※このお話は「霧雨魔理沙の非常識な日常」シリーズ番外編です。
※ネタバレを含みますので、前作全てを読了後の閲覧を推奨致します。
※それではどうぞ、お楽しみ下さい。
――0・通ずる者あり/目指すところも朧気に――
湿った空気が窓に張り付き、健やかな陽光なんてものとは無縁にさせる。
年中薄暗いから必然的に真っ昼間でもランプが必要で、視界を補助するものがないと家の中を歩き回るのでさえ注意が必要。
それが、私こと霧雨魔理沙の暮らす魔法の森だ。
「薄暗いからな。うん。だから、きっと目の錯覚だ」
灰色の霧は暗澹としていて重く、視界を意識ごと塗りつぶすのは容易だ。だから、必死で、窓の外に見える、金と白いケープ、青いワンピースから目を逸らそうとする。
けれど、その身体に纏ったツッコミを入れずにいられない重装備が、寝起きの私の意識を割いて、見たくもないはずなのに目だけは彼女、そう、彼女の姿を追っていた。
「はぁ……………………なにやってるんだよ、アリス。いや、マジで」
ベッドから飛び降りて、さっさといつものエプロンドレスに着替える。朝食をゆっくり食べてから行こうかとも思ったけれど、万が一紫色のリボンをしたアリスだったら玄関が更地になる可能性があるから、さっさと帽子を被って箒を引っ掴んだ。
「おい、アリス!」
八卦炉を手に、扉を開け放ちながら声をかける。そうすると、アリスの全容がより鮮明に私の視界に映り込んだ。
薄闇でもなお輝きを失わない、金の髪。
人形然としたレースの装飾されたの服。
整った顔立ちの半分を覆い隠す暗視ゴーグル。
背中に背負った狸の置物。香霖堂仕様。おい、香霖、貸したろ。
「魔理沙! さぁ、準備は万端ね」
「主語と目的語を言え、アリス」
「あら? 素直にゴールデンアリスと呼んで良いのよ?」
「“金曜日”はフライデーだ」
そう、金曜日。
首元と、腰と、カチューシャ。そこに巻き付かれたリボンの色は、黄色。自分でやったのか、ラメ入り仕様になっていて目に痛い。
顔の半分が見えなくてもありありとわかるどや顔の少女、諸事情により九人に分裂した、私の、パートナーたち。あの事件を終えた今でも“金曜日”とカテゴライズしているド天然アリスが、かんらかんらと笑っていた。
「で? 今日は何の用事だ」
「狸よ」
ぴしっ、と背中の置物を指さすアリス。というか重くないのか、それは。
「狸?」
「そう、狸の葉っぱの裏側を調査するの」
「狸の葉っぱ? ……って、まさか」
言われて思い出すのは、春の異変。咲き誇る桜の中、大量発生した神霊。神霊に爆弾を仕込もうとする土曜日のアリスと神霊を巨大化させようとする金曜日のアリスを他のアリスたちに任せて赴いた、あの異変。
というか人間じゃなくなったのに異変解決に行って良かったのか。いや、心は人間だけど。ならいいのか……っていかんな、毒されてる。
それはともかく。
「なぁ、その狸って、まさか」
「ネタは割れてるの!」
アリスは、どこからか取り出した卵をぱかりと割る。中から鳩が出て来た。
「おい、今の」
「新参狸妖怪の頭には一つなぎの秘宝が隠されていて世界の海の幸が詰まってるんでしょ?」
「いや、あの、卵の中から現れるには質量保存の法則がだな」
「それを求めるのは、海の女の宿命なのよ! さぁ、行くわよ! 魔理沙」
「幻想郷に海は……じゃなくて、一つなぎの秘宝って、ああそのまえに」
「まずはゴリアテを吶喊ね。ふふ、わかってるじゃない」
「ツッコミが追いつかねぇんだよこのばか!」
アリスの頭を叩くと「へぶっ」と謎の悲鳴を上げて仰け反った。何故仰け反ったし。そこは俯いとけよ。
「行きたくないの?」
「当たり前――――いや、待て」
そりゃ、何に巻き込まれるかわからないんだから行きたくない。むしろ帰りたい。水曜日のアリスに紅茶を淹れて貰って木曜日のアリスのケーキを食べながら日曜日のアリスと魔法談義して過ごしたい。
けれどもし、そうやって一人で行かせたら、いったいどんな事態になるのか。試しに春の異変で出逢った彼女たちを元に、シミュレートしてみる。
例えば、キョンシーがぽこぽこ増えたりとか。
例えば、屠自古が成仏して転生したりとか。
例えば、神子の耳当てがクラッカーにすり替えられたりとか。
例えば、そこまでしておいて結局マミゾウは見つからなくて、アフターフォローも無しに忘れてしまう。なんて――そんなことになるんじゃないのか。
途端、胃壁がぎりりと軋んだ。
「行く」
「そう言うと思ってたわ!」
「行くから、その重装備は置いていけ!」
「えー」
渋るアリスから余計な装飾を全て外し、私の家に置いてある――しょっちゅう泊まるから替えがある――普通の黄色いリボンやカチューシャと交換して、漸く出発の準備が整った。
そういえば朝食……いや、時間が惜しい。どこかにふらりと消えられたらもうどうしようもないし。
「さて、マミゾウに会いたいんだよな?」
「そうそう、マミゾウにまみえる……ぷっ」
「そんなに面白くもないよな?!」
スタート前から妙な疲労感を覚えながら、腹を抱えて笑いだしたアリスを引っ張っていく。こうなったら私が先頭に立って、さっさと交渉して終わらせるのが良いだろう。ちょっと大きいけど、普通の葉っぱだろうし。
重くのしかかる瘴気の霧を抜けると、漸く、健やかな陽光に包まれた。けれど心持ちは健やかだなんて、言っていられない。
そう、帽子から胃薬を取り出しながら、私とアリスは幻想郷の空に舞い上がる。どこにいるのか詳しくは知らないが、だったら、知っているやつに聞けばいい。
箒の進路は、命蓮寺に。
羅針盤の針は狂いっぱなしだけど、まぁ――アリスと一緒なら、なんだかんだでなんとかなるだろう、なんて思いながら、私は苦笑しつつ胃薬をしまい込んだ。
霧雨魔理沙は倒れない ~狸の葉っぱの裏表イリュージョン~
――1・挂ぐる者あり/障害物は直ぐ隣――
眼下に黒い屋根が見えると、空中でぴたりと動きを止める。そういえば、前に来たときもこのアリスだった。宴会で他のアリスの存在も知っているはずだが、ここの住人にとって印象が強いのは間違いなくこのアリスだろう。
なにせ、命蓮寺に殴り込みに行ったのは、他ならぬ金曜日のアリス――と、私と小傘――なのだから。
「いいか、良い印象を覚えられていないのは確かなんだから、大人しくしておけ」
「わかったわ。まずはあの山彦の懐柔ね」
「聞け」
「へぶっ」
頭を叩き、それから逃げ出さないように手を握る。そうしたら、何故か頬を染めて握り返してきた。私が鈍いとかそういう甘ったるい云々ではないことは断言出来るというのが、なんか嫌だ。
絶対、思いもよらぬことを考えてる。むしろ、突発的に風邪を引いたのかも知れない。あり得るからこれ以上考えるのはやめよう。
「おーい、響子!」
「おはようございます!」
「はいはいおはよう」
声をかけながら、命蓮寺の門前に降り立つ。掃き掃除をする響子の向こう側、門の上に立つ一輪が嫌そうな顔をしたのが見えた。
