※『新月の夜に会いましょう』数ヵ月後の、短い後日談話です。
れみりゃお嬢様は、おかんむりでした。
大好きなれーむおねーちゃんと会えたけれど、とてもおかんむりでした。ぷんぷんでした。
頬を、食べ物を一杯詰め込んだリスみたいにぷうっと膨らませて、顔を上向けて、ふーふーと、迫力は全くありませんが、威嚇するように、じーっとれーむおねーちゃんを見ながらお座りしています。
二人の距離は手を伸ばせば簡単に届く程度で、何故か二人とも行儀良く座布団の上に正座していました。
「えーーっと…」
困ったな。
と、頭を指先でぽりぽり掻きながら、れーむおねーちゃんは視線をあちらこちらへ彷徨わせつつ呟きます。
「どうしたの、レミリア?」
本当は、理由なんて分かっています。
「おねーちゃん、やくそくやぶったっ! れみりゃしんじてたのに、うらぎったっ!」
あちゃー、それか。眠り間際に言ったことを、よもや覚えているとは。
れーむおねーちゃんは、額に手を当てて天井を仰ぎます。
「つぎ起きる時、お姉ちゃんが傍に居てあげるね」
前回のお別れの時、眠り間際にレミリアにれーむおねーちゃんが言った言葉です。
れみりゃは一字一句覚えていました。
だったら、ねむるのなんてこわくない。おきるのもこわくない。ううん、ずっとずーっとたのしみだ!
そう思っていたのです。
なのに、起きたら傍にれーむおねーちゃんは居ませんでした。
「お目覚めですか、お嬢様?」
居たのは咲夜でした。
「…ち…」
「血?」
「ちがうっ! ちがうもんっ!! さくやじゃないもんっ!! れーむおねーちゃんがいるはずなんだもんっ!! これはゆめだもんっ!!」
と、起きた瞬間に、良く分からない我侭を言われた挙句、八つ当たりでサーヴァントフライヤーで咲夜は勢い良く吹っ飛ばされたのですが、咲夜は全く悪くありません。可哀相に。
暴れるれみりゃを宥め、抑え付け、博麗神社まで連れてきた彼女は被害者ではあれ、一片の罪も無く、むしろ功労者と言って良いでしょう。よく紅魔館が壊れなかったものです。
ここに来る時も、抱きかかえられながら暴れていたのでしょう。彼女の顔には、いくつもの引っかき傷が見えます。あぁ、何て痛々しい、綺麗な顔が台無しです。
「うふふふ、お嬢様の爪が私の肌を…」
傷口を指でなぞりながら、恍惚とした表情で、咲夜は博麗神社の片隅で呟きました。
訂正します。顔から血を流しながら、恍惚としていると、ただの危ない人にしか見えませんが、彼女は彼女で幸せなようなので、そっとしておきましょう。
さて、冒頭の始まりから最早、半刻程。
それでも、れみりゃはピクリとも動きません。じーっとしたまま、ふーふーと息を吐き威嚇、視線はれーむおねーちゃんの両の眼を捉えて放しません。
これには、れーむおねーちゃんも本格的に困りました。
約束を破ってしまったというか、そもそも出来ないような約束をした彼女が悪いのですが、彼女は彼女で今回会ったら何をして遊ぼうかとか、色々と考えていたのです。ですが、れみりゃがご機嫌斜めでピクリとも動かないのでは、どうしようもありません。
「どうしたらお姉ちゃんを許してくれる?」
「ゆるさないっ! うらぎりものは、ぜったいにゆるしちゃいけないのっ!」
「裏切り者…」
一体どこでそんな言葉を…。
と思いつつ、「困ったな、困ったなー。子供の扱いなんて分からないわよ」と、れーむおねーちゃんは胸中で呟きました。
助けを求めて咲夜を見るも、顔から血を流しつつ恍惚としているのですから、とてもこの場を打開してくれるとは思えませんでした。
「はぁ…」
大きな溜息を一つ。首をガクリと折ります。
「それで、じゃあレミリアは今、何をしているの?」
れーむおねーちゃんは、顔全体から困ったなオーラを発しながら問いかけました。
「おねーちゃんをころすの」
「へ?」
邪気の欠片も無いれみりゃから紡がれた言葉は、予想外の外くらいでした。
「ころ…す…」
反射的に、れーむおねーちゃんの背筋がピンと伸び凍りつきます。
殺す。問答無用で、だんまくごっこという名のデスゲーム開始ということだろうか?
