火焔猫燐は、隣の部屋で眠っているはずの霊烏路空の、低い、絞り出すような唸り声で目を覚ました。
それはまるで理性をなくしてしまったような、人型の妖怪であることを忘れてしまったような
壮絶な苦痛を伴っていると思われる、低い低い唸り声だった。
燐は心配になって寝床を抜け出すと、空の部屋の扉をノックし、小声で話しかけた。
「お空、お空。どうしたんだい?」
すると唐突に唸り声は止み、空の部屋の中は静まり返ったようだった。
耳を凝らすと、衣擦れの音に混じってかすかに、苦痛を伴うような吐息が聞こえてくる。(猫は耳が良いのだ。)
しかし空から返答の声はない。
不安になった燐はもう一度。少し大きな声で話しかけた。
「お空。燐だよ。苦しいの?」
「お燐。なんでも…ないよ。」
そう言った空の声は、全然「なんでもない」様子ではなかったが
きっと部屋に入って欲しくないんだろうなというのはわかった。
わかったが、そういうわけにはいかないと感じた。
「お空……入るからね。」
空はなにも答えない。
恐る恐る部屋の扉をあけるとベッドの下に転げ落ちて、四つん這いになっている空と目があった。
目があったが、空は焦点があっていないようであった。
ただ、顔を前に向けている。
そして空の身体は、今まで見たこともないような光を帯びていた。
身体全体が、鋭い、緑のような、網膜に焼きつくような光を放っていた。
その光はいきなり強くなったり、弱くなったり、消えたり、空の身体の廻りを飛び跳ねたり、纏わりついたり。
部屋中の壁や天井にうつる光の影は、目まぐるしく姿を変える。
空がときおり唸り声をあげて身体を震わせると、心もち光は弱くなるようだった。
抑え込んでいる?
右腕には制御棒が嵌められていた。
空はいつも寝るときには、あの制御棒は外していたのに。
制御棒は真っ赤っ赤に光っていて、ときおり細かく振動した。
燐は思わず一瞬ひるみ、後ずさりした。
しかし、次の瞬間には駆けだして、空の肩をだき、顔を覗き込んだ。
「お空!お空!どうしちまったんだ!ううっ!ど、どうしようっ!」
「おり…おりん、危ないから来てほしくなかった…ん…。ああ…熱い…すごく熱…いんだ。」
つぶやく空の目は、焦点が合わず、前を向いたままで、燐を見ていなかった。
「どうしよう!さささとりさまだっ!そうださとりさまだっ!さとりさまを連れてくるねっ!」
「さ…さと…?」
「そうだよ!さとりさまだよ!安心するんだよ!きっとさとりさまがなんとかしてくれるから!」
「い…いや…いやだ…よ」
「なっ?えっ?」
「ああ…さとりさまに…これいじょ…めいわく…」
「なに馬鹿言ってんだい!」
燐は古明地さとりの寝室にむかって駆けだした。
一人になった部屋で、苦痛に顔を歪めながら、空はつぶやいた。
「もうす…ぐ。おさえられな…。もうすぐ…。」
着の身着のまま、部屋に入ってきたさとりは、来た瞬間に、すぐさま事態を把握したようであった。
さとりはすぐに電話をかけ、それからほんとうに数分と待たないうちに空の部屋には八雲紫と博麗霊夢が立っていた。
二人がつくと、紫とさとりが、小声で一言、二言話した。
さとりも、紫も、霊夢も、誰も笑っていなかった。
燐は誰にも、何の説明もしてもらえなかったが、本当に、大変なことになってしまったとだけ感じた。
空は、すぐに三人に連れて行かれた。
燐は紫に泣いて縋りついたが、空がどうなってしまうのか、どこに連れていくのか、誰も何も教えてくれなかった。
急いでいる、とだけ伝えられた。
ただ最後に、連れて行かれる直前、空は焦点のろくに合わない瞳で、ぼんやりと燐のほうをみて、その手を握った。
その時、声の出ない唇を動かし、空がなんと言ったか燐には聞き取れなかった。
聞き取れなかったけど、きっとこう言っていたんだ。絶対にそうだ。
「たすけて」
"Beside You In Time"
あれから何日もたって、ある日の昼下がり、さとりは地霊殿に帰ってきた。
さとりは疲労困憊し、ただでさえいつも悪い顔色が、今にも倒れそうなほどになっていたが
帰ってすぐに居間に燐を呼び出すと、空の身に起こったことを語りだした。
霊烏路空の体内に溜めこまれた核エネルギーというものは、日に日に増大しつづけている。
というのも外の世界では現在ある事故をきっかけに、急速に「核離れ」がすすみ、外の人々は核を「忘れようと」しているからだ。
その結果、大量の核の概念、エネルギーが幻想郷に流れ込み
