里に住む子供はその日、妙に早く目覚めてしまった。
朝焼けが赤々と輝き、そのすぐ上にはほぼ昼の明るさにちかづきつつもまだ星の残る空。
子供は庭に出るとその空の美しさにしばしうっとりしていた。
すると朝焼けより手前に位置し、陰になって墨絵のような木立の
間から空を飛ぶ人の姿が見えた。空飛ぶ人?と子供は若干混乱しつつ、
彼女が自分の家に向かってくるのに気づき、とっさにケヤキの幹の後ろに
隠れた。幹に触れると固く熱い樹皮に苔が生え、冷たく湿った滴が指紋に
入ってくるようだった。
女性は地面に降り立ち、歩いて子供の家の前まで来ると、
手に提げたかごから牛乳を取り出して置いた。置くときに前かがみになり、
その際、帯の上の着物の布が内容物の重みでやや緊張感を増したのを見て
子供はドキッとした。女性は次の家へ牛乳を届けるため早足で去っていった。
霊夢は早起きのついでに牛乳配達の仕事をしている。
次の日の朝、子供はまた早起きし、今度は初めから霊夢を目的に
ケヤキの陰に隠れていた。庭にはすずめがチュンチュンと跳ねながら
何かをついばんでいる。・・と、すずめたちはチチッ!と何者かに気づいて
飛び去った。
待ち人来たり。霊夢である。昨日と同じように髪を後ろで一つに
束ねているところに昨日と同じ流れでルーティンし家を出たのを
感じさせ、その生活感が妙に生々しかった。
霊夢は昨日と同じように前かがみになって牛乳を置き、
乳房で着物の布をやや張らせて去っていった。
ケヤキの陰から見ていた子供は去る霊夢に吸い寄せられるように
歩き出した。その際ケヤキの根のそばに生えていた煙茸につま先が当たり、
黄色い煙幕が小さく上がった。朝焼けにあたって金色になったそれは、
表面だけが白く輝く木の根に降りかかるのであった。
霊夢は次々と里の家を訪問して牛乳を届けていく。
一通り配り終えると、後ろから子供のすすり泣きが聞こえた。
霊夢は泣いている子供を背負い、ふわりと宙に浮かんだ。
蝶がひらひらと遊ぶように飛んでいる。まるで友を得たかのように霊夢のそばに寄ってくる。
「ふぅー、んーふー♪、ふー、んーふー♪(童謡のちょうちょ)」背中の子供に聞こえるのを気にも留めず、
霊夢は鼻歌を漏らした。
(このおねえちゃん、細かいことは気にしないんだ・・大人だなあ)子供はドキッとした。
霊夢のうなじから横顔にかけてを凝視し、実際に宙に浮いていること以上に
浮遊感と時間がゆっくり過ぎていくのを感じた。
その日の午後、子供は博霊神社に黒いごみ袋を携えて現れた。
子供はゴミ袋を広げると、中には色とりどりの花が入っていた。
白い花弁に薄く溶いた青い絵の具を振りかけたようなあじさい、着物の布地を思わせる
しなりと項垂れたようなアンニュイさを漂わせるあやめ、まだ開いて間もないひまわり・・。
朝焼けが赤々と輝き、そのすぐ上にはほぼ昼の明るさにちかづきつつもまだ星の残る空。
子供は庭に出るとその空の美しさにしばしうっとりしていた。
すると朝焼けより手前に位置し、陰になって墨絵のような木立の
間から空を飛ぶ人の姿が見えた。空飛ぶ人?と子供は若干混乱しつつ、
彼女が自分の家に向かってくるのに気づき、とっさにケヤキの幹の後ろに
隠れた。幹に触れると固く熱い樹皮に苔が生え、冷たく湿った滴が指紋に
入ってくるようだった。
女性は地面に降り立ち、歩いて子供の家の前まで来ると、
手に提げたかごから牛乳を取り出して置いた。置くときに前かがみになり、
その際、帯の上の着物の布が内容物の重みでやや緊張感を増したのを見て
子供はドキッとした。女性は次の家へ牛乳を届けるため早足で去っていった。
霊夢は早起きのついでに牛乳配達の仕事をしている。
次の日の朝、子供はまた早起きし、今度は初めから霊夢を目的に
ケヤキの陰に隠れていた。庭にはすずめがチュンチュンと跳ねながら
何かをついばんでいる。・・と、すずめたちはチチッ!と何者かに気づいて
飛び去った。
待ち人来たり。霊夢である。昨日と同じように髪を後ろで一つに
束ねているところに昨日と同じ流れでルーティンし家を出たのを
感じさせ、その生活感が妙に生々しかった。
霊夢は昨日と同じように前かがみになって牛乳を置き、
乳房で着物の布をやや張らせて去っていった。
ケヤキの陰から見ていた子供は去る霊夢に吸い寄せられるように
歩き出した。その際ケヤキの根のそばに生えていた煙茸につま先が当たり、
黄色い煙幕が小さく上がった。朝焼けにあたって金色になったそれは、
表面だけが白く輝く木の根に降りかかるのであった。
霊夢は次々と里の家を訪問して牛乳を届けていく。
一通り配り終えると、後ろから子供のすすり泣きが聞こえた。
霊夢は泣いている子供を背負い、ふわりと宙に浮かんだ。
蝶がひらひらと遊ぶように飛んでいる。まるで友を得たかのように霊夢のそばに寄ってくる。
「ふぅー、んーふー♪、ふー、んーふー♪(童謡のちょうちょ)」背中の子供に聞こえるのを気にも留めず、
霊夢は鼻歌を漏らした。
(このおねえちゃん、細かいことは気にしないんだ・・大人だなあ)子供はドキッとした。
霊夢のうなじから横顔にかけてを凝視し、実際に宙に浮いていること以上に
浮遊感と時間がゆっくり過ぎていくのを感じた。
その日の午後、子供は博霊神社に黒いごみ袋を携えて現れた。
子供はゴミ袋を広げると、中には色とりどりの花が入っていた。
白い花弁に薄く溶いた青い絵の具を振りかけたようなあじさい、着物の布地を思わせる
しなりと項垂れたようなアンニュイさを漂わせるあやめ、まだ開いて間もないひまわり・・。
でも雰囲気はいいですよ~。
雰囲気はとても好みで良かったです
雰囲気は好きです