「吸血鬼の館で青空教室なんて笑えない冗談よね」
紅魔館の一部が派手に吹き飛んでいる。
その下ではその原因となった魔理沙とフランが咲夜に怒られながら修繕作業をしている。
「悪魔の妹も咲夜さんの前では泣きながら怒られるんですね」
羽根さえついてなければ、姉に怒られてる妹にしか見えない。
もっともその姉は一人でふらふらと遊びに出かけてここにはいないわけだが。
「紅魔館で一番怖いのはレミィじゃなくて咲夜よ。早苗も悪いことしたら正座させられて怒られるから気を付けなさい」
「なんか経験したことがある言い方ですね」
「あるのよ。レミィも美鈴も経験済みよ」
館の主まで正座させる咲夜さんは本当に優秀なメイドさん。
「早苗は弾幕で暴れることはないし礼儀もあるから大丈夫でしょうけどね。さ、あの二人には頑張って働いてもらうとして私たちはゴーレムの作成にかかりましょう」
パチュリーの取り出した魔道書には、自作のゴーレム作成レシピが書かれていた。
早苗にも分かる内容で書かれているお蔭で、プラモデルの説明書を見る感覚でページをめくってゆく。
「弾幕ごっこに活用できて、かつロボットぽい外見をしたい。これはなかなかに難易度高いですよ」
ゴーレム自体が高機動に考えられたものではない。
大地を素材にした高い防御力と近接の腕力が利点であり、長距離の移動や遠距離の戦いを考えて開発はされていなかった。
「そこで早苗にはデザインをお願いしたいのよね。1年戦争のMSとかなら下半身も太いしゴーレムが自分の重量で自壊なんてことは無くなるはず」
「それは大丈夫ですよ。ただこのたたき台にドムを選ぶのは外見はいいと思いますが、ホバー移動の再現はどうします?」
「風符と合わせればいけそうじゃないかしら」
「そうすると、ゴーレムに使う魔力量が増えるから1機当たりの稼働時間は減りそうですね。こっちのゲルググとかはどうでしょうか」
アリスと上海のような魔力をつなげて稼働させる人形なら、家主の魔力がある限り半永久に稼働することができる。
しかし彼女たちが今開発しているのは、独立して稼働するように組み上げているものである。
最初に注入する魔力が無くなった時点でそのゴーレムは動かなくなる。
「むきゅー。ドムはお気に入りだから何とかならない?」
なかなかに渋いセンスを持った魔女である。
彼女曰くここまで走り回れるのは羨ましいとのこと。
「いやまぁそこを開発するのが魔女な気がしますが」
「デスヨネ」
すでに自分がたたき台でドムの設計をした時点で長時間の稼働は難しいと理解していた。
それでも早苗ならきっとなんとかしてくれる! と、少しばかり甘い期待をしてみたが無理なものは無理だった。
「あ! スコープドッグとかどうでしょうか」
「なるほど。最低なメカじゃない。その意見採用よ」
実際パイロットが乗るわけじゃないので、ある意味で最低ではなく最高と考えてもいいかもしれない。
脱出装置やらなんやらがなくても、死ぬことはないゴーレムなんだから。これこそまさに最低野郎である。
「これならドム1機の魔力消費で10機近くは作れそうね。このパチュリー・ノーレッジですら……むせる!」
早苗がデザインを書き上げていきパチュリーが魔力の動力を確保していく。
強度もほぼそのままなので、レミリアが殴れば一撃で穴が開くほどに脆い。
大量に数を生み出して使い捨てのように弾を撃たせるための道具。
攻撃を受ければさっさと壊れてしまう。そんな代物だからこそロボット好きの彼女達は熱くなる。
「大昔のゴーレムなら人型で稼働させるだけだったけれど、ローラーダッシュとか回路組み上げるのが思ったよりも難しいわね」
作られたデザインから式をくみ上げていくが、機械的なパーツに適した式なぞ今までの魔女が考えたわけがない。
