1
「パルスィって綺麗だよね」
「やだ勇儀さんったら」
「なんで恋人いないの?」
「さっきまでいると思ってたわ」
◆
2
才色兼備、文武両道、最強の妖獣、最高の従者。
私のご主人様をそう呼ぶ人は多い。
「ただいま戻りました」
実際私も、そう思う。
「ああ、お帰り、橙」
買い物袋を下ろす。
里に買出しに行っていたのだ。
「大変でしたよー、店の会計にゴルゴ13そっくりな人が並んでまして」
「誰も後ろに並べませんでした」
「ははは、なんだそれは」
藍様は笑った顔もお美しい。
でも私は知っている。
紫様をして『どこに出しても恥ずかしくない』と言わしめるこの完璧超人も、たった一つだけ欠点がある。
それは・・・・・・
「らーんー」
「あ、紫様、おはようございます」
パアッと顔が明るくなる。
「今日も麗しゅうございます紫様、すぐにお食事をお持ちしますね」
「うん、先に顔を洗ってくるわ」
「それでしたら直ちにお湯を入れますね、橙、大至急だ、風呂洗って来い」
まだ午前ですよ藍様。
「え、いやいやそこまではいいわよ」
「それより食べ終わったら着付け手伝って頂戴、午後からレミリアに会うから赤めのヤツ」
「ああ、あのようなものにまでお気を遣わなくともよろしいでしょうに、なんという懐の深い、そして胸部の豊かなお方、ああかわいいな畜生」
「そういうのいいから、後半関係ないから」
「ははっ、それではお食事をご用意いたします、今朝は鮭の塩焼きとなめこの味噌汁と目玉焼きと豚燻製の焼き物(ベーコンエッグ)でございます。西の料理ですが紫様の口に合いますよう改良してございます」
と言い残すと、お勝手のほうへ駆けてゆく。
これなのだ。
デレるのだ。
頬が緩みっぱなしなのだ。
こと紫様に関わるとき、藍様からハートマークが途絶えることはないのだ。
さすがに人前でこんな醜態を晒す事はない。
前にこれが天狗にすっぱ抜かれそうになったときも、なぜか出版停止になり、なぜかその天狗が突然失踪し、なぜか2年後丸坊主になって発見され、なぜか『そらきれい』しか言えなくなっていたりしていた。
「藍にも困ったものね」
紫様も呆れ顔だ。
前は私の前でも自重していたけど、我慢できなくなったらしい。
隙あらば紫様にセクハラを敢行するようになってしまった。
でも。
「困ってるようには見えないのですが」
「困っちゃうくらい愛らしいわ、悪い男に引っかかったらどうしましょう」
Oh・・・・・・
「あの子純粋だからすぐだまされそう」
ああそうか、この主にしてこの式ありなのか。
まさか、いずれ私も・・・・・・?
「? 何か言った?」
「いえ」
軽く戦慄が走った。
◆
3
「咲夜ー、手品やってー」
「あらあらフラン様ったら」
「私も見たいわね」
「お嬢様まで」
「いいじゃーん、やってよー」
「仕方ありませんね」
「ここにトランプがあります」
「どっから出した」
「上から3枚テーブルに伏せます」
「お嬢様、お好きなものをお選びください」
「・・・・・・真ん中がいいわ」
「真ん中を開くと・・・・・・お嬢様のホットケーキが消えています」
「え? ちょ、ちょっと! どこやったのよ!」
「右を開くと?」
「あれ? これ私まずくない?」
「フラン様のおやつが消えています」
「やっぱりー! 何すんのよー!!」
「最後の一枚を開くと?」
「御2人のホットケーキが3段になっています」
「う、うおおおおおお!!?」
「フランうるさい」
「お後がよろしいようで」
「「トランプは?」」
◆
4
「あー、それはだなー、リグルよ、あれだ」
そしてミスちーの弁解が始まった。
「たとえばそうだ、コロンブスだってイギリスじゃ笑いものだったろ?最初の1歩を踏み出すヤツはいつだってそんな風に言われるもんなんだよ、うん」
インディアンからすれば悪魔だからねその人。
「挑戦者を笑うことなかれ、いい言葉だよね、感動的だ」
誰の言葉だったか。
「何にしても先入観は捨てなきゃいけねぇ、一見それがだめそうでも、思わぬところに救いがある」
「そんな風に考えていくやつだけが将来大成するんだよ、私はお前にそんな大妖怪になって欲しいのさ」
ミスちーは私イイ事言った、といわんばかりにうんうんとうなずいている。
言いたいことはそれだけか?
