静かな、そして広大な湖のど真ん中に、一際目立つ陸地がある。いや、正確には目立っているのは、そこに建つ、赤く、巨大な西洋の貴族の館を思わせる建物だ。
紅魔館……悪魔が棲むと噂される館である。
その敷地の一角に、些か怪奇な雰囲気と離れた面持ちの空間がある。そこは莫大な書物が敷き詰められた知識の宝物庫。人はそこを、紅魔館大図書館と呼ぶ。
「……」
人間では十生涯かかっても読み切れないほどの量の本の管理人であり、魔女、パチュリー・ノーレッジは、紅茶を一口含むと軽く息を吐き、本を閉じた。
(……たまには推理小説も悪くないわね)
正直、彼女は暇を持て余していた。
管理とはいえ、雑務の殆どは彼女の使い魔である名も無き下級魔族、小悪魔に任せてある。魔術研究は嫌いではないが……これは人間と同じだ。毎日肉を食べていれば、ふいに魚を食べたくなる。
(でも、トリックが大味過ぎたわ)
椅子から腰を上げ、歩き出す。本は元の場所に戻すべし。大図書館利用規則第三条だ。
(さて、次は……)
本を戻し自分の背丈の二倍以上はある本棚を見上げる。上の本が気になるが、文字が見えない。これも読書に適した視力に「進化」した代償か。
ともあれ本の厚さは見て取れる。かなり分厚い。事典か図鑑の類だろう。時間を潰すには適していないようだ。なによりあんな重そうな本を持ち歩きたくはない。
「とりあえずはこれにしようかしら」
ちょうど目に付く位置に手頃なサイズの本がある。文庫本と言ったところか。時間は昼過ぎ。これなら夕食までには読破出来そうだ。
内容は拘る必要はない。無駄な時間さえ過ごさなければいい。その点において、本の右に出るものはない。
パチュリーは本に手を伸ばした。
「……ん?」
抜けない。いや、びくともしない。その本の列に限って、本がぎゅうぎゅう詰めになっていた。
(サボったわね小悪魔……)
少なくとも自分ならば、こんな本に失礼な並べ方はしない。パチュリーは顔をしかめる。
別の本にしようかとも考えたが、一度触れてしまった本だ。否が応でもページを開きたい衝動に駆られた。
「ふん……っ」
抜けない。
「んぎっ」
抜けない。
「んぬいー……!」
ずれる気配すらない。
「ふ……ふふ」
薄気味悪い笑い声を、彼女は漏らした。初めてだったのだ。本にここまで「反抗」されたのは。
「上等ね……!」
もはや意地だった。か細い指をしっかりと本に掴ませ、パチュリーは片足を本棚に押し付け、大きく息を吸い込んだ。
そして息を止め、タイミングを計るように、彼女は一点を見据え、
「ほぬぁっ!」
全体重をかけ、引っ張った。
そして午後1時29分58秒。
その時本棚は動いた。
鈍く紙が擦れる音と共に、本は抜け出した。意味の無い勝利に、パチュリーは表情を明るくする。
しかし、彼女は気づいていなかった。本棚が揺れると同時に、先ほど見た分厚い本が、本棚からずれ落ちるのを。
そして午後1時30分。
その時本は落ちた。
パチュリーの右足の甲に。
角から。
ゴッ
「……」
鈍い音と共に、パチュリーの晴れやかな表情が固まる。
本能的に理解したのだ。これより先コンマ1秒にも満たない未来に、抗いようのない激痛が襲い掛かるのを。
「ヒッ……!」
パチュリーは声が漏れそうになるのと同時に、両手で口を塞いだ。
(ヒギイィィィ!!)
そして絶叫した。心の中で。
大図書館利用規則第一条。図書館ではお静かに!
管理人としてのプライドが、激痛に叫ぶより、規則を厳守する道を選んだのだ。
(いいぃぃ痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛いィィィ! な、なんてジェノサイドな角度から落下してくるのよこの本は!)
