「そういえばメリー。わたし実はゲイなのよね」
蓮子のメリーへの告白は、まったく唐突に行われた。
土日の秘封倶楽部活動を前に、蓮子の家に泊まりこんで二人でだらだらとゴールデンタイムのバラエティー番組を見ている。告白は、そのCMにはいった直後に行われた。
「へ?」
メリーがきょとんとした顔で振り向いた。
蓮子は顔をテレビに向けたまま、もう一度軽い口調で繰り返した。
「ゲイなの。私。今まで黙っててごめんね」
「……えっと、ジョーク?」
「いやいや、マジ告白ですよ。それともう一つ、私には好きな人がいます。それはマエリベリー・ハーンさんです」
「はぁ?」
メリーはしげしげと蓮子の表情を見つめた。テレビを眺めている蓮子の顔は、冗談とも本気とも受け取れなかった。テレビでは、若い女性が健康食品の名前を朗らかに叫んでいる。二人の間のガラステーブルの上には、晩に食べた出来合い弁当の空き箱が、まだ無造作に残されている。告白の雰囲気とは、数百パーセクほども程遠かった。
「……えっと、ごめん意味がわからないんだけど」
「あはは。そっか」
ほんの一瞬、蓮子の表情に亀裂がはしった。が、すぐにそれは消えた。蓮子はまた、軽く笑い飛ばすような声色で言った。
「まぁいきなりこんなことを打ち明けられたら、ふつう驚くよねー」
「驚くっていうか……え? 本気?」
「もう。そうだって言ってるじゃない」
蓮子はのんきそうな表情をしていたが、どことなく視線が熱い。
「つまりさ、メリーさんメリーさん私の彼女になってくれませんか? ってことだよ」
「えっと……それってつまり、恋人になるってこと?」
「いぐざくとりぃ、その通り」
メリーは間抜けな顔でしばし視線を泳がせた後、さらりと答えた。
「えっと、それはもちろんNOだけど。私はゲイじゃないし……」
「……。そっかー」
蓮子の表情は一見なにも変わらないようだった。が、あるいは表情を見せないようにロウの仮面をつけているようにも感じられる。どことなく強張っている。
蓮子は置物の向きをそっと変えるようにゆっくりと、顔を再びテレビに向けた。
メリーは何が起こったのか理解できていないようすだった。
「……え、ちょっと待って。なんだったの今の」
蓮子は答えなかった。
いつのまにかテレビのCMは終わっていた。わざとらしい笑い声のSEが、居心地の悪い沈黙に添えられた。
「あはは」
そのSEにつられてか、蓮子がけらけらと笑った。まるで今までの会話はなかったかのようだった。
「ねぇ、ちょっと」
メリーは完全に置いてけぼりにされた。
「さー、明日は天気予報も良いし、はりきるわよ」
「そうね」
部屋の明かりを消して。それぞれ毛布にもぐる。蓮子はベッドで、メリーはソファー。
秘封倶楽部活動日の前日は、たいていどちらかの家に泊まりこむ。今日は蓮子のアパートだった。
灯りも消え、カーテンも閉じきった。部屋は暗い。時折そとで車かバイクの音がする。
「ねー蓮子?」
「んー?」
「……結局、さっきの話、なんだったの?」
しばしの間をおいてから、蓮子が答えた。
「……もっと笑ってくれるかと思ったんだけどなー。すべっちゃったね」
どこか白々しい言い方であった。
「なによ、ギャグだったってこと?」
「いやぁ、慣れないことはするもんじゃないね」
蓮子の答えは一見肯定のようであったが、かといって否定してもいない。
「忘れて忘れて。おやすみー」
それきり蓮子は黙った。寝返りを打って、メリーに背を向けた。なにか会話がかみ合わないぎこちなさが、沈黙を呼んだ。
「蓮子って、冗談が下手ね。……おやすみ」
メリーはそれだけ言い捨てた。
深夜のどこかで、メリーはふと目を覚ました。
目覚めた理由を探してか、メリーはあたりの暗闇を見回す。
「あれ? 蓮子?」
ベッドで寝ているはずの蓮子の姿がなかった。
「トイレかな?」
メリーは首をひねって、かた耳を天井に向けた。
「……ん?」
――すん、すん。うええん。うええん。
闇夜のどこかから、すすり泣きをする声が聞こえる。押し殺しきれずに漏れ出している、そんな様子の泣き声。
「……蓮子?」
メリーはソファーから立ち上がると、足音を殺して、音の元をたどった。ワンルームアパートであるから、音のでどころはすぐにわかった。部屋を出てすぐ、トイレのドアの隙間から、灯りがもれている。
耳をゆっくりとトイレのドアにつける。一切の物音をたてないようにか、けっしてドアに身体をよりかからせず、腕で体を支え、つま先立ちになっている。
――うっ、ぐすっ、ぐすっ。
ドアの向こうの泣き声は、間違いなく蓮子だった。
静かな夜のアパートの一室に、悲しげなすすり泣きの声がじわりじわりと広がる。メリーはただじっと、その声に耳を澄ませている。
「……」
すこししてから、メリーはドアから離れた。そしてゆっくりと、自分の寝ていたソファーへ戻る。泣き声はまだ聞こえている。メリーはソファーに座ると、しばし何かを思いつめ、小さく息を吐いた。
「どうしよう……本気だったんだわ」
メリーはもぞもぞとソファーに寝入った。
泣き声はまだ聞こえている。
翌朝。
メリーの顔はこわばっていた。
「メリー? 卵は半熟でよろしい?」
「う、うん」
「いやー。予報通り良い天気だねぇ」
「そ、そうね」
蓮子は部屋の隅にそなえつけられた粗末なキッチンで朝食の準備をする。いつもの様子と何も変わらないように見える。寝巻きのまま機嫌良さげに鼻歌を歌いながら食パンを焼き、フライパンでは目玉焼きを焼いている。昨夜の涙の影は、やはりどこにも見当たらなかった。
そのうしろ姿をソファーに座ったメリーが凝視している。
「れ、蓮子?……機嫌、良さそうね」
「そりゃ、今日は秘封倶楽部の活動日で、こんなにお天気のよい小春日和で、卵の焼き具合も最高なんだもの」
鼻歌まじりにそう言いながら、蓮子はソファーの前のガラステーブルにパンと目玉焼き、牛乳のくべられたコップを並べていく。そして自分はカーペットにペタンとお尻をおろした。
メリーは奇妙なものを見る目つきで、その蓮子を眺めている。
「さぁ、いただきましょ」
「え、ええ……」
二人で手を合わせる。
蓮子はパンにマーガリンをぬり、それを齧りながらテレビのリモコンに手を伸ばす。
お天気お姉さんの元気な声が部屋にわたる。
メリーはテレビをみながら、ちらちらと蓮子の顔色をうかがっている。あるべきはずの涙の後を、なんとか見つけようと躍起になっているようだった。
「ねぇ蓮子」
「ん?」
「昨日の夜の話なんだけど……」
「へ?」
蓮子は何のことだという様子で、きょとんとした顔をした。
メリーはそんな蓮子にわざとらしさを感じたのか、少しもどかしそうな、いらだっているような顔を見せた。
「へ、じゃないわよ。ほら、蓮子がゲイだって話」
蓮子は再びキョトンとした顔したあと、
「ぷっ」
と噴出した。
「やだメリー。あれは冗談だって言ったじゃない。まさか本気にしたんじゃないでしょうね?」
けたけたと笑う蓮子を不愉快そうに眺めながら、メリーは言うかいうまいかを迷ってかしばしの間口ごもり、そしていった。
「だって蓮子、あなた昨日の夜、トイレで泣いてたでしょ」
