Coolier - 新生・東方創想話

冬のわすれもの-前編-

2005/06/23 11:17:47
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※多分に俺設定および脳内人物補正が含まれております。この先、ご注意してお読み下さい。


























冬の妖精。



 彼女達は、冬の訪れと共に現れ、春の訪れと共に去って行く。
何処から来て何処で眠りにつくのか彼女らさえも知らず、知るのはただ冬に自らがあることと、冬を振り撒いていたい欲求だけ。
幻想郷は彼女らにとってひと時の遊び場に過ぎず、冬の間に満足するまで戯れて、溶けて大地に吸い込まれる白雪に冬の記憶を溶かして次の冬まで去って行く。
その記憶は大地に刻まれるが、彼女ら自身は雪と同じようにいつでも新しく、次に現れる時には何ひとつ覚えていない。去年の雪と、今年の雪は別のものなのだから。
そして、今年もレティ・ホワイトロックは幻想郷に現れていた。雪の衣で全てを覆い、眠りの中で大地を癒す、彼女の知識が知らずとも心が知っているその偉大な務めを果たすために。
他にも冬の妖精達はいたが、みな各地に散っていた。だから、いつでも彼女は一人だった。
しかし、特にそれを寂しいと思うことはなかった。同じ冬の一部として常に姉妹達とは繋がり、冬を撒きながら時々顔を合わせては戯れることも出来たのだから。
いや、そもそも、寂しいという概念そのものが希薄なのだ。彼女らにとっては、これが当たり前の生き方なのだから。自らの生まれたままに満足出来ず、不幸を知ってしまうのはせっかちな人間や妖怪だけだ。
「あ、レティー!」
妖精にもせっかちはいる。しかし、同じせっかちでも、この少女達のものは人間や妖怪のそれに似ている…彼方から突進して来るチルノとトリルについて、レティはそう考えていた。特に意味はないが。
「どこに行ってたのさ、レティ。いきなりぱっといなくなっちゃって、つまんなかったよー。」
「少し向こうの山岳のほうに行ってたの…行きたくなってね」
「そっか…でも、戻って来たんだしあたい達とまた遊んでくれるよね?」
妖精の気質は本来非常に刹那的であちこちへ興味が移り変わり、チルノのように特定のものとの関係を深めようとする者は珍しかった。
彼女はレティにとっては驚くほどの情熱でレティにくっついて来た…うっとうしく思うこともあったが、それでも何となく面白くて憎めなかった。たまには変わったことも悪くない…そういうことだろう。
「チルノちゃんったら…レティにだってしたいことがあるんだもの、あんまり無理言っちゃ駄目だよ?」
変り種と言えば、このトリルもチルノ以上の変わり者だった。
妖精らしく陽気で悪戯好きではあっても、他者の都合や心情を汲み取ろうとする妖精などそうそうお目にかかれるものではない。
「えー、いいじゃん。我慢してたんだもん、遊びたいよー」
「チルノちゃんってば…」
「まあ、都合なんてないし別にいいわよ。それで、今日はどこで?」
微かに頬がゆるむのを感じながら、レティは二人の言葉を打ち切った。
「へへー…それじゃ、また弾幕しようよ。今度こそ勝つよっ!トリルといっぱい練習したんだから!」
「私は死ぬかと思ったわよう…チルノちゃん強いんだから」
ぼやくトリルの言葉は見事に耳に入らず、チルノは氷板のスペルカードを取り出した。
「さあ、今日こそレティの連勝伝説は塗り替えられるのよ!目をむいて見なさい、トリルと特訓して編み出したこの最強無敵の超スペルカード、その名も―――」
「あっ、大変!」
その瞬間、レティが驚愕の表情でチルノの背後を指差した。
「え、えっ?なになに?」
そのあまりの真に迫った表情に、チルノはスペルカードを頭上に振り上げたまま動きを止め…
「えい」
「はぎゃ!」
レティがそっと吹きかけた雪の結晶を受け、氷漬けにされたのだった。
「相変わらずねえ」
やれやれと言った表情でレティが指をそっと振ると、その氷はあっさりと砕ける。
「ひ、卑怯だぞレティー!」
口に入った氷の粒で軽く咳き込みながら、チルノは抗議の声をあげた。
「この間も言ったじゃない。弾幕勝負の最中に相手から気をそらしたら駄目なのよ」
あまりにも単純なチルノに微笑ましさすら覚えながらレティは言い…
「今だっ!」
「リンガリングコールド」
「ひぎゃぁっ?!」
テレポートをクナイ投げと併用し、チルノを撃退して気がゆるんだ瞬間を背後から狙った…はずのトリルは、待ち構えていたスペルの一撃を受けてこちらも氷の彫像となった。
「チルノよりは頭を使ってるんだけどね。でも、力の差を埋めるにはまだまだタイミングの読みと気配の消しが甘いわね」
膨れる二人の氷精の頭をぽんぽんと叩き、レティはふわりと向きを変えた。
「さ、ちょっと気分転換ね…向こうにとても綺麗な樹氷があったの。それを見に行かない?」
「むー…うん」
「私見たいわ、レティ」
「そう、異議なしね…それじゃ、行きましょ?」
顔が勝手に微笑むのをレティは感じた。自分がこんなに感情をあけっぴろげにするのも珍しい気がする…が、こんなのも悪くない。
最初はうっとうしがって払いのけていたのに、この二人に絡まれ続けている内に、いつの間にか彼女はそう思うようになっていた。
慕われるというのは馴染みのないことだったが、存外に容易く適応出来るものだった。
最初は、「自分の縄張りに入られた」チルノに喧嘩を売られた所から始まったのだ。
一緒にかかって来たトリルともどもそれを返り討ちにしてやると、次の日もまたその次の日も、当てもなく空を飛び回るレティを執念深く見つけ出してはチルノはしつこくリターンマッチを挑んで来た。
ある時、撃墜後に湖に落ちて溺れかけていた二人に何となく哀れを感じて引き上げてやったのだが、その次の日には態度を一気に改めて、「ありがとう」と頭を下げた上で遊びに誘って来た。
それ以来、まとわりつく二人となんとなく付き合う日々が続いていた。雪のお手玉をしたり、戯れに雪人形に命を吹き込んでみたり、氷の彫像を造って見せてやったり。時には雪合戦などもした。それは、一人だけでは味わえないとても楽しい日々だった。
…楽しすぎて、お互いに忘れていたのだ。冬はいつか終わりゆくことを。



