※この小説には若干オリジナルキャラクターが出てきます。
ご了承ください。それではどうぞ。
『逃げなくっちゃ』
「はっ、はっ、はっ・・・。」
私は暗い森の中を走っていた。
逃げなくっちゃ。
逃げなくっちゃ逃げなくっちゃ。
逃げなくっちゃ逃げなくっちゃ逃げなくっちゃにげなくっちゃにげなくっちゃ。
頭の中はその言葉で一杯。
自己保存の本能からくる単純で純粋な逃走命令。
私の体はその命令を忠実に実行して、混乱した頭でも足を止めることなく走り続けている。
しかし、それは機械が決められた動きをするのと同じ。
周りの状況を読み取っての変化するものではなく、常に一定。
「はっ、はっ、はっ・・・あ!?」
今まで規則正しく動いていた足が、突然不規則な動きをし、立て直せず私は倒れてしまった。
早い話が何かにつまづいたのだ。
状況を確認しようと、酸欠と暗闇で狭くなった視野を足元に移すと、そこには木の根があった。
一瞬でそれにつまづいたことを理解すると、闇に耳をそばだてながら立ち上がる。
音は確実に近づいて来るものの、まだ少し遠い。
大丈夫、まだ捕まらないだろう。
「あぅ!!」
再び走り出そうとしたとき、左足に鋭い痛みを感じ倒れてしまう。
「あ、足が・・・。」
どうやらさっきつまづいたときに捻ってしまったらしい。
利き足ではないから動けるが、酸欠と疲労で疲れきった私の体は、ここぞとばかりに休息を要求してくる。
「逃げ・・・ないと・・・・・追い・・つかれる・・。」
左足を引きずり、疲れ満足に動かない体を無理に動かしながら私は、どうしてこうなってしまったのだろうと考えていた。
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
その日私は、村の近くの森へ野草を取りに来ていた。
私の住む村は西側を川、他の三方を森に囲まれた場所にあった。
南側は主に野草、東側は木の実、北側はキノコと野草といった感じで大体分かれていた。
川では魚が取れたし、それほど貧しい土地ではなかった。
いつもなら村の南側の森に行くのだが、その日は北側の森へ入った。
なぜ私がその日北側の森に入ったのかは、気まぐれとしか言えない。
昨日は南の森に言ったから、今日は北の森に行こうと言った感じの気まぐれ。
運が良ければ野草や、食べられるキノコに加え、時々来る魔法使いが引き取ってくれるキノコでも取って帰ろうと、軽い気持ちで森に入った。
まさかこんなことになるとは、夢にも思わずに。
最初は森の西側に見える川に沿って歩きながら、野草などを探したのだが、ほとんど見つけられなかった。
仕方がないので川から少し離れ、森の中に入ることにした。
森の中に入ると、所々に食べられる野草がまだ新芽の状態で生えていた。
北側の森は鬱蒼と茂った木により日光が遮られ、野草の成長が遅いらしい。
野草を摘みながら、私は今晩の献立を考えていた。
今日はこれを使って天ぷらを作ろうか。
お母さんこれの天ぷら好きだったからなぁ。
気まぐれでこっちに来たけど、大正解だったなぁ。
そんなことを考えながら夢中で野草を摘んでいると、持ってきた籠はあっという間に一杯になった。
そろそろ帰ろう。
そう思い来た道を引き返す事にする。
来た道は野草の芽が摘み取られているからすぐ判った。
私は鼻歌を歌いながら、意気揚々と帰途についたのだ。
帰り道を3分の1程度行ったところで、私は突然言いようのない悪寒にさらされた。
誰かが私をじっと見ている感じがする。
怖かったが勇気を振り絞り、振り返ると木々の間に目を凝らす。
恐らく日が傾いてきていたのだろう。
森はかなり暗かった。
「・・・・ひっ。」
自分の喉が引きつるのが判った。
暗い木々の間から、血のように紅い目が1つ、2つ、3つ・・・・。
いくつもの紅い目が私を見ていたから。
その目を見た瞬間、私の意識は弾けた。
体が勝手に彼らから離れようと走り出す。