そして今現在、核の概念を幻想郷のなかで司り、受け入れている空の体内に流れ、溜まり続けている。
その量は膨大で、空が抑えきれなくなり、メルトダウンを起こせば幻想郷が滅亡するだけではなく
外の世界にも膨大な量の放射能が放出される。
さらに、空が爆発を起こした場合は、幻想郷は一瞬で消し飛び、外の世界の核兵器は次々と誘発を起こし
この地球そのものが、生物の住めない、死の星になってしまうのだ。
空はもはや、とうに自分の制御できるレベルを遥かに超えたエネルギーをその体内に溜め込んでおり
放っておけば、核爆発が起こるのは時間の問題であった。
空は今、博麗神社の近くに作られた、大きなシェルターのような施設の中におり
八雲紫や、博麗の巫女、山の神々、それにありとあらゆる科学者、魔法使い、異能のものたちが
その力と英知を結集し、その力を押さえ込んでいたが
誰一人、彼女が爆発しないと確証をもって断言できるものはいなかったし
このままいつまでも、いまだ膨張し続ける空のエネルギーを抑えることが出来るのか
それとも、明日にでも、空は爆発するのか、それは神にも、科学者にも、妖怪にもわからなかった。
燐は気が遠くなった。
空の身に起きていること、そして幻想郷に起きていることが、あまりにも大きな事だったからだ。
燐はどうすればいいかわからなかった。
何かしなくては、気ばかりがあせるが、その壮大な、幻想郷すべてを、この星全てを巻き込むような事件の前では
自分が出来ることなんて何もないと思ったからだ。
だから燐は、感情の赴くままに、自分の今、一番したいことをしようと思った。
「さとりさま。お空に会わせてください。」
「お燐。今あなたがお空にあっても、見ていて辛くなるだけですよ。」
「わかっているんですさとりさま。それでも会いたいんです。お願いします。」
「あなたの気持ちはわかりました……。今日の夕刻、会いに行きましょう。
それまで休ませてください。わたしは、少し疲れました。」
さとりはそういうとそのままソファーの上で目を閉じ、すぐに寝息を立てはじめた。
もしかしたら数日間、全く寝てないのかもしれない、と燐は思った。
燐はこんなに疲れていて、思い詰めた顔をした自分の主人を、今までに見た事がなかったからだ。
博麗神社の近くに作られた巨大シェルターは、異様な形相をしていた。
それは半径20m以上はありそうな、ドーム状の、金属のような、未知の素材で出来た塊だった。
八雲紫に案内されたシェルターの中は、区切りのない一つの部屋になっており
部屋の中には大小さまざまな見た事もない機械や、神具や、配線や、あるいは全く見た事のないものが詰まっていた。
そしてその中心に巨大な四角い水槽があった。
燐は水槽に駆け寄った。
水槽の中で空は、何も着ていなかった。
目を閉じ、身体を丸めて漂う姿は、まるで胎児のようであった。
その身体はぼんやりと、あの時みた、緑のような光をまとっていて
それはたまに、強くなったり弱くなったりした。
しかし、その身体に施された「力と英知の結集」は壮絶なものであり
燐は水槽に手をつけると言葉を失った。
空の身体には大量のチューブや配線が入り込んでいた。
それは、口や鼻、耳、下腹部だけではなく
身体の至るところに、まるで何かの端子に突き刺すかのように
何十本もの、おびただしい、残酷な数の配線が刺さっていた。
空の身体には全身、漢字や、ローマ字や、あるいは見た事もない異国の言葉で
さまざまな文字が書かれており、それは見ているだけで吐き気を催すような迫力があった。
誰かが、空を全力で、力で、押さえつけるために書かれた呪いの文字、文字、文字、文字…
それらの文字はときたま、赤黒く、まるで死人の血液みたいな色で光った。
空の右腕は、水槽の中に設置された巨大な装置の中に突っ込まれていた。
その金属製の装置は、ブーンと鈍い音を出していて、まるで血も涙もない、真実の口のようだった。
燐はその姿を見ているだけで、もう胸が一杯になって、涙がでてきた。
とにかく胸がくるしくて、空の顔をじっと見つめたけど、どうすればいいかわからなくて、また涙がでてきた。
とつぜん、空の身体が強く発光した。
ぼこっぼこっと音を立てて気泡が口や鼻から出てきて、空は眉を歪めて身じろぎした。
とたんに、右腕の真実の口は、不快な機械音を響かせて、駆動し始めたようだった。
チューブを伝って、生物の体内におよそ不釣合いな、不快な原色の液体が流れ込む。
