Coolier - 新生・東方創想話

If I were taller...

2012/02/20 01:52:05
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身長ネタです。
タグにもあるとおり、具体的な数値が出ちゃってます。
それによりキャラのイメージを大きく変えてしまう恐れがあります。
それでもOKという方は↓↓へ。
















ある日の昼下がり。
お天道様は出てるが、外は枯葉が転がる寒い風が吹いていた。
そんな外に出たくなくなりそうな季節でも博麗神社では4人の少女たちがまったりと談笑していた。

「この幻想郷で『大きい』ヤツといったら誰だろうな。」

魔理沙がこんな事を言い出してから、少女たちの話に火がついた。
霊夢と妖夢と早苗はそれぞれ顔を見合わせる。

「やっぱり、小町じゃない? かなり大きかったと思うけど。」
「いえ、神奈子様かと。あの方もかなり大きいと思います。」
「私は、幽々子様…かなぁ。いつも一緒にいるけど大きいっていつも思うし。」

三者三様。
もちろんのこと意見は誰一人として合致しなかった。
というより、2人は主人贔屓じゃないのかという突っ込みはなしだ。
そんな中魔理沙はあの人物の名を挙げる。

「皆分かってないな。幻想郷一大きいっていったらやっぱ、紫しかいないだろ?」

魔理沙の力説に頷くのは妖夢と早苗の2人だけだった。
霊夢は腕を組みながら溜息をつく始末だ。
まるで、「魔理沙こそ分かってない」とでも言うように。

「あんたこそ、分かってないわ。紫なんてこーんなちんちくりんだったじゃない。…この間は。」
「いや、冬の異変の時お前も戦ったろ? しかも、永い夜の異変ではペア組んでたじゃないか。遠目に見ても霊夢よりかは大きかったけどな。」
「その時じゃなくて。私たち、道具屋に行ったじゃない。その時よ。」
「あれはまた違うもんだ。」
「でもねぇ…」

2人は境内に歩み出て静かに火花を散らせていた。
残された妖夢と早苗は縁側で茶(博麗神社の物)を飲みつつ、2人を見ていた。

「私たちって居る意味あるんですかね…。」
「無いんじゃないですか~?」
「帰ります?」
「そうしま…じっ!?」

帰ろうと立ち上がる妖夢の額に、霊夢たちの喧嘩の流れ弾がヒット。
相当痛かったらしく、妖夢は頭を抱えてもんどりうっている。
早苗がおろおろしていると、喧嘩していたはずの霊夢と魔理沙が早苗の方に飛んでいく。
霊夢は着地するや否や、早苗の肩をがしっと掴んだ。

「あんた、今すぐ神奈子連れてきなさい。良い? 逃げようとなんてするんじゃないわよ。」

魔理沙は痛みに悶える妖夢を無理矢理起こして霊夢に便乗するように言う。
妖夢はとても人の話を聞いてられる状況ではなかったが。

「お前は幽々子を連れてくるんだ。 霊夢も言ってるように、逃げられると思うなよ?」

早苗は霊夢の迫力に押され、妖夢も魔理沙の独断で、2人はそれぞれの主を連れてくる羽目になってしまった。
もちろん、霊夢は小町を、魔理沙は紫を連れてくるという事を確認させた。
…主人公組の横暴である。
その後早苗はすぐに守矢神社へ戻ったが、妖夢は傷が回復するのに少々時間を要したものの若干重い足取りで白玉楼に戻っていった。