「そちらのお姉さんは誰ですか!」
「おはよう、響子。私はアリス、アリス・マーガトロイドよ」
「おまえは黙って……あれ普通だ」
「おはようございます! 私は幽谷響子です!」
何か企んでるのか? いや、気紛れで普通に挨拶しただけか。というか、なんで挨拶一つにこんなに気を揉んでいるんだ私は。ちょっと、アリスのことを信用しなさ過ぎたのかも知れない。
こいつだって、成長してるんだ。私との約束を守って、大人しくしてくれているんだろう。……ったく、無駄に疑っちまったなぁ。
「ところで響子、命蓮寺に自爆スイッチがあるの、知ってる?」
「じ、自爆ですか!」
「そう。それを探して押してきて欲しいの」
「ば、爆発してしまいますよ?!」
「家族に頼まれたのよ……“最後に、命蓮寺の爆発が見たかった”って」
「そんな……そのご家族は……」
「ええ」
「待て待て待て待て待て! 私の感動を返せこのばか!」
アリスの頭をぺしりと叩く。痛そうにしているが、そんなに力は込めていない。というかむしろ、私の胃が痛い。
「なによ。私は土曜日の頼まれ事を完遂しようとしただけよ」
「あいつ……今度会ったら爆発物全部没収してやる」
「そうしたら爆発するわよ。マスターズが」
「二人とも?!」
私とアリスの様子にからかわれただけと気がついた――アリスは本気だったがそっちの方が厄介なので言わない――響子が、頬を膨らませる。
素直なのは良いことだが、それじゃあ、この幻想郷で生きていくのは厳しいだろう。話が通じにくいアリスがあと二人も居る的な意味で。
「もう、なんなんですかぁ」
「いや、すまんすまん。ぬえに会いたいんだが、居るか?」
「ぬえさんですか? 少々お待ち下さい」
響子はそう言うと、くるりと振り向いて大きく息を吸い込んだ。
「『ぬえさーん! 居たら返事してくださーいっ!!』」
山向こうにまで響く、大声。流石にこれには驚いたのか、アリスも少しだけ目を丸くしていた。
けれど、そんな大きな声なのに、命蓮寺から返事はない。ただ、音だけが反響して残り、響子は首を傾げる。命蓮寺に今、ぬえがいないのだろう。代わりに、中から心底嫌そうな顔のナズーリンが出て来た――のだが、アリスを視界に納めた途端踵を返し、それから少し時間をおいて戻ってくる。
「帰れ」
「一言目からそれか!」
気持ちは、わからんでもないが。
ナズーリンが手にしているのは、たぶん頭痛薬だろう。これを取りに戻ったのか、ナズーリン……。
「いったい何の用だ」
「久しぶりね、略してネズーリン」
「なにを略したっ」
「寝ずの妖怪」
「ナズーリンは?! うんぐ、こほん」
ナズーリンはペースに引き込まれていることに気がついたのか、何故か私を睨みながら頭痛薬を飲んだ。水無しでも行けるタイプか。私の胃薬と同じだな。
「あー、今日は聖輦船にちょっかいをかけに来た訳じゃないんだ。ぬえは居るか?」
「居ない。帰れ」
「魔理沙、怪しいわ。疚しいことがないのなら、追い返そうとはしないはず」
「いやアリス、たぶんおまえの方がずっと疚しい」
ついにスペルカードを手にしたアリスに、ナズーリンは眉尻を下げる。なんというか、非常に申し訳ない。
「……………………居ないのだから、仕方がないだろう」
「あ、ああ、そうだよな! それで、どこに居るのかわかるか?!」
「ぬえを探して、どうする気だ」
「間接的にマミゾウを探しているんだよ」
アリスとナズーリンの間に割って入ると、漸く話が進み始める。というか、アリスを挟むと何も進展がない。
なのに辿り漬く答えは一緒とか、もう、おまえ。
「ここ最近、マミゾウ共々外に出ている」
「そうなのか? どこに行っているのかとか、わかるか?」
「私がみすみす、仲間を売ると思うのか?」
一番酷い目にあってるのは、ナズーリンだ。だからだろうか、ナズーリンは険しい目つきでアリスを睨んでいる。
まぁ、もし万が一ぬえの胃壁が破壊されたらと思うと気が気でないのだろう。そう思うと、あんまり強くは聞けない。アリスもそれに対してとくに追求しようとするそぶりもないし、他から話を聞きに言った方が良いかもしれない。
「外に出ているのなら、響子が知らないはずがない。でも外に出ているということは、命蓮寺の外ということ」
「おい、アリス?」
「ぬえとマミゾウは霊廟ね。ナズーリン」
「っ?!」
ナズーリンの目が瞠られる。確かに、命蓮寺の裏手の墓から霊廟に行けば、“命蓮寺の中から外へ出た”ことになる――けど。
突飛な思考。理解出来ない到達点から、答えを取りに行く姿。こういう事があるから、金曜日のアリスは侮れないんだ。
「あー、ナズーリン」
「なんだ。むざむざ読まれた私を笑うか?」
く、暗い。
目尻に溜まった涙を拭って、ナズーリンは俯いてしまう。「何が知将だ、ははっ」とか笑う肩には、哀愁が漂っている。
「なにも、ぬえを退治しようってんじゃないんだ」
「ふん、しかしひっかき回しはするのだろう? 胃を」
「は、はは、いやまぁ――とんでもないことになる前に、私が止める。それじゃあダメか?」
「……ぬ」
笑って、首を傾げる。そうしたらナズーリンは幾ばくかの逡巡の後に、ゆっくりと、頷いてくれた。信用、してくれたということだろうか。だったら、頑張らないと。
「どうせもう、私では止められんだろう。だったら一縷の希望とはいえ、縋らせて貰う」
「ははっ、そうしてくれ」
素直じゃない口ぶりは、火曜日のアリスを思わせる。刺々しい口調の中にほんの少し温かさが紛れている所なんて、そっくりだ。
なにやら思案げな表情のアリスの手を再び握ると、ナズーリンに手を振って別れる。様子を見ていた一輪も、門を潜らせて――嫌そうに、ではあるけれど――くれた。
さっさとマミゾウに葉っぱを見せて貰えれば、アリスも満足することだろう。そうしたら、余計なことを思いつく前に連れて帰ればいい。
「……霊廟、冷房、ぼう、欲望?」
「さっきから何をブツブツ言ってたんだ? アリス」
「何でもないわ、さ、行きましょう」
「まぁ、良いけど」
深く聞くとまた、胃が痛くなりそうだし。
そう、私とアリスは、命蓮寺の裏手へ足を進めた。
――2・支るる者あり/分かれ道は複雑怪奇な単純明快――
春には神霊で溢れかえっていた墓も、今は静かなものだ。燦々と降り注ぐ陽光が灰色の墓石に反射して、心なしか清涼感すら覚える。
アリスは仏教の墓石をあまり見たことがなかったのか、卒塔婆やお供え物を興味深げに観察し、時折何かメモに取っていた。ああして好奇心を満たしていく姿は、他のアリス達ともよく似ている。
「なるほど、それが貴女の戒名になるのね」
「戒名ー? 違うぞ。これは御札なのだー」
「剥がしてみても良いかしら?」
「だめだ! これを剥がしたら、私は動けなくなってしまうから」
「そうなの? でも、旅館に行ったら御札の家捜しはするでしょう? 剥がす為に」
……って、なんか増えてる。