「僕はなんでおでんにワサビを付けてるのか聞いたんだよ」
「すいません買うの間違えたんです」
◆
5
はいみんなおはようございます。
はーい、いいご挨拶です。
今日は幻想郷創設時の歴史を・・・・・・
うん?どうした?
・・・・・・隣の人に見せてもらいなさい。
じゃあ始めるぞー
なんだ?
せんせーはトイレじゃありません。
すぐ戻ってくるんだぞ。
じゃあ今度こそはじめ・・・・・・
なんだ今度は、いい加減にしてくれ。
え?あ、いや。
お、怒ってない、怒ってないからな?
うんうん、ごめんな、怖かったな、お前もトイレか、行っておいで。
でも今度からは休み時間に・・・・・・
あ、こら。
まったく。
他にトイレ行きたい人いるか?
いないな?じゃあ授業始めるぞ?
あと、お前借りてる教科書に落書きするなよ?絶対だぞ?
今日は幻想郷創設時の八雲と博麗の・・・・・・
・・・・・・なにかな?
わかったわかった、先生の鉛筆貸してやるから。
え?大丈夫、大丈夫、怒ってないぞ。
さてもういいよな、始めるぞ。
「けーね」
「おぶぅ!!」
「一人で何やってんの?」
「ああああやややららららららららら、ここ、これはな?」
「ああ、今日は満月か」
「それで納得するな!」
◆
6
「午後から紫と会うわ、あんたも来なさい」
「いつも唐突ね、わかったわ」
その時まで時間をつぶしに、私は図書館に来ていた。
「ねぇレミィ」
親友が私の名前を呼ぶ。
「なあにパチェ」
「妹様の様子はどう? 落ち着いてる?」
「ええ、ここのところはね」
私の言葉に安心したのか、久しぶりに笑顔を見せてくれた。
本当に、久しぶりに見た気がする。
「イギリス人に感謝しないとね」
「なんで?」
「元ネタがイギリスのことわざなのよ」
パチェは歌うように言葉をつむぐ。
「子供が生まれたら犬を飼いなさい。
子供が赤ん坊の時、子供の良き守り手となるでしょう。
子供が幼年期の時、子供の良き遊び相手となるでしょう。
子供が少年期の時、子供の良き理解者となるでしょう。
そして子供が青年になった時、
自らの死をもって子供に命の尊さを教えるでしょう」
私たちはそれを、人間でやった。
「さっきも手品を、見せてくれたわ」
「数十年後、あの子が眠るとき、あの子の役目は果たされる」
「それまで仲良くして欲しいわ」
「させなさいな、お姉さん」
願わくば『その時』、フランがちゃんと悲しみますように。
パチェがまた笑った。
ぞっとするほど美しい笑みだった。
◆
7
妖夢はかわいい。
顔も体躯も性格も。
ちょっとドジな所も大好きよ。
「あら妖夢、髪切ったの?」
「はい、幽々子様、似合いますか?」
「ええ、とーってもかわいいわ、最高よ」
妖夢がえへへーっと頬を緩める。
ああ、見てるだけでとろけそう。
どこぞの九尾じゃこうはいかないわ。
「なんか、妖夢ったら最近輪をかけてかわいくなったわね」
「そ、そうですか?」
前髪をいじりながら妖夢がはぐらかす。
照れ隠しする姿を堪能するのもいいのだけれど。
ちょっと気になることがある。
「垢抜けた気がするわ、なにかあったの?」
「あの、実は・・・・・・」
「離せえーーー!!」
「うちの子に手を出した罪は万死に値するわ」
荒縄でぐるぐる巻きにした下手人を引きずり歩く。
油断も隙もありゃしないわ。
