目が覚めると、そこは真っ白な世界でそれはもうキラキラと輝いていた。
そんな光り輝く銀世界のど真ん中に私は立っていた。
不思議と寒さは感じなかった。むしろどこか暖かみさえ感じるようだった。
真っ白な月がこんこんと辺りを照らし、雪が輝くそんな世界の中で、私はカレーを炊いていた。
「そうそう、カレーと言えば甘口なのよね」
私は甘口のカレーが好きだ。どんな甘いお菓子より好きだ。あ、ちょっと言い過ぎた。まあ洋菓子よりはカレーと言うべきか。しかし、世間の風は冷たい。甘いカレーが好きと宣言しただけで、それはもう「何こいつ子供?」という目で見られる。いつもそうだ。地霊殿の連中はどいつこいつも「さとり様って甘いカレーしか食べれないんですね。子供だー」と言わんばかりの目でこっちを見てくる。そういうわけで、最近はではいつもハヤシライスばかりだった。今日は、久々のカレーである。私は、スプーンをポケットのなかから取り出し、そっと掬って味見をする。
「程よい辛さ。そして甘さ! これこそがカレーよね」
「その通りですね」
目の前にいつの間にか一人の男が居て、私の顔を見てうんうんと頷いていた。いかにも貴族といったような服を着て、星の付いたステッキを持っている。私は、スプーンを舐めながら頭の中のデータベースから該当する人物を探ってみた。しかし、どうにも心当たりが無い。仕方なく、聞いて見ることにした。
「えーっと……どちら様でしょうか」
「いやあ、大したものじゃないですよ」
「なんか大したものっぽい服を着てるんですけど……」
「そんなことないです」
どうにも埒があかないので、私はとりあえず意識を目の前のカレーに戻すことにした。そろそろ食べごろといったところだ。私は、地面においていたライスの上にスプーンでカレーを掬ってかけていく。
「あの、すいません。カレーを分けてもらえないでしょうか」
眼の前の男が言った。私は、きっと睨んで言い返した。
「駄目です。これは私のカレー」
「いえ、それは僕のカレーです」
「おかしいじゃないですか!人が必死にカレーを食べようとしてるのに!酷い!」
なんだか良くわからないけどもとにかく怒りがこみ上げてきて、私は立ち上がってスプーンで男の頭をぺしぺしと叩き始めた。しばらく男は黙って叩かれていたが、そのうち泣き出して帰っていった。私はざまあみろ、と舌を出して男の背を見送り、カレーの盛り付けに戻った。
男を送り出して10分後、ついにカレーがカレーライスとなった。何故ここまで時間が掛かったかと言えば、一度やってみるとわかるがスプーンでカレーを盛り付けるのは中々の苦行なのだ。例えるなら、ステーキの付け合せのコーンをフォークで必死に掠め取りながら食べるときのあの感じを想像してもらうとわかりやすい。私のスプーンは小さめなのだ。
さて、いざ手をあわせていただきます、と言いスプーンを挿し込もうとしたその瞬間、今度はピンクのドレスを来たお嬢様が私の前にちょこん、と座っていた。
「えーっと、あの貴方は」
「そのカレーをください」
お嬢様は、目にも留まらぬ速さで土下座して私にカレーを要求してきた。雪でお召し物が汚れますよ、と声を掛ける間すらない土下座だった。私があたふたしてる内にもう一度頭を擦りつけて「ください」と凍えで繰り返すお嬢様。あまりのバツの悪さに私はさっとカレーライスを差し出していた。お姫様はカレーを仰々しく受け取ると、その瞬間別人のように笑顔になり「やったー!カレーだカレーだー!王子と一緒に食べよー」とはしゃぎながら去っていった。私はその姿に思わず「やるせねえ!!!」と大声で叫んでいた。
自分の大声で目覚めるとそこは見慣れた私の寝室。なんと今までの出来事は全て夢だったのだ。起きてから振り返ってみれば色々予定調和だな、と思いつつもベッドから起きる。すると、あの覚えのある。そう、カレーの匂いがリビングから漂ってくるではないか。私は、慌てて廊下を渡り扉を開けた。
「あら、さとり様。今から起こしに行こうと思ってたのに」
「あ、お姉ちゃん。さっき狸が外の世界のおみやげを持ってきてくれたんだよ!」
そんな二人の言葉も耳に入らず、私は食卓の上に置いてあったカレーのパッケージに駆け寄りさっと手に取る。
『カレーの王子様』『カレーのお姫様』
はてさて、さっきの夢は予知夢かはたまた予定調和か。私はふふっと声を上げて微笑み、さっと席に着く。そして、さっき終わらせた「いただきます」はスキップして目の前のカレーを頬張る。ふむ、これはお姫様の方にに違いない。この味のお転婆なことと言ったら。
そんな光り輝く銀世界のど真ん中に私は立っていた。
不思議と寒さは感じなかった。むしろどこか暖かみさえ感じるようだった。