「へ……」
蓮子は突然首を絞められたかのように、笑いを止めた。しばし目が泳ぐ。
「……起きてたんだ」
「まぁね」
「あー……」
蓮子はぺろりと唇のマーガリンをなめとった。
「じ、実はねー……お腹が痛くて」
メリーの額にしわがよった。
「はぁ?」
「急に生理がきちゃって。私っていつも重いでしょ? それであんまり痛くてね、あはは。でも大丈夫だよっ、今日の活動に支障はださない」
蓮子に似つかわしくない、軽薄な笑いだった。
「嘘」
メリーはきっぱりと言い捨てた。
「まだ早いじゃない。来週あたりでしょ」
「こ、今月は早かったの」
「蓮子の生理が重いのは知ってるけど、今まで泣いたことなんてないじゃない」
「急に腹痛がきたから」
「……」
メリーはいらだたしげに大きくため息をつき、寝癖ののこった長い金髪をかきむしった。
「ごめんね蓮子。なんか、むかつく」
「……何がよ」
居心地の悪い沈黙が二人の間におりる。レポーターの耳障りな声が、それをさらに浮き上がらせる。
「私、昨日のあなたの告白は本気だったんじゃないかって思ってる」
「は……わけわかんないよメリー」
蓮子は笑おうとしたが、失敗したようだった。
メリーは机に身を乗り出していった。
「ねぇ蓮子。お願いだからハッキリさせて。あれは本当に冗談だったの?もしそうなら、謝る。朝から馬鹿なこと言ってごめん」
「……」
すると蓮子は苦悶の表情をみせつつ天井を見上げた。思いもよらなかった状況に急に襲われ、苦しんでいるように見える。
そして顔を下ろすと、口元を笑わせて、メリーに言った。
「その話は後にしない?」
「……」
「今日は、楽しい一日にしよ? せっかくこんないいお天気なんだからさ……秘封倶楽部日和だよ」
「……」
メリーはしばし口をすぼめながら、苦い表情をした。けれどすぐに、しかたなさそうに、うなずいた。
「……わかった」
「ありがと」
メリーが小さく微笑むと、会話は終わり、二人はテレビのニュースに耳を向けた。
ワンマン電車には、二人のほかに誰も乗客はいなかった。電車はがたんごとんとゆれながら、夕刻の海沿いを走る。半分燃え尽きた太陽が、最後の残り日で何もかもを紅く染めている。海面にはあちらこちらで時折白い光が輝き、光ったかと思って目をやるとそれはすでに消えている。そうしている間にまた別の場所がきらめいている。
一時間に一本電車があるかないかのローカル線。そこには、都会の電車にはない、どこか寂しさをまとった風情がある。
「今日は、楽しかったね」
「ええ」
貸切電車のボックス席で、夕日に照らされた互いの顔を見つめあいながら、どちらともなく微笑んだ。
今日二人が訪れたのは山奥の閉ざされた神社。海沿いの最寄駅から山にはいり、熊出没注意の看板に脅かされながら、山道を数時間かけて越えた。途中道を間違えながら、最後には何とか山頂の神社へたどりついたのだった。
「蓮子ったら、道に迷ったくせに私の腕を引っ張ってずんずん進んでいっちゃうんだもの。本当に遭難するかと思った」
「迷うことなんてないのよ。頂上を目指していれば、どんな道を進んでも、いつかは辿りつけるんだから」
「時には立ち止まって、落ち着いて道を定めることも大事でしょうに。そうすれば無駄な時間をかけずにすむ」
「回り道が無駄かどうかは、後になってみないとわからないでしょう?」
「少なくとも今日は、余計につかれただけだったわ」
「それは否定しないわ」
くすくすと悪びれもせず蓮子が笑った。
それから二人はまた車窓の景色に視線を向ける。
線路と海の間には何もさえぎるものはなく、見たこともない広さの空と海が、ゆっくりと流れてく。二人は言葉もなく、しばしの間、その眺めに見入っていた。
「――ねぇメリー。私ね……」
「ん?」
窓の外に首を向けたまま、蓮子が静かに語り始めた。
「私ね――ゲイなの」
ガタンゴトンと電車は走る。
メリーはほんすこし顔を緊張させ、蓮子に視線を向けた。が、蓮子はくつろだ表情のまま、いいや、くつろいだ表情でいようと努めつつ、窓の外に顔を向けている。メリーもまた、蓮子の見つめる先に、視線を向けた。雲の輝く夕焼けに目を向けたまま二人は語らう。
「最初におかしいなって気づいたのは、小学校の三年生くらいの頃だったかなぁ。幼稚園くらいの頃なら、女の子どうしで抱っことかしあってても、そんなに変な目でみられないじゃない? けどね、だんだん周りから変な風に見られるようになって……決定的だったのは、はじめて告白した時。相手はずっと同じクラスだった女の子でね、名前、さっちゃんだったかなぁ。すごく……困った顔してた。そしたら翌日向こうの親から電話がかかってきて――」
「――ねぇ蓮子」
「ん?」
「いきなりすぎ……こっちにだって心の準備っていうものがね」
「あはは。ごめん。どうする? 止めとく?」
「ううん。聞く……」
「ありがと。そうだ、行きの電車で買ったポテチ、まだ残ってるから、ほら、食いねぇ」
「いただきます」
「――で、ね」
「うん」
「中学生になった頃には、もうちゃんと理解できてた。どうも自分はちょっと変なんだってね。でもすぐに開き直ったわ。だって、私にとってこの気持ちは自然な気持ちで、何も変じゃないんだもの。自分の気持ちを否定するなんて、嫌だった。だから、好きになった人には素直に好きって伝えたわ。気持ち悪がられる事ももちろんあったけど、ちゃんと理解してくれる相手だって、やっぱりいるもの。自分の気持ちを隠してるほうが嫌だった」
「私、蓮子のそういうところ好きよ。あんまり言いたくないけど、ちょっと尊敬してる。私はそこまで強くなれないもの」
「強くなんてないよ。ただありのままでいようとしただけ」
「十分すごいよ……でも、だから余計にわからない」
「え?」
「なんで、私にはもっと早く言ってくれなかったの? 知り合ってもう2年? 3年? ずっと隠してたなんて」
メリーは窓から目を離し、少し責めるような視線をまっすぐ蓮子に送った。
「隠してたっていうわけじゃ……いや、隠してたか」
「私は蓮子のことを唯一無二の友人だと思ってるわ。瞳の秘密を共有できる世界でただ一人の相手だもの。そりゃ、だからって何でもかんでも話せってわけじゃないけど……それって蓮子の人生の根幹にかかわる話じゃない。そういうことはもっと……早く知りたかった」
蓮子は窓の外に向けていた視線を、ちらちらとメリーに送りつつ、しばし口ごもった。
「それは、さ……やっぱり私がマジにメリーを好きだからだよ」
「……」
今度はメリーが口ごもる。視線が泳いだ。
そんなメリーに、蓮子がよわい笑みを見せる。
「今回ばかりは、私、怖い。メリーに気持ち悪いって思われるのが怖いの」
「……」
「だって私にとっても、メリーはたった一人の相手なんだもの。いつもみたく、あたってくだけろってわけにはいかないよ。……気持ちを隠してずっとメリーと友達でいること、気持ちを明かして万一の可能性にかけること……この天秤は、なかなか傾きをかえられない」
「……じゃあ逆に、なんでいまさら言うの?」
メリーが意地悪なことを聞くと、蓮子がえへへと笑った。少年のような笑みだった。