それとも、平常時のレミリアの様に、方向性の間違った愛という名のハートブレイクショットでもぶちかましてくるのか?
ちなみに、その時には咲夜と二人で結界を張って押し留めたものの、神社の鳥居がぶっ壊された。中々にショッキングな威力であった。
「どうやって…私を殺すつもりなの?」
力が弱まっているとはいえ、レミリアに本気で襲い掛かられたら、博麗の巫女のれーむおねーちゃんとしても中々にピンチです。何とかして、この危機から脱したいところ。
「さっきから、ずーーっとやってる」
むーーー。なんでだめなんだろー。
ぷしゅー、と頬に溜めた空気を吐き出しながら、そう言いました。
「さっきから、ずっとやってる?」
全く持って危険を感じていなかったんだけどなぁ。勘が鈍ったかしら?
首を傾げつつ、れーむおねーちゃんは、れみりゃに聞きました。
「うん、ずっとやってるよ」
「今も?」
「いまも」
「じーっと、私の事を見てるだけじゃない」
返事をする時も、片時もその視線を動かすことなく。
ん? 視線を動かすことなく? いやいや、そんなまさか。
思いつつも、取り敢えず聞いてみました。
「それは何ていう方法なの?」
じーっ。
じじーーっ。
じーーーーーーーーっ!
返事はありませんでしたが、れみりゃは頬を再び膨らませ、眉を心持ちキュッと引き締め、身長差の関係から上目遣いで、れーむおねーちゃんを凝視しました。
そして一言。
「みつめころす」
ブバァ!
という擬音が丁度良い感じで、鼻血が吹き出ました。
いえ、れーむおねーちゃんではありません。おねーちゃんはおねーちゃんで、胸を掻き毟ったり、何も無い中空に手を伸ばしたりしていて、ある意味ヤバ気ではありますが、何とか自分を保っています。
「わ…わわ私にもお嬢様…。ああ…でも、そんなことされたら…死ぬわ…ね」
と言いながら、必死に鼻を押さえているのですが、今の時点で、このままいったらアンタ出血多量で死ぬんじゃないの? 的状態です。お嬢様の妄想抱いて死ねるのなら、なんか本望っぽい気もしますが、とりあえず落ち着きなさい。
「みつめころすのっ!」
れみりゃは繰り返しました。大きな声で、頬を膨らませ、酸欠気味なのか顔を赤くしながら。
どうやら、れみりゃは本気で言っています。おかしな知識を仕込んだのは、恐らくパチュリー辺りでしょう。見つめ殺し合い、とかいう訳ワカな遊びをやっていた可能性すらありそうです。
これには流石の、れーむおねーちゃんも参りました。必死に口と鼻を押さえます。そうしないと、ハァハァとかいう怪しげな呻き声とか、鼻から真っ赤なティーが零れ落ちそうだからです。
「わ…わたしが悪かったわレミリア…」
最早、れみりゃを正面から見返すことすら出来ません。
『グッバイ、無重力!』
れーむおねえちゃんの頭の中で、小さな霊夢お姉さんが親指をビッと立てて言いました。
確かにこの瞬間、博麗の無重力の巫女はお亡くなりになったのです―
翌日。
「レミリア…ふふ。うふふふふ…」
と一人、座敷で正座しながら虚ろな焦点で笑いながら鼻血を出していた所を、朝飯をたかりにきた魔理沙に巫女は保護された。
「霊夢が、霊夢が壊れちまった…」
と言い、治療法を探して永遠亭の永琳や、紅魔館のパチュリー、同じ魔法の森に住むアリスを、箒の後ろに霊夢を乗せて尋ねまわったそうな。
その際、後ろに霊夢を乗せていたことで、パチュリーやアリスと一悶着あったりしたのは、また別のお話。
博麗の巫女がこの後、無重力に戻れたかどうかは幻想郷の人々しか知らない――
れみりゃお嬢様は、おかんむりでした。
大好きなれーむおねーちゃんと会えたけれど、とてもおかんむりでした。ぷんぷんでした。
頬を、食べ物を一杯詰め込んだリスみたいにぷうっと膨らませて、顔を上向けて、ふーふーと、迫力は全くありませんが、威嚇するように、じーっとれーむおねーちゃんを見ながらお座りしています。
二人の距離は手を伸ばせば簡単に届く程度で、何故か二人とも行儀良く座布団の上に正座していました。
「えーーっと…」
困ったな。
と、頭を指先でぽりぽり掻きながら、れーむおねーちゃんは視線をあちらこちらへ彷徨わせつつ呟きます。
「どうしたの、レミリア?」
本当は、理由なんて分かっています。
「おねーちゃん、やくそくやぶったっ! れみりゃしんじてたのに、うらぎったっ!」
あちゃー、それか。眠り間際に言ったことを、よもや覚えているとは。
れーむおねーちゃんは、額に手を当てて天井を仰ぎます。
「つぎ起きる時、お姉ちゃんが傍に居てあげるね」
前回のお別れの時、眠り間際にレミリアにれーむおねーちゃんが言った言葉です。
れみりゃは一字一句覚えていました。
だったら、ねむるのなんてこわくない。おきるのもこわくない。ううん、ずっとずーっとたのしみだ!