「ほあぁぁぃ……!」
僅かに呻きながら、彼女は心の中で悪態を吐く。
(こ、この痛み……! お尻からグングニルされるより凶悪だわ……!)
当然そんなことされたことはない。しかしこの世には、何と比べても右に出るものはいないシチュエーションが存在するものなのだ。
ともあれこんな場所で悶え苦しんでいる様を、雑用の小悪魔に見られる訳にはいかない。自身の沽券に関わる。とりあえず早く椅子に座りたい。静かにしていれば、痛みもそのうち引くだろう。
ズキズキと痛む右足をなるべく無視しながら、彼女は専用のデスクへとふらふらしながら移動する。この本棚に挟まれた一本道を抜ければすぐだ。
しかし痛みのせいか、その一本道が妙に長く見える。
(あと少し、あと少しよ……)
この本棚を曲がればデスクだ。彼女は心を急がせ、本棚の角を曲がる。
しかしその焦りが悲劇を生むことになることを、この時パチュリーは知る由もなかった。
ゴッ
「ぬぇ……っ」
当たったのだ。左足の小指が、本棚の角に。
(ヒギイィィィ!!)
噴火するほどの激痛が、パチュリーに襲い掛かる。本棚を指がめり込むほどに掴み、パチュリーは歯を食いしばった。
(私の小指がアグニシャイン! 私の小指がアグニシャイン!!)
完全に歩みが止まってしまった。今は声を抑えるので精一杯だ。
「パチュリー様、さっき本が落ちる音がしましたが、どうかしましたか?」
「!」
背後から聞こえた声は、パチュリーのよく知る声だった。小悪魔だ。
「……」
「……パチュリー様?」
「だ、大往生よ?」
「は?」
「だだ大丈夫よ問題な゛い゛わ゛!」
「は、はぁ」
元はと言えばあんな無茶な本の詰め方をした小悪魔が全ての元凶だ。この場で胸倉掴んで小一時間説教をしても足りないくらいだ。
だがこの時、パチュリーは思った。これはチャンスだ。
振り返り、パチュリーは笑みを作る。
「ちょうどいいところに来たわね……ちょっと椅子を持ってきてくれないかしら?」
「椅子ですか?」
「この列の本をちょっと時間をかけて調べたいのよ」
我ながら完璧な作戦だ。歩けないなら運ばせればいい。
「え、ええまあ……構いませんが……」
小悪魔の反応がおかしい。
「ど、どうかしたの?」
「い、いえ別に……」
こちらに目を合わせようとせず、小悪魔は椅子をこちらに運んできた。とりあえずこれで休める。
「パチュリー様、私が言うのもアレですが……あまりのめり込まないでくださいね?」
「……?」
意味深な言葉を残し、小悪魔は足早に去って行った。
(……なんなのよ一体)
ふう、と溜め息を吐き、パチュリーは本棚を見た。そして固まった。
〓本棚のお品書き〓
・上腕二等筋の誘惑
・淫乱学ラン
・秘蜜の先輩
・男子寮裏規則
・その他もろもろ
(ヒギイィィィ!!)
もはやタイトルだけで説明不要である。小悪魔の妙な態度の理由が分かった。
(誰よこんなルナティックな趣味の本揃えたの!!)
兎にも角にもこれはまずい。完全に小悪魔に誤解されたに違い無い。のんびり座ってる場合ではない。いち早く誤解を解かねば、今後が気まずい。
「待っー」
ガッ
慌てて一歩踏み出そうとした瞬間、傍らにある椅子の足が、当たった。小指に。
(ヒギイィィィ!!)
更にその拍子に、パチュリーはバランスを崩し、前から派手に転んだ。
(ヒギイィィィ!!)