「前が見えない! 話が見えない! 未来が見えない!」
「うるさい坊やね」
「僕が何をした!」
「しらばっくれる気?かわいい子なら誰でもいいんでしょう?」
「だいたい分かった、人違いだ!」
「虫の男の子なんてあんたしか知らないわ」
「僕は女だふざけるなーー!」
最近の子はどうしてこうすぐにばれる嘘をつくのだろう。
ああ、妖夢がこんなのにだまされなくてよかった。
そして今夜は蛍の佃煮よ。
「うふ、うふふ、うふふふふふ・・・・・・」
◆
8
「ご主人、起きてくれご主人」
「んうう、ナズーリンですか、もう出発ですか?」
「いや、まだ時間はあるが、うなされてたみたいだから」
「そうでしたか、ありがとうございます」
「しっかりしてくれよご主人、そんなんじゃ聖のところになんていけないぞ?」
「はは、それもそうですね」
「悪い夢でも見たか?」
「いえ、聖を助け出す夢を」
「気合十分じゃないか、それでなぜうなされるんだ」
「思い切り抱きしめられまして」
「ああ、なるほど」
◆
9
風呂上りの牛乳はなぜおいしいのか。
この謎に挑んだ気高き天狗が居た。
そう、それはこの私、姫海棠はたてだ。
私のジャーナリスト魂はとどまるところを知らない。
長年の研究の結果、それは『風呂の熱気で火照った体が冷たいものを欲しているから』という結論に達した。
私は自分の研究が妖怪全体の生活レベルを遥かな高みへと導いてくれることを確信した。
しかしながら世間一般の凡々人がこの高尚なる真理を理解できるのだろうかという不安も残る。
そこで私は友人数名にこれまでの経緯を話し、研究結果の客観性を確かめてみることにした。
そこでまず1番の親友である射命丸さんにこの研究の概要を話したところ、今まで見たことも無いくらい悲しそうな顔をして、
「・・・・・・今度一緒に旅行にでも行きましょう」
と述べた。
私には意味が分からなかった。
射命丸さんにとっては意味の通った返答なのだろうが、いかんせん私の知能レベルはそこらの木っ端妖怪とは次元が違う。
きっとそれが災いしたのだろう。
私は親友の言葉が理解できないことが、ただただ残念でならなかった。
次に、2番目の親友である犬走さんのところへと向かった。
犬走さんは白狼天狗である。
本来ならば犬畜生ごときでは視界に入れることすら許されない存在の烏天狗ではあるが、こと私に限ってはそのような悪習にとらわれることの無い聖母のような心の持ち主である。
白狼天狗にこの偉大なる研究が理解できるかは定かではないが、私は差別はしないのだ。
哨戒中の彼女に足を止めてもらい、自らのたどり着いた真実を告げてみると。
これまた不思議そうな顔をして、
「あの、どちら様ですか?」
などと言う。
私は悲しくなった。
所詮白狼は白狼、知能レベルはおろか記憶力までもが犬並みらしい。
私など、6年前に1度会ったきりの君を覚えていたというのに。
いや、これ以上言うまい。
犬はどこまで行っても犬。
仕方が無いことなのだ。
むしろ彼女のような存在にこそ、天の恩恵たる我々の知恵が必要なのだ。
そう思うことにした。
さて、さしあたって私の親友2名に話してはみたが、あまり有益であったとは言い難い。
他の友人もいるにはいるが、いきなり押しかけたらさすがに迷惑だろう。
