきいていないわ。私はあくまで読書家であり、画家ではない」
「今更反故にはさせないよ。出来ないなら裸になれ」
「裸にならなければなりませんよ、パチュリー様?」
咲夜を呼んだのはこの為か……レミィだけなら言い逃れられるが、このメイドで完璧にチェックメイト。
私の中の論理は再度スタートアップから始め、これから2時間で面白い漫画を描く条件を羅列する。
ふむ。
どれも不可能だと言う結論がくだった。
―2―
ベッドの中にもぐっている。
全裸で。
私は当然の如く、レミィに敗北した。
漫画の内容は思い出したくもない。魔女を長らくやって、最大の黒歴史だろう。
レミィに「面白くなさが失笑すら出来ないレベル」とまで言われたのが悔しい。
こんな罰ゲームでなくても、ずっと今日一日はベッドの中から出なかったかもしれない。
図書館とつながっている一室に私の寝室がある。
本棚に入りきらずに書物の山をいくつも形成している点は、図書館と大差がない。
魔女という生態上、寝る必要性はない。
しかし、脳の活動を保つ為には睡眠は生物として必要不可欠だった。
広辞苑に安物の布を巻いた枕が、今日も固い。
それにしても、この罰ゲームはこのままいけば、案外簡単に事は済むだろう。
レミィが全裸以外を条件にしなかったのが、何よりも楽だった。
こうして一日布団の中で過ごしていても問題はない。布団は服ではない、という抗議は正当だ。
このまま寝ながら読書をしていれば、一日などあっという間。
漫画の描き方講座を読みながら、いつか復讐してやろうと思う。
そうして、この手の本はデッサンについての本以外は概ね役立ちそうではないな、という結論に至った昼過ぎに最初のピンチがやってきた。
突然、ドアの方からノックがした。
ドンドン! という五月蝿い叩き方で見当がつく。
ドア越しに聞きなれた少女の声。
「おーい、パチュリー! 寝てるのかー!? 風邪引いたんだってー!?」
霧雨魔理沙だ。
能天気な調子についつい反応してしまいそうだったが、私は布団の中にもぐる。
潜る必要性はなかったけれど……本能的に入ってしまった。
それにしても、風邪ですって?
私の脳は一瞬にして、答えを導き出した。
レミィめ、幻想郷中に「パチュリーが風邪だ」と言い回ったわね。
見舞いに来る客、というのは私と比較的顔を合わせる連中(主に魔女)やゴシップを求める奴らに違いない。
まずい、想定よりも危険な状態だ。
しかも、風邪だという前提条件になってしまった以上、今から布団の外には抜け出せない。
ヘタに動くと、事態が悪化してしまうだろう。
幻想郷の妖怪は、常に神出鬼没。油断していると、私は普段から全裸でいる妖怪、というレッテルがついてまわってしまう。
とりあえず、魔理沙には帰ってもらわないと。こいつは口が軽い。
黙って息を殺していると、
「いないのか? 勝手に入るからなー」
などと、見事に嫌な方向へと行動をとる。
これが、マーフィーの法則か。
私は口を開かざるを得なかった。
「風邪だから、部屋には入ってこないで」
「大丈夫だ、マスクしてるから。99%カットだぜ」
「そういう問題じゃないでしょうに」
「おじゃましまーす」
無視してドアを蹴り開けた。
まさか誰かが入ってくるなどと思わなかったから結界などはしいていなかった。
迂闊だ。古典劇ぐらい抜け目がありすぎた。
私はわざとらしく咳払いをする。
「なーんか、普段と変わらないな。喘息なのか風邪なのかわからないぜ」
「い、いいからもう帰りなさいゲホゲホ」
「なんだ、割と元気そうじゃないか。それじゃ、本は勝手に何冊か借りていくぜ」
普段と変わらないのは魔理沙のほうだった。
じゃあな、と言いながら走る音が遠ざかっていく。
後で何がなくなったのか再確認しなければならない。
それよりもまずは、今日一日の対策を練らなくては――というところで、別の声が聞こえる。
「あら、ドアが壊れてるじゃない。パチュリー、起きている?」
2色の次は7色だ。IQテストならば、この次に来るのは聖白蓮に違いない。
アリスは更に、リンゴをもってきたからむいてあげるわね、と驚愕の言葉を発した。
この迷いの森に住む魔女にまで伝達されるほど、情報が行き届いてしまっている。
どうしよう?
