Coolier - 新生・東方創想話

レミサナの日常 ドゲ嬢

2012/03/04 09:52:30
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歴史書というものは未来を映し出す鏡でもある。
生きている限り同じ過ちを繰り返してしまうかもしれない。
そんな時に過去のことを知れば、間違いを正せる可能性が生まれるわけだ。
人の書く日記も言わばその人の歴史そのもの。
書物と違うと言えば誰それなしに見ていいものではないってことだ。
つまるところ私は故意ではないとはいえ見てしまったのだ。
そんな目で私を見ないで欲しい。この私とて間違いを犯すことはある。
しかし1つだけ。このレミリア・スカーレットが1つだけ言い訳をしていいならばだ。
表紙にどう見ても普通の本と間違えるカバーを付けるのはやめてくれませんかね。



「と、言うことがあってパチェがご機嫌斜めなのよ」
いつものたまり場である図書館から追い出された私は、日陰のテラスで早苗に相談を持ちかける。
ちょっと面白くて日記をほぼ全部読んでしまった私も悪いのは認めるけれど……。
やはり日記のタイトルに「幻想郷書庫に関する記録」なんて書かれたら、誰も日記とは思わないわよね。
「素直に謝るのが一番じゃないですか? 本のタイトルとは間違えそうとはいえ、興味で見てしまった事実は変えられませんし」
「そうよねぇ。問題は鍵を閉められて結界を張られて完全に引きこもってるパチェにどう会うか」
力技で壊せないことはないけれど、変に実力行使して殴り合いみたいな喧嘩に発展させたくない。
咲夜か妖精メイド。もしくは小悪魔に頼んでみるとか。
それで鍵を開けてくれるなら、とっくの昔に小悪魔がどうにかしてくれてるよね。
「誠意を伝えて謝るって今までしたことないのだけれど、プレゼントを贈るとかそういうのがいいのかしら?」
「今回の喧嘩はプレゼントはあまり意味ないでしょう。どちらかというと物で釣ってるイメージをもたれて好感度ダウンです」
王が褒美を与える感じで上から目線よね。
「頭を下げて謝るのが一番かしら」
「いいえ。それではパンチ力が足りません」
「謝るのにパンチやインパクトっているの?」
衝撃的な謝り方とかそれこそ油注ぐことになりそう。
「えぇ。日本古来から伝わる究極で最大の奥義が1つあります。それにもランクがありますが今回初めてなら初級ランクでも大丈夫でしょう」
ランクまであるとか日本という国は謝罪に特化してるの?
テレビでも不祥事すりゃ頭さげてるけれど、あれだけじゃ誠意どころかイラッとするだけと思うわ。
「90度に頭さげるやつよね」
「あんなの初級どころかチュートリアルですよ」
いらぬプライド豊富だったころの私ならあれだけでも屈辱に感じるんだけれど。
今の私は親友と仲直りするほうがもっと大切だと思えるようになっている。
あれ以上のことでも私はやってのけよう。
「たとえ妖精メイドから笑われようとも、たとえ相手が見てくれなくともそのポーズを変えず恥じずただその覚悟を表すことができますか!?」
紅魔異変ぐらいの私なら間違いなくふざけるなと答えてるわね。
妖精メイドから笑われる当主とか恥でしかない。
「……パチェが許してくれるなら」
自らに非があり許しを請う。そんな日がこようとは思わなかった。
たとえ親友のパチェ相手でも、私が謝るなんて考えられない。力でどうにかしようとまでしたかもしれない。
いや、だから今まで怒らないで我慢させていたのかもしれないわね。
霊夢や魔理沙、そして早苗と過ごしてきた私だからこそ本当の感情をようやく見せてくれた。
500年たってもただのわがままだった私が、短い期間で生まれ変わった気分だわ。
人間の成長というのはこういう速度なのかしら。
「パチェが許してくれるならば私は恥など感じない!」
タイトルがどうであれ、興味を持って本を戻さなかった私に問題があるのだ。
言い訳はしょせん言い訳にすぎない!
「分かりました。私がお手本を見せます」
早苗は椅子から立ち上がり少し開けた場所へ移動する。
「格闘技の世界では猛虎落地勢とまで呼ばれた究極の技をしっかりと見届けてください」
瞬きもせずその行動の1つ1つをしかとを見る。
一瞬の動きから生まれる究極の美。
「これが! これこそが!」
正座の形から手を大地につけ頭を降ろす。
「日本が誇る究極奥義 土下座です!」
なんて美しい形なの。
この背中の流れるような姿勢。
岩のように地に張り付き、何が起ころうともこの頭を上げることなく謝罪をし続けるという気迫。
「たとえパチュリーさんがこの姿を見ていなくとも続ける勇気。そしてこの姿を笑われても崩すことなく頭を下げ続ける覚悟。これがあるならレミリアさんの誠意は伝えれるはずです!」
あぁこれなら私の全てをぶつけられる。
たとえ足蹴にされても崩れぬこの型ならばいつまででも頭を下げられる。
格闘技としても採用されるこの型は間違いなく日本が誇る最高の美学なのだろう。
「やはり早苗に相談して正解だったわ」
「そう言ってもらえてなによりです。しかしこの土下座は何度もすれば、逆に反感を生むもろ刃の剣です。2度はありませんよ」
「同じ過ちは繰り返さないわ。だから私とパチェの間で土下座をするのは最初で最後ね」
「……わかりました。できればレミリアさんの長い人生でも最初で最後であることを願います」
「何度もするものじゃないものね。だからこの1回で全てを決める」
私はパチェのいる図書館へと足を運ぶ。
すれ違う妖精メイド達を見ると、少しばかりの躊躇が生まれるかと気がかりだったが覚悟は自分の中で揺るがないものになっていたようね。
「レミィの入室禁止。なかなかにひどい張り紙ね」
マジギレしてるのがヒシヒシと伝わる。
早苗の助言が無ければこれは修復に数十年使ったかもしれないわね。
「パチェ! 聞こえてるかしら。返事はしなくてもいい。だから私はこの一言を伝えたい!」
教えられたように私は大地に膝をつき頭を下げる。
「本当にごめんなさい!」
この巨大に見える扉を開けてくれるまで私は岩のようになろう。
何が起きようともここで頭を下げ続けよう。
この気持ちこそ土下座。

