Coolier - 新生・東方創想話

アースライトレイ

2012/02/04 18:46:51
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里に住む子供はその日、妙に早く目覚めてしまった。
朝焼けが赤々と輝き、そのすぐ上にはほぼ昼の明るさにちかづきつつもまだ星の残る空。
子供は庭に出るとその空の美しさにしばしうっとりしていた。


すると朝焼けより手前に位置し、陰になって墨絵のような木立の
間から空を飛ぶ人の姿が見えた。空飛ぶ人?と子供は若干混乱しつつ、
彼女が自分の家に向かってくるのに気づき、とっさにケヤキの幹の後ろに
隠れた。幹に触れると固く熱い樹皮に苔が生え、冷たく湿った滴が指紋に
入ってくるようだった。


女性は地面に降り立ち、歩いて子供の家の前まで来ると、
手に提げたかごから牛乳を取り出して置いた。置くときに前かがみになり、
その際、帯の上の着物の布が内容物の重みでやや緊張感を増したのを見て
子供はドキッとした。女性は次の家へ牛乳を届けるため早足で去っていった。
霊夢は早起きのついでに牛乳配達の仕事をしている。

次の日の朝、子供はまた早起きし、今度は初めから霊夢を目的に
ケヤキの陰に隠れていた。庭にはすずめがチュンチュンと跳ねながら
何かをついばんでいる。・・と、すずめたちはチチッ!と何者かに気づいて
飛び去った。

待ち人来たり。霊夢である。昨日と同じように髪を後ろで一つに
束ねているところに昨日と同じ流れでルーティンし家を出たのを
感じさせ、その生活感が妙に生々しかった。
霊夢は昨日と同じように前かがみになって牛乳を置き、
乳房で着物の布をやや張らせて去っていった。

ケヤキの陰から見ていた子供は去る霊夢に吸い寄せられるように
歩き出した。その際ケヤキの根のそばに生えていた煙茸につま先が当たり、
黄色い煙幕が小さく上がった。朝焼けにあたって金色になったそれは、
表面だけが白く輝く木の根に降りかかるのであった。

霊夢は次々と里の家を訪問して牛乳を届けていく。
一通り配り終えると、後ろから子供のすすり泣きが聞こえた。



霊夢は泣いている子供を背負い、ふわりと宙に浮かんだ。
蝶がひらひらと遊ぶように飛んでいる。まるで友を得たかのように霊夢のそばに寄ってくる。
「ふぅー、んーふー♪、ふー、んーふー♪(童謡のちょうちょ)」背中の子供に聞こえるのを気にも留めず、
霊夢は鼻歌を漏らした。

(このおねえちゃん、細かいことは気にしないんだ・・大人だなあ)子供はドキッとした。
霊夢のうなじから横顔にかけてを凝視し、実際に宙に浮いていること以上に
浮遊感と時間がゆっくり過ぎていくのを感じた。

その日の午後、子供は博霊神社に黒いごみ袋を携えて現れた。
子供はゴミ袋を広げると、中には色とりどりの花が入っていた。
白い花弁に薄く溶いた青い絵の具を振りかけたようなあじさい、着物の布地を思わせる
しなりと項垂れたようなアンニュイさを漂わせるあやめ、まだ開いて間もないひまわり・・。
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コメント



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1.60名前が無い程度の能力削除
うーむ 読みにくい 私の国語力の問題かもしれませんが
4.70名前が無い程度の能力削除
急に視点が変わるとちょっと読みにくいかなと。
でも雰囲気はいいですよ~。
5.80奇声を発する程度の能力削除
視点が少し定まらない感じがしましたが、
雰囲気はとても好みで良かったです
8.80名前が無い程度の能力削除
誤字:博霊→博麗

雰囲気は好きです
9.100名前が正体不明である程度の能力削除
おもしろかった。
10.70名前が無い程度の能力削除
割りと好きかな
14.80名前が無い程度の能力削除
いい雰囲気