Coolier - 新生・東方創想話

胡蝶の夢は繰り返す

2012/01/25 20:36:29
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 たくさん、たくさん捜しました。
 何処にも居ませんでした。
 何処を捜しても、何処に行っても居ませんでした。
 
 いっぱい、いっぱい待ちました。
 いつまでも来ませんでした。
 何処で待っても、何をしても来ませんでした。

 諦めました。
 何処にも居ないし、いつまでも来ないからです。
 これ以上、意味が無いからです。

 嘘です。
 諦められません。
 捜し続けますし、待ち続けます。
 意味が無くても。
 
 捜すのは得意です。
 色んなとこに行くのも好きです。
 待つのは得意です。
 ただ暇を潰すことも好きです。

 嘘です。
 好きなんかじゃありません。

 今はもう、微塵程の興味も湧きません。
 貴方が居ないからです。
 貴方が居たから、何かを好きになれたのです。

 そう、好きでもないことを続けるのはもう止めにしましょう。
 
 もう一回だけ、捜しましょう。
 あと少しだけ、待ちましょう。

 それで貴方に会えなかったら。
 私はもう諦めます。
 
 一度だけ、足掻きましょう。

 もう一度、何かを好きになるために。


 











「妹紅ー? 妹紅ー、何処だー?」

 ―――声がする。私が一番好きな声。

「ん……。 慧音ー! 私はここだぞー」
「あぁ、ようやく居た………。 全く、探したぞ」
 
 慧音は呆れ顔。
 絶対に口には出さないけど、安心する。
 いつもと変わらないから。
 変わってばかりの世界で、数少ない『変わらないもの』。
 変わらなくて、大好きなもの。

「おーい妹紅ー? 立てるか?」
「うん、全然へい………いややっぱり立てない」
「今平気って……」
「立ーてーなーいー」
「はいはい………ほら、掴まれ」
「うん」

 慧音が差し出した手に、私の手を重ねる。
 暖かい。

「―――い?」
「え?」

 慧音が何かを言ったようだが、あまりにも心地よい触れ合う手の感覚に浸るあまり、私には聞こえなかった。

「妹紅は、夕飯何が食べたい?」
「え、あぁ、そうね―――慧音が食べたい、かな」

 こんなタイミングで訊くにはちょっとおかしなその質問に、私はおどけるように答える。
 慧音は、そういうことを訊いてるんじゃない、と困ったような顔を浮かべた。

「ん~、まぁ何でもいいかな」
「そういうのが一番困るんだがなぁ………」

 私の定型句な答えに、慧音が定型句で返す。
 いつも通りに。
 いつも通り、嘘偽りのない会話。

「慧音と食べられるなら、何でもいいの」
「―――またお前はそういうことを……」

 慧音が顔を逸らす。
 きっと、照れてるんだ。
 
「本当よ。 本当に、慧音と一緒に食べられるだけでいいの」
「はいはい、私もそうだよ」

 慧音は、なんだか、本気にしてないみたいだ。

「もう………」

 拗ねる私の頭を、慧音は優しく撫でてくれた。
 私に近い方の手は私と繋がれている。 だから、私から遠い方の手で。
 慧音の手が届き易いように、私はちょっと身を屈める。
 すると慧音は、猫みたいだ、なんて言って笑った。
 
「―――にゃーん」

 ちょっとわざとらしく、猫の鳴きまねをしてみる。
 慧音は、私の喉を撫でる。

「ゴロゴロ、とは言わないのか?」

 笑いながら慧音は冗談を飛ばす。
 私は何も応えず、また猫の鳴きまねをした。








 それからしばらく、私達は歩いた。
 ずっと手を繋いで。
 ずっと一緒に歩いていた。
 笑ったり、ふざけあったり。
 月並みだけど、こんな時間がずっと続けばいいのに、とも思った。

 ずっと続けばいいのに。
 
 その言葉は。
 ずっと続かないことを知っているからだ。

 続かないんだ。

 私がいくら思っても。

 でも、せめて。
 今だけは、この時間を守りたい。
 
 そう、守ってみせるんだ。







 ―――目が覚めた。
 
 私は誰だっけ、何をしていたんだっけ。

 あぁそうだ。私は捜していたんだ。
 もう一度だけ捜すと決めたんだ。

 あぁ憂鬱だ。
 また、長い時間を掛けて捜さなければいけないんだ。

 ―――さっきの夢は、いつのことだったかな。
 ずっと、ずっとずっとずぅっと、昔のことだったかな。

 ―――いい夢だったな。
 
 夢だったのかな。

 本当は、ここが夢なんじゃないかな。

 
 私は目を閉じた。

 さっきの夢を、もう一度見たいから。
もしここが夢なら、覚めて欲しいから。

早く、見つけたいから。
私は目を閉じた。


あぁどうか。
 




目を覚まして、はじめに見るのが、貴方でありますように。


 
 
意味が解らないは褒め言葉です
ポエムじゃねーかも褒め言葉です

あとはじめまして、もう来ません
張散墓詩
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コメント



0.330簡易評価
2.100奇声を発する程度の能力削除
テンポ良くストンとした終わり方でとても良かったです
4.100名無し削除
切ない…
読んだだけで描写がありありと浮かびました
こんな世界観大好きです
次回作心から待ってます
5.100名前が正体不明である程度の能力削除
創想話にようこそ。
もう来ないのか…ガッカリ。
9.100名前が無い程度の能力削除
また来て下さいお願いします。
生まれ変わった慧音は、妹紅とあえるんでしょうか。
お互いが、気づくことが出来るのでしょうか。
ずっと二人が笑っていられたらいいのにと、
月並みで不可能なことですが思わずにはいられませんでした。
12.100名前が無い程度の能力削除
胸が痛いです 切ないです
あなたの作品をまた読みたいなあ
13.100もこけねを崇拝する程度の能力削除
これはやばい・・・いつか来る別れ系SSはいつも胸が苦しくなる…
もう書かないなんてそんなこと言わないでくださいよ。
また会えることを期待しています。