「や~る~気~でねぇ」
「だからってこっちこないでよ」
今日も今日とてアリス邸。
二人がけのソファーに座った魔理沙とアリスがそれぞれの作業をしている。
いや、していたというべきだろうか。
なにやら複雑な裁縫をしているアリスの肩に分厚い本から顔を上げた魔理沙が後頭部を乗っけた。
アリスの肩によりかかった魔理沙の金髪がアリスの手にふわっとかかる。
「なに? もう終わったの?」
「んー。やることはいっぱいあるんだがどれも簡単に終わりそうに無い」
「じゃあちょっとずつやるしかないじゃない」
「そーいうのは私の趣味じゃない。パパッと天才的なひらめきと力技が私の真骨頂だぜ」
「よく言う」
あきらめていったん手を止めたアリスは、こてん、と首を傾けてほほを魔理沙の額に当てた。
「もうだめ?」
「んー」
仰向けになったままアリスの首元に頭をこすり付ける魔理沙。
むずがる子供のような仕草に、アリスはふふっ笑った。
「もう、子供みたい」
「子供じゃないんだぜ」
「じゃあもうちょっとおとなしくしてなさい」
「でも大人しくするほどでもないんだぜ」
「もう」
苦笑するアリス。
手に持った布と針をテーブルに戻して、手を魔理沙の首に当ててやる。
そのまま猫をあやすかのようにのどをなでると、くくっと魔理沙が笑ってその髪を肩にこすりつけた。
「じゃあ大人でも子供でもない魔理沙さんはいったい何者かしら?」
「それはかわいい乙女に決まってるじゃないか」
すすすっとアリスの指がおとがいに伸びる。
魔理沙の肩がこわばった。
「じゃあ乙女のやる気に一番効くのは?」
「……甘いもの」
「ふーん」
ぽすっ
アリスは魔理沙の首に当てた手を引いて頭をその太ももの上に落とした。
魔理沙の金髪がざっと広がってアリスの膝をおおう。
アリスの指が魔理沙のくちびるをゆっくりと、何度も撫ぜてやる。
しばらくして耐え切れなくなった魔理沙が口を開いて、
かぷっ
「……それは流石に風情が無いんじゃないかしら」
「ふぁりすふぁふぁるい」
「はいはい」
そうしてアリスと魔理沙の金髪が交わった。
「とまあこのように、首を極めてから膝に落とすことでノックアウトできるわけよ」
「……いや、そーいうのじゃないでしょうこれは」
博麗神社、そのコタツ。
霊夢はジト目で隣のスキマ妖怪を見た。
うふふ、と扇子を口に当てて目で笑う紫の真意は霊夢には計り知れない。
仕方ないのでもう一度コタツの上においてある小さな板のような機械を見た。
そこにはまた最初からやる気の無い魔理沙がアリスにちょっかいを出しているところが写っている。
紫が手に入れた外のものだとかで、見たものを写せるそうな。
「無駄遣いにもほどがあるんじゃない?」
「いいのよ、こういうのこそ後世に残さなきゃ」
「こんなの残されたら後世のやつらも迷惑でしょうに」
というかあたしなら死ぬ。
霊夢はそう考えながらあごをべったりとコタツの上に乗っけた。
「あー。知り合いのこういうの見るの正直微妙なんだけど」
「あら、参考になるじゃない」
「なんの」
「次に霊夢と会うときの」
ガンっ
霊夢は額をコタツに打ち付けた。
ギギギッと首を回転させながら紫を睨む。
「わたしが、こういうのを、のこすのは」
「まあ霊夢はきらいかもしれないけど」
紫はいつもとかわらぬ顔で笑う。
「私は、霊夢に遺してほしいとおもってるのよ」
「……嫌だからね」
こんなときにどういう顔をしていいかわからない。
わからないから、霊夢はこう言うしかなかった。
「ほかのやつに見せるの」
全くだ!!
甘いけど切ない
切ないんだ。
冒頭のいちゃいちゃする2人のシーンが切なく思えます。
でもちょっとしんみり