前書き
これは、否定されるべき物語である。この物語に明るい結末と平穏な未来は無い。
故に、翳に心惹かれず陽を好む方々は、いま来た道をそのままお戻りになられますよう。
筆者より。
‐無患子の里‐
上白沢慧音は里を護ってきた。
それは昼夜を通して一刻の間断も無く、数百年の昔から些かも揺るぎ無い事実であった。
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/
「なんだ、これは」
先ず、妹紅は己が化かされたと思った。
蓬莱人を捉まえて道を惑わすとは肝の太った古狸もいたものだが、考えてみれば蓬莱人とて不死を除けば人と変わらぬ。
気を緩めれば狐狸に誑かされもするだろう、と得心する。
そこで妹紅は辺り一面の芒<すすき>っ原に背を向け、ひとまず山へと取って返した。
/
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ことの始めは前日の晩、妹紅の棲む庵に幕を移す。
仏頂面で汁物を啜る妹紅の向かいで、相伴した少女が沢庵を齧っていた。
奇縁が高じて、いつの間にやら友人の位置に収まった上白沢慧音である。
極論すれば妹紅は食わずに生きてゆける。事実、飲まず食わずで過ごしていた年月は長い。
腹は減るが、そういうものだと割り切ってしまえば耐えられぬほどではない。
それを聞いて、筍だの山芋だのを抱え持ってきてくれた慧音の呆れ顔を、今でも良く覚えていた。
以来、こうして時折り夕餉を共にするようになり、もうどれほどの時が経っただろうか。
年を数えなくなって久しい妹紅には見当も付かぬ。
二人の間柄は、なんなら無二の友人と言っても差し支えは無い。
但しこの場合の無二とは『至上』ではなく字義通りに『一人だけ』を意味している。
世間がその言葉から抱く印象よりは大分乾いた関係だと、少なくとも妹紅はそう思っていた。
「里に顔を出してみる気はないか?」
それを聞いた妹紅は、椀の筍を睨め付けていた視線を正面に戻した。
彼女はこれまで、慧音が護っているという人里に赴いたことは一度も無かった。
慧音は妹紅の意外そうな表情を見て、言葉を加える。
「先だっての騒がしい連中――と言えばお前にも判ると思うが」
肝試しなどと嘯きながらやってきた、妙ちきりんな人間と妖怪のことなら向こう百年は忘れようはずも無い。
彼らと仕合った結果こそが、ここ数日に亘って妹紅が不機嫌の極みにいる元凶である。
「あいつらと里の者の間で何かあったの?」
「いや、彼らが直接に、どうこうでは無いんだ。ただ私はあの夜、不覚を取った」
慧音の言うことには、あの事件で出会った者たちの幾人かは、慧音を討ち破るのみならず歴史食いの術すら見破ったそうだ。
彼らに悪意こそ無かったが、その出来事は慧音に一つの危惧を抱かせた。
もしも同じくらい手練れた物の怪が、人間に危害を加えるべく里を襲えば、どうなるか。
しかしまた同時に、彼らはその不安を晴らす光明も残していった。即ち人妖の二人一組である。
「つまり、私に里の用心棒を付き合えってこと?」
妹紅の明け透けな物言いに、ばつの悪い顔で慧音は二きれ目の沢庵を齧ってみせた。
永遠亭の面々と違い、妹紅は咎人では無い。
いや、咎はあるかもしれないが、一つの大罪は既に時効であろうし、残りも少なくとも里の者に裁かれる類の咎ではない。
その気になれば旅装束でも纏って堂々と里に降りるのに何の支障も無かった。
それでも妹紅が今までそうしなかったのは、自らの甚だしい異質を認めているからだ。
里を訪ねることは出来ても、棲み着くわけにはいかぬ。
世間話に花を咲かすことは出来ても、芯から懇意には為れぬ。