「えっとね、えへへ、メリー、最近少し太ったでしょ?」
「……いきなりなによ」
ぽてちの袋に突っ込んだ手をギクリと止めて、メリーが蓮子をにらんだ。
「たしかにちょっと、重くなったけど」
「メリーはいまぐらいが一番可愛いよ」
「……はぁ?」
「前はちょっとやせすぎだったのよね。メリーは少しぽっちゃりしてくらいが良い」
「ごめん……殴っていい?」
「ちょ、私は真面目にいってるんだから。……私ね、メリーが可愛すぎて、もう、我慢できなかったの」
「……」
「まー、あんなこすい告白をしたのは、情けなかったと思ってるよ。探りを入れるみたいに、冗談を装ってさ……」
「そのくせ、私にふられてトイレで泣いてたのね」
「……うっさい」
「認めたわね」
「……今だって、私すごく怖いんだからね」
「え?」
「メリーが家に帰るために自分の最寄駅で先に電車を降りて、秘封倶楽部はそこで終わりなんじゃないかって。も、もう、明日から大学でもよそよそしくなるんじゃないかってね……えへへ」
蓮子が情けなく笑う。
メリーがむっとして立ち上がって、蓮子の頭をぽかんとたたいた。
「痛……なによ」
「なんか腹が立って」
「わけわかんない」
「罰として……すぐには返事してあげない。しばらく不安なままでいなさい」
「罰ってなによ」
「私に隠してた罰」
「メリーの性悪!」
蓮子が頬を膨らませて、そっぽを向いた。
二人は口を閉じ電車の揺れる音だけが、しばし赤い車内に響く。
「ね、聞かせてよ。いつから私のことを好きだったの?」
「なによ急に」
「同性愛者の心理を知りたい」
「うわ……ほんっと性悪」
蓮子がにらみつける。
メリーはしれっとした顔でひょいと肩をすくめた。
「……でも、いいわ、聞かせてやろうじゃない」
蓮子は目をやわらかくしたかと思うと、まるで開き直ったみたいに頬を崩した。
「初めてあったときから、可愛いなって思ってた。頭も良いし、話してて楽しいし」
「ふぅん」
「だから、しばらく一緒にいたころから、この娘と付き合いたいなぁって思ってた」
「……なんか普通ね」
「あたりまえじゃない。人を好きになることは、普通に決まってるでしょ」
「相手が同性であることをのぞけばね」
「私にとってはそれだって普通よ。まぁそれはおいておいて……メリーの瞳のことを知ったときは、運命の相手かもしれないって、本気でちょっと思ったりした。でもだからこそ……逆に打ち明けるのが怖くなった」
「……。蓮子ってさ、私とキスしたいとかって、やっぱり思うの?」
蓮子はさすがにちょっと口ごもった。
「メリーだってさ、好きな相手のことを想えば、どうなのよ?」
遠回りだが、明白な答えだった。
「……じゃあ、それ以上のことは?」
「はい?」
「蓮子って、一人でシたり……する?」
「なっ、ちょっとっ」
蓮子はあわてて首を伸ばし、車内を見回す。夕日に照らされた車内には二人のほかには誰もいない。電車の運転主がいるのも、もう一つ前の車両だ。
「私のことを考えて、とか……あるの?」
「もぉ……勘弁してよっ」
頭を抱えんばかりに顔を伏せている蓮子。
メリーの顔にも、幾分か恥ずかしさからきているらしいこわばりがある。だがメリーは楽しそうだ。普段困らせられている復讐だとばかりに、ニヤニヤしている。
「で……どうなのよ」
蓮子は、ああ、うう、とうめいた後、ぼそりと答えた。
「……あるよ。何度もある」
「……うわっ、ごめん、ちょっと引いた」
メリーがそそくさとスカートのすそをただす。
蓮子は顔を赤くして青筋をたてた。
「あ、あんたが聞いたんでしょうが! 正直にこたえてやったのにっ」
「やさしい嘘って……ほんとにあるのね」
「むかつくっ! むかつくーっ!」
きゃあきゃあとはしゃぐ二人。そこにはいつもと変わらない秘封倶楽部の姿がある。
だが蓮子の目じりには涙が浮かんでいた。感情の複雑な高ぶりが流した本人にも無意識の涙なのだろう。
二人でこうしてはしゃげる喜び、秘めていた気持ちを明らかにできる喜び、そして、もしかするとこの時間が永遠に去ってしまうかもしれないという恐怖。
「……」
メリーが、その涙に気づいた。意地悪はおしまいにしようという風に、居住まいを正して、ゆっくりと蓮子に語りかける。
「蓮子、私ね、いろいろ考えたよ」
「え……」
蓮子もつられて、おとなしくなった。
「いっとくけど、私にとっても蓮子は無二の親友なんだからね。だから私、たいがいのことなら受け入れられるわ。それだけの絆を、あなたに感じるもの」
「……」
「ただ今度は、受け入れるだけじゃだめだものね。……だからちょっと戸惑ってる。蓮子の泣き声を聞いて、蓮子の告白が本気だったんだって気づいて、朝までずっと考えてたけど、答えはでなかった」
「……」
「だから――」
メリーの見つめるさきで、蓮子が膝の上でぎゅっと手を握った。これから自分につきつけられる事実がどんなものであるか、恐れ、そして向き合おうとしている。
「だから――――――――――まずはキスから」
「……え?」
蓮子の小さく開いた唇から乾いた声が漏れた。
「私、自分がゲイになるなんてことは、どうしてもまだ想像できない。けど、キスなら……蓮子とキスを想像している姿なら、なんとか想像できた。そして、受け入れられたの」
必死に自分の気持ちを訴えるメリーの姿は、蓮子に許しをこうているようにも見えた。身を乗り出して、自分の真心のありったけを明かそうとしている。
「お願いよ蓮子。私に時間を頂戴。あなたを受け入れる時間を……。私だって、こんなことで蓮子とさよならしたくない」
「メリー。もちろんよ。もちろんだわ」
蓮子はうつむいた。うつむいて、両手を差し伸べて、メリーの膝に手をくべた。
「ありがとう」
メリーには、うつむいた蓮子の顔が見えない。だがその前髪の置くから滴った小さな涙の粒が、蓮子のスカートにぽたりと落ちたのは見えたのだった。
車窓の外には、海との間に町が広がり始めている。
数ヶ月がたつと、二人がゲイ・カップルだといううわさが、大学で囁かれるようになっていた。
二人にはそれだけの話題性がある。
ともに成績上位に食い込む頭脳の持ち主で、蓮子はともかくメリーは日本人離れした容姿をもち、そして秘封倶楽部なる怪しげなサークル活動を二人きりで行っている。
うわさの出所は不明だった。そもそも二人は、まだ唇以上のふれあいを重ねてはない。それでも噂は、確かに流れている。
『――サークル棟の3階のさ、一番端の空き部屋を知ってる?』
『ああ、あのいつもカーテンが閉まってるところでしょ。倉庫部屋かなんかじゃなかった?』
『そうなんだけど、あそこって秘封倶楽部のサークル部屋なんだってさ。無理やり認めさせたんだって』
『そうだったんだ』
構内食堂の一角でそんな会話がわいた。
食堂のざわめきの間をぬって、別テーブルにいたメリーと蓮子の耳にその声が届いた。
「……」
サンドイッチ定食をつまんでいたメリーの手がとまる。眉間にちょっぴり皺がよる。
「メリー、気にしないの」
パスタをフォークにからませながら、蓮子が釘をさすように呼びかける。