そう思っていたのです。
なのに、起きたら傍にれーむおねーちゃんは居ませんでした。
「お目覚めですか、お嬢様?」
居たのは咲夜でした。
「…ち…」
「血?」
「ちがうっ! ちがうもんっ!! さくやじゃないもんっ!! れーむおねーちゃんがいるはずなんだもんっ!! これはゆめだもんっ!!」
と、起きた瞬間に、良く分からない我侭を言われた挙句、八つ当たりでサーヴァントフライヤーで咲夜は勢い良く吹っ飛ばされたのですが、咲夜は全く悪くありません。可哀相に。
暴れるれみりゃを宥め、抑え付け、博麗神社まで連れてきた彼女は被害者ではあれ、一片の罪も無く、むしろ功労者と言って良いでしょう。よく紅魔館が壊れなかったものです。
ここに来る時も、抱きかかえられながら暴れていたのでしょう。彼女の顔には、いくつもの引っかき傷が見えます。あぁ、何て痛々しい、綺麗な顔が台無しです。
「うふふふ、お嬢様の爪が私の肌を…」
傷口を指でなぞりながら、恍惚とした表情で、咲夜は博麗神社の片隅で呟きました。
訂正します。顔から血を流しながら、恍惚としていると、ただの危ない人にしか見えませんが、彼女は彼女で幸せなようなので、そっとしておきましょう。
さて、冒頭の始まりから最早、半刻程。
それでも、れみりゃはピクリとも動きません。じーっとしたまま、ふーふーと息を吐き威嚇、視線はれーむおねーちゃんの両の眼を捉えて放しません。
これには、れーむおねーちゃんも本格的に困りました。
約束を破ってしまったというか、そもそも出来ないような約束をした彼女が悪いのですが、彼女は彼女で今回会ったら何をして遊ぼうかとか、色々と考えていたのです。ですが、れみりゃがご機嫌斜めでピクリとも動かないのでは、どうしようもありません。
「どうしたらお姉ちゃんを許してくれる?」
「ゆるさないっ! うらぎりものは、ぜったいにゆるしちゃいけないのっ!」
「裏切り者…」
一体どこでそんな言葉を…。
と思いつつ、「困ったな、困ったなー。子供の扱いなんて分からないわよ」と、れーむおねーちゃんは胸中で呟きました。
助けを求めて咲夜を見るも、顔から血を流しつつ恍惚としているのですから、とてもこの場を打開してくれるとは思えませんでした。
「はぁ…」
大きな溜息を一つ。首をガクリと折ります。
「それで、じゃあレミリアは今、何をしているの?」
れーむおねーちゃんは、顔全体から困ったなオーラを発しながら問いかけました。
「おねーちゃんをころすの」
「へ?」
邪気の欠片も無いれみりゃから紡がれた言葉は、予想外の外くらいでした。
「ころ…す…」
反射的に、れーむおねーちゃんの背筋がピンと伸び凍りつきます。
殺す。問答無用で、だんまくごっこという名のデスゲーム開始ということだろうか?
それとも、平常時のレミリアの様に、方向性の間違った愛という名のハートブレイクショットでもぶちかましてくるのか?
ちなみに、その時には咲夜と二人で結界を張って押し留めたものの、神社の鳥居がぶっ壊された。中々にショッキングな威力であった。
「どうやって…私を殺すつもりなの?」
力が弱まっているとはいえ、レミリアに本気で襲い掛かられたら、博麗の巫女のれーむおねーちゃんとしても中々にピンチです。何とかして、この危機から脱したいところ。
「さっきから、ずーーっとやってる」
むーーー。なんでだめなんだろー。
ぷしゅー、と頬に溜めた空気を吐き出しながら、そう言いました。
「さっきから、ずっとやってる?」
全く持って危険を感じていなかったんだけどなぁ。勘が鈍ったかしら?