「で、やっぱり小町が大きいのよ。」
「いいや。絶対紫の方だな。」
「何よ。やるっての?」
「望むところだぜ。」

…喧嘩はまだ続いていた。




守矢神社

「神奈子様。かくかくしかじかで博麗神社まで来て欲しいのですが…」

早苗は神奈子を見つけるなりすぐに事情を説明した。
神奈子の方はと言えば、最近特にこれといって何も無く暇だったので参加する旨を早苗に伝えた。

「紅白の所に行くんでしょ?」
「はい。そうです。」
「ん。分かった。じゃあ行こうか。(何の大きさだろう…?)」

早苗はこの話に疑問を抱いている神奈子もお構い無しに博麗神社へ向かった。




白玉楼

「幽々子様。かくかくしかじかで…ちょっと来て貰いますよ。」
「え? 私何にも言ってな」
「時間が無いんです。早く行きましょう。」(もうあんな痛い流れ弾受けたくない…幽々子様ごめんなさい。)
「ちょ、ちょっと! え!? きゃああぁぁぁ!!」

幽々子は妖夢に強制的に連れて行かれた。
だが、妖夢も実質的に被害者なのだ。
誰も妖夢のことを責める事は出来ないだろう。
…無理矢理連行された幽々子を除いて。




三途の川

「生きているあんたがここに居るのも不思議な話だねぇ。」
「そんな事はどうでもいいわ。とりあえずうちの神社に来てくれない?」
「んー、まぁあたいも暇だしねぇ。行ってやってもいいよ。」

霊夢の強引な誘いに小町は伸びをしつつ答える。
どこかの閻魔が怒り出しそうな台詞だが今はその話は置いておこう。
霊夢は特にこれといった困難も無く小町を神社へ連れて行った。




博麗神社

「さて。紫を呼ぶにはっと。」

独り言の後、魔理沙は思いっきり息を吸う。
そして大声で叫ぶ。

「B-B-A-!」
「誰がBBAよコラァッ!?」

虚空からにゅるっと半身を乗り出して紫が現れた。
いつもの導師服と白い帽子に身を包んでいるが、今は顔を赤くして犯人を捜しているようだ。
紫は魔理沙を見つけるや否や、怒鳴り散らす。

「魔理沙! 貴女この私に向かって何てこというのよ!」

魔理沙は耳をふさいでいかにもうるさそうに、めんどくさそうに紫の話を受け流していた。
そんな魔理沙の態度に紫の怒りは収まることを知らない。

「耳をふさぐのを止めなさいよ! 話を聞きなさい!!」
「うるさいぜ…それに、私はただBBAと言っただけで紫が勝手に来ただけだろ?」
「うぐっ…」
「まぁ、紫に用があって呼んだんだけどな。」
「それにしても呼び方ってものがあるでしょ。」
「へいへい。以後気をつけますよっと。」

全く反省してないそぶりで魔理沙は返事をし、何故ここに呼んだのかを説明した。
紫はその態度が気に入らなかったらしいが、どうせ帰っても魔理沙が執拗について来ると考え仕方なく付き合うことにした。
……少ししてから霊夢と早苗が戻ってきた。

「おろ。妖夢はいないのか?」
「えぇ。合流しなかったわ。でもすぐ来るでしょ。」
「…皆さん。あれ、じゃないですか? 妖夢さん。」

一同は早苗が指差した方に目を向けると、上空で2人の少女がもみ合いになっていた。
その2人は紛れも無く妖夢と幽々子だった。
大声で言い合っているので、彼女らの声は博麗神社に居る全員の耳に行き届く。

「もう神社見えてますから、子供みたいなこと言ってないで早く来てください!」
「いやっ、絶対にいやぁっ!」
「もう…皆見てるんですから、泣かないでくださいよ…。」
「ううう~っ…」

妖夢は幽々子を宥める…のは良いのだが、明らかに妖夢と紫がニヤニヤしているのは見なかったことにしておこう。
霊夢と魔理沙はそんな冥界組を見て驚いていた。

(あれ、幽々子…よね?)
(あぁ。間違いない。間違いない…はずなんだが…)
(どう見ても、カリスマ不足よね…。)
(むむむ…まぁ、大きさが測れれば何でも良いんじゃないか?)
(…それもそうね。)

主人公組も酷い考えだった。
訝しげな目線を送る霊夢と魔理沙だったが、ここで神奈子が紹介したい人が居ると言って皆の視線を集める。
正しくは道連れというのだろうが、気にしない。