「そう言えばね、チルノ、トリル」
樹氷の中を歩きながら、レティは何気なく切り出した。
「ん、どうしたの?」
「…レティ?」
チルノはともかく、トリルは鋭かった…何気ないはずの彼女の口調のどこから不吉を嗅ぎ取ったものか、不安げにレティを見上げていた。
レティは何とも言いがたい感じ…彼女は知る由もなかったが、人間の言葉で言うところのためらいを感じながらも、淡々と言葉を続けた。
「実はね、あと3日でお別れなの。今日、風が冬の終わりを教えてくれたから…」
彼女が告げると、二人は目を丸くし…そして、チルノはレティの腕をしっかりと掴んだ。
「でも、レティ…まだこんなに寒いじゃない。もう少し…もう少しくらいいられないの?」
「ダメよ」
レティはにべもなかった。
「あなたも妖精ならこれは分かるでしょ?妖精は自然と共にあるもの。冬が眠るなら、冬の妖精もまた眠らなくてはならない。…当たり前のことじゃない」
「でも…せっかく友達になれたのに」
「チルノちゃん…」
トリルがチルノの肩をそっと叩き、取り繕うように言葉を繋いだ。
「来年になればまた会えるよね、レティ?」
「…」
その言葉に、レティはどう答えたものか悩んだ。だが、結局嘘をつくことはなかった。
嘘をついたところで、来年に起こることは変わらないのだから。
「残念だけど…駄目ね」
彼女は、はっきりと答えた。チルノが目を見開いて叫ぶ。
「何で?!レティ、冬の妖精は毎年来るって…」
レティは答えようと口を開いた…何故か鋭い痛みを胸に感じながら。
「冬の妖精は、毎年降りしきる雪と同じ…真っ白なまま大地に降りるのよ。何もない…最も純粋で、何も汚れのない…全て白紙の状態でね」
「それじゃ、レティ…!」
トリルがいちはやくその意味を理解し、目を大きく見開いた。
「…そう。来年の私は、もう何も覚えていない。あなた達との想い出…いえ、会ったことすら覚えていない。来年の雪は、同じ形でも今年の雪と同じ雪では決してないの」
そう言いながら、レティは急速に自分の中にどうしようもないほどの怒りがこみ上げて来ているのを感じていた。
唐突で、しかも理不尽なその怒りはあまりに強すぎて、彼女自身にすらどうにもならなかった。
「そんな!レティ…」
「駄目なのよ」
どうにかならないの、というチルノの言葉はレティの冷淡な一言に遮られた。彼女は普段より自分の声が冷酷なのをはっきりと感じていた。
何故だろう…ただ、当たり前の世の摂理を話しているだけなのに。今までずっとそうだったはずではないか。
「さっきも言ったでしょう…これは妖精として当たり前のことよ。何故あなた達は文句をつけようとするの?」
しかし、チルノの叫びは容赦なく彼女の凍った心を打ちのめし、粉々に砕いた。
「だって…レティは嫌じゃないの?!全部忘れちゃうんだよ…一緒にした弾幕のことだって、湖で遊んだことだって、雪だるま作ったことだって、きれいな月を一緒に見たことだって…みんなみんな、なかったことになっちゃうんだよ?!」
その時レティの心に急速に、今まで知らなかったもの…憎しみがふつふつと沸き上がって来た。
「…それが何よ」
「…えっ?」
周囲の雪よりもなお冷えた声が、チルノの言葉を消し尽くす。トリルの涙を凍りつかせる。
それ以上言っては駄目だと心の中で何かが叫んでいた…だが、もう止めることは出来なかった。
「あなた達はまるで人間みたい。何をめそめそしているの?…ただ、なるようになるだけのことじゃない!うっとうしいのよ、ベタベタベタベタって!」
「!!」
瞬間、死よりもなお重い沈黙が周囲に降りた。…そして、それを盛大に破ってチルノの泣き声が響き渡った。
「…。…レティのぉ…、………レティの………………、………………………バカぁああああああああああああああああああああああああっ!」
「ち…チルノちゃん……!」
チルノはめちゃくちゃに泣き喚きながら、手近の雪や氷を手に当たるをさいわいレティに投げつけた。トリルは…止めようと手を伸ばしたものの、その瞳にはどうしようもなく涙が溢れ、手は震え、やがて顔を覆って泣き出してしまった。
投げつけられる雪の粒が顔を冷たく叩き、傷つけるのを感じながら、レティはそれら全てをじっと見つめ…やがて、冷たくふいと視線を背けると空へ舞い上がって行った。
彼女の心はひりひりする頬よりもなお疼いていたが、心は氷よりもなお冷たくそれを締め出していた。