どこから出て来たのか、いつの間にか現れた芳香がアリスと談笑していた。というか、アリスが鷹のように鋭い目で御札を見ていることにも気がつかず、芳香が会話に引き込まれそうになっていた。
割って入るのも面倒だが、芳香が丸め込まれて御札を剥がされて青娥に怒られでもしたらマミゾウたちの情報が集められないし……はぁ、仕方ないか。
「よう、芳香!」
「おお、いつぞやの人間! いつぞやっていつだ?」
「春だ。まぁ、それはいいや。寺の妖怪がここに来なかったか?」
「寺!? 貴様まさか、神聖なる霊廟を邪教で支配する気かーっ」
ううぬ、面倒くさい。
近くに青娥でも居れば上手く話を纏めてくれるのだろうが、生憎、この周囲に青娥の気配は無い。青娥無しでここを切り抜けるには、やっぱり弾幕ごっこしかないか。
「あー、私たちはだな」
「そうよ。私たちは寺の精鋭“MYOU”連合の一員よ」
「おい待てこらなんのつもりだ?!」
「ふふふふふ、やはり私の目に狂いはなかったか!」
アリスがあまりにも堂々と言い放つものだから、そのノリに会わせて芳香もテンションを上げる。高笑いをし始めた二人から離れたくてしょうがないのだが、このまま放っておけば、大騒ぎで済まないかも知れない。
隠密行動をするつもりはないが、ぬえやマミゾウの手がかりを得られなくなるのは困る。
「いい加減に――」
「さぁ、狸とぬえを出しなさい! そうすれば見逃してあげるわ」
「――しろ!」
「あだっ」
アリスの額にデコピン一発。魔力を込めたからか、その場に蹲る。その光景に、芳香は上がったテンションを霧散させてぽかんと佇んでいた。
「冗談は置いといて」
「冗談という空気じゃなかった気が……」
「冗談は、置い、とい、て」
いつでもデコピンできます、と指を弾いて鳴らしていたら、芳香は快く頷いてくれた。
いつまで経っても話を進めようとしないから、手荒な手段に出ざるを得なくなるんだ。
「狸の妖怪と、左右非対称な羽を持つ妖怪だ。心当たりはないか? 芳香」
「うーん――」
芳香が一生懸命思い出そうと頭を捻っている、その最中。感じた気配に芳香の向こう側を覗き込むと、青い髪と羽衣が見えた。
アリスとの問答がちょうど良い時間稼ぎになったのか、それとも騒ぎを聞きつけてきただけなのか、なんにしても良いタイミングだ。
「その妖怪なら、霊廟に入っていきましたよ」
「――おお、ご主人様!」
芳香の隣に緩やかに降り立った女性、青娥が軽く会釈をする。答えるように片手を上げると、たおやかに笑った。落ち着いてるけどこいつ、死体フェチなんだよなぁ。
人様の性癖にどうこう言えるほど、真っ当な友達ばかりじゃないけれど。
「ご案内しましょうか?」
「道はわかるから大丈夫だけど……入っても、良いのか?」
「本当は良くないけれど……」
青娥はそう、私の隣に視線を流す。未だ蹲っているアリス。青娥の視線を受けて漸く立ち上がるものの、まだ少しふらついていた。やり過ぎたか?
「私は不滅よ。お麩が食べたいわ」
「まずい、やり過ぎて脳の回路が……って、いつもどおりか」
「ノリツッコミね。嫌いじゃないわ」
妙なテンションのアリスに肩を貸し、口元に手を当てて笑う青娥を見る。
「ふふ、ごめんなさい。ただ、その娘ひとりに知らずの内に忍び込まれたら、大変なことになりそうだから、ね?」
「あー、そうだな。恩に着るぜ」
「なら、死体になってみる?」
「遠慮しておくぜ」
この、とにかく人を死体にしようとする癖さえなければなぁ……。
いや、それは月曜日“落ち着け”って言うようなもんか。うん、無理だな。
一人で頷いて納得する私に、青娥が不思議そうに目を向ける。いかんいかん、私まで変人だと思われたら、気が変わって通してくれなくなるかも知れない。そうなったら、今度こそ強行突破しか無くなっちまう。
「それじゃ、そろそろ行くぜ」
「ええ、お気を付けて」
緩く手を振る青娥から、離れて行く。霊廟の中、敵地に入ってまで何をしているのか知らないけれど、そんなに複雑な構造でもないから迷うことはないだろう。
にしても、青娥のヤツ、何に対して“気を付けて”なんだ?
霊廟に危険がある訳じゃあるまいし――いや、まさか、な。
――3・狭き者あり/発展途上の心情一本釣り――
「酷い目に遭ったわ」
「自業自得だろ」
復活したアリスが、赤くなった額を擦りながらそう呟く。ああでもしないと大人しくならなかったんだから、仕方が無いじゃないか。
そう眼を細めて見てやると、アリスは“ぷひー、ぷひー”と吹けもしない口笛と共に目を逸らした。何のマネだ、それは。
「それにしても、静かなところね」
「ああ、そうだな」
前に来たときは、異変の、神霊に満ち溢れていたときだ。あの時は随分賑やかな場所だと思ったものだが、異変が解決してみるとなんとも静寂な空気を醸し出す、落ち着いた空間になっていた。
十の欲望に塗れた低俗霊だったと聞くし、やっぱり、宴会好きの騒がしい霊ばかりだったのだろうか。こう、気が合いそうな。
「神霊の姿があった方が、好みだな」
「騒がしい場所だったのね。隠れる前に、来ておけば良かったわ」
「連れてこなくて良かっ――うん? 隠れる?」
アリスの言葉に引っかかるものを覚えて、足を止める。こいつの思考回路は突飛で理解しにくいところが多々あるが、それでも辿り漬いた答えは間違っていないということが、時々ある。
「ええ、隠れている。でないと、幽霊くらい居るはずよ。お化け屋敷にはつきものね」
「あー、うん。ここはお化け屋敷ではないが、まぁ、墓場近くなのに幽霊の一匹もいないのも変か」
よく見れば、妖精の一人も居ない。どんなに遮断しようと、悪戯好きで手口が巧妙な妖精の一人くらい、居ても良いのに。
ただの気のせいだと割り切ってしまうのは簡単だけれど、ううぬ、どうも気になる。そして、気になるものを気にしないでおくのは、なんというか私“らしく”ない。
「よし! ちょっと、待ってくれ」
「ええ、いいわ」
意識を、深く沈ませる。
周囲の音を遮断。
薄く開いた視界には、何も映さず。
空気も気配も触覚から遠いところへ置き。
ただ、求める霊力と己の魂だけを――繋げた。
「――――見つけた」
「流石魔理沙ね。貴女なら忍者だって夢じゃないわ」
「夢だ夢。そんなもの、さっさと忘れちまえ」
一気に、五感が自分に戻ってくる。嬉しそうにはしゃぐアリスの姿がそこにあって、それから、空気が冷たくて、頬から流れ落ちた汗がエプロンに染み込むのがわかった。
唇を軽く舐めてみると、汗が伝ったのかほんの少しだけ塩辛い。これで、味覚も元どおりだ。六感を働かせるのに五感が鈍くなりがちなのは、追々直していくしかないだろうなぁ。弾幕ごっこ中の緊張感の中なら、そんなこともないのに。
「魔理沙? どうしたの? スフィンクスに睨まれたような顔をして」
不思議そうに覗き込んでくるアリスに、苦笑を返す。今考えても、仕方のないことだった。
「どんな顔だ」
「キツネに抓まれたような顔?」