「頭まで布団がかかっている……寝ちゃってるのかな?」
独り言の大きい魔法使いだ。それとも私にもう一度確認をしているつもりなのだろうか。
そういえば、アリスは人形劇経験者だ。
演技がバレる可能性は高いだろう。
病人のフリを下手にすると悪い印象を持たれかねないのでここは黙っておくことにしよう。
ブーツの音が近づいてきた。ブーツの音が不規則に小さく鳴っている。本を避けながら慎重に歩いているのだろう。
大分近くにアリスがいる。
そして、全裸の私がいる。
布団のなかからほんのりと、アリスが好んで着ている水色のスカートが確認できた。
ベッドの隣。
肌色が近づく。ちょっと待って、それ以上はいけない。
それ以上は……
「パチュリー、だいじょう――ぶ!?」
むきゅっ……!
バッチリ目があった。
布団は太股のあたりまで勢い良くめくられてしまった。
全てが抜け落ちた。思考停止とはこういうことか。などと、もう若干諦め気味に余裕が出てきた。
アリスは一瞬氷のように冷たく固まり目が泳ぎ、その後顔をリンゴのように真っ赤にして、私の肩まで布団をかけなおした。
人形のように、ぎこちない動きだった。
―3―
「その、ごめんなさい。そんな事情があるとは知らないで、寝苦しいんじゃないかなと思って」
「あんなにしっかり捲る必要はないじゃない」
「うずくまって寝てるのかと思ったのよ。デンジャラスな状況じゃなくて良かったわ」
アリスはイスに座り、リンゴを剥いている。
手つきが慣れていて、このまま皮は一枚つなぎで剥ききれるだろう。
その様子をベッドの中から見ていると、本当に自分が病人になったみたいで可笑しい。
アリスにはこの罰ゲームのいきさつまで話した。
彼女はずっと横をむいて聞いていたが、その漫画読んでみたかったわ、とだけ言いリンゴを剥き始めた。
私からは、アリスが未だにほんのり赤らんでいるのがわかるが、私は紅魔館ぐらい紅いに違いない。
皮は綺麗に一枚で剥がれ、アリスは二個目のリンゴにナイフを当てた。
「咲夜もブラックジョークをするのね。私のところにまで伝えにくるだなんて」
「天狗達が最大の敵ね。あいつらに見つからないようにしたい。頼めるかしら?」
「私に全部話したのって、その為よね。今日はタスクもないし、長居できると思う」
「人形関連の書物はちゃんと入荷しておくわ」
「うん、よろしい」
とりあえず、この七色の魔法使いが室内にいれば、天狗への対策にはなるだろう。
私は黙っていれば、アリスが適当にあしらってくれる。
まだ被害としては軽かったのかもしれない。
お嫁にいけない、という表現が適切ではないからだ。彼女なら、嫁に行くまでは黙っていてくれそうだ。
「それにしても、咲夜め……能力と労力の無駄遣いだわ。レミィの命令だけとは思えない、真剣さを感じる」
「ふふっ、それだけ貴方は愛されてるって事じゃない。私が風邪を引いても、きっと誰もこないもの」
「森でさ迷うリスクは負いたくないわね」
「そうでしょ」
「でも私は、行ってあげるわよ」
リンゴの皮が落ちた。まだ半分も剥けていないというのに。
さっきから冷静を装いつつソワソワしていたが、ピークに達したようだ。
結構からかいがいがある。退屈はしない。
「うん、貴方が裸で寝ているとしたら、それは見ものだものね」
「な、何いうのよ! 私はパジャマ着て寝てます」
「そう。それなら行く理由が減る」
「そんな事言って。私が嘘言いふらしてもいいんだからね! ステルスマーケティングって都会で流行ってるんだから!!」
「リンゴはいつになったら食べられるのかしら」
「……最初に剥いたのは、私が食べる」
アリスは一個目に比べてボロボロになったリンゴを、ゆるやかに放り投げる。
布団の上に乗った。私が全裸でとれないのを知っての所業だろう。
クスクス、という擬音がぴったりの笑い方をされた。
「どうぞ召し上がれ」
「ちょっとした嫌がらせは結構だけれど、せめて食べやすいように分割して欲しいわね」
「はいはい」
アリスは立ち上がり、ベッドの方に近づいてきた。
リンゴをとるために屈むと、間近にアリスの横顔が見える。
シトラスの香水の匂い。
目があうと、頬を再度紅潮させながら、アリスは微笑んだ。
「もう一回、布団をとっちゃおうかしら」
「むきゅ! やめなさい」
「そのむきゅ!っていうのが、逆にそそるわね」
「あ、あなたレズビアンだったのね」
「違うわ。違うけれど、正直に言うとね、ドキドキしてる」
「レズビアン……」
「女性からみても、素敵な肢体だったって事。ちょっと羨ましくなっちゃった。着やせするタイプだとは思ってなかったわ」