それからどれくらいの時間が経ったのか…レティはあてどもなく飛び回り、洞窟を見つけるとその中でただじっと座り込んだ。その日は寝ずにずっと、そして次の日も、その次の日もまた。とにかく、もうチルノ達に会いたくなかった…彼女らのことを考えただけで、こんなに嫌な気分にさせられるのだから。
そして最後の三日目、冬の終わる日、レティは毎年と同じように冬の妖精達の集う秘密の場所へと向かった。そこで妖精達は今年もたらした冬を確認し合い、そして揃って何処とも知れぬ眠りの地へと還るのだ。
「あら、レティ…早かったわね?」
「ええエリス、ちょっとね」
仲間の顔を見ると、ほんの少し心が和らいだ。それに、このエリスは今年生まれた時からずっと世話になっていた姉貴分だったから、なおさらだった。
「とうとう冬も終わりか…少し残念ね」
「え?」
…それだけに、彼女の口からその言葉が出た時には、レティは驚いた。
「何言ってるの…エリス?残念も何も、当たり前のことでしょう?」
「ふふ」
レティから見ても少し変わっていたその冬精は、まるで春の残雪のように柔らかく微笑んだ。
「別にいいじゃない。この冬は…この冬も、かも知れないけど、とても楽しかったもの。楽しいことが続いて欲しいと願うのは、別におかしくないでしょ?」
その言葉を聞いて、レティの全身に落雷のような衝撃が走った。そんな彼女の様子に目を細めると、エリスは言葉を続けた。
「そんなことを言って、あなたの目にも残念が見えるわよ。それも、無理に押さえつけようとしてるのが」
「!」
レティはその瞬間、全てを悟った。そして、はっきりとそれを考えにするよりも先に駆け出していた。
「エリス、私ちょっと行ってくる!…まだ、やり残したことがあったの!」
ちょうど集まってきた他の仲間をあやうく吹き飛ばしかけながら、レティはまっしぐらに飛んで行った。
「レティ、日没までに戻って来るのよ!でなければあなたは永遠に消えてしまうのだから!」
その後姿へと声をかけるエリスに、目を白黒させた他の妖精達が尋ねた。
「一体どうしたの、あの子?」
「…私達に残ったものは消えても、残したものは消えない…それに気付いたのよ」
エリスはそう答えると、もう姿の見えなくなったレティへ、そっと呟いた。
「何があるのかは知らないけれど…頑張って、レティ。消えてしまうからこそ、最後まで後悔を抱えていないように…」