「呼ばれはしたけれど、何をするの? 内容が伝えられないまま連れてこられたんだけど。」

そこにいたのは、八意永琳だった。
少しめんどくさそうな顔をしているのを見ると、半ば無理矢理連れてこられたんだろう。
霊夢はそういえば確かに大きいかも…と思い、それは魔理沙も同じだった。
錚々(そうそう)たるメンバーが集まったところで、早苗は大きなものさしを持ってきた。

「実は、私たちで『幻想郷一身長の高い』人は誰かって言うのを話してたんです。」
「…えっ?」

早苗が理由を説明したところで、疑問の声を上げたのは幽々子だった。
すかさず、紫は幽々子の泣いていた理由を推理して即座に理解した。

「ははぁ。幽々子。貴女の勘違いよそれは。」
「ん? 何を勘違いしたって言うんだ?」

魔理沙も紫に便乗して聞く。
…魔理沙はただ純粋に理由が分からないだけだろうが、勘の良い霊夢はこの状況を静観していた。
それに対して幽々子は顔を真っ赤にして、両手の指先を小さく絡め続けながら俯いていた。
永琳も少し顔を赤らめていたのは誰にも気づかれなかったようだ。

「だ、だって…大きさを競うとか聞いたから…あれかと…」
「『あれ』って何の大きさかしら~? 鈍感な私には分からないわね~。」
「もう、紫のばかっ…。分かってるくせに…」

「はいはい! 夫婦漫才は済んだかしら?」

紫が幽々子を弄っている途中でついに霊夢が割って入る。
夫婦漫才が嫌いな霊夢は、夫婦漫才にイライラしているのか、笑いを堪えるのが苦しくなってきたのか、分からないが口調が厳しく速い。
尤も前者だろうが。
魔理沙は頭の上に?マークを浮かべたままきょとんとしていた。

「あんたら夫婦は黙っときなさい。兎に角、早苗がさっきも言ったと思うけど、今から身長を測らせてもらうわよ。」
「私の疑問が解決されなかったのは癪だが、まぁそういうことだ。」

霊夢、早苗の2人がじりじりと近寄る。
まず目をつけたのは永琳だ。

「私から、ね?」
「あぁ。そうだ。とりあえずしゃんと立ってくれ。それと、他の奴らもそうだが帽子は取ってくれよ?」

魔理沙は縁側から大きな声で指示を出す。
永琳は、はいはいと素直に従う。
順番を待っている彼女たちも帽子を取った。
いつもの帽子を早苗に預けて、直立する。
霊夢と早苗は長さ2メートルくらいあるものさしを永琳の背中に平行になるようにぴったりくっつける。
早苗はすかさず、横から目盛りを見る。

「えーっと、ひゃく…ろくじゅうはち…168cmですね。」
「ふむ。平均的な身長なのかしら。」

永琳は何事も無いように言うが、この結果に小町以外はざわめく。
ざわめきには軽蔑や侮蔑といったものはなく、不安や驚きが含まれていた。
他の者の顔には勝てる気がしないと言わんばかりの感情が含蓄されている。
そんな3人はいざ知らず。
霊夢は永琳を縁側に連れて行き、次の人を呼ぶ。

「よーし。次は…神奈子。ほらこっち来て。」
「ああ。分かった。」

神奈子を永琳と同じように立たせて、霊夢と早苗の2人は再び計測する。
注連縄は脱着式だったようで、早苗に預けていた。
自機組が面白い顔で驚いていた。
一方その頃、妖夢と魔理沙と永琳は縁側でお茶を飲んでいた。

「…ひゃく、ろくじゅう、ろく…166cmです。神奈子様。」
「うーん。やっぱり永琳には敵わなかったか。」

少し残念そうな顔をしていたが、この結果には仕方が無いという半ば諦めの感情が見える。
…神は成長しない。
それを思い知らされた結果だった。
しかし、結果をお構い無しに霊夢はさっさと神奈子を縁側に連れて行って、次の人を呼ぶ。