水槽の中で何がおきているかわからない。
でもこんなの平気なはずがない。おかしい。
空は苦しそうに、水の中でもがいている。
体中の赤黒い呪いの言葉が、強く、強く発光した。
そして、どこからともなく、どこの言葉かもわからない、呪文の詠唱が響き始める。
声は何十にも重なり、それぞれ別の国の言葉で別の呪文を唱え
それは世界中から向けられた空への、壮絶な量の、悪意だった。
世界の罪を、たった一人の少女に背負わせる、残酷で無慈悲な歌だった。
空はもがき続け、やがて身体の発光がおさまり、また静寂が訪れた。
機械の、ブーンという音が響く。
「むごい。」
さとりが暗い目で呟いた。
燐は次の瞬間、半狂乱になって紫に掴みかかった。
「やめてください!お空がかわいそうです!やめてください!」
紫は何も答えず、燐を振りほどきもせず、じっと水槽を見ている。
何を考えているのか、読み取れない目で見ている。
シェルターを追い出されるように帰ってきて、疲れ果てて、寝床にうずくまっても
燐はずっと空のことを考えていた。
どうすればいいのだろうかと考えた。
空はずっとあのままだと聞いた。
制御が効かなくなって、幻想郷が滅びるか、空を永久にあそこに閉じ込めるか。
でも燐にははっきりと感じることが出来た。
空はあそこから出たいと願っている。苦しんでいる。怖がっている。
いっそ空をあそこから助け出して、二人で逃げてしまおうか。
でも空をあそこから出すと、幻想郷も、地球も、みんな滅びてしまう。みんな死んでしまう。
それに、幻想郷中の偉大な者たちが監視の目を光らせているあのシェルターから空を連れ出して逃げるなんて
燐がどうがんばっても、命を何回かけても、出来るわけがなかった。
(あたいはどうすればいいんだろう。)
考えると、また胸が一杯になって、締め付けられるように痛くなって、涙が滲んだ。
空の苦しみを取り除くために、燐は心臓だって、今ここで抜き出して
神にでも、悪魔にでも、手渡して良かったのに
何も出来ないなんて、神も、悪魔も、なんて残酷なんだろう。
どのくらい時間が経っただろうか。
真夜中、燐はドアをノックする音を聞いた。
「お燐ー、わたしだよー。こいしちゃんだよー。」
全くいつも通りの、暢気な声が呼びかける。
ただし、いつもと違って、声を潜めている。
「こいし様…帰っていたんですか…?」
「うん。今ついたとこ。実はお燐殿にお届けものがあるのです。あけてくださらぬか。」
こんな時だっていうのに、こいしは悪ふざけして、いたずらっ子みたいな調子で話す。
お燐はかつて感じた事のない、こいしへのイラつきを感じながら、そっとドアをあけた。
「これ♪」
こいしが差し出した、ビニール袋に入った全裸の空を見た瞬間、燐はびっくりして叫んでしまいそうになった。
「むーっむーっ」
「だめだよお燐。お姉ちゃんや、他のペットが起きちゃうじゃないか。」
こいしは片手で燐の口をふさぐと、その華奢な体躯からは想像できないほど
軽々と空の入ったビニール袋を片手で担ぎ、部屋に入り、扉をしめ、無造作に袋を床に置いた。
「しずかにしゃべること。いいよね?」
コクコクと必死で頷く燐に満足すると、こいしは燐の口に当てていた手を話す。
「どっ!どっ!」
「お燐!ラマーズだ!ラマーズ先生に習ったとおりに己を取り戻すんだ!」
「ひっひっふー。ひっひっふー。」
「よしよし。流石おまえは良い子猫ちゃんだね。お姉ちゃんにはもったいないぜ。」
「こいしさま。これ、どうしたんですか。」
「難しいことは良いからね。お燐。今から言う事にこたえてね。」
「は、はい。」
「お燐は、お空をどうしたいの?」
「あたいは……。」
燐は一瞬、言葉をとめて、こいしを見た。
半笑いのようないつもの表情の、こいしの目からは、何も読み取れない。
何も読み取れない目で、こいしは囁いた。
「お燐。本当に大切な、その一瞬だけは、何者にも心を動かされちゃいけない。何も理屈で考えちゃいけない。
いい?本能で感じるんだよ。自分がどうしたいか。無意識の本能で感じるんだ。その気持ちが全てなんだ。」
燐は目を閉じ、それから開いて、こいしをまっすぐ見た。
―あたいは、これからこの人に、死んでくれませんかって、そう言わなきゃいけない。
「こいしさま。あたいはお空を助けたいです。世界中が滅亡しても、苦しむお空を放っておけないから。」
「やっぱりね。そう言うと思って、お空を盗んで来ちゃった。