『けどあのサークルって何してるんだろ?』
『さぁ、二人でいろんなとこに出かけてるらしいけど』
『旅行サークル?』
『不思議探検隊みたいなものじゃない?』
『二人きりであっちこっちへ旅行って……結局それが目的なんじゃない? 旅先で何してるんだか』
『やらしいねぇあんた』
「メリー、怒ることないわ。ただのうわさ話よ」
「でも……不愉快よ。あることないこと言われるのは」
「くすくす、私は、あの娘達のいうとおりになればいいなぁって、思ってるけど?」
「もうっ、蓮子の馬鹿」
「ごめんごめん、怒らないで」
『けどさ旅行メインなら、サークル部屋なんて必要あるのかな?』
『旅行の計画でも立てるのかしらね』
『……くく、大学で人目はばからずいちゃいちゃするためなんじゃない? いつもカーテンしまってるしさ』
『ほんとあんたってそういう話好きねー。……けど、わざわざ倉庫なんかでしなくてもね。家まで我慢できないのかしらね?』
『あはは、あんただって好きなんじゃん』
『ふふふ』
ガンッ、とメリーの拳がテーブルをたたいた。
蓮子がその拳をぽんぽんとなでる。
「はいドードー。そんなに怒らないの」
「なんでそんなに冷静なのっ」
「ただのゴシップよ。こちが騒がなければ、そのうちどこかにふかれて流れていくよ」
「でも……」
「日ごろ私達が追いかけてる妖怪さんや怪奇現象さんたちだって、噂話にめったに反応してくれないでしょ? あれに学びましょうよ」
「……私達は妖怪じゃないっ」
「まぁまぁそれは置いておいて……けどメリー、やっぱりつらい?」
蓮子の声がいちだんと優しくなった。傷ついた仲間を気づかうような、そんな声色。蓮子の手がメリーの手をそっとなでる。
「私はなれてる。ゲイ暦長いもの。耳をふさぐすべを覚えた。けどメリーは……」
蓮子は暗に、自分のせいでメリーまでもがうわさ話の対象になってしまったことをわびているようだ。
「蓮子が悪いわけじゃない。噂話をする連中がいけないよ」
メリーが唇を尖らせながら愚痴る。
蓮子は苦笑いしながら、首をふった。
「噂話を、悪いだなんて思うことないわ」
「けど……」
「皆、めずらしいものには興味がいくものよ。それが普通。あるがままに、気にしないこと」
「蓮子は悔しくないの? 自分の気持ちを、めずらしいもの扱いされるなんて……私はくやしい」
「悔しくないことはない。けど、そんなことは問題じゃないのよ」
「どういうこよ?」
「私にとっては、世間がどう思うかより、メリーがそばにいてくれて、その幸せを喜ぶほうが大事だもの。噂話に気をとられて、その大切な時間を無駄にしたくない」
「そりゃ……わかるけど」
「ま、感情の問題だからはいそうですかとはいかないよね。さぁ……食べ終わったし、いこっか。ここにいては耳に毒だもの」
「……うん」
蓮子はにこりと微笑むと、さっと立ち上がった。噂話は二人の周りのテーブルにも聞こえている。けれど蓮子は、身を小さくするようなことはせず、ごく自然に振舞う。皿の乗ったトレイを手にとり、テーブルの間をすたすたと歩いていく。何人かの学生が、蓮子に気づいて好奇の視線を向けた。蓮子はそれに気づいているはずだが、気にした様子はない。見ほれるほどに綺麗な姿勢で、長いスカートとをなびかせながらすっすっと歩いていく。
メリーは蓮子の後を歩きながら、自分の前をいくその背中を見つめていた。
食堂をでると、メリーは蓮子にそっと腕を絡めた。
「蓮子っ」
「ん?」
「私、周りにいってやりたかった。どーだ皆、これが私の彼女だっ、うらやましいだろって」
「嬉しいけど……そうやって変に力むと、周りから変に見られるだけだってば」
「なんだか蓮子のこと、ちょっと尊敬する」
「メリーっておとなしそうに見えて意外と感情的なところがあるのよねぇ……それとさ」
と、いいながら、蓮子がつながった腕をもぞもぞとさせる。
「こーいうことしてるから噂になるんじゃないかしら」
二人の歩いている場所は構内でも比較的人気の少ない場所だ。が、周りには校舎があるし、周りにまったく人がいないわけではない。
それでもメリーは蓮子の腕を放さなかった。
「これが私のあるがままだもの! したいからするんだわ」
「勇ましいねぇ……」
蓮子はしょうがないという風に笑い、それからメリーの耳もとに口をやりそっと囁いた。
「けど嬉しい。ねぇ、そんなにまで思ってくれるなら……そろそろしてみない? ――えっち」
ぎくり、とメリーの身体がこわばる。
「……まだ、その、心の準備が……」
先ほどの鼻息はどこへやら、メリーは急に小さくなるのだった。
蓮子はちょっぴり残念そうに、けれどおかしそうに、口元に手をやった。
「冗談よ」
「冗談、相変わらず下手すぎ」
「ふふ」
蓮子は半分は本気だった。メリーにもそれはわかっていたはずだが、それを冗談として流してしまうのが、今の二人の、お互いへの優しさだった。
と、その時。
「あ……」
蓮子が何かに気づいて、急に立ち止まった。
「どうしたの蓮子?」
蓮子は少しあわてた様子で言った。
「メリー、ねぇ、あれもってない?」
「あれ?」
「ナプキン」
「……あらま」
「そろそろだったのに……油断してたわ。ポシェット、家においてきちゃった」
メリーは手に提げていたトートバッグを開けて、ごそごそと中をうかがう。
「よかった。まだある」
「ごめん、一つ、いい?」
「もちろん」
「ちょっと、つけてくるね」
蓮子はうけとったナプキンをそそくさとポケットにいれると、たったったっと食堂に戻っていった。
その後姿を見詰めながら、メリーがつぶやいた。
「やれやれ。しばらくはまた、へたれんこ、ね」
蓮子の生理は、非常に重い。
お腹の下のほうの内臓を全部まとめてぞうきん絞りされているような感じ――。
というのが、蓮子の表現である。
重い日はそれくらいの苦痛を感じるらしい。そんな日はもう家からでることさえできない。ベッドの上で、うーんうーんとうなり続けるばかりである。
そういう日、メリーはよほどの用事がない限りは、蓮子のそばにいてやるのだ。
「私は、ビー玉くらいの鉛の塊が恥骨の奥を転がっている感じ……ってとこかしら。動けないほどじゃないわねぇ」
メリーは蓮子のお腹のあたりをくるくるとなでてやりながら、笑った。もちろん蓮子は布団をかぶって、お腹を冷やさないようにしている。その布団の上から、なでてやるのだ。
「もうやだ。毎月毎月いやんなる……」
布団から半分だけ顔をだして、蓮子は泣き言をもらした。
「ほんとねぇ」
生理の間、蓮子はまるで人が変わったように気弱になる。
ホルモンバランスの異常だとか、理由はいくらでも考えられるが、メリーはひそかに次のように考えている。
『自分が女であることを、嫌というほど自覚させられるからだわ――』
蓮子はきっと無意識のうちでは、人とは違う自分を嘆いている。周りとひどく違った感性を備えた自分を、哀しんでいるのだ。普段は勝気な性格のもとに隠れているその感情が、この時は表の精神に作用するほどに浮かび上がってくるのだ。自分は女という生物。女は、男とまぐわって子供を宿す能力を備えている。それがこの地球上ではるか昔から行われてきた生命の営み。その輪廻から、自分は外れてしまった。自分はなんと歪んだ生きものなのだろう……。