「う~ん、ゆ…かり。紫。こっち来なさい。」
「えー、私最後?」
「いや、あたいが最後かもしれないよ。」

幽々子はぷくっと頬を膨らませて不満げな顔をし、小町は順番なんて関係無しにカラカラ笑っていた。
霊夢は無視して測定に移る。
魔理沙が「残念だなーフラれたぜ幽々子ー、小町ー」と茶化したら、急に反魂蝶を展開しようとしたのをとっさの判断で妖夢と小町が止めた。
何故幽々子の顔が真っ赤だったのかは分からないが。

「魔理沙は後で折檻ね…」
「霊夢さん。しっかり持ってくださいよー。」
「あぁごめんごめん。」
「んん…ひゃくろくじゅう、ろく。166cm…神奈子様と同じですね。」

この結果には、やはり少々驚いたようだ。
紫自身が。

「えっ、同じなの?」
「えぇ…同じよ。珍しいわね。」
「むー、ちょっと悔しいわ…。」

ちょっと残念そうな顔をして縁側に向かう。
残りは小町と幽々子だが、正直遠目から見ても体格差は目に見える。
しかし、問題は具体的な数値だ。
霊夢は次の人を呼ぶ。

「幽々子。次よ。」

幽々子が呼ばれた。
ということは、最後は自動的に小町ということになる。
小町は「あたいが最後かー」と笑顔で残念そうに言っていた。
呼ばれた幽々子は小町をちらちら見ながら、霊夢たちの方へ向かう。

「えっと…すいません。足を地面につけてくれませんか?」
「あっ、ごめんなさい。」

いつもふよふよと浮遊しながら移動しているせいか、直立しても浮いたままだったのだ。
早苗は軽く注意し、幽々子もそれに従う。

「……ひゃく、ごじゅう、きゅう…159cmです。」
「うぅ。身長とか体つきは結構気にしてたのに…」

落ち込んでしまった幽々子は赤子のように縮んでしまい、さらに小さく見えた。
それを見て、早苗は少し罪悪感を感じてしまう。
しかし、霊夢は意外にも驚きの表情をしていた。
霊夢は自分の頭に手を当てて、その手の高さを維持したまま幽々子の方に動かしている。

「あー…うん。あんた、私と同じかもねー身長。」
「ええぇ!? そ、そんな…」

実際、霊夢は人間組の中ではやや高い方であった。
しかし、幽々子から見れば年も離れてて、あどけなさが残る(双方に言えることだが)少女と身長が同じというのはプライドに傷をつけてしまったようだ。
溜息をついて下を見ながら縁側に歩いていく幽々子だった。
端から見ると本当に亡霊なんだなと思わせるほど暗い表情をしていた。
……だが、まだ終わらない。小町が残っている。
明るく笑う小町は霊夢の傍によって来る。

「じゃあ、最後はあたいだねっ。」
「えぇ。」

今までの流れを見ていたので、小町はすぐに準備を始めた。
とは言っても、鎌を魔理沙に預けて直立すればいいだけの話だが。
そして、早苗はものさしを宛がう。

「ひゃく、ななじゅう…に、172cmですね。た、高い。」

うっかり感想がもれる。
暫定一位だった永琳もびっくりしていた。
暫定ビリだった幽々子は既に諦めの表情をしていた。

「ってことは、やっぱり私の予想が合ってたんじゃないのよ。」

空気を読まずに霊夢が言う。
それに続いて各々感想らしきものがもれる。

「ちぇー。小町より高いと思ったんだけどなー。」
「…ゆゆこさま…。」
「神奈子様は私の中では一番ですからっ。」

ちょっと悲しくなってくるコメントもあるが、まぁ置いておこう。
ここで測定済みの永琳、神奈子、紫、小町はお帰り願った。
理由は、霊夢が「ここに居させると事件が起きそうだから」だそうだ。
小町以外の3人は「自分から呼んでおいて…」と言いたげな表情をしていた。
ちなみに幽々子を残すのは、「ようむがいないとご飯もらえない」と駄々をこねたからだ。