やむをえない、この内容を新聞記事とし、幻想郷中に私の研究成果を広めよう。
この地には賢者やら何やらが掃いて捨てるほど居る、きっと誰かが理解してくれるだろう。
もし仮に誰にも理解されなかったとしたら、それはまだこの研究は世に出るのには早すぎたということなのだ。
というわけで早速私はこの研究を記事の形に仕立て上げ、デスク(直属の上司、普段はまずこのヒトに原稿を見せる)に提出した。
すると開口一番、
「君、先月付けで解雇になったって言ったよね」
と言われた。
私はいろいろと限界だった。
だれか助けてください。
◆
10
「いやつまり、あれだ、私じゃだめかなって意味で」
「さっきまで脈なしだと思ってたわ」
了
「パルスィって綺麗だよね」
「やだ勇儀さんったら」
「なんで恋人いないの?」
「さっきまでいると思ってたわ」
◆
2
才色兼備、文武両道、最強の妖獣、最高の従者。
私のご主人様をそう呼ぶ人は多い。
「ただいま戻りました」
実際私も、そう思う。
「ああ、お帰り、橙」
買い物袋を下ろす。
里に買出しに行っていたのだ。
「大変でしたよー、店の会計にゴルゴ13そっくりな人が並んでまして」
「誰も後ろに並べませんでした」
「ははは、なんだそれは」
藍様は笑った顔もお美しい。
でも私は知っている。
紫様をして『どこに出しても恥ずかしくない』と言わしめるこの完璧超人も、たった一つだけ欠点がある。
それは・・・・・・
「らーんー」
「あ、紫様、おはようございます」
パアッと顔が明るくなる。
「今日も麗しゅうございます紫様、すぐにお食事をお持ちしますね」
「うん、先に顔を洗ってくるわ」
「それでしたら直ちにお湯を入れますね、橙、大至急だ、風呂洗って来い」
まだ午前ですよ藍様。
「え、いやいやそこまではいいわよ」
「それより食べ終わったら着付け手伝って頂戴、午後からレミリアに会うから赤めのヤツ」
「ああ、あのようなものにまでお気を遣わなくともよろしいでしょうに、なんという懐の深い、そして胸部の豊かなお方、ああかわいいな畜生」
「そういうのいいから、後半関係ないから」
「ははっ、それではお食事をご用意いたします、今朝は鮭の塩焼きとなめこの味噌汁と目玉焼きと豚燻製の焼き物(ベーコンエッグ)でございます。西の料理ですが紫様の口に合いますよう改良してございます」
と言い残すと、お勝手のほうへ駆けてゆく。
これなのだ。
デレるのだ。
頬が緩みっぱなしなのだ。
こと紫様に関わるとき、藍様からハートマークが途絶えることはないのだ。
さすがに人前でこんな醜態を晒す事はない。
前にこれが天狗にすっぱ抜かれそうになったときも、なぜか出版停止になり、なぜかその天狗が突然失踪し、なぜか2年後丸坊主になって発見され、なぜか『そらきれい』しか言えなくなっていたりしていた。
「藍にも困ったものね」
紫様も呆れ顔だ。
前は私の前でも自重していたけど、我慢できなくなったらしい。
隙あらば紫様にセクハラを敢行するようになってしまった。
でも。
「困ってるようには見えないのですが」
「困っちゃうくらい愛らしいわ、悪い男に引っかかったらどうしましょう」
Oh・・・・・・
「あの子純粋だからすぐだまされそう」
ああそうか、この主にしてこの式ありなのか。
まさか、いずれ私も・・・・・・?