痛い。兎に角痛い。転んだ際に腹を強打し、先ほどぶつけたばかりの小指をさらに打ち付けてしまったのだ。
(傷口にセントエルモピラー! 傷口にセントエルモピラー!!)
悶え苦しんでいる暇はない。しかし今すぐに立ち上がれる状態ではない。パチュリーは肩を震わせ、這い出した。
(はあ……一体どうされてしまったのでしょうか)
本に積もった埃を落としながら、小悪魔は溜め息を吐く。
(最近は頻繁に本を盗まれてるから、疲れているのでしょうか)
人間の魔法使い、霧雨魔理沙と、パチュリーの仲についてはよく知らない。少なくとも良くはないのだろうが、毎日のごとく大量の本を魔理沙に「借り」られては、追い払おうとして失敗している。疲れても仕方ない。
(ここは一つしっかり休んでいただかないと……)
そう思ったのも束の間だった。
ガシッ
「ひっ……!?」
不意に彼女は足首を掴まれたのだ。突然やってきた悪寒。恐る恐る足下に視線を落とすと、
「こ……こあく」
「いやああぁぁぁ!?」
ゴスッ
(ヒギイィィィ!!)
小悪魔は反射的に、手に持っていた魔術書を投げつけてしまったのだ。それを顔面にぶつけられたのが誰かは、もはや言う必要もないだろう。
「……は! パ、パチュリー様!?」
まさか仕える相手に足首掴まれるとは思わなかったのだろう。それがパチュリーだと分かった瞬間、小悪魔の顔が青くなった。
「き、さま……」
「ひい……!? す、すすすすいませんつい!」
明らかに殺気のこもった声に、小悪魔は後ずさる。もはやパチュリーの中で弁解などどうでもよくなっていた。
ただ、自分の部下に本気で本を顔面に投げつけられた痛みと怒りが、彼女を支配していた。
「ただじゃ済まさないわ……!」
ずり、ずり、と両手で這いながら近づいてくるその様は、もはや魔女ではなく、怨霊や悪霊のそれだった。
「ごめんなさいぃぃぃ!!」
「逃がすかあぁぁぁ!!」
小悪魔が全速力で走っているにもかかわらず、這って歩く魔女との距離は一向に広がらない。
「怖っ! キモッ!? 何ですかその移動法は!?」
「あんたのせいでしょうが!!」
「何の話ですか!?」
喘息持ちであるはずのパチュリーがここまでして追ってくる。それだけで怒りの程は十分に伝わってくる。
「ヒギイィィ……ヒギイィィ!」
「何その鳴き声!?」
「喘息よ!」
無駄なツッコミが命取りとなった。小悪魔はつまづき、その場で転んでしまったのだ。
「きゃん!」
「追いかけっこは終わりよ。ヒギイィィィ……!」
「ひぃ……!」
必死の形相で這ってくるパチュリーに、小悪魔は戦慄する。彼女の手が小悪魔を掴もうとしたその時、
ドゴオッ
「ようパチュリー! 今日も本を借りに来たぜ!」
元気な声と同時に、パチュリーの真横にあった扉が開かれた。扉の真ん前にいたパチュリーは、サッカーボールのごとく吹っ飛ばされた。
(ヒギイィィィ!?)
パチュリーの知る限り、堂々と本を「借り」に来る人物は一人しかいない。
霧雨魔理沙。その予想通り、図書館の扉をパチュリーごと蹴飛ばしたのは、彼女だった。
「……おおう?」
目の前でヒクヒクしながら倒れているパチュリーを目にし、魔理沙は首を傾げる。
「わざわざ客人が来てやったのに、何寝てんだ?」
「ヒギイィィィ! ヒギイィィィ!(あんたのせいでしょうが!)」
「……何語だそれ?」
「ハッ……!」
思わず本音と本心(本音)が逆転してしまった。
「……ポ」
「ポ?」
「……ポンチョメ語よ」
あまりに苦しい言い訳だ。
「聞いたことない言葉だな」
どうやら真に受けたらしい。
「ポ、ポンチョメ語はあなたには高度すぎる魔法言語なのよ!」
「へえ……それならばなおさらその高度な魔法言語の本を漁りたくなってきたぜ?」
(ヒギイィィィ!)