そして、身長測定はこれで終わりかと思われた。





だが、閑散とした神社に何故か再びわらわらと人が集まってくる。
全員見たことある面子だがどうして集まってくるのか神社に居る彼女らに気づく由も無かった。
霊夢はずいずいと前に出てきた3人に理由を問う。

「な、何よ。あんたら。」
「なんでも、身長を測ってくれてるそうじゃない。」
「それでしたら……測って欲しいのだけど。」
「ね、いいでしょ。」

順に、霊夢、輝夜、咲夜、天子である。
確かに低くは無い面子だが、霊夢たちの選んだ面子には敵わないと思われる。
……気の毒だが。
しかし、霊夢はすぐに気づく。
咲夜が小さな声で『この方たち』と言ったことに。

「まぁいいわ。で、誰よ。測って欲しいのは。」
「話が早くて助かるわ。…ではお嬢様。頑張ってください。」
「私はあえて慧音を選ぶわ。ほら、ちょっとこっち来なさいよ。」
「私はもちろん衣玖ね。」

それぞれに選ばれた3人が前に出てくる。
慧音と衣玖は霊夢のところへと歩いていくが、レミリアはぎゃーぎゃー騒いでなかなか行こうとしない。

「ちょ、ちょっと咲夜! あなた結果分かっててやってるでしょ! こら、こっち向けー!!」
「まあまあお嬢様。しかし、もしお嬢様がやらないとなるとここにいる方たちはどう思うでしょうか。」
「えっ…」
「『紅魔館の主はそんなことも承諾できないのか』と、周囲から批判を受けてしまいますよ。どうします?」
「うぐぐぐ、わ、分かったわ。うまく言いくるめられてる気がするけど、やってやるわよ。」

レミリアが身長測定に承諾したところで、霊夢と早苗はこの3人の測定の準備に取り掛かる。
この時咲夜がとても『いい』表情をしてたが、見なかったことにしておこう。
準備を終えたところで、順番発表を行う。
霊夢は「えっと、んじゃ衣玖。」と、衣玖を呼び出す。
指名された彼女は返事をし、霊夢のいるところへ歩いていく。
羽衣と帽子を魔理沙に渡して、測定者である霊夢と早苗に一礼する。
早苗は礼儀正しさに少し驚きながらも、ものさしを彼女の背中に宛がう。

「ひゃくななじゅう……。170cmです。」
「でかっ! そんなに大きかったのね…」
「いえいえ、私なんて大した者じゃないですよ。仲間ではもっと大きな方がいますよ?」

衣玖の身長が測定されたところでレミリアの体がふるふると震える。
咲夜に後押しされたおかげで顔は自信に満ち溢れているが、額を伝う汗の量は半端じゃなく多い。
言葉なぞ発さなくとも、所謂『カリスマブレイク』と呼ばれる状態になっているのは分かる。
自分の体格は、幽々子と同じく結構なコンプレックスだったらしい。
わなわなわなわな…

「ふ、ふん! 別に大きいからって羨ましいなんて思ってないからな!!」
「あぁ…泣かないでください。私が悪いのなら善処しますからっ。」
「泣いてない! やめろ、その慰めはいらん!」

衣玖は自分のその背丈が原因であることに気づいてないらしい。
というより、話を聞いていなかったのか。
それとも天然なのか。
どちらにしても、レミリアの心を抉ったのは言うまでもない。

「うー…つ、次は私よ!」

立ち直りの早い吸血鬼だ。
この場に居る全員が思ったことだろう。
霊夢も「じゃあ、レミリア。早くこっち来なさい。」と言って手招きする。
早苗はレミリアの背にものさしを宛がい、これまでのように測る。