『生理をそんな風に捕らえる人なんて、いるわけない。ちょっと面倒な毎月の繰り返しごとだわ。でも……蓮子はきっと違うのよ。ま、ほとんど私の妄想だけれど。あるいは、これが私の中にある価値観なのかしら……だとしたら私、自分をそんな風に感じているの?』
「メリー……ねぇメリーってば」
「あ、何? ごめん、ちょっとボーっとしてた」
「牛乳あっためて……」
「あいよ」
スーパーで買った安い牛乳をコップに注いで、レンジでチンする。
湯気の昇るそれを差し出してやると、蓮子はよいこらしょとベットに起き上がった。
メリーはベッドに腰掛けた。そして蓮子に肩をかして、背もたれをしてあげる。そして自分の腕を蓮子お腹にそっとまわして、また手のひらでクルクルしてあげた。
今日は朝から雨が降っていた。昼を回っても、まだやんでいない。カーテンの向こうからは、雨の地面をたたく音がやまない。
「はぁ……」
と、蓮子が腑抜けたため息を吐いた。
「ありがとね、メリー」
「生理の辛さは、蓮子ほどじゃないけど知ってるもの」
「ううん。そっちじゃない。そのことも感謝してるけど……」
「え?」
「私がゲイだとわかってても、一緒にいてくれて……ってこと」
「いまさらなに言ってるの」
「だって本当に感謝してるんだもの。私が自然体でいられるのは……メリーのおかげよ」
「そうなの?」
「そうよ」
それから蓮子がぽつぽつと語ったことは、普段、メリーもあまり聞いたことのないことだった。
「私、今まで結構つっぱって生きてきたんだ」
「つっぱって?」
「自分は変じゃない、間違ってなんかいないって、ずっときばりながら生きてきたの」
「蓮子が変なわけないじゃない」
「もちろんそうだけどさ。自分の気持ちが普通じゃないって、周り世界が無言で示してくるんだよ。それってやっぱり辛かった。世の中からつまはじきにされてるみたいでさ。だから私は、いつも気持ちに正直に生きてきた。好きになった人には絶対に告白した。自分は間違ってなんかいないって、ずっと踏ん張っていきてきた。秘封倶楽部をつくったのだって、そうよ。自分はこの世界に生きて、元気にやってるって、自分自身に示したかったのかもしれない。何かをせずにはいられなかった……。でも今は、メリーがいるから、メリーが私を認めてくれるから、私は何も気にせずにいられる」
蓮子の独白は、この後一日中続いた。
メリーは途中からはもう疲れてしまっていて、蓮子の言葉が、『くぅんくぅん』と甘える子犬の鳴声のように聞こえてしまっていたが、耐えた。普段はきばっている蓮子の、時折みせる弱気なところ。自分がそれを受け止めずに他の誰が受け止めるのか、そんな意地があったのだった。
翌日になると蓮子の体調も随分と持ち直して、二人は大学へ行った。
メリーは幾分かぐったりとしていた。一日中語りごとを聞かされ、それは夜中まで続いた。もちろん蓮子の愚痴交じりの語りを聞くのが嫌なわけでないのだが、えんえんと一方的に聞き役にまわるのは苦痛である。それに、はじめこそ可愛げがあると思えるものの、いつもとは打って変わって弱気な蓮子の口ぶりに、疲れたメリーは苛立ちを感じないでもなかったのである。
『人を好きになる気持ちに、変なことがあるものですか』
ゲイである自分を隠すことなくきっぱりとそう宣言する蓮子が、メリーは好きなのだ。
(生理が落ち着いたら。絶対えっちしよう。全身で愛して蓮子を安心させてあげよう。二度とあんな愚痴を言わせるもんですか。ああ疲れた……)
疲労からくる苛立ちと、蓮子を守ってあげたいという使命感が、メリーをいくぶんか凶暴にしていた。
昼の1時を回ってすぐの頃。メリーは食堂に座って早くから、ちらちらと自分達にむけられるその視線に気づいていた。それ自体はよくあることである。
『お、あれが秘封倶楽部の二人か』
というような、好奇の視線を感じることはしばしばあった。
『噂のゲイ・カップル』
といった念が、時には露骨に伝わってくる。
いつものメリーであれば、それくらいであれば気には留めない。いちいち視線に反応していては、身が持たない。それになりより、目の前で蓮子が輝いていてくれるから、そちらに目を奪われるのである。が、この日は違った。蓮子はまだ本調子ではなく、輝くどころか、蓮子までが、それらの視線を気にしているようだった。はねっかえせるだけの負けん気は、まだ無いらしい。
「やっぱり、今日ぐらいは食堂やめとけばよかったわね」
苛立ち混じりに、メリーがうめいた。いつもであれば蓮子がそれを軽くなだめるシーンである。が、今日は違った。
蓮子はうつむきがちに視線で周りをうかがった後、弱弱しく顔を上げて、そしてメリーにへつらうような笑顔を見せて、こういったのだ。
「ごめんね」
その一言が、メリーの脳髄の奥の奥にまでしみこんだ。そしてそれが自分の怒りの中枢に触れたのを、メリーは感じた。噴火はすぐには起こらなかった。が、大爆発の予感は、はっきりと体の奥にあった。
「――なんで謝るの」
「……」
蓮子は、答えなかった。それは多分、謝るべきことは何もないのだと、本当はわかっていたからなのだ。それでも謝ってしまったのは、つまり、蓮子の弱気の表れなのだろう。
そしてメリーは蓮子のその態度に、明確なメッセージを読み取った。
――ごめんね。私がゲイだから。私がメリーを好きだから、メリーまで、変な目でみられちゃって……
「……!」
その瞬間、メリーは自分の血液が沸き立つ音を体中に聞いた。
体内のたけりとは裏腹に、メリーはゆっくりと、それこそ幽鬼のような静けさをともなって、椅子から立ち上がった。
「メ、メリー?」
座ったまま、蓮子が見上げる。
メリーが瞳に火をともして、蓮子に言う。
「出よう。蓮子」
「へ? ま、まだぜんぜん食べてないわよ」
「ご飯なんていいからっ、今すぐ行こう」
「どこへ?」
「サークル部屋」
「は……?」
メリーはもうじれったくなって、蓮子がテーブルにおいていたポーチをつかむと、もう片方の腕で無理やり蓮子をひっぱった。
「ちょ……なんなのよ!?」
二人で騒いだせいで、余計に周囲の視線が集まっている。だれメリーはもうそんなことを気にしてはいなかった。
「わ、わかったから、いくから」
どちらかというと蓮子のほうが回りを気にしているようだった。ひっぱられて片寄ったブラウスをなおし、そっと立ち上がると、どことなく背を低くしながら食堂の出口に向かう。
メリーはその情けない背中をいまいましい思いで見詰めながら、その後とノシノシとせかすようについていった。
「もう、いったい何よ?」
サークル棟へ向かいながら、隣を歩く蓮子が文句を言った。
メリーは荒い鼻息を一つはいて、無言の返事を返す。
「メリー……怒ってる?」
「そうよっ」
「たしかにじろじろみられるのはさ……気持ちはわかるけど、でも」
蓮子が検討はずれなことを言った。
メリーは噛みつかんばかりの調子で蓮子の言葉をさえぎった。
「違うわよっ。私が怒ってるのは蓮子によっ」
「えっ……?」