「え、あ、その、でもえっと――」
「あら、言葉攻めに弱かったの? そうね、ちょっと見ちゃったって程度だけど、貴方の体ね……」
「むきゅー! やめてーーーー!!」
思考停止。
ベッドの端に座って、アリスは私の体についての感想を散々話した。
恥ずかしくて仕方がなかったが、もう少しシェイプアップすればもっと綺麗になる、という言葉だけは覚えてしまった。
―4―
「やぁやぁ、パチュリー殿。お体の具合はいかがかな」
「吸血鬼に対して、真剣に駆除の方法を考えられる程度よ」
「おー、こわいこわい」
残り30分で今日が終わる、というところでレミィが部屋に入ってきた。
本を蹴っ飛ばしながら入ってくる。腹がたつ。
アリスはテーブルの上にクッションをのせて眠っている。
彼女は散々私をからかった後、天狗や守矢神社の連中を自然にあしらい、一緒に本を読みながら話し相手になってくれた。
まだ成り立ての魔法使いに、魔術書の用途や展開方法を語るのは、私自身にとっても勉強になった。
誰かに伝達する、という行為は自分がどれだけ理解をしているのかを知るのに適した方法だ。
今日も語る中で、いくつかの反論があったし、また私自身の考察に足りない部分に気が付くことも出来た。
アリスが最も好んでいる物理魔術について話している時に、急に寝る準備を始めてしまったので不思議だったが、レミィが運命を操る程度の能力を使ったのか。
「どう? 全裸でいる気分は。それなりに面白い反応にめぐり合えたと思うけど」
「おかげさまで」
「何人ぐらいに見られたの?」
直球で質問をふっかけてくる。レミィでなかったら、魔法で燃やしてやるところだわ。
「そこの魔法使いだけで済んだ」
「つまんない!」
「それよりも、彼女をちゃんとベッドで寝かしてあげてよ。咲夜呼んで」
「あんたが一緒に寝てあげればいいじゃない。シングルベッドだって、こいつの分ぐらいは入れられるでしょ」
「レミィ、貴方に最も苦痛を与える殺害方法は……」
「どうしてそんなに怒ってるんだか」
レミィが指を鳴らすと、アリスの体が既にテーブルの上から消えていた。
咲夜が連れていったんだろう。それにしても、反応が早すぎるとは思う。
レミィは子供っぽい笑みを益々増強させる。
「さてと、それじゃ私も寝ようかな」
「吸血鬼は夜行性。ついさっき起きたばかりじゃないの?」
「残念。実は、一日誰かさんの様子をこっそり見ていました」
「悪趣味ね」
「吸血鬼だもの。悪いのよ」
そういうと、何故かレミィは着ている服をゆっくりと脱ぎ始めた。
ランプの明かりに、白くて華奢なボディラインが映える。
恥毛も生えていない、幼さを象徴するような体。
ベッドの中にもぐりこんで来た。実に乳臭い。
「パチェ、本を枕にしてて首痛くならないの?」
「反発がある方が、健康に良くいい夢が見られるのよ」
「今日は広辞苑なんかより、いい刺激がいっぱいあった様子でしたが」
「……」
「その調子で、私の相手をするべきではなくって」
「子供ね」
「ん?」
「レミィ、やっぱりあなた、つくづく子供よ」
レミィの体は実になめらかな肌触りで、凹凸が感じられなかった。
くすぐってやると、打ち上げられた魚のように動きながら、私をくすぐりかえしてくる。
残念なことに、私は鈍感なタイプだった。
一方的な攻め手が続く。
「あひゅっ……や、やめ……あふ、あんた私をころしゅ気なのぉ!?」
「殺す理由があるからね。辱めの分ぐらい、笑わせてあげるわ」
息が出来ないぐらい触ってやった。
レミィはぜーぜー、とまるで喘息の時の私みたいに息をあらげている。
因果応報だわ。
レミィは息を整えると、漫画描いた時もこれぐらい笑わせて欲しいもんだわ、と皮肉を言う。
「漫画に対しての予習は今日一日で終えた。もう一度、同じ条件でレミィが二度と図書館に入れなくする事が出来るわよ」
「誰が同じことやるかって」
「それじゃ、今度はレミィが小説を書くってのはどうかしら。時間は一年あげる」
「結構。頭が痛くなりそう」
「私だって、読みたくない」
もう日付が変わっている。
しばらくしたら、レミィは寝息をたててしまった。
いびきはかいていない。細い息がかかる。
黙ってしまうと、とても異変を企てたり酒を嗜んだり館の主をしているとは思えない。
そう、レミリア・スカーレットはあまりにも幼い。
だからこそ、霊夢のような冷たさや咲夜のような大人びた人間にちょっかいを出すのだろう。
同じように私も親代わりとして考えられているのだろうか?