「がっかりしないでくださいね…。ひゃく、にじゅう、はち。128cmです。」
「最初に保険をつけるなぁ!!」

レミリアが吼えた。
突っ込みどころが少々違う気がするのは気のせいだ。
ところが、咲夜と幽々子はものすごく輝かしい表情をしていた。
幽々子は自分より遥かに下の存在が居て、自分の背が低いイメージが払拭されたと思ってほっとしていたようだ。
咲夜はレミリアの困っている様子を満面の笑みで見つめていた。
しかし、他のみんなはどこか気まずそうな顔をしている。
身長を測った早苗や霊夢も例外ではない。
コンプレックスを公表し、聞いてしまった罪悪感を感じてしまうのだ。
レミリアも、自分自身でその事実は知っていたのだから余計に苦しい。

「うがあああぁぁぁっ! 咲夜ぁぁぁ!!」
「はい。何でしょうお嬢様。」

地団太を踏みながら咲夜を呼ぶレミリア。
咲夜は先ほどの満面の笑みから一転、とても済ましたような顔でレミリアと向き合う。
今更瀟洒ぶっても遅いとかそんな突っ込みは無粋だ。

「元はと言えば、お前が変な事を言うからだぞ! どうしてくれるんだこの空気!」
「…人のせいですか?」
「えっ」
「私はただ、お嬢様に紅魔館の主としてのあるべき姿を進言したまでです。ですが、それは命令ではありません。お嬢様は自分自身でこの測定を受け入れると英断を下したわけです。それがどうして、私の責任になりましょう?」

酷い。あまりにも酷い言い訳だった。
咲夜も表情こそ変えないものの、冷や汗をたっぷりかいていた。
それにもかかわらず、最近の幻想郷は下克上が流行っているのかと思わせるような強気な態度だった。
レミリアは最初こそ強がっていたものの、だんだんとその目には涙が溜まりついにカリスマは崩壊した。

「うううぅぅ…ごめんなさい、さくやあぁぁ…」
「分かって頂ければ良いんです。私こそ、変に強く言ってしまってすいませんでした。」

二人は抱擁を交わし、ようやっと落ち着いた。
しかし、その様子を傍観していた者たちの有様は酷いものだった。
霊夢は胃が痛くなるほどイライラし、魔理沙と輝夜は縁側でだらしなく寝ているし、早苗と慧音はぽかんと口を開けたまま直立し、妖夢は幽々子のご飯を作り、衣玖と天子は既に帰っていた。、

「……終わったの」

霊夢はキリキリと痛む胃を抱えながら、鬼の形相で聞いた。
まだレミリアを抱きかかえたままの咲夜は、微笑む。
レミリアは咲夜の腕の中で寝ていた。

「ええ。時間かけてごめんなさい。でも、お嬢様の身長を測ってくれてありがとうね。」

そう言い残して咲夜の姿は消えた。
お得意の時止めだろう。
霊夢は心の奥底から負の感情を吐き出すかのように深いため息をつき、次を促す。

「…で。次誰だっけ。」
「あぁ私だ。あんな後ですまないが。」

人の目の前であんなにイチャイチャされたら、そりゃ誰だって気まずくもなるだろう。
生真面目で有名な慧音も顔を赤くして俯き気味に測定場所に歩いていく。
ここで霊夢は空気を変えようと慧音を弄ってみることにした。
何で弄るのか、その理由は恐らく幽々子と同じくこういう話題に疎いからだろう。
もしくはさっきの腹いせか。

「初心よね~幽々子と同じで。」
「なっ…だ、誰が初心だと!?」

湯気が出そうなくらい顔を真っ赤にして霊夢に逆上する。
霊夢の弄りはまだ終わらない。

「だってさ。目の前であの2人がイチャイチャしてただけじゃない。何でそこまで顔を赤くしてるの?」
「ぐぐぐ…そ、その話題で私をからかうのはやめてくれ…頼むから…」

慧音は両手でスカートの裾をぐっと掴んで、目一杯に涙を溜めて俯いている。
さすがにやりすぎたかと霊夢は反省した。
後悔はしてないのだが。
軽く謝ると、彼女も許してくれた。
涙を拭きいつもの調子に戻してから測定を始める。

