※意図的に神子様をぶっ壊しております。キャラ崩壊にご注意ください。
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ああ、ようこそいらっしゃいました。私がこの霊廟の主、豊聡耳神子です。貴方は商人の森近様でいらっしゃいますね? フフ、はじめまして。本日はわざわざこのようなところまで配達に来ていただいて、本当にありがとうございます。外はさぞ寒かったことでしょうに、申し訳ありません。何分まだ目覚めて日が経っておりませんで、あまり身体に慣れていない上、土地勘もありませんもので……ああ、私が尸解仙というのは使いの者に聞いていらしたのね。フフ、怪訝そうな顔ね? どうして知っているのかって? それは貴方自身が仰っているのよ? フフ、“耳”だけはいいのですよ、私。……覚り妖怪? ふぅん……そんな妖怪がいるの。けれど私はそんな低俗な存在とは違います。名前からも感じるでしょう? 豊聡耳神子ですよ、豊聡耳神子。なんてファンタスティックなのでしょう。特に「豊聡」の部分が素晴らしいですね。フフ。
それはさておき、そうだ。森近様は布都のことをご存知でしょうか?
物部布都。私と共に尸解仙となった少女のことです。この霊廟に入る前に、綺麗な銀髪の少女がいたでしょう? そう、烏帽子を被った。そうそう、その子です。布都はとある豪族の生まれの子で、風水を得意とする道士なのですが……風水は知ってますか? 知ってますよね。次いきましょう。
その布都なんですが、これがまた本当に可愛らしい子でして。いや心底可愛らしい子なのです。昨日だって私が寝ていたら怖い夢を見たとか言って私の布団に潜り込んできたんですよこれヤバくないですか死にますよ悶死しますよ尸解仙が死にますよココ笑うとこです巷で噂の聖徳ギャグですよホラ笑ってください。
閑話休題。その布都なのですが、どうも最近、とある男性と知り合ってしまったらしいのです。
ココ驚くとこですよこのレベルですら驚かないと一部妖怪が餓死の危機ですよ「えぇぇっ!」と大袈裟に驚いてください次いきましょう。
その男というのが、先日この霊廟に侵入した賊の人間――霧雨だか小雨だか忘れましたが――の知り合いらしく、そんな輩とあのマジカルいたいけな布都が接触するなど許されないのですよというか許しません私刑です。閻魔の裁きなどガン無視キメちゃいます。ええ、私の可愛い可愛いウルトラ可愛い布都に手を出す不貞の輩など断じて許しません生きて返しませんともSATSU☆GAIしますよ、ええもちろん。
失礼、少し熱くなってしまいました。話を戻しましょう。あ、遠慮なさらずコタツに入ってください。甘いミカンもありますからどうぞどうぞ。屠自古ー、お客様にお茶を淹れて差し上げてー! ……フフ、屠自古の淹れるお茶は美味しいのよ。楽しみにしていてくださいね。
さて……えーっと、どこまで話したかしら。ああそうそう、マジウルトララブリーエンジェル布都に手出ししたゴミクソ野郎の話です。
布都とその男が出会ったのは、ある森の近くだそうです。
何でも、布都はその日幻想郷の探訪に出かけていたらしいのですが、幻想郷も狭くはありません。もともと少しおっちょこちょいな布都はだいたい昼時、森で迷ってしまったそうです。可哀想に、一人で心細かったことでしょう。きっと神子様神子様と泣きながら私の名を読んで宛もなく歩き回ったに違いありません。あ、失礼。興奮して少し鼻血が……屠自古ー、ちり紙ー!
……ふぅ。お恥ずかしいところを。さて、それで迷子になった布都がようやくどうにか森を抜けることができたのは、何でも美味しそうな匂いが漂ってきたからだそうで。お腹を空かせた彼女 はその匂いのもとを、自らの嗅覚を頼りに探しに、棒のようになった足を引き摺って歩いたところ、鬱屈とした視界が急に開けたのだそうです。
そこで、布都が見つけたのが、芋を焼いている、奇妙な服装の男の姿だったのです。
布都は男に声をかけました。ええ、かけてしまいました。なぜ声をかけるのか。無論お腹が空いていたからです。そうでなければ何が悲しくて布都がそんなゲスに話しかけなければいけないというのでしょうか。かき集めた落ち葉に火をつけて見せつけんばかりに香ばしげな煙を上げて……あぁ、きっとそうだわ。このマジキチ野郎、布都を誘き寄せる為にわざと焼き芋をしていたに違いないのよ! なんて非道! なんて極悪! 良心の欠片もありはしないのに違いないわ!