完全に墓穴を掘った。当然そんな言語はない。
(ま、まずい、これはまずいわ! 袋とじを素手で破るよりまずい!)
目の前の魔理沙は完全に存在しないポンチョメ語の本を奪う気でいる。
小悪魔がいれば時間稼ぎくらいは出来るだろうが……どうやら逃げたようだ。八方塞である。
「さーて、やる気がないなら、私は借りられるだけ借りるだけなんだが……」
ニヤニヤと意地悪な笑みを浮かべながら、魔理沙は辺りを嘗め回すように見回す。
しかし、パチュリーは未だ動けない。歯を食いしばり、目の前の普通の泥棒を睨むことしか出来ない。
「なんだ本当に何もしないのかよ。面白くな--」
その瞬間、魔理沙は背後からの危険を察知し、その身を横に跳躍させる。
サクッ
先程まで彼女がいた空間を、一本のナイフが通過する。そしてそれは本来捕らえるはずの目標を見失い、パチュリーの尻に刺さった。
(ヒギイィィィ!!)
「っと、今日はやけに早いご登場だな」
黒の帽子をいじりながら、魔理沙はその凶器を放った相手に振り返る。
「泥棒の目的地に、行かない理由は無いでしょう?」
紅魔館メイド長、十六夜咲夜は涼しい顔で魔理沙を見つめる。
(ケツがああぁ!!)
味方を刺したのを無視して。
「まあ、メイド一人に今更驚く私じゃないんだが」
「そりゃそうでしょう。何故なら……」
次の瞬間、咲夜は魔理沙の背後に立っていた。
「驚く時間すら、貴女は奪えないんだから」
「そう来ると思ってたぜ!」
切り込みを箒で振り払い、魔理沙はミニ八卦炉、咲夜は大量のナイフを取り出した。
(こいつら本棚の真ん前で弾幕勝負始めやがった……!)
完全に蚊帳の外に追いやられたパチュリーは、這いつくばったままプルプルと震え出した。
ドスッ、ザクッ
(ヒギイィィィ!!)
ズドンッ、ドカンッ
(ヒギイィィィ!!)
魔理沙の弾幕と咲夜のナイフが容赦なく本棚の本を突き刺し、引き裂き、爆散させていく。
「や、やめなさい貴女達! やるならせめて外で--」
「相変わらずすばしっこい!」
「そんなんじゃゴキブリ一匹仕留められないぜ!」
鈍感な魔法使いと完全にパチェ無視なメイドに、彼女の声が届くことはなかった。
「幻符「殺人ドール」!!」
「儀符「オーレリーズサン」!!」
そしてよりにもよってスペルカードである。大量のナイフの雨と色鮮やかな弾幕がぶつかり、弾け、暴れまわる。
「はは……あははは……」
パチュリーはもはや、乾いた笑いを漏らさずにはいられなかった。
荒らされていく図書館、ボロボロの身体……たった一冊の本が招いた不幸が、どうしてこうも膨らんだのだろう?