「慧音さんは、ひゃく…ろくじゅう…160cmです。」
「中堅って感じね。」
「うるさいっ。」

頭突きを霊夢に喰らわせて、慧音はさっさと里の方に帰ってしまった。
霊夢は頭突きが強烈だったのかその場で倒れて気絶してしまった。
当然と言えば当然なのだが。因果応報。自業自得。
残された早苗は霊夢を博麗神社の一室に運んでいった。
とは言っても腕力はそんなに無いので、霊夢の足は地面にずるずると擦っていく形になるのだが。

「ふぅ。どうして私がこんな役回りに…とほほ。」
「貴女だけではないですよ。」

自分の役に嘆く早苗の背後から妖夢が話しかける。
幽々子は満腹になって今は寝ているらしい。
…何でみんな寝るんだ。

「私もこの測定にはあんまり関わってませんが、幽々子様を必死に慰めたり、食事を作ったり、陰ながら頑張っていました。ですが、出番があんまり無かったんです…」
「あ」
「なので、自分で『そんな役回り』とか言わないでください。他にも、そこで寝ている輝夜さんも出番がほとんど無かったんです。」
「す、すいませんでした。」

輝夜の件は絶対彼女自身が悪いと思うのだが、早苗はそのことを言わなかった。
しかし、自分より遥かに子供ぽい容姿をしている妖夢に説教されるとは思わなかったようで早苗の表情は少し曇った。
お互いに少し沈んでしまったところで意外な人物が来る。
早苗は振り返るとさっきまで寝ていた魔理沙とスキマから半身乗り出している紫がいた。
紫の手には見慣れた一升瓶が。

「終わったんでしょ。それなら、今から宴会としゃれ込もうと思うのだけど。」

紫がにこにこと微笑む。
とても上機嫌のように見える。
早苗は、雲間から差し込む光が増幅したように微笑み返し、「分かりました。」と返事した。
妖夢も紫の姿を見据えて元気良く返事した。
先ほどの暗い雰囲気は霧散してしまった。

「そうと決まれば、皆を呼ばないとですよね。」
「あ、私も手伝います。」

早苗と妖夢は寝ている人妖たちを起こしに神社の居間へと向かっていった。
魔理沙と紫は皆を起こそうとしている彼女らを縁側に腰掛けて見ていた。
直に宴会が始まる。
ただ、紫の考えている宴会は普通とはわけが違っていたのだ。
そんな意向も知らずに、皆集まってくる。
いつの間にかレミリアや永琳も戻ってきている。

「宴会でしょ。早く始めちゃいましょうよ。ぱぁーっと。」
「まあまあ。そう慌てないでよ霊夢。この宴会はいつものとはちょっと違うわ。」
「ふーん。何かあるの?」
「それはね…身長ごとに飲めるお酒を変えようかと。」

何故かこのタイミングで妖しい笑みを浮かべてカリスマをかもし出す紫。
一同は何を言ってるのか分からないという表情だったのだが、構わず言葉を紡ぎ続ける。

「身長が高い方が良い酒が飲める。身長が低い方は背を伸ばすために牛乳を飲ませる。これで、低い方は背が伸びて、高い方は旨い酒が飲める。皆が幸せになれる宴会よ。」
「ほぉ…それで、背が低い者って具体的に誰よ。」
「そうね。魔理沙、妖夢、輝夜、レミリア、幽々子、霊夢ってところかしらね。」

それを聞いた6人も黙ってはいなかった。

「ちょっと、それは無いんじゃない? 自分だけ良い思いできるなんて。」
「そうですよ。皆平等で良いじゃないですか。」
「そうだぜ。霊夢の言うとおりだ。」
「紫だけ良い思いだなんて許せないわ。」
「私を侮辱するのもいい加減にしなさいよ…!」
「宴会って聞いたから起きたのに、それは無いでしょ。」