……失礼。つい熱くなってしまいました。こたつの温度下げてもいいかしら? ありがとうございます。屠自古ー、こたつの温度下げてー。
さて、そんな訳で布都はそのサノバビッチに「もし、そこな殿方。すまないが我にもその焼き芋を分けてはもらえぬだろうか」といった風に声をかけたのだそうです。森の中を歩き続けてきたために体のあちこちに葉っぱやら小枝やらをくっつけて若干涙目の布都――抱きしめたくなりますよね――を見て、男は“それらしく”驚き、二つ返事で了承したのだそうです。ここらへん悪どさが見え見えですね。どうせ獲物が釣れたとか考えていたに違いないのです。本当に許されざる悪の権化です。しかし純粋な布都はそんなことにはついぞ気づかず差し出される焼き芋を受け取り、空腹の赴くままにそれを平らげてしまいました。すると、また新たに焼き芋が差し出されるではないですか。
「そんなにお腹が空いていらっしゃるのでしたら、もう一ついかがですか。どうせ余分に焼いていたので」
丁度誰かに押し付けようと思案していたのです――、と男はさらに布都に芋を勧めました。なんという偽善。なんという見えすいた演技。というかその誰かというのは他ならぬ布都のことではないのですか白々しい。しかし立ち上る白い蒸気の前に布都は食欲を抑えきれず、悪魔の囁きに耳を傾けてしまったのです。そうですよ二本目いっちゃったんですよ! それどころか最終的に五本も食べてしまったらしくって、この霊廟に帰ってきた布都に今日の晩御飯は何がいいかと尋ねたら「お腹がいっぱいなので今日は結構です」とか言われたんですよ! この気持ちがわかりますか、貴方にわかりますか! 泣きましたよ、一人さめざめとぞ泣き居たりましたよ! 思い出しただけで涙が出てきました! 屠自古っ、手拭いーっ!
ぐすっ……申し訳ありません……。あまりの衝撃だったもので……えぇ、はい。その日はもう泣きましたよ。わんわん泣きました。人前で泣いちゃいけないってお婆様が言ってたので厠に籠って泣きはらしました。まだ目許赤いでしょう? もう十年分くらい泣いたと思います。あっ、今しがた泣きましたね。すいません今のノーカンでお願いします。
そんなわけで布都に焼き芋をたらふく食べさせたウ◎コマンは「森の入り口までお送りしましょう」などと言って、布都にその汚れきった手をぬっと差し出したのです。布都は、そしてあの子は、――その手を取ってしまったのです。
――ああっ!
なんてこと。こうして布都は、殿方と手を繋いで歩くという乙女において重大なイベントを何処の馬の骨とも知れぬ腐れ外道と経験してしまったのです! クソ野郎が、布都のハジメテを奪ったのです! 万死に値します。いえ、いっそ輪廻転生の環から外れて二度と甦らないでほしいわ。その方がこの三千世界のためよ。ねっ、屠自古、貴女もそう思うわよね? そうよね、もちろんそうです。えぇえぇ。
それでですね。どうして私が初対面の森近様にこのような話をしたのかと言いますと、もちろんただの世間話というわけではないのです。先ほども申しました通り、私どもはまだ目覚めてから間もなく、土地勘もありません。また、私は仮にも聖人でして、妖怪たちに狙われるのは目に見えているのです。無論、そこいらの雑魚に負けるほど弱くはないつもりですが、本調子でない今馴れない地に出ては不覚を取る可能性がないとも言えないのです。
しかし、だからと言って私のかわいいかわいい布都に狼藉をはたらいた悪鬼羅刹を生かしてはおけません。もう一回言います、生かしてはおけません。
そこで、森近様にお願いがあるのです。どうか、件の下手人を突き止めては頂けないでしょうか?
もちろん仕事に対して対価は支払います。こんな粗末なところではありますが、一応曲がりなりにも私どもは豪族でしたので、この霊廟にも宝庫があるのですよ。そこからお好きなものをいくつかお持ち頂いてかまいませんわ。
どうかしら、やってくださいます? あ、そうだ。布都からも話を聞いた方がいいわ。うん、その方がきっとリアルですものね。屠自古ー、ちょっと布都を呼んできてちょうだい!