「スフィンクスの胴体は猫だ」
「じゃあ、頭はタチね」
……いや、まぁ、いいか。相手にしてたら胃が持たない。
とにかく、霊廟に隠された幽霊の気配をなんとか見つけることが出来た。青娥の私を送り出す時の台詞といい、いなくなったぬえたちといいどうにもきな臭いが、今更退けない。
ここまで来て素直に引き返してくれるアリスじゃ、ないからなぁ。
「とりあえず、行くぞ」
「ええ、はい」
差し出された手。白く細いそれを、握る。なんというか、好奇心旺盛な子供がどこかへ行ってしまわないように手を繋ぐ父親のような、そんな気分だ。じゃあ、母親は誰だろう。やっぱり、死の、黒い方のアリスだろうか。
憮然とした顔立ちで仕方が無さそうに、それでも優しさを込めて接するであろう彼女の姿を思い浮かべると、なんだか少し、心が弾んだ。
「なにをニヤニヤしているの? 月曜日のあの子みたいよ、魔理沙」
「――――……それは、やめてくれ」
……そんなに、不気味だったのだろうか。
いやいや、アイツだって可愛いところが――いや、やめよう。これ以上は危険な気がする。
――4・険なる者あり/回避は華麗に摩可不思議――
――夢殿大祀廟。
八角形から成る巨大な塔。異変の時、ここの内部は星空と見紛うほどの神霊に満ちていた。けれど今は、神霊どころか幽霊や妖精の気配すらない。
感じるのは、むしろ下。大祀廟の地下から、濃密な気配が漂ってくる。ぬえとマミゾウがわざわざ入って来たことを考えると、やっぱりここが一番怪しい。
「入り口はわかるの?」
「塔の中に、階段くらいあるだろ」
「それもそうね」
布都や屠自古の姿が見えないことを不審に思いながらも、塔の中へ足を進める。途中、妖精に出くわすこともなく、アリスが忙しないのを抜けば非常に楽な道のりだ。
階段も、隠し階段だったらどうしようかと思っていたが、直ぐに見つけられた。こうもスムーズだと、ぶり返しが怖いが……いや、詮無きことだな。
「さっさと見つけて、さっさと帰る――」
「そこまでだ!」
「――って、訳にもいかないか」
声に振り返って見ると、そこには、肩で息をする布都の姿があった。よほど慌ててきたのか、深呼吸をしても息が整わない。何で走ってきたんだよ。飛べよ。
「あのような幻術で私や蘇我はまだしも太子様まで悩ますとは言語道断!」
幻術、ね。
もう、何かに巻き込まれているのは確定的だろう。マミゾウとぬえ、二人揃えば聖徳王ですら混乱させられるということか。その上で布都まで相手にするのは、少し面倒だな。
「その幻術の使い手を懲らしめに来たのよ」
「なんと! そうであったか、見慣れぬ異国の人よ!」
「そう、そして私たちは貴女を待っていたの! 幻術に耐性を持つ貴女を!」
「な、なんと……! 我としたことが、幻術に追いかけ回されて辿り漬いた先で混乱していたようだ。まさか己に助力を請うものだったとはッ」
そうかなるほど追いかけ回されて――って、偶然かよ。
アリスの言葉に感動し、布都は目元を抑えて天を仰ぐ。一歩二歩と後退し、溜めてから涙を拭うオーバーリアクション。聖徳王が生きた時代とやらはこんなんばっかだったのだろうか。
というか、千年単位で生きてるヤツはみんな、どこか変だと思う。そういえばぬえもそうか。
「さぁ、貴女の役目、わかるわよね?」
「ああ、もちろんであるとも! この一命に代えても、太子様は守り通す!」
「そう――行ってらっしゃい。今日から貴女も立派な忍者よ」
「! かたじけない!!」
ドップラー効果を残して走り去る布都。なにしに来たんだ、あいつ……って、あ、転んだ。
布都を乗せた犯人、アリスを横目で見ると、彼女は澄ました顔で佇んでいた。冷静に考えているのかと思えば、その目は焦点が合っていない。じゃあボケッとしているのかと問われれば、それもなんか違う。きっと、また妙なことを考えているのだろう。
「さて、厄介なのは追い払ったことだし」
「偶然だな」
「細かいことは良いのよ。結果が全てだわ」
「おまえはもう少し過程を考えた方が良い」
結果が出ていればいいって訳じゃない。その途中の過程を記録に残せないんじゃ、どんなに良い魔法が出来ても繰り返し使うことなんか出来やしない。たまには突飛な思考も、必要なんだろうけれど。
そう、額を抑えて首を振る。胃痛がするという程ではないが、軽く頭痛がした。ナズーリン、おまえのことは忘れない。
呆れてアリスを見ると、珍しいことに、妙ちきりんな顔ではなくてきょとんと目を丸くし、首を傾げていた。
「考えてるわよ。如何に魔理沙と楽しく遊べるかって」
「へっ?」
「ふふ、さて、地下室へ行きましょう」
「お、おい」
「どんな秘密が待ち受けているのか楽しみだわ」
「そ、のだ、な」
戸惑う私の手を引くアリスが、振り向いて、それから綺麗に笑う。
「ね、魔理沙」
「なん、だよ」
「楽しいわね」
「……ああ」
木曜日みたいに、甘い言葉じゃない。ただ、すとんと胸に落ちる楽しげな声。細められた瞳と緩やかに弧を描く唇、喜色に満ちた表情。
繋がっている手がじんわりと温かくなった気がして、ほんの少しだけ、強く握り返す。そうしたらまた、アリスが楽しげに笑った。友達と遊ぶのが楽しくて仕方がない、子供みたいに。
地下室に降りる階段は、薄暗い。
そのせいで足下が少し危ういのだが……アリスと歩くなら、なんだかそれくらいがちょうど良いような、そんな気がした。
――5・遠き者あり/一見不変の大決戦――
大きな書庫か、もしくは物置か。地下室は、ただ一部屋、巨大な空間だった。地下室と地上の“空気”が遮断されていて、地下室の様子はほとんど感じる取ることが出来なかった。けれどこうして降り立ってみると、その存在がありありとわかる。
いや、わかる、と大げさに言う必要は無い。なにせ――探す必要すらないのだから。
「これが、“神霊の星空”かしら?」
そうだ。
あの日、結局霊夢がぶっとばして、それに連続して私が倒した聖徳王。その時の光景は確かに、こんな星空だった。
書物やツボが至る所に転がっているせいで、いまいちありがたみってやつがないのだが、まぁそれはいいか。
「ああ。でもなんでこんなに――」
「魔理沙、隠れて」
「――っ、ああ」
アリスの声に、私たちは大きなツボの裏側に隠れる。すると、階段から二つの影が下りてきた。片方は、赤と青の左右非対称な羽を持つ黒髪の妖怪。もう片方は、茶色の髪と大きな葉っぱ、腰から下げた瓢箪と丸眼鏡が特徴的な妖怪。
探し求めていた二人、二ッ岩マミゾウと封獣ぬえが、肩を並べて地下室の中央へと進んでいく。
「アリス、あれがマミゾウだ」
見たことがないであろうアリスに、小さく告げる。が、私の背中側にいるはずの彼女から、いっこうに返事が来ない。
「おい、アリ――ス?」
怪訝に思って振り向くと、何故か、そこにアリスの姿は無かった。
徐々に吹き出る汗、ぎしぎしと鳴る胃壁、霞む目元に痛む頭。おい、アリスのやつ、どこへ言った?