「チルノ、トリル…!」
レティは、紅魔湖へと唸りを上げ、風を巻いて飛んだ。冬が終わる前にあの二人に謝らなけれならなかったからだ…そう、本当に妖精らしくなかったのは彼女のほうだった。本当に喜びも悲しみもただあるがままに受け止められていたなら、あの二人に腹の立つはずはなかったのだ。
(私の馬鹿、馬鹿、馬鹿…!残念だったのは私も同じじゃない。それを紛らわせたいからって、よくもあんなことをあの子達に…!)
激しく自責しながら飛んでいる間にも、太陽は無慈悲にじりじりと少しづつ昇って行っていた。
昼近くになって、ようやくレティは紅魔湖へと辿り着き、思わず安堵のため息を洩らした。どうやら帰りに間に合う時間だったからだ。話したいこと、謝りたいことだって沢山あった。
彼女は思い切り息を吸い込むと、今まで出したことのないような大声を張り上げた。
「チルノーーーーーー!トリルーーーーーー!」
しかし、びっくりして振り向く氷精や水精達はいたが、その中に二人の姿はなかった。
(もしかしたら、私みたいに篭っちゃってるのかも…)
そう思って罪悪感に駆られ、レティは焦って手近の妖精に尋ねた。
「ねえ、あなた!チルノとトリルを知らない?!」
しかし、返って来た答えはおよそ望んでいないことはこの上もないものだった。
「ああ、レティじゃない。あの二人なら今いないよ?常世の花園に行くって、今朝方出てったから」
「常世の花園ですって?!…どうして止めなかったのよ!あそこは…!」
レティが怒声を上げると、その妖精はびくりと震え、一声叫んで逃げ出した。
「し、知らないよそんなの…あの子たちが行くって言ったんだもん、どうして止めるのさ?!」
「…!」
やり場のない怒りのあまりに、彼女は一瞬スペルカードを取り出しかけたが、すぐにきっと北の方に向き直って、湖に来た時以上の速度で飛び出した。
哀れな妖精に怒っても仕方がなかった。実際、止める義務はどこにもなかったのだから。むしろ、妖精としては当たり前の反応とすら言えるかも知れない。それよりも、まずは二人を連れ戻すことが先決だった。
常世の花園…そこは、ありとあらゆる花々が四季を問わず咲き乱れる場所。
しかし、智慧ある者なら誰もが、そこがこの世の場所でないことを知り、近寄らない危険な場所だ…。