もうじき無意識に干渉されて、お空がいない事に気付かれる。
多少はわたしが足止めするから、はやく逃げなさい。」
ビニール袋から出したお空の腕を肩に担ぐと、燐は扉から出る前に振り返り、こいしに最後の挨拶をした。
「こいしさま、ありがとうございました。さようなら。」
「はい。さようなら。」
まるで幼稚園児を送り出す保母さんのような調子で送り出す。
「こいしさま…あの、こいしさまは、なんでこんなことしたんですか?
こいしさまも、さとりさまも死んじゃうのに。世界が滅びちゃうのに。」
「ん?無意識、かな♪」
― I am all alone this time around 今わたしは一人ぼっちだけど
― Sometimes on the side I hear a sound 時々、横のほうで音がしてる
― Places parallel I know it's you わたしの横にはきっとあなたが寄り添ってると感じる
― Feel the little pieces bleeding through あなたの小さなかけらが滲んでくるのを感じる
― And on This goes on ずっと ずっと
燐はお空に肩をかして、暗い魔法の森のなかを駆けた。
よたよたと足を引きずるようにして、燐と一緒に走るお空の目は朦朧としていて
呼びかけにも答えなかったけれど、それでも燐に歩調を合わせてついてきた。
息も切れるし、寒いし、もう希望なんてどこにもないのに
燐はずっとこうして一緒に走っていられればいいのにと思った。
ずっと空のそばにいられればいいのに。
空は寝室で羽織った燐のカーディガン一枚だけの姿でその下は制御棒すら付けていない全裸だった。
おまけに体中、なにか、機械に刺す端子のようなものが埋め込まれたり、文字が書きなぐられたり。
日焼けして健康だった肌は青白く、真っ黒で、艶やかで、美しかった髪の毛は、今は茶色のような、白のような、褪せた色だった。
さっきから、鼻血が、ぽたぽたと落ちて、その不健康な肌やカーディガンを汚している。
身体はうっすらと緑に発光して、もうその姿は、この世の生き物とは思えないような
不思議な雰囲気を醸し出していた。
「はあ…はあ…疲れた?」
空はなにも答えない。
「もうすぐ夜明けだね…はあ…はあ…ちょっと…休もうか?」
空はなにも答えない。
燐は立ち止まると、荒い呼吸を整えながら空を座らせて反対側を向いた。
泣いているのを、見られたくなかった。
「お空は、どうしたかったのかな。」
空はなにも答えない。
「あたい、お空をどうしてもあそこから出したかったんだ。」
空はなにも答えない。
「そのために世界が滅びちゃって、みんな死んじゃってもいいって思った。
お空をあんな目にあわせるのが正しいって世界なら、あたい、なくなってもいいって思った。」
空はなにも答えない。
「あたい、間違ってるのかな?」
空はなにも答えない。
「あたい、自分の罪深さに身体が震えるよ。馬鹿でしょ。」
空はなにも答えない。
「笑ってもいいよ。おかしいよね。うっ…うううぅ……くうっ…。」
「おかしくないわ。でも、わたしはあなたを殺さなくてはいけない。」
燐は振り返る。
八雲紫がいた。
―Now that I've decided not to stay もうここには留まらないことにした
―I can feel me start to fade away わたしが消滅していくのを感じる
―Everything is back where it belongs 全てのものたちが、もといた場所へ還っていく
―I will be beside you before long そしてわたしは、あなたのそばに
―And on This goes on ずっと ずっと
燐は、こんなに強大な妖怪に、こんなに本気の悪意を向けられたことはない。
弾幕勝負ですらない、純粋な悪意。
全身の毛が逆立つのを感じる。
恐怖か、興奮か、自分でもわからない。
「どうする?大人しく引き渡せば、あなた、助かるかもしれないわよ?」
「絶対にいやだ!」
「上等。あなたは馬鹿だけど、本当に美しいわね。」
八雲紫の身体が、変貌していく。
その身体は人の形をしていなかった。
ゆっくりと、幻術のように、うねうねとその形を変えて、大きな大きな次元の裂け目のような形になった。
化けたのか?化けていたのか?