火花が散る。
6人と1人で、旨い酒を賭けて。
全員が手元にスペルカードを用意し…











翌日。
神社には7人の少女が息も絶え絶えになって横たわっていた。
死屍累々とはまさにこの事だ。

だが、彼女たちは知らない。

幻想郷中で、身長測定が流行っている事を。
そして、身長を測られた者はこれからそれで弄られることを。
衝突が起きる前…
慧音「付き合ってられん。私は戻るぞ。」
永琳「姫様死なないし…大丈夫よね。」
早苗「怖そうなので先に失礼します。」
咲夜「ここは傷ついたお嬢様を見るために一旦退却。」
神奈子「早苗と一緒に帰ろう…。」
衣玖「空気を呼んで帰らせていただきます。」
天子「私も衣玖と同じ。」

SS4作目となります。
最初は軽めな気持ちで書いていたのですが、だんだん膨らんでいってこんな量に。
たくさんキャラ出せたのは良いのですが、出番が偏ってしまったりするのはやっぱり良くないですね…
もっと精進して行きたいと思います。

※返信
歩く情緒不安定さん
本当はそういう話だったんですが、途中から友人と話し合っているうちにここまで出来てしまいました。

コメント2番、4番さん
あれもこれもとなっていると、自分の文章力が伴わず冗漫となってしまって読みづらくなってしまいます。そこのあたりはどうかお許しください!
まぁ、他のキャラも違う形でだせたらなあと思います。

コメント7番さん
いつものサボり癖が…。
(一応、修正しておきました…。すいません。)

コメント11番さん
全員「反則だー!!」
霊夢「ていうか、ものさしで測れないほどでかいから失格ね。」

コメント12番さん
藍「紫様は挑発しすぎです。治療するの私なんですから…」

コメント13番さん
あれは本当に今までの2次創作モノのイメージを根本から覆すものでしたね…
まぁ可愛いから良いんですがw

コメント14番さん
角はこのルールで行くとノーカンですねw
帽子は脱ぐことになっていますし…

コメント16番さん
う~ん。背が高いといえるかと聞かれたら、はっきりとそうですねとは答えられませんねぇ。
難しいところですが、そこまで高い部類には入らないと思います。
霖之助の身長は推定200cmほどらしいのですが、幻想郷に住む女性(少女)ではそんなに大きい人はいないと自分の中では思ってます。
suraime
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コメント



0.330簡易評価
1.70歩く情緒不安定削除
最初の面々って、むn…いや何でも無いです
2.100名前が無い程度の能力削除
えーりん、こまちでか!
メーリンはどうしたぁ!
4.80名前が無い程度の能力削除
藍や聖もかなり大きいイメージがありますねぇ
7.80名前が無い程度の能力削除
こまっちゃんが途中からフェードアウト……だと……?

地底には勇儀姐さんにおくうちゃんという巨ny
高身長組が控えているぜッ!
11.70名前が無い程度の能力削除
萃香「ミッシングパワー!どうだ、一番大きいぞ」
12.100名前が正体不明である程度の能力削除
さすがに、6対1じゃ負けるだろうな…
13.80名前が無い程度の能力削除
いや東方香霖堂のゆかりんはやっぱ犯罪級だと思うんだ、色々
14.100名前が無い程度の能力削除
勇儀「…………よし」
パルスィ「角はノーカンよ?」
勇儀「!!」

みたいなのを想像して悶々と
16.100名前が無い程度の能力削除
小町との対比で小さく言われてる映姫様はどうなるんだろwあの人結構肩ががっしりしてるしw
……というか香霖の身長に勝てるメンツはいるのかな?w
17.40名前が無い程度の能力削除
正直、身長を測るのは第一陣だけでお腹いっぱいになった、同じような展開だったし。
でも、身長というテーマは目新しかったと思う。
21.70ミスターX削除
魅魔が足を出したらいくつになるんだろう?