蓮子は本気で戸惑ったような顔を見せる。それがまた、メリーの癇に触るのだ。
「何よ『ごめんね』って。何が『ごめんね』なのよっ」
蓮子はハッとした。
「そ、それは……」
それきり、蓮子はもう何も言わなかった。
メリーは少しだけ安心した。蓮子もやっぱりわかっている。けれどそれだけではまだ、腹の煮えるのは収まらなかった。
メリーは早歩きで肩を切りながら、ずんずんとサークル部屋へ向かった。蓮子は何も言わずに、時折気まずそうな視線をメリーに向けながら、隣をついてきてくれていた。
メリーはサークル部屋に入ると、まずすぐにガチャリとドアの鍵を内側から閉めた。そして窓際にツカツカと歩み寄り、シャッとカーテンを閉める。日光がさえぎられ、部屋が薄暗くなった。
20畳ほどの、標準的な広さの部屋である。が、部屋の端のほうには、ダンボールやら、何につかうかわからない角材やら布やらが、押し込められるようにつみあがっている。もともとそれらは、部屋のあちらこちらに散乱していたものであった。メリーと蓮子が、それらを整理したのだ。そしてあいたスペースには、ソファーと、テーブルと、その他もろもろを運び込んだ。中でも目を引くのは、奥側にしかれた4枚の畳である。昼ねには畳の固さが一番だと、蓮子が運び込んだのだ。
メリーはその畳の上にいま、靴を脱いで仁王立ちになっている。
入り口の前で立ちすくんでいる蓮子に向けて、メリーはきっぱりと言った。
「蓮子、こっちきて、服ぬいで」
「は!?」
「裸になってって言ってるの」
「い、いやに決まってるでしょ。なんで裸にならなくちゃいけないのよ」
「えっちするのよっ! 今からここで!」
蓮子は絶句したあと、呆然としたようすで首を左右に振った。
「メ、メリーの頭がおかしくなった……」
そういうと、入り口の鍵を開けて外へでていくようなしぐさを見せた。
メリーがだっと畳をけった。素足のまま床を駆け寄り、蓮子に背後つかみかかる。そしてそのまま、力まかせに持ち上げた。
「逃がさないわよ!」
「何するのよ離してよ!」
宙に浮いた足をばたつかせる蓮子。
メりーはいつにない豪腕をはっきし、蓮子を担ぎ上げたまま畳のところまで運ぶ。そしてそのまま畳の上に蓮子を転がした。
「もう、痛いじゃない……って、ちょっとメリー!? 何してるのよ!」
メリーは身に着けていた服を破り捨てるような勢いで脱ぎ始めた。ドレススカートを脱ぎすて、シャツとキャミ、それにペティコートを脱げばあっというまにメりーはあられもない下着姿になった。
「メリー……」
蓮子は畳にへたりこんだまま、唖然とした表情でメリーを見あげている。
メリーは両手を広げて、その場でくるくると踊るようにステップを踏む。
「どう、興奮する?」
「メりー、もう、メりーったら……あなたって時々ほんとにもう……むちゃくちゃよ!」
「さあ、蓮子も早く脱いで」
「やめて」
メリーは蓮子に近づいて、その肩に手をかけた。
「やめてったら! 怒るよメりー!」
「怒ってるのはこっちのほうよ!。ごめんね、だなんて、もう二度と言わせないわ! 蓮子と私は今ここでエッチするの。ゲイ・セックスをするのよ!」
メりーは両腕で、蓮子につかみかかった。そして、強引に上着を脱がそうとする。
だがさすがに蓮子もだまってはいない。
「いいかげんにしてよ! もう怒ったわよ! この馬鹿!」
メリーの腕をつかみ、自分から引き剥がそうとする。メリーは蓮子から腕を離すまいと、全身で蓮子にしがみついていく。二人は畳に倒れこんで、くんずほぐれつに絡み合った。
「そうよ怒りなさいよ! 怒ってるほうが、ずっとましだわ! 何が「ごめんね」よ! 生粋のゲイの癖に!」
「うるさいわね! 私がどれだけ苦労してきたかも知らないくせに!」
「知ってるわよ! 昨日一日中きかされたんだから」
「う……」
蓮子がしまった、という顔をして一瞬動きを止める。その隙にメリーは蓮子の上着に手をいれた。
「あっ、ちょ、ちょっと」
メリーは完全に服のしたに腕を入れていたから、蓮子が多少抵抗したところで、もうどうにもならなかった。無理に抗えば、服が破れてしまう。メリーは下着ごと蓮子の上着を一気にめくりあげた。無理やりに万歳の格好をさせられて、顔まで服をめくりあげられる。ブラジャーにつつまれた慎ましやかな胸が、あらわになった。
蓮子は両腕を衣服にからみとられ、顔も覆われて、もがいている。メリーはその隙に、蓮子のスカートを剥ぎ取った。やぶれてしまってもかまわないというくらいに力をこめてひん剥いた。蓮子が多少膝をばたつかせたが、力まかせにズルリと引きずりおろした。
「こらー!」
メリーは続いて蓮子の顔と両手を覆っている衣類を無理やりに剥ぎ取る。
これで二人とも、ブラとパンツ一丁の、半裸同士になった。
蓮子は顔をわなつかせて、怒鳴った。
「このっ、このっ、変態!」
「ふん! ゲイに言われたくないわ!」
「こ、こんにゃろー!」
蓮子は爪をたててメリーにつかみかかった。メリーに体ごとぶちあたり、畳の上にひっくりかえす。だがメリーも負けてはいない。覆いかぶさってきた蓮子の腰を両足でかにバサミして、横にころがしてやろうとする。蓮子は両足をひろげて、必死にバランスをとる。蓮子に絡みついた腰を力点に、上半身をなんどもばたつかせた。
「そうよ! 蓮子はゲイなんだからね! ゲイらしく私を押し倒してよっ」
「勝手なことばかりいってんじゃない!……わっ」
蓮子は姿勢を崩されて、横向きに転がされてしまう。そこを、メリーが押さえ込んだ。両肩とまたの間に腕を回して、いわゆる横四方固めを決める。
「同性愛者はこういうことが好きなんでしょ! ハッテンバとかって、するんでしょっ」
「ゲイと色情狂を一緒にしないで! あんなのは他人がおもしろおかしく大げさに言ってるだけに決まってるじゃない!」
スパァン! と蓮子がかろうじて自由に動く腕でメリーの背中をたたいた。皮膚を直接にたたいたのだから、結構な音が部屋に響く。蓮子は力任せに、もう何度もパチィン! パチィン! と平手打ちを叩き込んだ。
「痛ぁっ!」
メリーの顔が苦悶にゆがみ、腕から力が抜けた。蓮子はその隙を見逃さず、メリーの体を振りほどき脱出する。
「はぁ、はぁ、ふぅ、ふぅ」
互いに膝立ちになって、両腕を広げ、相手がいつ飛び掛ってきてもいいように待ち受ける。
「はぁ、はぁ、メリー、やめましょ。もうこんな馬鹿なこと、くだらない」
「ふっ、ふっ、くだらなくなんか無い。私決めたのよ。女として、蓮子を満足させてあげるって」
「はぁ……? って、うわっ」
メリーが再び蓮子につかみかかる。つかみかかるというよりは、タックルだった。姿勢を低くして、蓮子の骨盤のあたりに肩をぶつける。そしてそのまま、蓮子のパンツを下ろしにかかった。
「ひぃっ」
と蓮子が寒気に震えた悲鳴を漏らす。
「このっ、離せっ」
蓮子はパンツが下ろされないように必死にひっぱりあげる。蓮子の今日の下着は色気のない薄黄色の綿パンである。それが上下に無理やりにひっぱられ、メリーはその隙間に、蓮子の薄い恥毛を覗いた。
「このお!」
と蓮子が再びメリーの背中をたたいた!