危険。
あれは危険。
私の存在がなくなってしまう。
頭のどこかで、そんな会話が交わされたような気がしたが、それはすぐに、逃げなくっちゃと言う思考に塗りつぶされてしまった。
・
・
・
・
・
・
「おにごっこは・・・・おわりかね・・・?」
突然聞こえてきたくぐもった声に驚き、後ろを振り返る。
そこには闇の中から覗く紅い瞳。
「ぁ・・・・あぁ・・・・あ・・・・。」
全身が瘧に罹ったように震える。
膝から力が抜け、右足1本で支えていた体は地面にへたり込んでしまう。
全方向から視線を感じる。
わずかな希望を求め、自分の周りの闇を見回すが、周囲は既に紅い目で一杯。
私は自分が囲まれ、逃げ道がない事を悟った。
それと同時に私の中で何かが切れてしまった。
逃げようと言う気が起こらない。
体の深い部分で諦めてしまったのだろう。
何気なく顔を上げると、ちょうど木々の間から月が見える。
「お母さん・・・・・ごめんなさい・・・・・。最後にもう一度会いたかった。」
自分の最後を覚悟し目を瞑った時、頭に浮かんだのは母の顔だった。
母は私を一人で育ててくれた。
物心ついた時には父はいなかった。
私がお腹にいるときに、妖怪に襲われ命を落としたらしい。
「優しい人だったわ。優しいけど心の真っ直ぐな人だったわ。」
それが母の父を語るときの母の口癖だった。
母のことを思い浮かべていると顔に影が落ちた。
どんな奴だろう。
せめて自分を食べる奴の顔を見ておこうと目を開けると、無邪気そうな顔が私を覗き込んでいる。
金色の髪に赤いリボンをつけた、可愛い女の子だった。
白いシャツと黒いワンピースが良く似合っている。
「だいじょーぶ?おねーさん?」
どうしてこんなところに女の子が?
「あ、あなた早く逃げな・・・・。」
混乱した頭で、女の子に逃げるように言いかけて気づいた。
紅い瞳。
そうか。
この子も妖怪なんだ。
だからこんな所にいるんだ。
こんな子に食べられるなら良いかぁ。
「あなたは食べられる人類?」
私の考えていることなど毛ほども知らない様子で、少女は無邪気に、本当に無邪気に聞いてきた。
食べられる人類。
Yesなら食べられる。
Noなら食べられない。
それだけの情報を処理するのに、私の頭は時間を必要とした。
しばしの時間の後、はじき出された答えは。
私はまだ死にたくない。
その思考は驚くべき速さで体に伝達されていった。
すなわち首を振るという拒否を示す態度に。
「そーなのかぁ~・・・・。」
きゅるるるぅぅ~
少女が残念そうに言うのと同時に、少女のお腹から可愛らしい音が聞こえてきた。
その音に顔を赤くすると、少女は周りの妖怪たちに視線を移していく。
「ん~、本当は人間が良いんだけど、仕方がないからあなた達で良いや。ここのところまともに食べてないから、お腹がペコペコなの。」
周りを取り囲んだ紅い瞳たちに動揺が走るのが感じられた。
逃げようとする気配も感じたが既に遅かったようだ。
「いっただっきま~す!!」
少女のその声と共に、闇が広がる。
夜の闇よりもう一段濃い闇が。
こちらから見えていた紅い瞳が1つ、また1つと消えていく。
そう長くない時間の後、周りにあった紅い目は1つ残らず消えていた。
「ごちそうさま~♪ぷぅ、お腹一杯。幸せ~。」
少女は本当に幸せそうな顔をしていた。
「どうして・・・。」
「ん?」
私は理解できずに少女に問いかけた。
「どうして、助けてくれたの?」
少女は質問の意味を理解するのに時間がかかった。
しばらく?顔をした後、少女はさも当たり前のように言った。
「おねーさん、食べられない人類なんでしょ?」
あの質問にNoと答えたから自分は助かったのだ。
何だか可笑しくなって笑ってしまった。
「もし仮に今食べられる人類って言ったらどうする?」
何故か答えが聞きたくなり、たずねてしまった。
少女はあごに指を当て、しばらく考え答えた。
