このペンダント?
ああ、これはね、咲夜から貰ったんだ。今年の誕生日プレゼントだよ。
実はこのペンダント、ふつうの品じゃあない。ちょっとした仕掛けがあるんだ。それはね……
え、何だよ。人の話を遮って。
誕生日?
そりゃもちろん、私の誕生日だよ。レミリア・スカーレット501歳の高貴な誕生日さ。
いつが誕生日か知らなかった?……ああ、いいよ、いいよ。気にしないで。
知らなくたって、無理はないよ。
だって私自身、長い間忘れていたんだもの。何年か前、咲夜に訊かれてようやく思い出したんだ。
ほら、私たち妖怪ってさ、やたら長生きでしょ?だから、いちいちそんなもの祝ってられないのよね。嬉しくもないし。
うちの連中も、みんな数百年生きてるようなヤツばかりだからさ。
あ、誤解の無いように言っておくけど、別に誕生日を祝われるのが嫌なわけではないよ。むしろ、すごく嬉しい。
矛盾している?……いや、そういうことじゃないんだよ。
私の誕生日を祝おうという、咲夜の気持ちが嬉しいんだ。
まったく、拾ってきたときはそれこそ獣同然だったのに。いつの間に、こんなに優しい娘に育ったのかしら。
最近では贈り物のセンスも、悪くない。私のエレガントな趣味が、ようやくわかってきたのかな?
もちろん、咲夜からもらったものは何であっても嬉しいよ。
例えば……ほら、これ。この本のしおりになっている押し花ね。これ、咲夜からの初めての誕生日プレゼント。
まだ5つか6つのころ、美鈴と一緒に摘んできてくれたのよ。
可愛かったなあ。何故か顔中泥だらけでさ。小さなおててで、そっと、包むように持ってきたの。
嬉しくて、嬉しくて……その気持ちと一緒に、押し花にして永久保存。
あ、このこと、咲夜には言っちゃダメよ。私の威厳に関わるからね。
ただ……最近、少し困っていることがある。
咲夜が完璧すぎるんだ。
使えない妖精メイドを監督し、多忙な私をサポートし、屋敷の諸事を取り仕切る。
他勢力との交渉に、時には異変の解決。
三千世界を探しても、こんなメイドは他にいないだろう。
年齢的にも、今が一番イケてるよね。ちょうど「結婚適齢期」ってやつにあたるのかな?
だとしたら、私は自信がある。
花も恥じらうほどの美貌に、完璧な礼儀作法。どこに出しても恥ずかしくないよ。
もちろん、どこに出す気もないけどね。
こんなに完璧な咲夜。そして、だからこそ困る。
彼女がいなくなってしまうと不便だ。死んでしまうと面倒だ。
人間というのは、とかく寿命が短すぎるぞ。
そんな言いがかりをつけても、咲夜は笑って答えてくれる。
「大丈夫です。私が死ぬまでには、ちゃんと後継者を用意しておきます」
なるほど、それは有難い。さすがは紅魔館のメイド長、完全で瀟洒な私の従者だ。
でもね
でも本当は
そうじゃないんだ。
私は、咲夜に生きていて欲しいんだ。他の誰でもなく、咲夜にそばにいて欲しいんだ。
ああ、さっき私は嘘をついた。
いなくなると不便だから。面倒だから。ただそれだけの為に咲夜にいて欲しいわけではない。
咲夜が死んだ後、たとえ他にどんなに仕事のできるヤツがこの紅魔館にやってきても、そんなの、何の意味もないんだ。
私は咲夜がいい。
咲夜じゃなきゃ、イヤだ。
ずっとそばにいて欲しい。
だけど、そんなこと咲夜本人には言えないよ。私の威厳に関わるからね。そして咲夜の尊厳にも。
……うん、そこでこのプレゼントだよ。
さっき私はこれを、ペンダントと言った。でも実は、それだけじゃないんだ。
こうして開けると、ほら、ロケットになる。
今はまだ、何も入っていない。
でも、そう遠くない将来……咲夜の遺骨が入る。
私が決めたわけじゃない。
咲夜本人がそう望んだのだ。
「死後もお嬢様と共にあることを、お許しいただきたい」らしい。
なんだ、それは。
まるで私が、駄々をこねたみたいじゃないか。
これだから、困るのだ。勘の良すぎる従者は。
折角押し殺してきた私の気持ちを、どうして暴こうとするのかな。
もう500年も生きてきたのに。
もう十分に大人になったと思っていたのに。
今こうして涙を流してしまう私は、とんだ501歳児だね。
おや、もうこんな時間か。そろそろティータイムだ。
そのうち私のアクセサリーになる少女が、ケーキと紅茶を運んでくるよ。
ああ、これはね、咲夜から貰ったんだ。今年の誕生日プレゼントだよ。
実はこのペンダント、ふつうの品じゃあない。ちょっとした仕掛けがあるんだ。それはね……
え、何だよ。人の話を遮って。
誕生日?