参考資料も無く独学で組まなければならない。
「アリスが手伝ってくれたら楽なのに。ゴリアテの式とか流用すればドムですら作れそうなのに」
あの巨大人形があれだけ動かせるならモビルスーツの1機や2機もできる。
そう思って何度か強請ってるけどなかなか首を縦に振ってくれない人形遣い。
「独自に開発してるみたいだし、なかなか難しいでしょう。ただ壁に当たった時に声をかけてみれば2人で何かつくるチャンスになるんじゃないですか」
「そうね。その時こそドムを作るチャンスよ」
どこまでドムが好きなんだこの人は。
スコープドッグもホバーではないとはいえ、ローラーダッシュで似たような動きをする。
何かこの動きに魅かれるものが彼女の中にはあるのだろう。
「むーきゅ! ローラーの原理を考えれば魔術的なものより科学的な動き。科学書にヒントがあるとみた!」
普段の読書は小悪魔に頼んで持って着てもらうのに、今回は意気揚々と自分で走って本棚に向かっていく。
仕事が無くて少し寂しそうな顔をしている小悪魔の表情が印象的だったと早苗はのちに語る。
「私の思った通りね。これで武器も私の魔力弾を120発詰め込んでおけば完成ね。足回り以外は昔ながらの作りでよかったから助かったわ」
「でも、動きが最高速度か停止かしかないのはまだまだ改良の余地がありますね。……それに流石に原作に拘らずに弾数は沢山入れてもいいと思いますが?」
「ロマンよロマン。この最低野郎が無尽蔵に弾を打ち出すとかありえないじゃない」
最低野郎最低野郎と連呼しているが、出来栄えは気に入っておりゴーレム相手に抱き着いてごろにゃんしている。
人によったらパチュリーに罵声を浴びせられながら甘えられるとかご褒美な気がする。
「ただ足回りの改良点は早苗の言うとおりね。中枢システムの開発はアリスのほうが上手だからどうしても苦手分野になるわね」
属性魔法は右に出る者がいない。とはいえ、魔術はそれだけではない。
アリスのように人形を媒体としている魔術もあれば、白蓮のような自己強化の魔術もある。
今回のゴーレムのシステムで言うならアリスの得意分野にあたる。
さらに彼女ならこれを人形として作り上げてしまうだろう。
「それを差し引いてもこの最低野郎は私の自信作だわ。あぁホバーとかローラーダッシュはたまらないわ。最低野郎にぜひ乗ってみたいわね」
「と、言うと思いまして、コクピットも用意しておきました!」
奇跡と常識に囚われないと言えばだいたいのことは許されると思っている彼女が、ゴーレムの中身をこっそり改造しておいてくれました。
「流石よ。では早速起動」
パチュリーの魔力を流し込みスコープドッグはその一歩を踏み出し
「むきゅううううううううううううううううううう!!!」
最高速度で図書館の壁に突っ込んでぶち当たる。
中に人が入ろうが、最高速度と停止しかできないのは変わりない。
とっさに魔力障壁を張って機体とパイロットは辛うじて無事だったものの図書館の壁は見事に穴が開いている。
「……一日で何か所館を壊せば気が済むんですか?」
パチュリーと早苗の後ろには鬼の形相をした咲夜が立っている。
下手すれば鬼の萃香ですら泣いて逃げる。
「あわ、あわわわ」
「むきゅう!」
「お二人ともそこに正座!」
「「はい!」」
咲夜の声に二人は抵抗することすらできず体が反応する。
「いいですか。こういうものを作るなと私は言いませんが、使う場所はしっかり考えてください」
このあと1時間ほど咲夜の説教は続いた。
ようやく終わったと思った二人に手渡された壁の修繕セット。
壊したら自分で直す。そう言い渡された二人は黙々と壁の穴を埋める作業を始める。
「なんぞこれ……」
遊びから帰ってきたレミリアは出発前よりも酷くなった我が家を見て思わずそうつぶやいた。