「これだけ集まれば十分ね!」
「ああ、そうじゃのう」
そうしている間に、マミゾウとぬえがなにやら話し出す。
どこかへ行ってしまったアリスのことは非常に気になるが、今は、こちらに集中しておこう。いや、現実逃避じゃなくてだな。
「この欲望のパワーを利用すれば、目的は達成されるわ!」
「目的? どんな?」
「なんじゃぬえ、忘れたのか? 幻術と正体不明の力で幻想郷を混、乱、に……?」
胸を張るぬえ。
頷くアリス。
ぽかんと口を開けるマミゾウ。
「……………………うんんん?」
あれ?
おかしい、すんごく見たことある金髪が、ぬえとマミゾウの会話に普通に入って行っている気がする。ははは、そんなばかな。だって、さっきまで私と一緒に居たし。
だから、あれはきっと幻だ。またキノコ焼酎にでもやられたかな? 日曜日のアリスと永遠亭にでも行って治して貰うかついでに妹紅と輝夜の様子も見て酒でも飲んで弾幕ごっこでも――
「おおおお、おまえは?!」
「久しいわね、ぬえゾウ」
「誰だよ!?」
「アリスよ、忘れたの?」
「いやそっちじゃなくて!」
「マミゾウ、貴女、友達に忘れられてるわよ?」
「そっちでもなくて!!」
――ああ、アリスだ。
言葉無くして佇むマミゾウと、血管を浮かせてツッコミを入れているのに腰が退けているぬえ。血の気の引いた顔は白く、今にも倒れてしまいそうだ。
一方、アリスは本当に自然体だ。澄ました顔で、当たり前のようにぬえとマミゾウに喋りかけている。というかおまえ、マミゾウとは初対面だろ。
「おぬし、何者じゃ?」
「魔法少女よ」
「何故、儂の幻術が効かん。どのように抗っている!」
さっきから何も喋らないかと思えば、アリスに何かしようとしていたのか。でも、アリスは六人プラス二人の情報を共有するハイスペック魔法使い。対策くらいしてきたのだろう。
こういう用意周到なところは、私も見習わなくっちゃな。
「幻術? そういえばお花畑と大海原が誘い受けアバンチュールしている気がするけど問題ないわ」
「って、かかってんのかよ! ――あ」
我慢出来ずに飛び出しツッコミを入れた私に、視線が集まる。途端、マミゾウとぬえが大きく飛び退いた。
アリスは、そんな二人に目もくれずに私の方に歩み寄り、隣に並ぶ。そして、ぬえに向かって人差し指を突きつける。
「封獣ぬえ! 貴女の企みは見抜いたわ!」
「どこからツッコミ入れれば良いんだ? 私は」
「さぁ、大人しくなさい! 今なら、ゴリアテ人形のパーツとして生かしてあげるわ!」
「うん、それ、死んでると思うぜ?」
こんな脳内お花畑なやつに暴かれたとなれば、ぬえたちもやりきれないだろう。そう思って見てみれば、本当にやりきれないといった風に、目元を拭っていた。
なんだろう、この罪悪感。目的とやらを達成後に普通に叩きつぶして、大異変として収束を迎えたかったと、憂いの込められた瞳が告げている気がしてならない。
「まぁ、いいわ。今更気がついても遅いのよ!」
「ふふふ、そう言うことじゃ。欲望と、幻惑と、正体不明の種は既にこの葉に込められた!」
そう言って、マミゾウが自分の頭に手を乗せる。
――何も乗っていない、頭に。
「あれ?」
「ちょ、ちょっとマミゾウ、まさか」
「ななな、失くすようなものではないっ」
肩の力を抜いて、ほんの僅かに息を吐く。どうなることかと思ったが、なにも起こせないのならちょうど良い。
「アリス、今の内にいったん退いて対策を立てるぞ」
「ええ、わかったわ。それにしても――」
アリスに手を差し伸べて。
彼女が持っているものに目を遣って。
私は思わず、身体を強ばらせる。
「――裏側、なんにもないのね。つまらないわ」
「あ、あの、アリス……さん?」
「さて、出るわよ。対策立てるんでしょう? まったく、何をしてるの?」
「それはこっちの台詞だ!!」
アリスが掴んでいるのは、どうみても葉っぱ。普通のサイズの葉っぱよりも遙かに大きいそれは、マミゾウが常日頃から頭のてっぺんに乗せていたものだ。
いつの間に、なんて考えるまでもない。虚を突いて忍び寄り、ごく自然に会話に混ざり、何気なく持ってきたのだろう。私も手癖が悪いといわれがちだが、こいつと比べれば子供の悪戯程度なんじゃないのか。
「おまえたち、いつの間に?!」
「先程から妙じゃ。よもや、キツネの類か?」
「キツツキの類よ」
「適当なこと言うな! とにかく、さっさと逃げるぞ!」
相手の出方を封じられたということだけは、間違いない。だったらスタコラサッサだぜ!
「逃げる気か! 追うよ、マミゾウ!」
「わかっている。舐められたまま、むざむざ逃がしはせん!!」
箒に跨り、アリスを後ろに乗せて、夢殿大祀廟を飛び抜ける。その後ろをぬえとマミゾウが追いかけるが、私に追いつけるのは射命丸くらいなものだ。
この程度、撒いてみせる!
「くっ……ならば! 変化【妖怪山の神速パパラッチ】!」
「げっ」
狸の耳と尻尾を生やした射命丸が、ぬえの手を引いて飛んでくる。そういえば、霊夢に変化していたこともあったな……。
一度は大きく開いた距離も、どんどん詰められていく。洞穴を抜け、封印の門を潜り、墓場の上空に出た頃には、マミゾウとぬえは私たちの直ぐ後ろまで迫っていた。このまま背後から襲われるくらいだったら、迎え撃つしかない!
「ちっ」
「ふふん、もう逃げられんぞ!」
「ついでに、前の時の鬱憤も晴らしてやる!」
息一つ切らしていないマミゾウと、怒りで肩を震わせるぬえ。心なしか、ぬえの周囲の空間が歪んでいるようにさえ見える。幻術……じゃなくて錯覚か。目が怖い。
「さぁ、変化の葉を返してもらうぞ!」
「今度こそ、妖怪の地位を確立させる為にも、幻想郷には妖怪の異変が必要なんだ!」
「堂々と異変宣言されて返したら、私が霊夢に退治されちまうぜ」
帽子を指で弾き、八卦炉を掌の中で弄ぶ。これで“はいどうぞ”と返して、異変が起る様を指をくわえて見ているなんて、きっと私には出来ない。
私を、霧雨魔理沙という“人間”を、掌の上で踊らせられると思うなよ。一筋縄で、どうにかされてやるもんか!