ギィィィ

扉の開く音がする。
しかし出てきたのは小悪魔かもしれない。
パチェが許してくれるまでこの頭を上げるわけにはいかない。
「……お、お嬢様!? なんて恰好してるんですか!!」
この声は小悪魔ね。
ならこの土下座はやめるわけにはいかない。
「パチェに謝る。それだけよ」
頭を下げたまま答える。
「いやでも、パチュリー様ぁぁぁ!」
走りながら去っていく。
どうやら呼びに行ってくれたのだろう。
けれど許しがでるまで安心なんてできない。
「何してるの」
冷たい声が上のほうから聞こえる。
マジギレしているパチェの声よね。
「私が今パチェに見せれる唯一の誠意。勝手にパチェの聖域を覗き見たことをどうか許して欲しい」
「だからって土下座って、紅魔館主としてはプライドも何もあったものがないわよ?」
「そんなものよりパチェと仲直りできるほうが私には重要なの」
私の返答に彼女は黙りこみしばらくの無音が続く。
「やれやれ。これじゃ私のほうが駄々こねている子供みたいになるわ。まったくそんな最終最強奥義の土下座をどこで覚えたのよ。ドゲセンなんて貸した覚えないわよ」
「ドゲセン? 私は早苗に教えてもらっただけよ。親友と仲直りするにはどうすればいいかってね」
「なるほどね。今回は特別に許してあげるわ。勘違いでめくるのはしかたないけど、今度読んだら鉄板の上で土下座させるわ」
さすがの吸血鬼でも勘弁してもらいたいわ。
「早苗と土下座をするのはこれが最初で最後だって約束したもの。もうこんなことしなくてもいいようにするわ」
「私以外にもいい親友ができたみたいね。早苗にパチェポイントを上げないといけないわ」
まだそれ継続してたの。
もうそろそろ100貯まってパチェと呼べるころじゃないかしら。
「こぁ。早苗を読んできてくれる? 私たちのたまり場はここだからね」
「はい! すぐに行ってきます!」
私とパチェが仲直りしたのがとても嬉しかったのか、彼女は最高の笑顔を見せて図書館から飛び出していく。
「レミィも土下座すれば何でも許してしまう?」
「まぁね」
「そう……」
パチェは恐る恐る机の上を指差す。
その上には私が数日かけて組み立てている模型が無残な姿で転がっていた。
「日記見られたあとについカッとなって……」
「あ、あははは」
ここで怒っては私の土下座が無駄になる。
怒り狂うとさすがの温厚な彼女もこういった行動にでるのはしかたないこと。
懐深い当主としては笑って許すところよね。
「あと、マグカップも」
ががが、我慢。
そう、倍返しされてもしかたない。
「それと」
まだあるのか!
「パチェ……流石に仏の顔を3度までよ!」
さらに出てきそうだった時点で私の我慢も限界を越えそうだった。
「猛虎落地勢!」
浮き出た血管の私に対して、喘息もちの彼女が高速で見せたのは見事なまでの土下座だった。
タイトルで分かった人は訓練された土下座マスター。
まず3歩下がりますのネタをしようかと思ったけれども
あれだとドゲセンの魅力が死ぬと思ったので今回はらんま1/2のネタにしました。
八神桜花
http://harunohanahubuki.blog81.fc2.com/
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コメント



0.700簡易評価
1.30名前が無い程度の能力削除
よくわかりませんでした。
2.90名前が無い程度の能力削除
ん……まあ、元ネタがわからないとちょっとアレかもしれませんが、私は知っていたので楽しめました。
お嬢様が焼き土下座をする日が来ないことを切に願います。
4.80奇声を発する程度の能力削除
元ネタ少し分かりませんでしたが、楽しめました
5.無評価八神桜花削除
>>1
ちょっとマニアックネタすぎましたね。

>>2
作者は有名だけれど、ドゲセンがマニアックすぎるのでしょうか。
それとも らんま1/2のほうがもう古い時代なのか。
お嬢様はやってのける覚悟はあるけれど、そんな過ちはもうしない可愛いお嬢様です。

>>奇声を発する程度の能力さん
ドゲセン:バキの作者が描いていた土下座漫画
猛虎落地勢:らんま1/2にて主人公の父親が息子に伝授した必殺技。ようは土下座である。
焼き土下座:今一番有名な土下座。
そろそろ使ってる漫画のネタがおっさんと呼ばれそうでビクビクしてる桜花でした。
12.80愚迂多良童子削除
土下座と言うと、自分の中ではラーメンズの日本の型のやつですね。
14.100名前が無い程度の能力削除
土下座
16.無評価八神桜花削除
>>愚迂多良童子さん
ニコニコ動画で東方タグにおいては紫MMDで有名になりましたね。
あのネタも入れようか悩んだけれども親友に謝るのにアレは問題すぎるのでやめましたw

>>14
不祥事おこしたら土下座すればいいという風習は許せない。
腹を斬るぐらいの覚悟をもってする崇高な謝罪が土下座。
22.90名前が無い程度の能力削除
まあ土下座は構えでもありますから(瀬戸が空手回でやってた奴)おぜうならつかいこなせると信じてました