「? 何か言った?」
「いえ」
軽く戦慄が走った。
◆
3
「咲夜ー、手品やってー」
「あらあらフラン様ったら」
「私も見たいわね」
「お嬢様まで」
「いいじゃーん、やってよー」
「仕方ありませんね」
「ここにトランプがあります」
「どっから出した」
「上から3枚テーブルに伏せます」
「お嬢様、お好きなものをお選びください」
「・・・・・・真ん中がいいわ」
「真ん中を開くと・・・・・・お嬢様のホットケーキが消えています」
「え? ちょ、ちょっと! どこやったのよ!」
「右を開くと?」
「あれ? これ私まずくない?」
「フラン様のおやつが消えています」
「やっぱりー! 何すんのよー!!」
「最後の一枚を開くと?」
「御2人のホットケーキが3段になっています」
「う、うおおおおおお!!?」
「フランうるさい」
「お後がよろしいようで」
「「トランプは?」」
◆
4
「あー、それはだなー、リグルよ、あれだ」
そしてミスちーの弁解が始まった。
「たとえばそうだ、コロンブスだってイギリスじゃ笑いものだったろ?最初の1歩を踏み出すヤツはいつだってそんな風に言われるもんなんだよ、うん」
インディアンからすれば悪魔だからねその人。
「挑戦者を笑うことなかれ、いい言葉だよね、感動的だ」
誰の言葉だったか。
「何にしても先入観は捨てなきゃいけねぇ、一見それがだめそうでも、思わぬところに救いがある」
「そんな風に考えていくやつだけが将来大成するんだよ、私はお前にそんな大妖怪になって欲しいのさ」
ミスちーは私イイ事言った、といわんばかりにうんうんとうなずいている。
言いたいことはそれだけか?
「僕はなんでおでんにワサビを付けてるのか聞いたんだよ」
「すいません買うの間違えたんです」
◆
5
はいみんなおはようございます。
はーい、いいご挨拶です。
今日は幻想郷創設時の歴史を・・・・・・
うん?どうした?
・・・・・・隣の人に見せてもらいなさい。
じゃあ始めるぞー
なんだ?
せんせーはトイレじゃありません。
すぐ戻ってくるんだぞ。
じゃあ今度こそはじめ・・・・・・
なんだ今度は、いい加減にしてくれ。
え?あ、いや。
お、怒ってない、怒ってないからな?
うんうん、ごめんな、怖かったな、お前もトイレか、行っておいで。
でも今度からは休み時間に・・・・・・
あ、こら。
まったく。
他にトイレ行きたい人いるか?
いないな?じゃあ授業始めるぞ?
あと、お前借りてる教科書に落書きするなよ?絶対だぞ?
今日は幻想郷創設時の八雲と博麗の・・・・・・
・・・・・・なにかな?
わかったわかった、先生の鉛筆貸してやるから。
え?大丈夫、大丈夫、怒ってないぞ。
さてもういいよな、始めるぞ。
「けーね」
「おぶぅ!!」
「一人で何やってんの?」
「ああああやややららららららららら、ここ、これはな?」
「ああ、今日は満月か」
「それで納得するな!」
◆
6
「午後から紫と会うわ、あんたも来なさい」
「いつも唐突ね、わかったわ」
その時まで時間をつぶしに、私は図書館に来ていた。
「ねぇレミィ」
親友が私の名前を呼ぶ。
「なあにパチェ」
「妹様の様子はどう? 落ち着いてる?」
「ええ、ここのところはね」
私の言葉に安心したのか、久しぶりに笑顔を見せてくれた。
本当に、久しぶりに見た気がする。
「イギリス人に感謝しないとね」
「なんで?」
「元ネタがイギリスのことわざなのよ」
パチェは歌うように言葉をつむぐ。
「子供が生まれたら犬を飼いなさい。
子供が赤ん坊の時、子供の良き守り手となるでしょう。
子供が幼年期の時、子供の良き遊び相手となるでしょう。
子供が少年期の時、子供の良き理解者となるでしょう。
そして子供が青年になった時、
自らの死をもって子供に命の尊さを教えるでしょう」