紅魔館の一部が派手に吹き飛んでいる。
その下ではその原因となった魔理沙とフランが咲夜に怒られながら修繕作業をしている。
「悪魔の妹も咲夜さんの前では泣きながら怒られるんですね」
羽根さえついてなければ、姉に怒られてる妹にしか見えない。
もっともその姉は一人でふらふらと遊びに出かけてここにはいないわけだが。
「紅魔館で一番怖いのはレミィじゃなくて咲夜よ。早苗も悪いことしたら正座させられて怒られるから気を付けなさい」
「なんか経験したことがある言い方ですね」
「あるのよ。レミィも美鈴も経験済みよ」
館の主まで正座させる咲夜さんは本当に優秀なメイドさん。
「早苗は弾幕で暴れることはないし礼儀もあるから大丈夫でしょうけどね。さ、あの二人には頑張って働いてもらうとして私たちはゴーレムの作成にかかりましょう」
パチュリーの取り出した魔道書には、自作のゴーレム作成レシピが書かれていた。
早苗にも分かる内容で書かれているお蔭で、プラモデルの説明書を見る感覚でページをめくってゆく。
「弾幕ごっこに活用できて、かつロボットぽい外見をしたい。これはなかなかに難易度高いですよ」
ゴーレム自体が高機動に考えられたものではない。
大地を素材にした高い防御力と近接の腕力が利点であり、長距離の移動や遠距離の戦いを考えて開発はされていなかった。
「そこで早苗にはデザインをお願いしたいのよね。1年戦争のMSとかなら下半身も太いしゴーレムが自分の重量で自壊なんてことは無くなるはず」
「それは大丈夫ですよ。ただこのたたき台にドムを選ぶのは外見はいいと思いますが、ホバー移動の再現はどうします?」
「風符と合わせればいけそうじゃないかしら」
「そうすると、ゴーレムに使う魔力量が増えるから1機当たりの稼働時間は減りそうですね。こっちのゲルググとかはどうでしょうか」
アリスと上海のような魔力をつなげて稼働させる人形なら、家主の魔力がある限り半永久に稼働することができる。
しかし彼女たちが今開発しているのは、独立して稼働するように組み上げているものである。
最初に注入する魔力が無くなった時点でそのゴーレムは動かなくなる。
「むきゅー。ドムはお気に入りだから何とかならない?」
なかなかに渋いセンスを持った魔女である。
彼女曰くここまで走り回れるのは羨ましいとのこと。
「いやまぁそこを開発するのが魔女な気がしますが」
「デスヨネ」
すでに自分がたたき台でドムの設計をした時点で長時間の稼働は難しいと理解していた。
それでも早苗ならきっとなんとかしてくれる! と、少しばかり甘い期待をしてみたが無理なものは無理だった。
「あ! スコープドッグとかどうでしょうか」
「なるほど。最低なメカじゃない。その意見採用よ」
実際パイロットが乗るわけじゃないので、ある意味で最低ではなく最高と考えてもいいかもしれない。
脱出装置やらなんやらがなくても、死ぬことはないゴーレムなんだから。これこそまさに最低野郎である。
「これならドム1機の魔力消費で10機近くは作れそうね。このパチュリー・ノーレッジですら……むせる!」
早苗がデザインを書き上げていきパチュリーが魔力の動力を確保していく。
強度もほぼそのままなので、レミリアが殴れば一撃で穴が開くほどに脆い。
大量に数を生み出して使い捨てのように弾を撃たせるための道具。
攻撃を受ければさっさと壊れてしまう。そんな代物だからこそロボット好きの彼女達は熱くなる。
「大昔のゴーレムなら人型で稼働させるだけだったけれど、ローラーダッシュとか回路組み上げるのが思ったよりも難しいわね」
作られたデザインから式をくみ上げていくが、機械的なパーツに適した式なぞ今までの魔女が考えたわけがない。
参考資料も無く独学で組まなければならない。