ナズーリンとの約束もあるし、ちょうど良い。この際だ、ここできっちり止めてやる。
「アリス、応戦だ。行けるか?」
「ええ、準備は万全よ」
アリスが箒から降りて浮き上がり、私の隣で静止する。手に持つスペルカードは、金曜日のアリス・マーガトロイドの象徴的な人形が描かれていた。
「猛り狂いなさい! 装甲【フルアーマーゴリアテカスタム】!」
三階建ての建物程度の体躯を持つ、可憐なビスクドール。そのドレスのいたる所に分厚い装甲が嵌められていて、顔面には、朝方にアリスが嵌めていた暗視ゴーグルと同型のものが装着されていた。
背負うのは、巨大な剣。剣の腹の部分には可愛らしく“ざんかんトゥ”などと書かれているが、振り抜いたら最後、要石ですら叩ききりかねない無骨なフォルムの両刃剣だ。
その、巨大ロボと見紛うほどの人形にマミゾウは目を瞠り、ぬえはぷるぷる震えていた。いや、ぬえ、おまえ直接ゴリアテと戦ったこと無いだろ。人面岩に撃墜されたから。
『■■■■■ッ!!!』
相変わらずの、趣味を疑う野太い声。しかし、頼りになることは変わらない。
私はゴリアテに前線を任せると、一歩引いて手を突き出す。“魔法使い”になることで跳ね上がった魔力は、以前よりも強い魔法の恩恵を私にもたらせてくれた。そう、例えば、あまり遠距離の相手には役に立ってくれなかった魔法を、改良したり。
「“グリーンスプレッド”!」
掌から拡散した緑の光が、ゴリアテの向こう側で収束する。
「ぬわ?!」
「いだっ!!」
結果を視覚する事はできずとも、音でだいたいわかる。収束した光が星形に弾け、マミゾウとぬえの動きを拘束したのだろう。射程距離ばかり上げて威力はそんなに高くないが、私一人じゃないのなら――これで、十分だ。
「ゴリアテ! 今夜は狸鍋よ!」
『■! ■■、■■■ッ!!』
心なしか嬉しそうな咆吼をあげ、ゴリアテが突撃。諸共斬り飛ばそうとでも言うのか、担いでいた大剣を抜き放ち横薙ぎに振るう。弾幕ごっこってなんだっけ……という言葉が脳裏を過ぎったが、気のせいと言うことにしよう。
ゴウッ、と風を切りながら薙がれた無骨な刃は、マミゾウに吸い込まれていき――叩き斬った。
「おおおお、おい! アリス!」
「狼狽えないで、偽物よ。頭に葉っぱがないもの」
「それはおまえが持ってるんだろうが!」
どう見ても、一刀両断。胴と足が泣き別れしていたように見えたけど……いや、まだ生きているかも――って、あれ?
「割れた、狸の置物?」
「油断大敵じゃ!」
「ッ?!」
空に浮かぶ太陽が歪み、マミゾウになって振ってくる。いや、太陽がおかしくなったんじゃない。太陽の位置に重なるように、隠れていたのか!
「魔理沙! ッゴリアテ……ぁ」
「この人形はおまえたちを、そして私たちを認識出来ない! 正体不明だからね!」
でたらめに剣を振り回すゴリアテ人形。アリスからある程度独立させた半自立駆動の人形――“アリス・マーガトロイド”人形を生み出す為の一歩と言えるその回路が、逆に、私たちを追い詰める。
「自分の弾幕、味わってみよ! 変化【阿呆魔法使いの偽光線】!」
「誰が阿呆だ!」
狸の耳と尻尾を生やした私の姿に変わったマミゾウが、ミニ八卦炉に魔力を込める。上空からの一撃、外すことのない、安全地帯からの一撃必殺――ドラゴンメテオ。
自分の弾幕だからこそ、その威力は良く知っている。
「くそっ、恋符【マスター「遅いッ!!」……ッ間に、合わない!?」
集った光が五色に煌めき、ものみな灼きつくさんと龍が啼く。その顎から抜け出すには、あまりにも、遅すぎた。
諦めはしない、なんて、そんな風に思っていても、極光は目前まで迫っていて――
「――百面相【兵馬俑レギオン】――」
「ッ」
光が目を灼く寸前、多種多様な顔立ちの兵馬俑が私を掴んで、ドラゴンメテオの軌道から外す。すると、極光は墓場に着弾し、数多くの墓石をなぎ倒した。白蓮に締められるぞ……ぬえ。
「すまん、アリス。助かった!」
「ええ、でも」
「どうした?」
珍しく瞳を鋭くさせたアリス。その視線を追うと、そこには、元に戻ったマミゾウと、嬉しそうな彼女とは対照的に、墓場の惨状を見て顔を青ざめさせているぬえの姿が見えた。
まぁ、ここまでやって怒られない、ということもないだろう。同情はしないが。
「落ち込むな、ぬえよ。既に変化の葉は儂の手にある!」
「あ、いつの間に……ッ」
それで、アリスのやつ、あんな顔をしていたのか。
「ふはははははっ! これで儂らの勝ちじゃ!」
「あ、あは、あははは! こうなったら、やりきってやる!」
マミゾウは高笑いをすると、自棄になって一緒に笑いだしたぬえの手を取る。掲げる葉っぱの色は徐々に変化していき、緑から青へ、青から赤へ、赤から緑へ、緑から黄金へ。
明滅を繰り返した果てに、ついに、複数の色がマーブルになった、妙ちきりんな葉っぱへと変化した。
「行くぞ、ぬえ!」
「おうよ!」
『合体鵺狢――正体不明【伝統踏襲の大妖怪】!!』
葉っぱがマミゾウとぬえの身体を包み込み、やがて巨大なナニかを象り始める。目も眩むほどの極光に思わず手をかざし、白く染まる空間の中で、私は寄り添うアリスの体温を感じた。
どれほどの時間が経ったか。いや、どれほども経っていないのかも知れない。ただ強い力を持つ光が膨れて、膨れて、膨れて膨れて膨れて膨れて――――爆ぜる。
――ドォオオンッ!!