「へへー…出来たよ、トリル。これでいいんだよね?」
チルノは、今自分で作り上げたものを誇らしげに掲げてみせた。トリルはそれを熱心に見つめながらも、ひどく落ち着かない様子で答えた。
「うん…聞いた通りだとそれでいいはずだよ。だから、早く帰ろチルノちゃん」
「ふふん、トリルってば相変わらず臆病なんだから。どってことないって、こんなの。…でも、早くこれを届けてやらないとね」
そして、二人は一面青い花に覆われたその区画を後にした。あたりは来てからずっと同じように静かで、危険な妖気のひとつも動くことはなく、入るべきでない場所とされているのが嘘のようだった。
…悲しいかな、二人はまだ知らなかった。静か「過ぎる」ことほど恐ろしいものはないのだと。幻想郷ではどこにでもいるはずの小物の妖怪の気配さえ、そこには漂っていなかったのだ…。
しばらく飛んで、ふとチルノが口を開いた。
「ねえトリル…あたい達、こっちから来たんだよね?」
その指差した方向を見て、トリルが訝しげに首を振った。
「ううん?そっちだったはずだけど…、…だったよね…」
それきり二人は沈黙し、またしばらく飛び続けた。そして、今度はトリルが口を開く。
「ねえ、チルノちゃん。何か…何かへんじゃない?」
「何がよ?」
「私達、どっちから来たんだっけ?」
「そりゃ決まってるでしょ?…あれ…?」
「もしかしてだけど…チルノちゃん、思い出せなくない?」
「…ううん、そんなことない。そうだ、こっちだよ」
チルノがある一点を指差すと、トリルは頷いた。
「そう…そうだったよね。でも私、言われてようやくそれを思い出せたの」
「何だ、トリルが道忘れちゃってたなんて珍しいねえ?」
「そう…よね」
トリルは腕を組んで考え込んでいた。
「でも、迷わないうちに早く帰った方が良さそうだね。遠出したせいで何だか疲れて来ちゃったし」
今度はチルノもやや表情を曇らせ、しかし口調はより明るくそう言って飛ぶ速度を上げた。



レティは飛び続けながら、ふと太陽が目の端にかかるのを感じた…いや、違う。彼女の中で「見ろ」と激しい声がしていたのだ。
「…太陽が…もうこんなに…」
飛ぶ速度は微塵も緩めぬまま、彼女は呟いた。
ここがギリギリの限界だ…今すぐ帰らなければ、日没までに集合場所に戻ることは出来ない。そうなれば、眠りの地へと戻る風には乗れない…そして、やって来る春の中に冬が残っていることは許されない。今こうして飛んでいる間も、ほんの少しづつだが、力が脱け落ちつつあるのを感じる。
…しかし、彼女は瞑目してただ一つ頷くと、無理を承知で更に速度を上げた。
冬は去らなくてはならない…だが、冬が後に残すのは白だ。たとえそれが溶けて消えて行くものだとしても。だから、汚れをあの子達の心に残して行くなら、彼女は冬であってはならなかった。そして、もしあの子達が危険の中にいるのを知ってなお見捨てるのなら、彼女は自分自身の心に嘘をつくことになる。自分にさえ嘘を平然とつけるなら、彼女は妖精であってはならなかった。
どちらを選ぼうと冬の妖精は消える…ならばせめて、気持ちのいい方、後悔のない方を選ぶつもりだった。
「チルノ…トリル…お願い、無事でいて…!」
ずいぶん遅くなってしまいましたが、ようやく予定していたこれを書き上げられました。と言うわけで、いいのかなと思うくらいに人物の脳内フィルタリングの激しい作品ですが、晒してみようと思います。ちなみに、元になったイメージは某となりのトトロ(某の意味がない)の「まいご」でしたが…書いていく内に変質することすること。最初は、普段の冷静さを崩して必死にチルノと大妖精(作中ではトリルを採用)の名前を呼び続けるレティが書きたかっただけなんですが、気がつけばすでにこんな風に。
…でも、そのイメージはイメージでもったいないので、こうして後書きで妄想を撒き散らしてたりします。後書きに目を通さないほうが賢明なのかも知れません(笑)


ところで、「まいご」の歌声って、レティの声イメージに何となく合いそうな合わないような…どっちだろう。ですが、「かくれんぼが大好きななきむしのあまえんぼ」とか「子犬や子猫とさよなら出来ないでべそかく分からずや」の歌詞部分に関しては、チルノや大妖精のイメージとしてありかと個人的には思ってます。
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