目の前の食べていい人類の少年は尻餅をついて、私がかじった頭のところに手を当てている。私をみあげるその顔にはなんの感情も浮かんでいない。人形みたいで、ちょっと気味がわるい。
私は、おどり食い、というのをやってみたかった。山の上の風祝が、そとの世界ではそういう食べ方があるのだと話してくれた。口の中に生きた小さい魚をいれるのは、強烈なキスみたいで気持ちいいのだとか。キスってなにか知らない、と言ったら、風祝はにやりと笑って、
「男と女とがですね、唇を重ねることですよ! で、こう、舌をですね、からめるんですよ♪」
れろれろ、と彼女は舌を私の前に突きだしてみせた。
「そうなのかー」
「とっても気持ちいいですよ」
そういう風祝の顔がほんとうに気持ちよさそうだった。私は気持ちいいことが好き。やってみようと思った。でも、私は知っているのだけど、人間の頭には頭蓋骨という硬くて厚い骨があって、頭からまるごとがりっとゆくのには無理がある。でも子供ならそうじゃないかもしれないと思った。それで、無縁塚のところで、ぼうっとしている少年を見つけて、声をかけた。おどり食いしてもいい、と聞いたら、いいよー、といってくれた。うれしい。そこまではよかったけど、私がうまくできなかった。つまり、少年の頭に噛みついたら、あごが外れそうになった。頭に思いっきり当たった前歯は痛いし。
「もうっ」
と私は少年の肩を掴んで、抱きよせる。風祝はいっていた、おどり食いはキスみたい。気分だけでも味わっておこうと思う。私は少年の顔にせまって、唇を重ねる。少年の唇の感触はやわらかくて、たしかに気持よかった。でも、物足りない。風祝がするように舌をれろれろと絡めたら、違うのかもしれない。
少年の唇がうすく開いた。私のことを見すかしたみたいに、舌が伸びてくる。あいかわらず少年は無表情で、それでも懸命にのびてくる舌に私は自分の舌をあわせた。舌先どうしが触れて離れて、ちろちろと水飴をなめるみたいになった。もっと舐めてほしいと舌を差しだすと、少年は口を私の口に覆いかぶせた。ぐっと二人のあいだが近くなって、かちんと前歯がぶつかる。少年の舌が、それは思った以上にながくて、口の奥まで入ってくる。私の舌をねぶるようにすると、今度は歯のうらや舌のうらをなめあげる。生きた小魚を食べたらこんなふうだ、という感じがする。口のなかで這いずりまわる少年の舌を私は自分の舌でおいかけまわす。舌と舌とがこすれると、気持ちよくなる。
そうやって少年と舌をからめてから、顔をはなした。息をつく。少年は耳元までうっすらと肌が赤くなっていた。目が合うとほほえんで、私の腰に手をまわした。
風祝がいうように気持ちよかった。ただ、これはほんとうのおどり食いじゃない。こんど、私の口にも入るぐらい小さいなにかを見つけよう、と思う。とりあえずいまはご飯、ご飯と抱きついてくる少年から身をよじって、ちょっと隙間をつくると、最近できたお寺の尼さんに教えてもらったように合掌し、
「いただきます」
と言った。
ナニか、ナニなのか!?
ルーミヤ可愛すぎる~!
そしてルーミアかわいいよルーミア。
あと早苗さんぜひボクとキスを(ry