「くっ」
「捕まりなさい、魔理沙!」
アリスの手を掴み、爆風で体勢を崩しそうな所をなんとか持たせる。音と風、それから光だけだったおかげか、不調は感じない。
けれど、掴んだアリスの手が震えていることに気がついて、思わずマミゾウとぬえが居たところへ顔を向けた。
「おいおい、なんだよ、あれ」
特徴を挙げるのなら、“マミゾウが変化したぬえ”というのが近いだろう。黒のショート、深い血色の目、狸の耳、頭に乗ったどどめ色の葉っぱ。ただ、最大の特徴を見れば、ぬえと違うことは一目瞭然。なにせ――
「生首まんじゅう? グロテスクと言うより、うぜぇ」
「ゆっくりしていそうな顔ね。あぁ――格好いいわ」
「……………………アリスの感性は、置いておくとして、だ」
――そう、顔だけなのだ。丸々とした顔、垂れ下がった目、にやついた口元。頭の後ろからぬえの特徴的な羽と、狸の尻尾が生えている。間違いなくぬえとマミゾウが合体した姿なのだろうけれど、いったい、胴体はどこへやったのか。
ああ、くそ、なんだか急にやる気がなくなっていた。帰って死のアリスと夢のアリスと三人で紙飛行機を作って魔界に飛び立ちたい……って、思考の方向性が金曜日のアリスに当てられてるな。まずいまずい。
うっとりとした表情で合体妖怪を見るアリスの肩をつついて、現実に戻す。そのままトリップされてたら、流石に困る。
『さぁ、この正体不明の力で、幻想郷を大混乱に陥れてやるー。てやー』
「もう少しやる気出せよ……って、なんだこれ?!」
合体妖怪の口から出て来た沢山のUFOが砕けた墓石や卒塔婆に当たると、その形を間抜け面の犬や猫、鳥や蛙に変化させていく。変化したそれは好き勝手に動き回り、やがて、命蓮寺の方でナズーリンっぽい妖怪の悲鳴が聞こえだした。
なんというか……ナズーリンも苦労性だな。今度、胃薬を分けてやろう。
「って、んなこと考えてる場合じゃない!」
どどめ色のUFOを、マジックミサイルで迎撃する。避け損ねても、アリスがスペクトルミステリーで叩き落としてくれるから、直ぐにどうこうなる訳じゃない。
けれどこのまま避け続けても、勝ち目が湧いてくる訳じゃない。
こうなったらもう、立派な異変だ。
「ここで食い止めるぞ、アリス!」
「ふふ、その言葉を待っていたわ! 三千世界に私と魔理沙の名を轟かせるのね!」
「なんの話だ?! いや、良い。とにかくやるぞッ!」
合体妖怪が吐き出すUFOの群れを避けて、上空へと昇る。眼下に見下ろすのは、どどめ色の葉っぱ。“伝統踏襲”の大妖怪を名乗るのなら、弱点はあそこしかない!
「アリス! 葉っぱを狙え!」
「わかったわ! 人面石像【イースターのモアイ像】!」
アリスの目前に召喚された巨大な人面岩が、合体妖怪に向かって真っ直ぐ落ちていく
『なんども同じ手は通じないよ! 正体不明【寝台下の怪人】!』
けれどそれも、合体妖怪の下から出て来た巨大な包丁が、一刀両断に切り伏せてしまう。そういえば、前にこのアリスと来たとき、ぬえを沈めたのはこの人面岩だった。
「なら――恋心【ダブルゥ……スパァァァクゥゥッ】!!」
八卦炉に込められた二重の魔力が、うねりながら合体妖怪に当たる。けれど合体妖怪は怯むことなく、私の魔砲を明後日の方向へはじき飛ばしてしまった。
なんつー弾力性だ。つつけば破れそうなのに、その実、思わぬ力強さを秘めている。どれだけ魔力を上乗せすれば倒せるかわからないから、迂闊な行動に出られない。バカスカ撃って疲弊するのはごめんだ。
『ふふん、効かないわー。おまえたちも、ここで終わりさ!』
今一、感情の込められていない声が、どうにも癇に障る。というかそのにやついた顔をどうにかしろ言いたい。切実に。
「魔理沙、そいつの弱点は物理攻撃よ!」
「! そうか、だから人面岩は弾かず、叩き斬ったのか!」
「え? おまんじゅうは包丁で切るのがセオリーでしょ?」
「推理したんじゃねぇのかよッ?!」
まともに相手をすれば疲れるのはわかりきってるってのに……くそぅ。
けれど、目に見えて身体を震わせた合体妖怪を見れば、それが正解だったと言うことはわかる。なんにしてもこれで、突破口は開けるはずだ!
「アリス、物理攻撃、なんかあるか?」
「ええ、こんなこともあろうかと!」
アリスがどこからともなく赤いスイッチを取り出すと、合体妖怪が心なしか険しい顔を作ったように見えた。いや、気のせいかも知れないけど。なにせ、間抜け面でわかりづらいのだ。
『させないよ! おまえたちは、ここで終わりだ!』
「悪いが、私だって少しくらいなら物理攻撃、できるんだぜ? 魔廃――」
『!? 正体不明【真夜中の首無しライダー】』
合体妖怪の口から、生首まんじゅうが運転する牛車が吐き出される。そのまま突っ込んでくるそれをグレイズし、すれ違い際にマジックミサイルで迎撃して、私は、開いた口に瓶を投げ込んだ。
失敗キノコ魔法のなれの果てだ。味は少々刺激的だが、グルメだぜ?
「――【ディープエコロジカルボム】」
――ずどんっ
『ふんぐっ!? げほっげほっげほっ』
咽せる合体妖怪を前に、アリスが不敵な笑みを浮かべる。そして、ゆっくりとボタンを押し込んで、笑って見せた。
「パージ! 神速兵装【アサルトゴリアテⅡ】!!」
Ⅰはどうした。
いや、そんなことは今はどうでもいい。良いったら良い。
正体不明の種を振り払ったのか、合体妖怪の後ろで倒れていたゴリアテが立ち上がる。
そして、重武装に包まれていたゴリアテのパーツがはじけ飛び、一気に軽装になった。エプロンドレスもスリットが入っていたりと、ぐっと動きやすそうな形だ。
「斬り裂きなさい! ゴリアテ!!」
『■■ッ!!』
咆吼は、短く。
未だ呻き声を上げる合体妖怪に、肉薄し。
手に持つ大剣を、思い切り振り上げて。
叩き――
『……~ッ! させるかー!! 四番勝負【両生化弾幕変化】!!』
――斬れなかった。
急速で振り返った合体妖怪が、口から蛙を出現させる。たった一匹のそれは、見事に、ゴリアテの手から大剣を弾いた。
「くっ、まずいわね。魔理沙! 三十六番目の計で華麗に立ち去る作戦に変更――」
「いや、まだ、終わってない!」
「――へ? ちょ、ちょっと、魔理沙!?」
間違いなく、渾身の一撃だった。あれを避けられたらもう手段はあまり残されていない――逃げる、という作戦を出してきたし――ことだろう。そうなると、こんな絶好のタイミング、もう一度巡ってくるかなんてわからない。
ここまで無茶をしなくても、どうせ、聞きつけた霊夢や早苗が嬉々として合体妖怪を撃墜するだろう。それはそれで、確かに楽だ。
でも。
「借りるぜ、ゴリアテ!」
弾かれ、打ち上げられた大剣の腹に、乗り移る。流石はアリスの人形と言うべきか、面白いくらい滑らかに魔力に馴染み、大剣はあっという間に箒の代わりになった。
「ここで、逃げる訳にはいかない」
だって。
私と遊ぶのが楽しいと。
そればかり考えていると、そう言ったアリス。
その、“楽しい一日”の終わりを、逃げ帰っただなんていう後味の悪いものにしたくない。
だから。
『あわわわわ、どうしよう、マミゾウ! ――狼狽えるな! ぬえ!』
「即席彗星【ブレイジングゥ……――】」
狙いは真っ直ぐ、ただ一直線に。
私の身体ごと大剣を弾丸に加工し、魔法のライフリングを切り抜け、回転。
『う、うわぁぁぁぁぁっ』
「――ソーォォォォドッ】!!」
どどめ色の葉っぱを貫き、まんじゅうのような身体を割る。断面は不思議と真っ白で、それが変化の末の幻術であることを私に思い知らしめた。
「勢い、つけすぎたか……っ」
止まってみようにも、勢いの付いた大剣は言うことを聞かない。このままだと地面に激突してしまう。くそっ!