どこからともなく、ぼんやりと声が響く。
「さあ。最後のダンスをしましょうか。見せてちょうだい。誰よりも美しく残酷なダンス……」
裂け目がゆっくりと開いていく。
その奥から、車輪の転がる音が聞こえてくる。
むかし、聞いた事がある。
八雲紫はなんでも呼び出す。見た事もない、異国の生き物。そして、見た事もない、異国の巨大な車輪の化け物。
燐は紫の深い深い裂け目の奥を見つめた。
光る目が近づいてくる。音がどんどん大きくなる。
車輪の化け物。いったい全部で何匹いるだろう。五匹や六匹ではない。
空を担いで逃げるなんてとても無理だろう。
空を抱きしめる。強く。けして離さないように、強く抱きしめて、真っ直ぐ化け物達を睨んだ。
その瞬間、空が片腕を突き出した。
―We will never die わたしたちは永遠に死なない
―Beside you in time わたしはあなたのそばに
空の突き出した手の中で、急速に太陽のようなものが膨らみ始めた。
これは空が以前よく使っていた神の炎に似ていたが、遠くの地平線まで照らし出すような、強烈な光を放った。
それに、凄まじい轟音が、地の果てまで響くような轟音が鳴り響いた。
耳が痛い。燐は鼓膜が破けるのを感じた。
空のほうを見る。
空は、見た事がないほど、ギラギラに光っていた。
いつのまにか、身体中にエネルギーが満ち溢れている。
何か不思議な力で、足が少し地面から浮き上がっていた。
空は片腕を突き出し、反対の腕で、燐の身体を抱き寄せ返す。
燐を抱きしめる。強く。けして離さないように、強く抱きしめて、真っ直ぐ化け物達を睨んだ。
「わたしも!」
空が叫んだ。
もの凄い轟音で、音なんて全く聞こえないのに、燐には、空がなんて言ってるか、ちゃんとわかった。
「わたしも!みんな死んじゃってもいい!お燐だけ守る!ずっと一緒!」
空は満面の笑顔で叫んだ。
顔だって蒼白で、髪だって茶色だか白だかよくわからない色してて、身体中、よくわからない端子や文字だらけで、鼻血垂らして。
でも、満面の笑顔。
燐は胸が一杯になって、涙が溢れて、嗚咽ばかりで声が出なかったけど、搾り出すように叫び返した。
「ずっと一緒!」
空の手の中で、太陽はどんどん膨らむ。
その太陽は、かつて全世界でつかわれた、どんな核兵器よりも強烈なエネルギーを秘め、滅びゆく世界に向けて燦然と輝いた。
いや、おもしろかったし、何かグッとくるものも確かにあったんだけど。
まるで童話のような、淡々とした残酷さには惹かれた。
みんな望んでこんなことをしているわけじゃないのに、みんな辛い思いをしているのに。
結局は信念がぶつかりあって、誰も救われずに終わる。
こういうのを「無力感」っていうんだろうな。
悲しみや怒りではなく、その感情が発露されて、ひどい形相でこれを書いてる。胸が焼けてしまいそうだ。
悲劇の王道の1つみたいなもので似るのは構わないのですがもうちょっと何か欲しかったかな と欲張ってみたり。
悪い意味で言っているのではなく、それ程までに痛ましい世界観が伝わってきました。
ひたすらに残酷で、それ故に美しい。
とても言葉なんかで言い表せないパワーを持っていると感じました。
自分が初めて、創想話でコメント付きの評価を入れようと思ったくらいに。
大好きです。
貴方からしたらゴミクズでしかないはずでしょ?
