長座体前屈、記録は3センチ。
まず、この座り方ができたことを褒めてもらいたいものだ。
胸を張ると、というか背を丸めることが出来ないのだが、いつも以上に胸を張ると、
「硬すぎる!」
やっぱり叱られた。
怪我をするといけないからと、青娥は芳香に柔軟体操するよう言っている。
芳香からすれば不思議なものだ。
怪我なんて痛くもかゆくもないし、死ぬこともない。
なんてったって、すでに死んでいるのだから。
どうしてそこまで口うるさく言うのか。
なんてことを考えていたら、背中に思い切り体重がのしかかった。
「うごごごごご・・・!」
「ほら、もっと曲がる!まだまだ!」
気づけば、手伝っていた青娥の方が、汗をかいていた。
前屈はもちろん、あらゆることにおいて仙人がゾンビに劣るはずがない。
ただ一点、死という経験を除いては。
不老長寿の青娥は未だ、死の苦しみを知らない。
分からないからこそ、怖いのだ。
芳香は一度死んでいる。
死の恐怖を味わい、そして死に、なのに生き返った。自分が生き返らせた。
怪我の痛みはないという。でも、怪我して死ぬという恐怖は痛まないのか?
死なないと分かっていても、過去の死を追想することはありえないのか?
考えすぎかもしれないけれど、自分の知らない感情に、想像は追いつけない。
「痛い痛い痛い・・・!」
足元から響く鈍い声で我に返り、慌てて乗せていた腰を上げた。
「ご、ごめんなさい!大丈夫・・・?」
「いやぁ、痛い、ような気がしただけで」
普段どおりの表情に、青娥はほっと胸をなでおろした。
罪悪感なんてたいそうなものじゃない。
でも、柔軟程度の痛みで、もっと大きな痛みが防げるなら、それでいいじゃないか。
「ほらほら、見てくださいよー」
へらへらと笑う血色の悪い顔に、こちらの心がほぐされそうになる。
が、ここで甘やかしては意味ないし。
「まだまだ、硬すぎる!」
長座体前屈、今日の記録は4センチ。
まず、この座り方ができたことを褒めてもらいたいものだ。
胸を張ると、というか背を丸めることが出来ないのだが、いつも以上に胸を張ると、
「硬すぎる!」
やっぱり叱られた。
怪我をするといけないからと、青娥は芳香に柔軟体操するよう言っている。
芳香からすれば不思議なものだ。
怪我なんて痛くもかゆくもないし、死ぬこともない。
なんてったって、すでに死んでいるのだから。
どうしてそこまで口うるさく言うのか。
なんてことを考えていたら、背中に思い切り体重がのしかかった。
「うごごごごご・・・!」
「ほら、もっと曲がる!まだまだ!」
気づけば、手伝っていた青娥の方が、汗をかいていた。
前屈はもちろん、あらゆることにおいて仙人がゾンビに劣るはずがない。
ただ一点、死という経験を除いては。
不老長寿の青娥は未だ、死の苦しみを知らない。
分からないからこそ、怖いのだ。
芳香は一度死んでいる。
死の恐怖を味わい、そして死に、なのに生き返った。自分が生き返らせた。
怪我の痛みはないという。でも、怪我して死ぬという恐怖は痛まないのか?
死なないと分かっていても、過去の死を追想することはありえないのか?
考えすぎかもしれないけれど、自分の知らない感情に、想像は追いつけない。
「痛い痛い痛い・・・!」
足元から響く鈍い声で我に返り、慌てて乗せていた腰を上げた。
「ご、ごめんなさい!大丈夫・・・?」
「いやぁ、痛い、ような気がしただけで」
普段どおりの表情に、青娥はほっと胸をなでおろした。
罪悪感なんてたいそうなものじゃない。
でも、柔軟程度の痛みで、もっと大きな痛みが防げるなら、それでいいじゃないか。
「ほらほら、見てくださいよー」
へらへらと笑う血色の悪い顔に、こちらの心がほぐされそうになる。
が、ここで甘やかしては意味ないし。
「まだまだ、硬すぎる!」
長座体前屈、今日の記録は4センチ。
ただ、やっぱり「作者さんの幻想郷」がもっと見えた上での方が面白みが増すかな、とも思うので80点で。
和みました。
お話や雰囲気は好きよ。でもちょっと短すぎる気がするから、短編が多く投稿されているジェネリックの方に書くか、
小噺集として4、5本まとめて投稿してもらった方がいいかもしれませんね。
この作品は、小説というよりは詩的な色が強い作品だと思います。いい意味で。
芳香を想うからこその、青娥の敢えての厳しい指導。
短い文章の中で、それを暖かく表現した作品だと思いました。
個人的にはこの路線を極めるのも面白いんじゃないかなと思います。
どちらも短いと思いましたが、もっとこの話の続き、もしくは別シーンを読みたいと思わされました。
今後の期待を込めて、あえて辛めの点数にさせていただきます。