そりゃもちろん、私の誕生日だよ。レミリア・スカーレット501歳の高貴な誕生日さ。
いつが誕生日か知らなかった?……ああ、いいよ、いいよ。気にしないで。
知らなくたって、無理はないよ。
だって私自身、長い間忘れていたんだもの。何年か前、咲夜に訊かれてようやく思い出したんだ。
ほら、私たち妖怪ってさ、やたら長生きでしょ?だから、いちいちそんなもの祝ってられないのよね。嬉しくもないし。
うちの連中も、みんな数百年生きてるようなヤツばかりだからさ。
あ、誤解の無いように言っておくけど、別に誕生日を祝われるのが嫌なわけではないよ。むしろ、すごく嬉しい。
矛盾している?……いや、そういうことじゃないんだよ。
私の誕生日を祝おうという、咲夜の気持ちが嬉しいんだ。
まったく、拾ってきたときはそれこそ獣同然だったのに。いつの間に、こんなに優しい娘に育ったのかしら。
最近では贈り物のセンスも、悪くない。私のエレガントな趣味が、ようやくわかってきたのかな?
もちろん、咲夜からもらったものは何であっても嬉しいよ。
例えば……ほら、これ。この本のしおりになっている押し花ね。これ、咲夜からの初めての誕生日プレゼント。
まだ5つか6つのころ、美鈴と一緒に摘んできてくれたのよ。
可愛かったなあ。何故か顔中泥だらけでさ。小さなおててで、そっと、包むように持ってきたの。
嬉しくて、嬉しくて……その気持ちと一緒に、押し花にして永久保存。
あ、このこと、咲夜には言っちゃダメよ。私の威厳に関わるからね。
ただ……最近、少し困っていることがある。
咲夜が完璧すぎるんだ。
使えない妖精メイドを監督し、多忙な私をサポートし、屋敷の諸事を取り仕切る。
他勢力との交渉に、時には異変の解決。
三千世界を探しても、こんなメイドは他にいないだろう。
年齢的にも、今が一番イケてるよね。ちょうど「結婚適齢期」ってやつにあたるのかな?
だとしたら、私は自信がある。
花も恥じらうほどの美貌に、完璧な礼儀作法。どこに出しても恥ずかしくないよ。
もちろん、どこに出す気もないけどね。
こんなに完璧な咲夜。そして、だからこそ困る。
彼女がいなくなってしまうと不便だ。死んでしまうと面倒だ。
人間というのは、とかく寿命が短すぎるぞ。
そんな言いがかりをつけても、咲夜は笑って答えてくれる。
「大丈夫です。私が死ぬまでには、ちゃんと後継者を用意しておきます」
なるほど、それは有難い。さすがは紅魔館のメイド長、完全で瀟洒な私の従者だ。
でもね
でも本当は
そうじゃないんだ。
私は、咲夜に生きていて欲しいんだ。他の誰でもなく、咲夜にそばにいて欲しいんだ。
ああ、さっき私は嘘をついた。
いなくなると不便だから。面倒だから。ただそれだけの為に咲夜にいて欲しいわけではない。
咲夜が死んだ後、たとえ他にどんなに仕事のできるヤツがこの紅魔館にやってきても、そんなの、何の意味もないんだ。
私は咲夜がいい。
咲夜じゃなきゃ、イヤだ。
ずっとそばにいて欲しい。
だけど、そんなこと咲夜本人には言えないよ。私の威厳に関わるからね。そして咲夜の尊厳にも。
……うん、そこでこのプレゼントだよ。
さっき私はこれを、ペンダントと言った。でも実は、それだけじゃないんだ。
こうして開けると、ほら、ロケットになる。
今はまだ、何も入っていない。
でも、そう遠くない将来……咲夜の遺骨が入る。
私が決めたわけじゃない。
咲夜本人がそう望んだのだ。
「死後もお嬢様と共にあることを、お許しいただきたい」らしい。
なんだ、それは。
まるで私が、駄々をこねたみたいじゃないか。
これだから、困るのだ。勘の良すぎる従者は。
折角押し殺してきた私の気持ちを、どうして暴こうとするのかな。
もう500年も生きてきたのに。
もう十分に大人になったと思っていたのに。
今こうして涙を流してしまう私は、とんだ501歳児だね。
おや、もうこんな時間か。そろそろティータイムだ。
そのうち私のアクセサリーになる少女が、ケーキと紅茶を運んでくるよ。
でも、俺の瞳から出るこの液体は何なんだろう
アクセサリーで妥協しなきゃいけないあたり切ないなぁ。
でもいい話でした。
しかし、それでも良かったです。
在り来たりな死にネタなのに、一風違うだけで印象も変わるものだなと
こんな作品はこの点数で十分だ!
逆にその感情が浮き上がってくるような、そんな感じ