幻想郷を誰よりも愛する貴方からしたら。
もっと残酷になってくださいな。もっと簡単に選んでくださいな。
そうしないのはひょっとして、幻想郷に住む妖怪たちも……からですか?
お燐とお空の間にある「私達がよければ世界なんかどうなったっていい」ってほどの
(それこそさとり様やこいし様まで巻き込んでも構わない)友情について
なにかエピソードがあれば感情移入もしやすいかな、と感じました
あと文章がちょっと単調かな、とも
が、さすがにここまでスケールを大きくし過ぎると、リアリティを保ったまま書ききるのは難しいんじゃないかと思います。正直途中からとんとん拍子に話がでっかくなっていって、面白いと思う反面気持ちが付いて行かなかったです。
このくらい規模の大きい架空の話でリアリティを保つのは相当大変だと思いますが……。
複雑な感情になるかもしれないです
>2さん
一人でも、二人でもいいので、人の感情を大きく揺さぶる話を書きたいと思っています
ポジティブでも、ネガティブでも
書いた本人は、空と燐は最後はきっと嬉しかったんじゃないかなと思いました
最初は空の心の救済を書くつもりで書き始めたのに
登場人物が勝手に動き始めて燐が救われるはなしになってしまいました
>4さん
キメラ2という名前は、自分には自分だけの主義主張が何もない気がするし
全部他の人の考えたストーリーや、キャラクターの、キメラみたいなものしかつくれない、と思ってつけました
いつかオリジナルの東方になるように頑張ります
>5さん
本当にありがとうございます
そう言ってもらえるなら、5さん一人のためにだけでも、書いて良かったたと本当に思ってます
残酷な美しさっていいですよね
何千年も生きたものの気持ちなんて常人にわかるはずがないので八雲紫の気持ちは当人にしかわかりませんが
紫は燐も空も大切に思っていて、その上で幻想郷のために殺そうとするかもな、と思って書きました
わかりません
>8
最近ドラゴンバスターの2巻が出ました
ミナミノミナミノが好きだったのになかったことにされとる…
>10
ありがとうございます
>11
まさに技量不足
世界を滅ぼすほどの愛を書きたい
3作目、4作目と、努力するのでまた読んでください
>12とーなすさん
リアリティは、技量の問題であきらめて書きました(笑)
とにかく勢いで空と燐のきもちだけ表現したいと努力しました
初心者ですので努力します、アドバイスありがとうございます
しかし、それだけに燐がもっと思い詰めていく様子や、周囲からの所見といった“深み”がもう少しあればよかったと思います。
悲劇やバッドエンドってのは、その世界から滲み出るようなリアルな悲しさがあってこそ、美しく見えるのだと思います。
正直、1作目よりは、この2作目のほうが全然うまく書けたような気がしていたのですが
1作目のほうが読まれているのは、パロディということより、そのあたりが足りていないのかなと思いました
>10さんや>11さんも指摘されてるように、クライマックスまでの描写をもっと丁寧に
リアリティを持たせるように意識することで、もっと共感というか、そういうものを持ってもらえるのかなと
やはり話の規模に対して、文が少なすぎたというのもあるかもしれません
次に生かせるように頑張りますので、是非次も読んでほしいです
内容はおりんくう悲劇の王道。文体は多く語らず、淡々と進む感じが内容にあっていて、すっきりと読めました。
この二人に限らず、妖怪には我がままであって欲しいです。
そういう意味合いでは、紫様もっと残酷になろうよ・・・・・・むしろ、ああしてまで受け入れる事が残酷なのだろうか?
それとも、幻想郷の取捨選択フィルターは八雲じゃないのかな?
アドバイスありがとうございます
タグ消しました
本当は奇をてらった話、考えてるんですけど全然おもいつかず…
紫様はなに考えてんでしょうね
IQ20違うと相手の事理解できないって聞いたことあります
感動できるフレーズだったので、暗記してしまいました。
ジャスラックから指摘を受ける可能性があります。
よほど大丈夫だとは思いますが。
こいし様は凄いお人ですからきっと役に立つことがあったりなかったりです
>25さん
すみません
この作品だと詩ありきで書いたもので…
今後はやらないように気をつけます
お燐の親友に対する気持ちの強さが痛々しくも健気な感じで良かったです