スパァン!
いい音が響く。メリーの背中は蓮子の目の前におしげもなく広げられているから、たたき放題だった。
スパァン! スパァン! とたたくたび、メリーの白い背中がだんだんと赤くなっていく。
だがそれでも、メリーは蓮子の綿パンから手を離さなかった。
歯を食いしばりながら、メリーがうめく。
「……蓮子はね、きっと不安なのよ」
「何がよっ」
「自分は一人の女性として幸せになれるのか――いつまでも孤独なんじゃないかってねっ。だから生理がくるたび、女である自分を意識させられて憂鬱になるのよ」
「人のことを適当に分析しないでっ。これだから心理学だの精神学だのをかじってるやつは嫌いよっ」
メリーは何度たたかれても蓮子の綿パンを離さなかった。すると蓮子は、このままではらちがあかないと悟ったのか、突然手を伸ばし、メリーのパンツにてをかけた。メリーの今日のパンツはパール色のシルクである。シルクは綿ほどには弾力性がない。蓮子がひっぱりあげると、ほとんどそのまま、メリーのまたに布がくいこんだ。
「ひゃっ」
唐突に襲い来る慣れない箇所への刺激に、メリーの体が硬直する。蓮子はそのまま体重を前にかけて、メリーを押しつぶした。
「ぐえ」
メリーの頭は、蓮子のおへその辺りに下敷きになった。だが蓮子はあまり体重をかけないように、いくらか腰を上げてくれているようで、それほど苦痛はなかった。メリーの背中の、パンツとの境目のあたりに、蓮子の荒く激しく生ぬるい鼻息があたった。
メリーは観念したような声で言った。
「……ほら、そのままパンツを脱がしてよ」
畳に頬を押し当てながら、メリーは言った。
「私のお尻がみたいっていつも言ってたでしょ。ほら、好きなだけみなよ」
「こんな風にみたって、何も嬉しくないわよっ」
パチィン!と蓮子がメリーの尻を平手打ちする。
「さっきからぱちぱちたたかないでよ! 痛いじゃない!」
「だったらさっさと正気に戻りなさい!」
「蓮子こそ、何でしてくれないのよっ。私とえっちしたかったんでしょ!?」
「こんなわけのわからない状況でしたくないわよっ。しかも生理中なのよ私!」
「血ぐらいなによ。それくらい受け止めてあげるわっ」
「受け止めんでいいよ! 気持ち悪い!」
蓮子はなんども何度もメリーのお尻をたたいた。
メリーはジンジンとした痛みに耐えながら、けれどお尻を逃がすことはしなかった。しだいに痛みはきえ、ジィンジィンとした熱さがお尻に広がる。それでもメリーは、一切の抵抗をしなかった。
「蓮子、お願いよ。私のお尻にキスして……」
「いや、それって向こうじゃ侮辱の言葉でしょ……」
メリーは哀願した。
「私、もう蓮子のあんな姿みたくないの。今の自分を悔いて、弱々しい笑みに逃げて、『ごめんね』なんて言葉をはくところを、見たくない」
「メリー……」
「蓮子、ねぇ、あなたはゲイなのよ。そんな自分に誇りを持ってよ。誇りをもって私とえっちしてよ……」
「だから、誇りをもつだとか、そんな風に力むことはないのよ……自分の感情を特別だなんて思う必要はない。ありにまま、素直にあればいいの」
「なら、『ごめんね』なんて二度いわないで。ありのままの自分を受け入れてよ。私は蓮子のそばにたいの。蓮子がゲイであろうと、なんだろうと。周りにどんなことを言われたて、蓮子はいつもまっすぐでいて。そんなあなたが私は好きなの。『ごめん』だなんていって……私達の関係を侮辱しないで」
「……」
蓮子の手が、優しくメリーの尻をなでた。
「わかった、わかったから。ありがとう。メリーの気持ちはよくわかった」
「じゃあ、して」
「メリーそればっかり……」
「……私、ほんとはまだ怖いの」
「え……」
「早く蓮子とほんとうのゲイ・カップルになってあげたいのに、臆病でなかなか先に進めなくて。だから、こうやって怒って、怒って、やっと勇気をだしてるの。だから、早く……」
「急ぐこと、ないのに、だって私は――」
「――ああもう! だらしないわねっ」
メリーは怒鳴った。それは、今また蓮子にやさしい声をかけられれば、なえてしまう自分の気持ちを理解していたからだ。
「してって言ってるんだから、早くしてよっ」
蓮子は、何かを躊躇するように、二度三度、深く呼吸をした。そして、
「……わかった」
蓮子の声が、急に重くなる。メリーはどきりとした、蓮子が気持ちを切り替えたのを、その声に感じたからだ。
「言っとくけど、おもいっきりするからね」
「……うん」
「ずっと我慢してたんだから」
「そうよ。もっと素直になりなさいよ。えっち蓮子め、言えっ、全部素直に言えっ」
メリーは自分のわき腹とパンツの間に、蓮子の指がもぐりこむのを感じた。ぎくり、と腰が震える。
「こんな姿勢なんだから……お尻の穴とか、全部みえちゃうんだから」
「……っ」
ゆっくりと、パンツが下ろされていく。でん部の割れ目に、蓮子の吐息が吹き付けられるのをはっきりと感じた。
やめて――そう口から漏れそうになるのを、メリーは必死に耐えた。パンツは膝下まで脱がされた。下半身の何もかもが、蓮子の目の前にあらわになっている。蓮子の熱い視線が、自分のまたぐらに突き刺さるのを、メリーは敏感に察知した。体の奥から、未知の衝動が突き上げてくる。
「蓮子っ」
悲鳴の変わりに、メリーは小さくそうつぶやいた。
どこかから、運動部員達の威勢の良い掛け声が風向こうに聞こえている。
活気に満ちた大学のその片隅の、薄暗くほこりっぽい部屋。二人はそこで今、生まれたままの姿で身をよせあっている。畳に寝転がり、しみのついた天井を見るでもなく見上げている。
自分がいまどこにいるのか、どんな姿でいるのか――メリーにはそんなことはどうでもよかった。蓮子が体内の中に残していった余韻だけが、今メリーの感じるすべてだった。
「メリー」
蓮子がそっと頬をなでた。
「こわくなかった?」
メリーはその手を握り、頬ずりをする。
「少し、怖かった。……でも今はいい気分」
「そう。なら良かった……あっ……痛っ」
メリーの握っている蓮子の手が、こわばった。
「お腹、痛い?」
「うん……少し、きたみたい。もう、出ないとは思うけど……」
「お腹、暖めないと……」
「そうね。そろそろ服を……って、メリー?」
「私が暖めてあげる」
仰向けになている蓮子の、そのお腹のあたりに、メリーは向かい合うようにして体をかぶせた。
「蓮子、足、少しひらいて」
「う、うん」
蓮子のまたぐらに体をいれ、おへそのあたりを枕にするようにして、抱きつく。少し顎をひいて、はぁ、と暖かい息を吹きかける。
「あたたかい?」
「うん、すごく」
メリーは呼吸にあわせて何度も何度もいきを吹きかけた。
その後頭部を、蓮子がやさしくなでる。その手にこしょこしょとウナジをくすぐられるたび、さわさわとした電気が、メリーの背中に走る。
「考えてみれば、肝心なときはいつも、メリーが私の手を引いてくれるのよね」
「……え」
「告白のときも、今だってそう。私はいつもおびえてばかり」
「……たしかにそうかもね。でも、それでいいよ」
「そう?」
「蓮子はいつも私の手を引いて歩いてくれるもの。蓮子が疲れたときは、勇気がでないときは――私が頑張る」
蓮子の手が伸びてきて、ぎゅっとメリーの顔をだいた。
メリーは蓮子の下腹部に顔をうずめて、二人の汗がまざった匂いと、かすかな鉄の香りを感じながら、ゆっくりと眠った。
誤字報告
>こちが騒がなければ
青春すなあ
おい
いつギャグになるのかと思いながら読んでたらガチだった。
ていうかこれここで……いいのか?