「魔理沙っ!!」
けれど、砕けた墓石が目前に迫った頃。私の身体に糸が絡みつき、そのまま引っ張り上げられた。急な浮遊感に身体の中身がひっくり返りそうになるが、そこは、ぐっと抑えて堪える。
最後の最後でそんな恥ずかしいことになったら、思わず土曜日に泣きついて爆破を依頼してしまうかも知れないから。
「す、すまん、助かったぜ、アリス」
「もう、無茶しないで頂戴。貴女だけの身体じゃないんだから」
「……いや、変なこと言うなよ」
アリスとともに、地面に降り立つ。少し離れた所では、いつの間に駆けつけたのか、額に青筋を浮かべた白蓮がのびたぬえとマミゾウを引っ張って、命蓮寺の方へ引き摺っていた。
ご愁傷様……と言いたいところだが、私たちまで巻き込まれたら敵わんな。
「変な事じゃないわ」
そう告げたアリスに、思考を戻した。
「私たちと魔理沙は、大事な友達で、家族で、パートナー。ほら、一人の身体じゃない」
そうしたらアリスは胸を張って、私にそう告げる。
子供っぽい表情。如何にも、“自分は正しいことを言った”と言いたげな、自信満々な笑み。それが、なんだか可笑しくって――でも、胸の内側がぼんやりと温かくなった。
「ああ、はははっ、なるほど、確かにそうみたいだ」
「ふふ、でしょう?」
「く、ははははっ」
「ふふっ、あはははっ」
快晴の下、二人で腹を抱えて笑う。そうしたら、昼食を摂っていない腹の虫が鳴いて、余計に笑いが落ち着かなくなった。息が苦しくて、でも、やめられない。
ただ、このド天然な、突飛なアリスと笑い合うのが楽しくて仕方が無くて。
「よし……宴会だ!」
「突飛ね。過程が解らないわ」
「いや、おまえだけには言われたくねぇよ。……って、そうじゃなくて」
頭を振って、アリスに手を差し伸べる。言いたいのは、そんなことじゃない。
「偶には突飛なのも、悪くない――だろ?」
そう言ってもう一度笑うと、アリスも私の手を取って、それから――珍しいことに、柔らかくはにかんだ。
「ええ、そうね。幻想郷を大酒乱に陥れましょう!」
「ははっ、まぁ、やってみるか!」
箒に跨り、空を飛ぶ。
昼を過ぎたばかりの幻想郷の空は、雲一つ無く透きとおっていて心地よい。
後ろに座るアリスの体温を一身に受けると、翳り無い太陽の光が染み込むように、胸が温かくなった。
ああ、本当に。
たまにはこんなのも、悪くない。
――6・近き者あり/きっとどこまでひたすら近く――
昼頃から始まった大宴会。生憎の途中参加となってしまったマミゾウは、瓢箪を傾けて、熱の篭もった吐息を砕けた墓石に吹きかけた。
酒の肴はないものかとぐるりと周囲を見回し、一点でぴたりと止めて瞳を細めると、矯めつ眇めつ見つめて破顔する。頭には大きなたんこぶを乗せているというのに、どうしてだか楽しげだ。
「ふふ、見つけたわよ。佐渡の」
「うぬ、お主か……八雲の」
隣から上半身だけ出現した紫に、マミゾウはほんの少しだけ眉を寄せる。驚きはしないものの、胡散臭さに怪しまずには居られないのだ。
「そんな怖い顔をしないで。三人で、愉しく呑みましょう?」
「三人? ……おお、お主は――」
紫の直ぐ後ろ。引っ張ってこられたのか、先程のマミゾウのように眉を寄せた幼い少女。黒いサスペンダーとスカート、それに同色のリボンと靴。まだ知り合ったばかりの妖怪。
「アリスよ、佐渡の狸……マミゾウ」
アリスはそう名乗ると、紫の隣に腰掛ける。その手には、上物のワインとワイングラスが握られていた。よく見れば頬がうっすらと桃色に咲いていたこともわかった事だろうが、しきりに一点を見つめるマミゾウは、それに気がつかない。
「なんとか、なったみたいね」
「ああ、お主らには感謝しておるよ」
マミゾウの視線の先。命蓮寺の住人たちが集まる席で、舟幽霊に一升瓶で一気飲みをやらされている、黒髪の妖怪。彼女の、ぬえの頭には、マミゾウのそれとよく似たたんこぶが浮かんでいた。
二人揃って、ガッツリと怒られたのだろう。マミゾウも、なるべく白蓮の方には視線を遣らないようにしている。
「正体が知れ渡りすぎた正体不明の妖怪は、力を失おうとしていた」
静かに、紫が告げる。それに、マミゾウが、瞳に色を乗せぬまま瓢箪の酒を呷って繋げる。
「ぷは……。そうじゃ。だから一度、ぬえは正体不明の力を持つと、他者に知らしめる必要があった。此度の協力、感謝する。よくぞ友を救ってくれた」
「ふふ、どういたしまして。私も幻想郷の住人を失うのは、本意ではありませんわ。それに、私のしたことは精々、聖徳王への根回し程度ですし」
「……最近、あの子、魔理沙と遊べなくて鬱憤が溜まっていたみたいだから、ちょうど良かった。それだけよ」
「くくっ、いや、それでもだ。ありがとう、紫、アリス」
名を呼ぶと、紫は愉しげに笑い、アリスは目を逸らして頷く。まるで正反対なのにこの二人がよく似ている気がして、マミゾウは喉の奥で小さく笑った。
まるで親子か、姉妹のようだ、と。
「それでは、幻想郷の健やかなる日々に」
紫の音頭で、マミゾウは瓢箪を、アリスはワイングラスを掲げる。
『乾杯!』
それからアリスは、赤いワインに落ちた月を、一息で呑み込んだ。
「……じゃあ、私は席を外すわ」
「もうか? ……ああいや、なるほど」
「ふふ、いってらっしゃい。アリス」
自分に気がついて、手を振って近づいてくる“パートナー”の姿を視界に納めると、一人立ち上がる。笑って見送られるのは癪だが仕方がないと、アリスは、先程のマミゾウとよく似た随喜の笑みを浮かべて、走り去った。
――了――
このシリーズがまた読めてとても嬉しかったです!
懐かしすぎる…
相変わらずの金曜アリスでgoodです。
それにしても相変わらずの天然アリスw
誤字報告
×それでも辿り漬いた答えは間違っていないといことが
◯それでも辿り着いた答えは間違っていないということが
かと
誤字報告ですが、
3の最初の辺りで「間違っていないといことが、時々ある。」となってます。
水曜日が安置だが・・・あえて土曜日に会いたいww
またちょくちょくでいいので次回作をお願いします
いやそれはさておき相変わらずの暴走金曜日が見れて良かったです
ざんかんトゥwww悪を断つ剣が信楽焼きを断ったwww
いやぁーまたわくわくして読めました。
これからシリーズ全部読破してきまっす!
どのアリスも可愛いけどやはり俺は木曜日なんだぜ
彼女が一番可愛いと思うので何卒!
丁度いい長さで章ごとに区切ってあり、氏の文の軽快さと合わせてさっくりと読むことが出来ました。
やっぱりこの七曜の七色人形遣いと魔理沙のコンビはいいですね。