それは後年この少女が伝記でも書くような年頃になればわかる。
それだったら、ひとつ推薦の帯ぐらいは書いてあげよう。
レミィは私の胸の辺りに抱きついて、しっかりと握り離さない。
このままでは、私は服を着る事は出来ない。
罰ゲームの時間はとっくにすぎてしまっているけれど、起こしてしまうのもかわいそうに思えた。
無知を晒さなければ、子供というのは母性として優しくしてしまうのが生物としての性だろう。
論理的に全く不可解だけれど、私はこのまま眠ってしまうのが最も素晴らしい、と考えた。
―Epilogue―
次の日、天狗の山から新聞が届いた。
ゴシップだ。新聞の一面には、こう出ている。
『全裸で寝ている! 図書館の魔女の丸秘写真!!』
記事の製作者は姫海棠はたて。
念写で偶然撮れた超スクープだそうだ。
バッチリ、アリスに見られた瞬間や私とレミィが寝ている場面をとられていた。
記事は文章力に乏しいものだったが、ひたすらと
『魔女は裸で寝る! 西洋人みたいだ!!』
と品性無く強調して何度も反復して書かれていた。
刷り込み強度だけは非常に高い、洗脳のような内容に呆れてしまう。
咲夜に新聞が出鱈目のコラージュだと言いまわらせる必要がある。
想定内の最悪の結果が、見事現実になってしまった。
マーフィーめ……
それにしても、写真にうつる自分が情けない。
これではむちましいというより……胸以外が幼児体系だ。
むきゅぅ。
今日は一日、ベッドの中で本を読もう。
効果のあるダイエット本を見つけるのは骨が折れそうだ。
肉は減らないけど。
―END―
元がそれなのにどうしてこうなったw
面白かったです。
面白かったです、アリスはレズビアン、パチェとレミは裸で一緒に寝る。とてもけしからん内容でした。いやはやけしからん!
お題とはちょっとだけ違うようなそうでもないような気はしますが、可愛いからいいんです。レミパチェには代わりはないぜ。
かいてくれてありがとうございましたー
と反応したはいいもののKENZENじゃないですかー! やったー!
フフッ……久々にハートが熱くたぎったわい。
ただパチェさんよ……喘息持ちが裸で寝るとか自殺行為ですぜ。
普通にあたたかくしててもリアル喘息が再発する程度の読者のご意見で……ハッハッハッハッウグッ……ゲェーッホゲホゲェッホ!
はたての念写は、過去に撮られた写真を復元するだけなので、誰かが事前に撮ってないといけないんですよね。
時間止めて撮ったに違いないwww
アリス可愛いよアリス。
念写の下りに、もうワンヒント欲しかったかなって思います。
なんにしても、アリス可愛いよアリス。
総じてぶっきらぼうでドライな文体だな、という印象。
作中の登場人物達は、文章の上では笑ったり怒ったり照れたりしているのだけど、
イメージとして伝わってくるのは、なんか感情の振れ幅が小さいなこの人達、みたいな。あくまで俺にしてみれば、ですけど。
否定的な感想っぽくなりましたけど全然そんなことはなくて、だから俺は好きなんだと言いたかったのです。
>広辞苑に安物の布を巻いた枕が、今日も固い。
いいっすね。こんな感じの言い回しは大好きだ。
ラストの一行も気が利いている。
こう、わかるかわからないかギリギリのラインで唇の端が持ち上がっている、的な感じが良い。
それにしても、パチュリーといいアリスといい、概して女性は痩身願望が強くて困る。
むちましいことの何がいけないのかと声を大にして言いたいね、俺は。
そうそう、レミリ子もいい味出してますね。
ただ単にお子様って訳でもなく、己の欲望に正直な生き様を誇っているように思えて、
羨ましいというか振り回されてみたくなるというか。
散漫な感想で申し訳ありません。
次回作を楽しみにお待ちしております。
面白かったです
それにしてもKENZENですな。
パチュリー様、布団めくらせてください
しかし魔女ともあろう方が広辞苑を枕にしてよいものかと…
ちょっと花果子念報買ってくる。
アリスのキャラクターやそんな彼女の行動に焦りも見せるパチュリー、レミリアにいろいろ加担する咲夜もとても良かったです。