もうやめろ
二人の抱えた問題とメリーのヒスとそれらへの解決がなんかすーごい中途半端なような
でもやっぱり最後の一文できちゃったよ
ゲイは女性同性愛者に使わないと思うんだけど。
蓮子の目の前に横たわる過去は、ある種絶対的なものとして蓮子は感じていて怯えている。それを意識無意識に感じながらも、明確にして信じようとするメリーの強さを、僕は美しいと感じました。互いが互いのことを信じてくれることで、信じてくれる自分を信じられる、そういう想いの相乗効果、永遠に続いていく関係の轍に、僕は惹かれました。
ちゅっちゅ以上なんですか!やったー!
誤字報告を
》すると蓮子は、このままでは拉致があかないと
拉致→埒
ゲイ=男同士だと思ってたから違和感ハンパなかったよ
蓮メリちゅっちゅ
ただ途中何箇所か「メリー」が「メりー」になっていたのが気になりました。
ぱんつと半裸レスリングの描写はさすがと言わざるをえない。
失礼ながら誤字報告をば。
メリーはしげしげと蓮子を表情を見つめた。→蓮子の
が、蓮子はくつろだ表情のまま、いいや、くとろいだ表情でいようと努めつつ →寛いだ
「相手が同姓であることをのぞけばね」 →同性
まぁそれはおいとおいて……メリーの瞳のことを知ったときは、→おいておいて
眉間のちょっぴり皺がよる。 →眉間に、のほうが自然かと。
ただゴシップよ。こちが騒がなければ、そのうちどこかにふかれて流れていくよ →ただの こちらが
お腹の下のほうの内蔵を →内臓
メリーの言葉が、『くぅんくぅん』と →文脈的に蓮子の言葉?
メリーの感に触るのだ。 →癇に障る
ちょっと蓮子!? 何してるのよ! →メリー?
さあ、蓮子の早く脱いで →蓮子も
くんずほぐれずに絡み合った。 →くんずほぐれつ
顔まで服めくりあげられる →服を
ブラジャーにつつまれた慎ましやかな胸が、あらわなった。 →あらわに
その手にこしょこしょとウナジをこそばされるたび
→方言?こそばゆいは分かるけど、こそばすって聞かないから純粋に疑問に思いました。
ガチレズはガチレズでもガチ「な」レズではなくガチ「で」レズを書いたという印象でした
まあ、そんな感じで読み進めていき、ふと感じた違和感に改めてタイトルを確認し直して「ああ……」となった訳ですがw
しかしゲイという言葉が本来男女関係なく同性愛者を指す言葉だとわかっていても、日本語での使われ方とタイトルだとレズを使ってるのがあってどうしても違和感を感じてしまいますね
同性愛者全体を指すのはホモ。
異性愛者はヘテロ。両性愛者はバイ。
向こうで女性同性愛者のことをゲイなんて呼んだら裁判沙汰になるよ。
彼ら彼女らはそういった無理解が一番嫌いだから。
というかこのSS自体、同性愛者を馬鹿にしているようにしか感じず
以前のSSと比べてなんだか失望感があった。
なんというかマイノリティを面白おかしくネタにして笑っているような薄ら寒さ。
ゲイとは
同性愛者の総称。狭義には男性同性愛者を指す。
差別的な意味の内包されることのある(と捉えられている)「ホモセクシャル」「ホモ」という言葉に変えて、英語圏の国で同性愛者が自分達のことを肯定的に捉えるため、「陽気な・派手な(gay)」という単語に新しい意味を持たせたのが始まり。
英語では女性同性愛者も含まれる場合があり、「gay men/gay women」という形で用いられる。
日本では、英語の意味から離れて「女装した男性」の意味で使われていた(「ゲイボーイ」と混同されたためと考えられる)
現在、同性愛者の間では、本来の「男子同性愛者」の意味が定着したが、まだ「ゲイ=女装」という認知も多い。
(『はてなキーワード』より転載)
とのこと。
裁判沙汰云々はわかりませんが、『ゲイ=男性同性愛者』ということは絶対という訳ではないようです。
まあ、私もゲイは男性同性愛者と考えていたので、少しゲイという言葉に違和感を感じてしまいますね。
言葉は難しい。
この手のテーマは批判来るの絶対だからノリがいいか馬鹿か真剣でないと書けないと思う。
タイトルで開いて良い意味で裏切られた気分。面白かった。
歪みねぇな
メリーの男気に惚れた。
こういうの簡単に暴力沙汰や性犯罪に結びついちゃうから、煽りすぎると自治が動くんだよ、煽ってる方に対して
大学の風土にも拠るのかもしれないけど…
あ、女のはビアンって呼んでた
少なくとも、KASAさんが、この話を真面目に書いてるのはわかる
同性愛の扱い方に対して、当事者がこういうかかれ方をどう思うかはわからんが
まあ、そういうテーマ性のある小説じゃなく、真面目寄りの百合ネタ小説なんだからあんまりガタガタ言うのもなんだ
いつもながらアウトラインをギリギリ割っている感が否めない作品ですねえ。
でも以外と真面目に同性愛を書いているところはいいですね。
別にゲイじゃないけど蓮子の在り方は憧れる。
後半のシーンはやり過ぎ感あったけど、前半で物語のテーマをしっかりと示しているので問題ないと思う。
ただ、せっかく真面目なムードなのにちょくちょくタイトルの元ネタ挟まれると違和感があるかなぁ……
蓮子がかっこよくて良いな。メリーも
ただ未来である秘封時代でもこんな偏見まみれであって欲しくないなぁ
という意味合いで-10
毎回思うけれど単語自体にいやらしい意味はなくて、それをどう受け取るかなんですよね。
いつも楽しく拝読させていただいています。今後もがんばってくださいな。