ボコッ
パチュリーの頭に本が落ちる。
「ヒギィ……」
ヒラヒラと元々本だった物が、吹雪のように舞い落ちていく。
「ヒギィ……!」
そしてぶつかり合う振動に揺さぶられ、二冊の本が落ちた場所。
「がっ……!」
「ふぐっ……!?」
それは偶然にも、魔理沙と咲夜の足の甲だった。
「ヒギ--」
「「ヒギイィィィ!!」」
パチュリーが口を開こうとした瞬間、二人分の悲鳴が図書館、に響き渡った。
その悲鳴がパチュリーの表情を凍り付かせたことに、当然二人は気付かない。
「お、おおぉぉぉ……!?」
「ふ、んぐぐ……!!」
静まり返る図書館に、二人の小さな呻き声が響く。
パチュリーはこの時、ようやく気付いた。
「な、なぁ咲夜……!」
そうだ。
「な、何かしら魔理沙……!」
これでいいんだ。
「こ、ここは一つ引き分けってことにしないか……?」
何を我慢していたんだろう、私は。
「き、奇遇ね……私も同じこと考えてたわ………」
最初から、我慢しないで叫んでれば、
「この世にゃ、どう頑張っても我慢出来ないものがあるんだな……」
こんな惨めな思いをせずに済んだのに。
「何くだらないことで悟ってるのよ」
でも、全ては後の祭り。
「あーやめだやめだ。場が白けた。今日は帰るぜ」
それならば、せめて……この忌々しい現実を消し去ろう
「ははっ、あははは……」
低い笑い声を漏らしながら、パチュリーはゆっくりと立ち上がった。
「お、なんだパチュリー、今頃起きたのか。次はちゃんともてなしてくれよな?」
魔理沙の声など、もはや聞こえない。
「あら、いたのですかパチュリー様。いたなら言ってくだされば……」
咲夜は論外だ。
「……日符……」
「え」
「ちょ……っ」
パチュリーの手に握られているもの、図書館の惨状、攻撃した覚えはないけどボロボロな彼女の姿を見て、魔理沙、咲夜はこの時初めて、自分達が何をやらかしてしまったのかを悟った。
「ロイヤルフレア」
尤も、とっくのとうに手遅れだったが。
その日最後に二人が目にしたものは、迫り来る逃げ場のない炎の波、もはや怒ってるのか泣いてるのか、はたまた笑ってるのか分からないパチュリーの形相。
そして、真相を知らぬ二人にとってはあまりに不可解な、今までに聞いたことのない、彼女の絶叫だった。
「ヒギイィィィ!! ヒギイィィィ!! あはははははは!! ヒギイィィィイイイイイイイイィィイィィィィィィィ!!!!」
「……で、一体何の実験するつもりなんだ?」
紅魔館敷地内、大図書館内。床に描かれた魔法陣の上に大量に詰まれた灰や燃えカスを前に、魔理沙は興味津々な様子でパチュリーに問い掛ける。
「あんた達がぼろカスにした本の復元よ」
(……八割以上はパチュリーがやったと思うんだが)
そう思ったが、魔理沙は言うのをやめた。また怒らせたら面倒だからだ。
あれから一週間。塵と化した本を小悪魔に集めさせ、パチュリーは地道に図書館の修復を進めていた。最も壊れた本棚や壁の修理は、罰として小悪魔にやらせっきりではあるが。
「言っておくけど」
「邪魔はしないぜ。私も本は好きだからな」
「よろしい」
どっしりと椅子に腰掛ける魔理沙を確認し、パチュリーはやや安心した素振りを見せる。
ここ一週間、少し変わったことがある。毎日のように来ていた魔理沙の、本を「借り」に来る回数が減ったのだ。
それだけではない。見つかっても以前のように弾幕を放ってパチュリーを振り切ることもなく、捕まったら素直に帰る始末だ。
魔理沙だけではない。あれから小悪魔は本を丁寧に扱うようになった。咲夜は咲夜なりに反省しているらしく、定期的に紅茶を運んで来てくれる。それも飲みたいと思った時に。
淡い光を放ち始める魔法陣を見つめながら、パチュリーは振り返る。
自分の意志を伝えたいならば、行動で示さなければいけないと何かの本で読んだ記憶がある。でも、それだけでは駄目なのだ。