「ん~、今はお腹一杯だからいらないけど、お腹がすいたら食べる。」
それを聞き少し安心した。
少なくとも今、命の危険性はないと言う訳だ。
「ねぇ?あなた名前はあるの?」
私はこの少女のことがもっと知りたくなった。
「名前?私はルーミア。宵闇の妖怪よ。」
相手に名前を聞くだけと言うのも、失礼だと思い自分も名乗る。
「私は琴音。助けてくれてありがとう。」
偶然が重なったとはいえ、一応お礼を言っておく。
「ふぇ?私何もしてないよ?」
再び?顔になるルーミアを見て、妹はこう言うものなのかなぁと漠然と考えていた。
「それじゃあ、私は行くね?」
飛んで行こうとするルーミアを私は呼び止めた。
「ちょっと待ってよ。どうせなら、村の近くまで送ってってくれない?」
けが人は助けるものよ?というと、ルーミアはそーなのか?と言いつつ私を抱える。
俗に言うお姫様抱っこだ。
私より5つ位下に見えるルーミアに抱きかかえられるのは、恥ずかしいやら何やらで不思議な感じがした。
私は村から少し離れた場所に下ろしてもらった。
「ありがとう。」
そう言うとルーミアは、にぱっ!とヒマワリのような笑顔を浮かべた。
「それじゃぁね~。」
「ちょっと待って。」
そう言って飛び立とうとする彼女を呼び止める。
「また会える?今度一緒に遊ぼうよ。」
私の言葉に彼女はびっくりしたような顔をしていたが、嬉しそうにうなずく。
「そーだねー!」
「じゃあ、今度昼に村の外れの川で待ってるから。絶対来てね!」
「わかったぁ~。」
そう言って今度こそ彼女は、夜の闇の中に消えていった。
濃い闇を引き連れて。
村に帰ると大騒ぎだった。
夜になっても帰ってこない娘がいる。
こりゃ、妖怪に襲われたんじゃないかと。
私は今夜起こったことを村の大人たちに話した。
やや半信半疑だったが、最終的には助かって良かったとなった。
家に帰ると、母は私を抱きしめて泣いた。
その後、私は今までと同じように暮らしている。
ただ1つ違うのは、妖怪の少女と友達になったこと。
彼女からまた、色々と知り合いが増えるのだが、それはまた今度話すね。
ご了承ください。それではどうぞ。
『逃げなくっちゃ』
「はっ、はっ、はっ・・・。」
私は暗い森の中を走っていた。
逃げなくっちゃ。
逃げなくっちゃ逃げなくっちゃ。
逃げなくっちゃ逃げなくっちゃ逃げなくっちゃにげなくっちゃにげなくっちゃ。
頭の中はその言葉で一杯。
自己保存の本能からくる単純で純粋な逃走命令。
私の体はその命令を忠実に実行して、混乱した頭でも足を止めることなく走り続けている。
しかし、それは機械が決められた動きをするのと同じ。
周りの状況を読み取っての変化するものではなく、常に一定。
「はっ、はっ、はっ・・・あ!?」
今まで規則正しく動いていた足が、突然不規則な動きをし、立て直せず私は倒れてしまった。
早い話が何かにつまづいたのだ。
状況を確認しようと、酸欠と暗闇で狭くなった視野を足元に移すと、そこには木の根があった。
一瞬でそれにつまづいたことを理解すると、闇に耳をそばだてながら立ち上がる。
音は確実に近づいて来るものの、まだ少し遠い。
大丈夫、まだ捕まらないだろう。
「あぅ!!」
再び走り出そうとしたとき、左足に鋭い痛みを感じ倒れてしまう。
「あ、足が・・・。」
どうやらさっきつまづいたときに捻ってしまったらしい。
利き足ではないから動けるが、酸欠と疲労で疲れきった私の体は、ここぞとばかりに休息を要求してくる。
「逃げ・・・ないと・・・・・追い・・つかれる・・。」
左足を引きずり、疲れ満足に動かない体を無理に動かしながら私は、どうしてこうなってしまったのだろうと考えていた。
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その日私は、村の近くの森へ野草を取りに来ていた。