首を傾げつつ、れーむおねーちゃんは、れみりゃに聞きました。
「うん、ずっとやってるよ」
「今も?」
「いまも」
「じーっと、私の事を見てるだけじゃない」
返事をする時も、片時もその視線を動かすことなく。
ん? 視線を動かすことなく? いやいや、そんなまさか。
思いつつも、取り敢えず聞いてみました。
「それは何ていう方法なの?」
じーっ。
じじーーっ。
じーーーーーーーーっ!
返事はありませんでしたが、れみりゃは頬を再び膨らませ、眉を心持ちキュッと引き締め、身長差の関係から上目遣いで、れーむおねーちゃんを凝視しました。
そして一言。
「みつめころす」
ブバァ!
という擬音が丁度良い感じで、鼻血が吹き出ました。
いえ、れーむおねーちゃんではありません。おねーちゃんはおねーちゃんで、胸を掻き毟ったり、何も無い中空に手を伸ばしたりしていて、ある意味ヤバ気ではありますが、何とか自分を保っています。
「わ…わわ私にもお嬢様…。ああ…でも、そんなことされたら…死ぬわ…ね」
と言いながら、必死に鼻を押さえているのですが、今の時点で、このままいったらアンタ出血多量で死ぬんじゃないの? 的状態です。お嬢様の妄想抱いて死ねるのなら、なんか本望っぽい気もしますが、とりあえず落ち着きなさい。
「みつめころすのっ!」
れみりゃは繰り返しました。大きな声で、頬を膨らませ、酸欠気味なのか顔を赤くしながら。
どうやら、れみりゃは本気で言っています。おかしな知識を仕込んだのは、恐らくパチュリー辺りでしょう。見つめ殺し合い、とかいう訳ワカな遊びをやっていた可能性すらありそうです。
これには流石の、れーむおねーちゃんも参りました。必死に口と鼻を押さえます。そうしないと、ハァハァとかいう怪しげな呻き声とか、鼻から真っ赤なティーが零れ落ちそうだからです。
「わ…わたしが悪かったわレミリア…」
最早、れみりゃを正面から見返すことすら出来ません。
『グッバイ、無重力!』
れーむおねえちゃんの頭の中で、小さな霊夢お姉さんが親指をビッと立てて言いました。
確かにこの瞬間、博麗の無重力の巫女はお亡くなりになったのです―
翌日。
「レミリア…ふふ。うふふふふ…」
と一人、座敷で正座しながら虚ろな焦点で笑いながら鼻血を出していた所を、朝飯をたかりにきた魔理沙に巫女は保護された。
「霊夢が、霊夢が壊れちまった…」
と言い、治療法を探して永遠亭の永琳や、紅魔館のパチュリー、同じ魔法の森に住むアリスを、箒の後ろに霊夢を乗せて尋ねまわったそうな。
その際、後ろに霊夢を乗せていたことで、パチュリーやアリスと一悶着あったりしたのは、また別のお話。
博麗の巫女がこの後、無重力に戻れたかどうかは幻想郷の人々しか知らない――
恐るべきれみりゃ。
全てのはこのセリフのための前座だったんだよっ!
な、なんだt(略
ともあれGJ!
もちろん、別の話も書いてくれるのだろうと期待してます。
で吹きました♪
そしてあの霊夢をココまで変えるとは凄いなぁ、さすがれみりゃ!
やっぱりラクドさんの書くSSはツボに来ます♪
これからも頑張ってください♪
れみりゃはもう、可愛すぎですねっ!!
いいんだろう。もう理性なんて要らない……!
ああ、だめ。この一言が破壊力ありすぎw
良い落とし方でした。
……(野郎読書終了)
………ドサッ!(野郎萌死)
名前を間違われる程度の能力、からはコメントが頂けませんでした)
なでなでなでなで……
このスカウターが壊れそうなほどの萌力はッ!
( ´Д`)GJハァハァ
前作からの二段構えだからこそ、この威力ですね。
パチュリーさんがれみりゃ嬢に様々な殺し技を伝授しつつ悶絶している姿が浮かびました。
この責任はどう取ってくれるのでしょうか(笑)
れみりゃ…恐ろしい娘。
紅魔館の『紅』は、れみりゃに萌え死んだ人たちの鼻血の紅・・・だったんだ・・・ね・・・(大量の鼻血にて紅のアーチを描きつつ失血死)