ふふ、すぐに来ると思いますので少々お待ちくださいね。引き受けて頂けるかどうかは布都の話を聞いてもらったあとでかまいませんわ。
……森近様? どうかなされたのですか? 顔色が悪いようですけれど――――。
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ああ、ようこそいらっしゃいました。私がこの霊廟の主、豊聡耳神子です。貴方は商人の森近様でいらっしゃいますね? フフ、はじめまして。本日はわざわざこのようなところまで配達に来ていただいて、本当にありがとうございます。外はさぞ寒かったことでしょうに、申し訳ありません。何分まだ目覚めて日が経っておりませんで、あまり身体に慣れていない上、土地勘もありませんもので……ああ、私が尸解仙というのは使いの者に聞いていらしたのね。フフ、怪訝そうな顔ね? どうして知っているのかって? それは貴方自身が仰っているのよ? フフ、“耳”だけはいいのですよ、私。……覚り妖怪? ふぅん……そんな妖怪がいるの。けれど私はそんな低俗な存在とは違います。名前からも感じるでしょう? 豊聡耳神子ですよ、豊聡耳神子。なんてファンタスティックなのでしょう。特に「豊聡」の部分が素晴らしいですね。フフ。
それはさておき、そうだ。森近様は布都のことをご存知でしょうか?
物部布都。私と共に尸解仙となった少女のことです。この霊廟に入る前に、綺麗な銀髪の少女がいたでしょう? そう、烏帽子を被った。そうそう、その子です。布都はとある豪族の生まれの子で、風水を得意とする道士なのですが……風水は知ってますか? 知ってますよね。次いきましょう。
その布都なんですが、これがまた本当に可愛らしい子でして。いや心底可愛らしい子なのです。昨日だって私が寝ていたら怖い夢を見たとか言って私の布団に潜り込んできたんですよこれヤバくないですか死にますよ悶死しますよ尸解仙が死にますよココ笑うとこです巷で噂の聖徳ギャグですよホラ笑ってください。
閑話休題。その布都なのですが、どうも最近、とある男性と知り合ってしまったらしいのです。
ココ驚くとこですよこのレベルですら驚かないと一部妖怪が餓死の危機ですよ「えぇぇっ!」と大袈裟に驚いてください次いきましょう。
その男というのが、先日この霊廟に侵入した賊の人間――霧雨だか小雨だか忘れましたが――の知り合いらしく、そんな輩とあのマジカルいたいけな布都が接触するなど許されないのですよというか許しません私刑です。閻魔の裁きなどガン無視キメちゃいます。ええ、私の可愛い可愛いウルトラ可愛い布都に手を出す不貞の輩など断じて許しません生きて返しませんともSATSU☆GAIしますよ、ええもちろん。
失礼、少し熱くなってしまいました。話を戻しましょう。あ、遠慮なさらずコタツに入ってください。甘いミカンもありますからどうぞどうぞ。屠自古ー、お客様にお茶を淹れて差し上げてー! ……フフ、屠自古の淹れるお茶は美味しいのよ。楽しみにしていてくださいね。
さて……えーっと、どこまで話したかしら。ああそうそう、マジウルトララブリーエンジェル布都に手出ししたゴミクソ野郎の話です。
布都とその男が出会ったのは、ある森の近くだそうです。
何でも、布都はその日幻想郷の探訪に出かけていたらしいのですが、幻想郷も狭くはありません。もともと少しおっちょこちょいな布都はだいたい昼時、森で迷ってしまったそうです。可哀想に、一人で心細かったことでしょう。きっと神子様神子様と泣きながら私の名を読んで宛もなく歩き回ったに違いありません。あ、失礼。興奮して少し鼻血が……屠自古ー、ちり紙ー!
……ふぅ。お恥ずかしいところを。さて、それで迷子になった布都がようやくどうにか森を抜けることができたのは、何でも美味しそうな匂いが漂ってきたからだそうで。お腹を空かせた彼女 はその匂いのもとを、自らの嗅覚を頼りに探しに、棒のようになった足を引き摺って歩いたところ、鬱屈とした視界が急に開けたのだそうです。
そこで、布都が見つけたのが、芋を焼いている、奇妙な服装の男の姿だったのです。
布都は男に声をかけました。ええ、かけてしまいました。なぜ声をかけるのか。無論お腹が空いていたからです。そうでなければ何が悲しくて布都がそんなゲスに話しかけなければいけないというのでしょうか。かき集めた落ち葉に火をつけて見せつけんばかりに香ばしげな煙を上げて……あぁ、きっとそうだわ。このマジキチ野郎、布都を誘き寄せる為にわざと焼き芋をしていたに違いないのよ! なんて非道! なんて極悪! 良心の欠片もありはしないのに違いないわ!