私の住む村は西側を川、他の三方を森に囲まれた場所にあった。
南側は主に野草、東側は木の実、北側はキノコと野草といった感じで大体分かれていた。
川では魚が取れたし、それほど貧しい土地ではなかった。
いつもなら村の南側の森に行くのだが、その日は北側の森へ入った。
なぜ私がその日北側の森に入ったのかは、気まぐれとしか言えない。
昨日は南の森に言ったから、今日は北の森に行こうと言った感じの気まぐれ。
運が良ければ野草や、食べられるキノコに加え、時々来る魔法使いが引き取ってくれるキノコでも取って帰ろうと、軽い気持ちで森に入った。
まさかこんなことになるとは、夢にも思わずに。
最初は森の西側に見える川に沿って歩きながら、野草などを探したのだが、ほとんど見つけられなかった。
仕方がないので川から少し離れ、森の中に入ることにした。
森の中に入ると、所々に食べられる野草がまだ新芽の状態で生えていた。
北側の森は鬱蒼と茂った木により日光が遮られ、野草の成長が遅いらしい。
野草を摘みながら、私は今晩の献立を考えていた。
今日はこれを使って天ぷらを作ろうか。
お母さんこれの天ぷら好きだったからなぁ。
気まぐれでこっちに来たけど、大正解だったなぁ。
そんなことを考えながら夢中で野草を摘んでいると、持ってきた籠はあっという間に一杯になった。
そろそろ帰ろう。
そう思い来た道を引き返す事にする。
来た道は野草の芽が摘み取られているからすぐ判った。
私は鼻歌を歌いながら、意気揚々と帰途についたのだ。
帰り道を3分の1程度行ったところで、私は突然言いようのない悪寒にさらされた。
誰かが私をじっと見ている感じがする。
怖かったが勇気を振り絞り、振り返ると木々の間に目を凝らす。
恐らく日が傾いてきていたのだろう。
森はかなり暗かった。
「・・・・ひっ。」
自分の喉が引きつるのが判った。
暗い木々の間から、血のように紅い目が1つ、2つ、3つ・・・・。
いくつもの紅い目が私を見ていたから。
その目を見た瞬間、私の意識は弾けた。
体が勝手に彼らから離れようと走り出す。
危険。
あれは危険。
私の存在がなくなってしまう。
頭のどこかで、そんな会話が交わされたような気がしたが、それはすぐに、逃げなくっちゃと言う思考に塗りつぶされてしまった。
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「おにごっこは・・・・おわりかね・・・?」
突然聞こえてきたくぐもった声に驚き、後ろを振り返る。
そこには闇の中から覗く紅い瞳。
「ぁ・・・・あぁ・・・・あ・・・・。」
全身が瘧に罹ったように震える。
膝から力が抜け、右足1本で支えていた体は地面にへたり込んでしまう。
全方向から視線を感じる。
わずかな希望を求め、自分の周りの闇を見回すが、周囲は既に紅い目で一杯。
私は自分が囲まれ、逃げ道がない事を悟った。
それと同時に私の中で何かが切れてしまった。
逃げようと言う気が起こらない。
体の深い部分で諦めてしまったのだろう。
何気なく顔を上げると、ちょうど木々の間から月が見える。
「お母さん・・・・・ごめんなさい・・・・・。最後にもう一度会いたかった。」
自分の最後を覚悟し目を瞑った時、頭に浮かんだのは母の顔だった。
母は私を一人で育ててくれた。
物心ついた時には父はいなかった。
私がお腹にいるときに、妖怪に襲われ命を落としたらしい。
「優しい人だったわ。優しいけど心の真っ直ぐな人だったわ。」
それが母の父を語るときの母の口癖だった。
母のことを思い浮かべていると顔に影が落ちた。
どんな奴だろう。
せめて自分を食べる奴の顔を見ておこうと目を開けると、無邪気そうな顔が私を覗き込んでいる。
金色の髪に赤いリボンをつけた、可愛い女の子だった。
白いシャツと黒いワンピースが良く似合っている。
「だいじょーぶ?おねーさん?」
どうしてこんなところに女の子が?