人間にしろ魔女にしろ、悪魔にしろ妖怪にしろ、私達は数少ない、言語を解する高度な知的生命体なのだから。
「おー、やっぱり器用だぜパチュリーは」
時を遡り元の姿を徐々に取り戻していく本を見つめながら、魔理沙は感嘆の声を上げる。
「あなたの勉強が偏りすぎなだけよ。知識を得たいなら、まず好き嫌いをなくすことから始めなさい」
「なんか、今日はよく喋るなパチュリー」
読書に没頭するあまり、私は声に出す言葉を退化させてしまっていたのかもしれない。
「接客を求めたのは魔理沙のほうでしょう?」
たまには音読も悪くない。
「私の求めてるサービスとちょっと違うぜ」
口を尖らせ、魔理沙は不満顔をしてみせた。
「さ、本の復元はこれで完了……。ついでだから運ぶの手伝って頂戴」
「それは持ち主の仕事じゃないか?」
ものの数分で復活した本は、見ただけでも百数十以上はある。魔理沙は当然抗議するが、
「手伝ってくれたら、五冊までなら貸してあげるわよ?」
「それなら引き受けるぜ」
この程度で引き受けてくれるなら、わざわざ泥棒しに来なくてもいいのに。パチュリーはそう思ったが、過程より結果が先行してしまう彼女のことを考えると、仕方のないことなのだろうと一人納得した。
「それじゃ、とっとと運ぶわよ。肉体労働は私も嫌いだしーー」
ゴッ
「……!」
本を抱え、歩き始めたパチュリーの足の小指に、本の山から転がり落ちた一冊が落下し直撃した。
しかし、彼女は知っている。
口とは閉ざすものではなく、開くものだと言うことを。
「ヒギイィィィ!!」
ノーレッジ女史がテケテケみたいになっちゃう所なんかでは声に出して笑ってしまった。
ヒギィに始まりヒギィに終わる、ベタだとしてもやっぱりオチはこうでなくては。
個人的にちょっと思った事を一つ。
このお話って、パチュリーさんに次々と襲い掛かる痛みという名の試練を、
可哀想だとは思いつつも笑わせるのが肝なんじゃないかと俺などは考えます。
同時に、その痛みで発しそうになるヒギィを、彼女が鋼鉄の意思で以って一生懸命我慢する所を見せる事も、
とても大事な笑いのツボなのではないかと。少なくとも俺はそこが面白かった。
ちょっと思ったってのはここ。
何故ヒギィを我慢するのか? 作者様はきちんと理由付けして下さっている。大図書館利用規則第一条がそれですね。
ただ、俺的にはもう一押しが欲しかった。例えば冒頭なんかで小悪魔や魔理沙あたりが大きな音・声を出した際に、
第一条を盾にして過剰な制裁を加えるシーンを見せておいて、パチュリーの逃げ場を予め塞いでおくとかね。
ギャグ・コメディなんかでは、単純に「笑った」「面白かった」みたいな感想の方がいいんじゃねぇか、
とは思うのですが、どうにも余計な一言を加えてしまう。困った性分を御容赦して頂けると有難いです。
後書きで仰っているクロスについてはどうなんでしょうね。俺はあまり抵抗はないのですが、
バトルものにすると、途端にハードルが高くなる印象はあります。
ともかく初投稿お疲れ様でした。再会を楽しみにしております。
腹筋壊れたらどうしてくれるんだwwwwwww
東方×別作品の場合は、・タグに明記すること・両方の作品のファンが不快にならないよう配慮すること、
ここらへんが大事かなと。
ヒギィィィwww
私はここ(クーリエ)の住人なので知りませんが、確か東方のクロス物を専門に扱っているサイトがあったような、無かったような……はて。
まぁ、作品なんて『面白ければ全て良し!』なので、とりあえず投下してから考えるでもいいような。
場違いならコメントで指摘が来ると思うので、一石二鳥でしょう!
ヒギィィィwwwwww
別にNGじゃないけど、かなりの茨の道。
いまの評価の半分ももらえないかもね。
小指は痛いですよね……そして壊れたパチェさん、素敵ですw