「アリスが手伝ってくれたら楽なのに。ゴリアテの式とか流用すればドムですら作れそうなのに」
あの巨大人形があれだけ動かせるならモビルスーツの1機や2機もできる。
そう思って何度か強請ってるけどなかなか首を縦に振ってくれない人形遣い。
「独自に開発してるみたいだし、なかなか難しいでしょう。ただ壁に当たった時に声をかけてみれば2人で何かつくるチャンスになるんじゃないですか」
「そうね。その時こそドムを作るチャンスよ」
どこまでドムが好きなんだこの人は。
スコープドッグもホバーではないとはいえ、ローラーダッシュで似たような動きをする。
何かこの動きに魅かれるものが彼女の中にはあるのだろう。
「むーきゅ! ローラーの原理を考えれば魔術的なものより科学的な動き。科学書にヒントがあるとみた!」
普段の読書は小悪魔に頼んで持って着てもらうのに、今回は意気揚々と自分で走って本棚に向かっていく。
仕事が無くて少し寂しそうな顔をしている小悪魔の表情が印象的だったと早苗はのちに語る。
「私の思った通りね。これで武器も私の魔力弾を120発詰め込んでおけば完成ね。足回り以外は昔ながらの作りでよかったから助かったわ」
「でも、動きが最高速度か停止かしかないのはまだまだ改良の余地がありますね。……それに流石に原作に拘らずに弾数は沢山入れてもいいと思いますが?」
「ロマンよロマン。この最低野郎が無尽蔵に弾を打ち出すとかありえないじゃない」
最低野郎最低野郎と連呼しているが、出来栄えは気に入っておりゴーレム相手に抱き着いてごろにゃんしている。
人によったらパチュリーに罵声を浴びせられながら甘えられるとかご褒美な気がする。
「ただ足回りの改良点は早苗の言うとおりね。中枢システムの開発はアリスのほうが上手だからどうしても苦手分野になるわね」
属性魔法は右に出る者がいない。とはいえ、魔術はそれだけではない。
アリスのように人形を媒体としている魔術もあれば、白蓮のような自己強化の魔術もある。
今回のゴーレムのシステムで言うならアリスの得意分野にあたる。
さらに彼女ならこれを人形として作り上げてしまうだろう。
「それを差し引いてもこの最低野郎は私の自信作だわ。あぁホバーとかローラーダッシュはたまらないわ。最低野郎にぜひ乗ってみたいわね」
「と、言うと思いまして、コクピットも用意しておきました!」
奇跡と常識に囚われないと言えばだいたいのことは許されると思っている彼女が、ゴーレムの中身をこっそり改造しておいてくれました。
「流石よ。では早速起動」
パチュリーの魔力を流し込みスコープドッグはその一歩を踏み出し
「むきゅううううううううううううううううううう!!!」
最高速度で図書館の壁に突っ込んでぶち当たる。
中に人が入ろうが、最高速度と停止しかできないのは変わりない。
とっさに魔力障壁を張って機体とパイロットは辛うじて無事だったものの図書館の壁は見事に穴が開いている。
「……一日で何か所館を壊せば気が済むんですか?」
パチュリーと早苗の後ろには鬼の形相をした咲夜が立っている。
下手すれば鬼の萃香ですら泣いて逃げる。
「あわ、あわわわ」
「むきゅう!」
「お二人ともそこに正座!」
「「はい!」」
咲夜の声に二人は抵抗することすらできず体が反応する。
「いいですか。こういうものを作るなと私は言いませんが、使う場所はしっかり考えてください」
このあと1時間ほど咲夜の説教は続いた。
ようやく終わったと思った二人に手渡された壁の修繕セット。
壊したら自分で直す。そう言い渡された二人は黙々と壁の穴を埋める作業を始める。
「なんぞこれ……」
遊びから帰ってきたレミリアは出発前よりも酷くなった我が家を見て思わずそうつぶやいた。
俺このドム好きの紫もやし大好きかもしれないw