私たちはそれを、人間でやった。
「さっきも手品を、見せてくれたわ」
「数十年後、あの子が眠るとき、あの子の役目は果たされる」
「それまで仲良くして欲しいわ」
「させなさいな、お姉さん」
願わくば『その時』、フランがちゃんと悲しみますように。
パチェがまた笑った。
ぞっとするほど美しい笑みだった。
◆
7
妖夢はかわいい。
顔も体躯も性格も。
ちょっとドジな所も大好きよ。
「あら妖夢、髪切ったの?」
「はい、幽々子様、似合いますか?」
「ええ、とーってもかわいいわ、最高よ」
妖夢がえへへーっと頬を緩める。
ああ、見てるだけでとろけそう。
どこぞの九尾じゃこうはいかないわ。
「なんか、妖夢ったら最近輪をかけてかわいくなったわね」
「そ、そうですか?」
前髪をいじりながら妖夢がはぐらかす。
照れ隠しする姿を堪能するのもいいのだけれど。
ちょっと気になることがある。
「垢抜けた気がするわ、なにかあったの?」
「あの、実は・・・・・・」
「離せえーーー!!」
「うちの子に手を出した罪は万死に値するわ」
荒縄でぐるぐる巻きにした下手人を引きずり歩く。
油断も隙もありゃしないわ。
「前が見えない! 話が見えない! 未来が見えない!」
「うるさい坊やね」
「僕が何をした!」
「しらばっくれる気?かわいい子なら誰でもいいんでしょう?」
「だいたい分かった、人違いだ!」
「虫の男の子なんてあんたしか知らないわ」
「僕は女だふざけるなーー!」
最近の子はどうしてこうすぐにばれる嘘をつくのだろう。
ああ、妖夢がこんなのにだまされなくてよかった。
そして今夜は蛍の佃煮よ。
「うふ、うふふ、うふふふふふ・・・・・・」
◆
8
「ご主人、起きてくれご主人」
「んうう、ナズーリンですか、もう出発ですか?」
「いや、まだ時間はあるが、うなされてたみたいだから」
「そうでしたか、ありがとうございます」
「しっかりしてくれよご主人、そんなんじゃ聖のところになんていけないぞ?」
「はは、それもそうですね」
「悪い夢でも見たか?」
「いえ、聖を助け出す夢を」
「気合十分じゃないか、それでなぜうなされるんだ」
「思い切り抱きしめられまして」
「ああ、なるほど」
◆
9
風呂上りの牛乳はなぜおいしいのか。
この謎に挑んだ気高き天狗が居た。
そう、それはこの私、姫海棠はたてだ。
私のジャーナリスト魂はとどまるところを知らない。
長年の研究の結果、それは『風呂の熱気で火照った体が冷たいものを欲しているから』という結論に達した。
私は自分の研究が妖怪全体の生活レベルを遥かな高みへと導いてくれることを確信した。
しかしながら世間一般の凡々人がこの高尚なる真理を理解できるのだろうかという不安も残る。
そこで私は友人数名にこれまでの経緯を話し、研究結果の客観性を確かめてみることにした。
そこでまず1番の親友である射命丸さんにこの研究の概要を話したところ、今まで見たことも無いくらい悲しそうな顔をして、
「・・・・・・今度一緒に旅行にでも行きましょう」
と述べた。
私には意味が分からなかった。
射命丸さんにとっては意味の通った返答なのだろうが、いかんせん私の知能レベルはそこらの木っ端妖怪とは次元が違う。
きっとそれが災いしたのだろう。
私は親友の言葉が理解できないことが、ただただ残念でならなかった。
次に、2番目の親友である犬走さんのところへと向かった。
犬走さんは白狼天狗である。
本来ならば犬畜生ごときでは視界に入れることすら許されない存在の烏天狗ではあるが、こと私に限ってはそのような悪習にとらわれることの無い聖母のような心の持ち主である。
白狼天狗にこの偉大なる研究が理解できるかは定かではないが、私は差別はしないのだ。
哨戒中の彼女に足を止めてもらい、自らのたどり着いた真実を告げてみると。