……失礼。つい熱くなってしまいました。こたつの温度下げてもいいかしら? ありがとうございます。屠自古ー、こたつの温度下げてー。
さて、そんな訳で布都はそのサノバビッチに「もし、そこな殿方。すまないが我にもその焼き芋を分けてはもらえぬだろうか」といった風に声をかけたのだそうです。森の中を歩き続けてきたために体のあちこちに葉っぱやら小枝やらをくっつけて若干涙目の布都――抱きしめたくなりますよね――を見て、男は“それらしく”驚き、二つ返事で了承したのだそうです。ここらへん悪どさが見え見えですね。どうせ獲物が釣れたとか考えていたに違いないのです。本当に許されざる悪の権化です。しかし純粋な布都はそんなことにはついぞ気づかず差し出される焼き芋を受け取り、空腹の赴くままにそれを平らげてしまいました。すると、また新たに焼き芋が差し出されるではないですか。
「そんなにお腹が空いていらっしゃるのでしたら、もう一ついかがですか。どうせ余分に焼いていたので」
丁度誰かに押し付けようと思案していたのです――、と男はさらに布都に芋を勧めました。なんという偽善。なんという見えすいた演技。というかその誰かというのは他ならぬ布都のことではないのですか白々しい。しかし立ち上る白い蒸気の前に布都は食欲を抑えきれず、悪魔の囁きに耳を傾けてしまったのです。そうですよ二本目いっちゃったんですよ! それどころか最終的に五本も食べてしまったらしくって、この霊廟に帰ってきた布都に今日の晩御飯は何がいいかと尋ねたら「お腹がいっぱいなので今日は結構です」とか言われたんですよ! この気持ちがわかりますか、貴方にわかりますか! 泣きましたよ、一人さめざめとぞ泣き居たりましたよ! 思い出しただけで涙が出てきました! 屠自古っ、手拭いーっ!
ぐすっ……申し訳ありません……。あまりの衝撃だったもので……えぇ、はい。その日はもう泣きましたよ。わんわん泣きました。人前で泣いちゃいけないってお婆様が言ってたので厠に籠って泣きはらしました。まだ目許赤いでしょう? もう十年分くらい泣いたと思います。あっ、今しがた泣きましたね。すいません今のノーカンでお願いします。
そんなわけで布都に焼き芋をたらふく食べさせたウ◎コマンは「森の入り口までお送りしましょう」などと言って、布都にその汚れきった手をぬっと差し出したのです。布都は、そしてあの子は、――その手を取ってしまったのです。
――ああっ!
なんてこと。こうして布都は、殿方と手を繋いで歩くという乙女において重大なイベントを何処の馬の骨とも知れぬ腐れ外道と経験してしまったのです! クソ野郎が、布都のハジメテを奪ったのです! 万死に値します。いえ、いっそ輪廻転生の環から外れて二度と甦らないでほしいわ。その方がこの三千世界のためよ。ねっ、屠自古、貴女もそう思うわよね? そうよね、もちろんそうです。えぇえぇ。
それでですね。どうして私が初対面の森近様にこのような話をしたのかと言いますと、もちろんただの世間話というわけではないのです。先ほども申しました通り、私どもはまだ目覚めてから間もなく、土地勘もありません。また、私は仮にも聖人でして、妖怪たちに狙われるのは目に見えているのです。無論、そこいらの雑魚に負けるほど弱くはないつもりですが、本調子でない今馴れない地に出ては不覚を取る可能性がないとも言えないのです。
しかし、だからと言って私のかわいいかわいい布都に狼藉をはたらいた悪鬼羅刹を生かしてはおけません。もう一回言います、生かしてはおけません。
そこで、森近様にお願いがあるのです。どうか、件の下手人を突き止めては頂けないでしょうか?
もちろん仕事に対して対価は支払います。こんな粗末なところではありますが、一応曲がりなりにも私どもは豪族でしたので、この霊廟にも宝庫があるのですよ。そこからお好きなものをいくつかお持ち頂いてかまいませんわ。
どうかしら、やってくださいます? あ、そうだ。布都からも話を聞いた方がいいわ。うん、その方がきっとリアルですものね。屠自古ー、ちょっと布都を呼んできてちょうだい!
ふふ、すぐに来ると思いますので少々お待ちくださいね。引き受けて頂けるかどうかは布都の話を聞いてもらったあとでかまいませんわ。
……森近様? どうかなされたのですか? 顔色が悪いようですけれど――――。
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個人的には楽しめた。
ドS神子さまは可愛いし、パシリ屠自古ちゃんはラブリー。
次はぜひともドSさとりんでやってほしい。
生きろ霖之助さん
なんか最近コメントのノリが匿名掲示板っぽいね
布都ちゃんかわいい
屍自古マジ良妻
…霖之助(人)