真っ白な月がこんこんと辺りを照らし、雪が輝くそんな世界の中で、私はカレーを炊いていた。
「そうそう、カレーと言えば甘口なのよね」
私は甘口のカレーが好きだ。どんな甘いお菓子より好きだ。あ、ちょっと言い過ぎた。まあ洋菓子よりはカレーと言うべきか。しかし、世間の風は冷たい。甘いカレーが好きと宣言しただけで、それはもう「何こいつ子供?」という目で見られる。いつもそうだ。地霊殿の連中はどいつこいつも「さとり様って甘いカレーしか食べれないんですね。子供だー」と言わんばかりの目でこっちを見てくる。そういうわけで、最近はではいつもハヤシライスばかりだった。今日は、久々のカレーである。私は、スプーンをポケットのなかから取り出し、そっと掬って味見をする。
「程よい辛さ。そして甘さ! これこそがカレーよね」
「その通りですね」
目の前にいつの間にか一人の男が居て、私の顔を見てうんうんと頷いていた。いかにも貴族といったような服を着て、星の付いたステッキを持っている。私は、スプーンを舐めながら頭の中のデータベースから該当する人物を探ってみた。しかし、どうにも心当たりが無い。仕方なく、聞いて見ることにした。
「えーっと……どちら様でしょうか」
「いやあ、大したものじゃないですよ」
「なんか大したものっぽい服を着てるんですけど……」
「そんなことないです」
どうにも埒があかないので、私はとりあえず意識を目の前のカレーに戻すことにした。そろそろ食べごろといったところだ。私は、地面においていたライスの上にスプーンでカレーを掬ってかけていく。
「あの、すいません。カレーを分けてもらえないでしょうか」
眼の前の男が言った。私は、きっと睨んで言い返した。
「駄目です。これは私のカレー」
「いえ、それは僕のカレーです」
「おかしいじゃないですか!人が必死にカレーを食べようとしてるのに!酷い!」
なんだか良くわからないけどもとにかく怒りがこみ上げてきて、私は立ち上がってスプーンで男の頭をぺしぺしと叩き始めた。しばらく男は黙って叩かれていたが、そのうち泣き出して帰っていった。私はざまあみろ、と舌を出して男の背を見送り、カレーの盛り付けに戻った。
男を送り出して10分後、ついにカレーがカレーライスとなった。何故ここまで時間が掛かったかと言えば、一度やってみるとわかるがスプーンでカレーを盛り付けるのは中々の苦行なのだ。例えるなら、ステーキの付け合せのコーンをフォークで必死に掠め取りながら食べるときのあの感じを想像してもらうとわかりやすい。私のスプーンは小さめなのだ。
さて、いざ手をあわせていただきます、と言いスプーンを挿し込もうとしたその瞬間、今度はピンクのドレスを来たお嬢様が私の前にちょこん、と座っていた。
「えーっと、あの貴方は」
「そのカレーをください」
お嬢様は、目にも留まらぬ速さで土下座して私にカレーを要求してきた。雪でお召し物が汚れますよ、と声を掛ける間すらない土下座だった。私があたふたしてる内にもう一度頭を擦りつけて「ください」と凍えで繰り返すお嬢様。あまりのバツの悪さに私はさっとカレーライスを差し出していた。お姫様はカレーを仰々しく受け取ると、その瞬間別人のように笑顔になり「やったー!カレーだカレーだー!王子と一緒に食べよー」とはしゃぎながら去っていった。私はその姿に思わず「やるせねえ!!!」と大声で叫んでいた。
自分の大声で目覚めるとそこは見慣れた私の寝室。なんと今までの出来事は全て夢だったのだ。起きてから振り返ってみれば色々予定調和だな、と思いつつもベッドから起きる。すると、あの覚えのある。そう、カレーの匂いがリビングから漂ってくるではないか。私は、慌てて廊下を渡り扉を開けた。
「あら、さとり様。今から起こしに行こうと思ってたのに」
「あ、お姉ちゃん。さっき狸が外の世界のおみやげを持ってきてくれたんだよ!」
そんな二人の言葉も耳に入らず、私は食卓の上に置いてあったカレーのパッケージに駆け寄りさっと手に取る。
『カレーの王子様』『カレーのお姫様』
はてさて、さっきの夢は予知夢かはたまた予定調和か。私はふふっと声を上げて微笑み、さっと席に着く。そして、さっき終わらせた「いただきます」はスキップして目の前のカレーを頬張る。ふむ、これはお姫様の方にに違いない。この味のお転婆なことと言ったら。
特に最後の段落なんかキュートでポップでイカしてて、僕もこんな文章が書けたらいいなと思いました
冗談です。
いいお話でした。好きです。
私も食べた事無いです。いっつもスーパーで安くなってる「こくまろ」っていうやつでした。まあ、美味しかったですけど。ごちそうさま! 超門番