これまた不思議そうな顔をして、
「あの、どちら様ですか?」
などと言う。
私は悲しくなった。
所詮白狼は白狼、知能レベルはおろか記憶力までもが犬並みらしい。
私など、6年前に1度会ったきりの君を覚えていたというのに。
いや、これ以上言うまい。
犬はどこまで行っても犬。
仕方が無いことなのだ。
むしろ彼女のような存在にこそ、天の恩恵たる我々の知恵が必要なのだ。
そう思うことにした。
さて、さしあたって私の親友2名に話してはみたが、あまり有益であったとは言い難い。
他の友人もいるにはいるが、いきなり押しかけたらさすがに迷惑だろう。
やむをえない、この内容を新聞記事とし、幻想郷中に私の研究成果を広めよう。
この地には賢者やら何やらが掃いて捨てるほど居る、きっと誰かが理解してくれるだろう。
もし仮に誰にも理解されなかったとしたら、それはまだこの研究は世に出るのには早すぎたということなのだ。
というわけで早速私はこの研究を記事の形に仕立て上げ、デスク(直属の上司、普段はまずこのヒトに原稿を見せる)に提出した。
すると開口一番、
「君、先月付けで解雇になったって言ったよね」
と言われた。
私はいろいろと限界だった。
だれか助けてください。
◆
10
「いやつまり、あれだ、私じゃだめかなって意味で」
「さっきまで脈なしだと思ってたわ」
了
いや3つ目はおかしい。
誤字
パルシィ→パルスィ
パルパルスキーとして断固抗議し、遺憾の意をs(ry
個人的には2,3がツボでした。なんか4コマ漫画とかになってそうですね
一つ一つが読みやすく面白かったです
だが無意味だ
面白かったです。
3は良い。マジで。3すごい、3マジで良い
うは3やべぇ
あと俺の嫁の一人称は僕じゃない。
そういうギャグなのかな?伝わらなかったけど。
内容は文句なし面白かったです!!!
はたてェ
はたてカワイソス
テンポ重視なのは分かるけど、台詞のみが多い部分だと誰が喋ってるのかすぐには分からない所があった。そのせいで蹴躓いてしまって、せっかくのテンポが削がれてしまう。もったいなし。
あと・・・こっちじゃなくて……こっちの三点リーダーを偶数で使った方がやっぱ見栄えがよくてええと思います。
話は全部ちゃんとしたオチがあんのかな?読解力不足かと思うがイマイチよく分からなかった話もあった。1の話はどこかで聞いたことあるような話だったけど、ラストに繋げて回してくるとは。自分にとってはちょっと斬新で面白かったです。
「全然、略してねえじゃん!馬鹿なの?」と思ってた、自分が馬鹿だった!
ほんと、そらきれい。
直後の7がおバカな話で良かった。
短かったけど、状況が分かりやすく読みやすくてクスッとくる文章でした。
個人的には6がお気に入り
リグルの一人称は私だったはずだけど僕っ子は嫌いじゃない
病む寸前か
僕っ子リグルも悪くない
6も良かったです
短いのにニヤニヤしてしまう
それぞれ話がまとまっていて面白かったです。
次回作期待~
けど6だけオチがわかんねぇ…
はたてがちょっと哀れ・・・
よくあるでしょセリフのみの
犬のくだりはゾクゾク来た
パチェさん計算高い女すなぁ
このはたてには幸せになってもらいたい
まとめ方はすとんと来たし、小気味よく読めたけれど、個人的にもっと尖って血噴き出るくらいの刺激が欲しかったです。
どうでもいいけど僕もいろいろと限界です、たすけてください、
そらきれい
もちろん全部良かったけど
SSはSEINTO SEIYAの略だいい加減にry
……SSって小説の略じゃなかったんですね。勉強になりました
さいたまさいたま! の略じゃないんですか。掌編っていいものですね。
最初の勇パル、台詞四つでオトせるとかすげぇなw と思ったら更に二つでオチてた!