「あ、あなた早く逃げな・・・・。」
混乱した頭で、女の子に逃げるように言いかけて気づいた。
紅い瞳。
そうか。
この子も妖怪なんだ。
だからこんな所にいるんだ。
こんな子に食べられるなら良いかぁ。
「あなたは食べられる人類?」
私の考えていることなど毛ほども知らない様子で、少女は無邪気に、本当に無邪気に聞いてきた。
食べられる人類。
Yesなら食べられる。
Noなら食べられない。
それだけの情報を処理するのに、私の頭は時間を必要とした。
しばしの時間の後、はじき出された答えは。
私はまだ死にたくない。
その思考は驚くべき速さで体に伝達されていった。
すなわち首を振るという拒否を示す態度に。
「そーなのかぁ~・・・・。」
きゅるるるぅぅ~
少女が残念そうに言うのと同時に、少女のお腹から可愛らしい音が聞こえてきた。
その音に顔を赤くすると、少女は周りの妖怪たちに視線を移していく。
「ん~、本当は人間が良いんだけど、仕方がないからあなた達で良いや。ここのところまともに食べてないから、お腹がペコペコなの。」
周りを取り囲んだ紅い瞳たちに動揺が走るのが感じられた。
逃げようとする気配も感じたが既に遅かったようだ。
「いっただっきま~す!!」
少女のその声と共に、闇が広がる。
夜の闇よりもう一段濃い闇が。
こちらから見えていた紅い瞳が1つ、また1つと消えていく。
そう長くない時間の後、周りにあった紅い目は1つ残らず消えていた。
「ごちそうさま~♪ぷぅ、お腹一杯。幸せ~。」
少女は本当に幸せそうな顔をしていた。
「どうして・・・。」
「ん?」
私は理解できずに少女に問いかけた。
「どうして、助けてくれたの?」
少女は質問の意味を理解するのに時間がかかった。
しばらく?顔をした後、少女はさも当たり前のように言った。
「おねーさん、食べられない人類なんでしょ?」
あの質問にNoと答えたから自分は助かったのだ。
何だか可笑しくなって笑ってしまった。
「もし仮に今食べられる人類って言ったらどうする?」
何故か答えが聞きたくなり、たずねてしまった。
少女はあごに指を当て、しばらく考え答えた。
「ん~、今はお腹一杯だからいらないけど、お腹がすいたら食べる。」
それを聞き少し安心した。
少なくとも今、命の危険性はないと言う訳だ。
「ねぇ?あなた名前はあるの?」
私はこの少女のことがもっと知りたくなった。
「名前?私はルーミア。宵闇の妖怪よ。」
相手に名前を聞くだけと言うのも、失礼だと思い自分も名乗る。
「私は琴音。助けてくれてありがとう。」
偶然が重なったとはいえ、一応お礼を言っておく。
「ふぇ?私何もしてないよ?」
再び?顔になるルーミアを見て、妹はこう言うものなのかなぁと漠然と考えていた。
「それじゃあ、私は行くね?」
飛んで行こうとするルーミアを私は呼び止めた。
「ちょっと待ってよ。どうせなら、村の近くまで送ってってくれない?」
けが人は助けるものよ?というと、ルーミアはそーなのか?と言いつつ私を抱える。
俗に言うお姫様抱っこだ。
私より5つ位下に見えるルーミアに抱きかかえられるのは、恥ずかしいやら何やらで不思議な感じがした。
私は村から少し離れた場所に下ろしてもらった。
「ありがとう。」
そう言うとルーミアは、にぱっ!とヒマワリのような笑顔を浮かべた。
「それじゃぁね~。」
「ちょっと待って。」
そう言って飛び立とうとする彼女を呼び止める。
「また会える?今度一緒に遊ぼうよ。」
私の言葉に彼女はびっくりしたような顔をしていたが、嬉しそうにうなずく。
「そーだねー!」
「じゃあ、今度昼に村の外れの川で待ってるから。絶対来てね!」
「わかったぁ~。」
そう言って今度こそ彼女は、夜の闇の中に消えていった。
濃い闇を引き連れて。
村に帰ると大騒ぎだった。
夜になっても帰ってこない娘がいる。
こりゃ、妖怪に襲われたんじゃないかと。
私は今夜起こったことを村の大人たちに話した。
やや半信半疑だったが、最終的には助かって良かったとなった。
家に帰ると、母は私を抱きしめて泣いた。
その後、私は今までと同じように暮らしている。
ただ1つ違うのは、妖怪の少女と友達になったこと。
彼女からまた、色々と知り合いが増えるのだが、それはまた今度話すね。
欲求に忠実で素直で、イメージにぴったりです。
この出会いからまた、どんな出会いが広がるのか気になります
ありがとうございます。
そうですね。
多分色々とあると思います。
この子(小説)がこれからどう育っていくかは、私にも判りません。
幸せな話にしたいと思っていますが。
やっぱりルーミアは素直なところが一番の魅力ですよね。面白かったです。
いいですね。
ちょっと滑稽でちょっと怖い、こんなルーミアは間違いなく幻想郷の妖怪です。
思わせぶりな幕の引き方が気になります。
もしかして続くのかな?