人の里には妹紅の居処は無い。たとえ幻想郷においても、それは変わらなかったし、慧音もまた、そんな妹紅の心情を薄々と推し量っていた。
だから慧音が何故――それなりの理由があるとはいえ――今更そんなことを持ち掛けてきたのかと、妹紅の瞳に訝しげな光が宿るのも不思議は無かった。
ようやっと沢庵を噛み下した慧音は、弁解するように言葉を繋いだ。
「無理にとは言わない。合わぬと思えば、それきりにすればよい。
ただ、気晴らしのつもりで里に出向くのも偶にはどうか――と思ってな」
成る程。妹紅は合点がいった。
慧音の腹では、後者が本命であろう。塞いでいる妹紅を見かねての気遣いだったのだ。
しかし、前者――妹紅が里に居着けば、あわよくば妖の襲撃を防ぐ助けとなる――もまた、僅かながらも本音の一端ではあったのだろう。
そこでこの真っ正直な友人は、気遣いの陰に打算を潜ませることを潔しとせず、打算の裏に気遣いを隠すことにしたのだ。
何とも不器用極まりないが、妹紅はそんな慧音が微笑ましかった。
「まあ、慧音が言うなら、様子くらいは見に行ってもいいかな」
それを聞くやいなや、半獣の少女は「そうかそうか」と肯いて、三きれ目の沢庵に箸を伸ばした。
ほんとうに、真っ正直なことだった。
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さて日は明けて、狸に化かされたという妹紅である。
自らの棲み家が見える処まで戻ってくると、彼女は左の人差し指と中指を揃えてぺろりと舐めた。
勿論、眉に唾を塗るためだ。
その呪<まじない>の仕草は、知らず知らずに彼女の古い日々を揺り起こした。
かつては彼女は墨で――そう、唾などではなく――眉を描くような暮らしをしていた。
無駄に広いだけの屋敷。下らぬ作法に無益な嗜み。上っ面を飾るしか能の無い者ども。
化粧の手解きを受けたのは、母ではなく女官の一人からだったか。
今となっては惜しいとも懐かしいとも思わぬが、彼女が『其処』に生きていた事実は消えぬ。
過ぎた思い出を眺めるのは路傍の墓石を眺めるのにも似て、寒々しい心地を掻き立てた。
妹紅は我に返ると、自分が人里に馴染むことは出来ないと、改めて心を決めた。
昨晩に了解してみせたのは、友人の厚意を無下にするのが忍びなかったからだ。
用心棒の手助けなら吝かではない――なにせ暇と命は有り余っている――が、外敵を討つだけなら里の者と疎遠でも障りは無いだろう。
慧音には悪いが、今日一日だけ流れ者として里を見て廻った後、二度とは里に足を運ばないつもりだった。
照れ隠しの態を装って「一人で行く、慧音は待ってて」と言い張ったのもそのためである。
せめて精一杯、気が晴れたような顔で帰れば勘弁してくれるだろう。
曰く、“一車道の先には人間達が住む小さな里がある。
正式な名は無いが、皆は『むくの里』と呼んでいる”
慧音の言葉を思い出しながら、妹紅は再び里へと道を辿り始めた。
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――だが、里があるはずの場所には、矢張り、何も無かった。
否、言を正せば何も無かったわけではない。
芒ヶ原の只中には、独つの大樹が老いた随身のように毅然と枝を張っていた。
六丈(約18メートル)はあろうかという大樹は、小振りな薄緑の実を揺らし、堂々たる荒れ野の長として存在していた。
枯れ芒どもとて分相応に畏れを知るのか、その樹の周りだけは、ぽっかりと拓けていた。
妹紅は取り立てて理由も無く樹の根元を目指した。
偏<ひとえ>に、それ以外にはどちらを向いても芒の穂しか目に映らなかったためである。
茫漠と蔓延る芒を掻き分けて歩を進めれば、半ば埋もれた朽木に躓いた。
悪態を吐きながら苔むした木を睨み付けると、どうにも不自然に角ばっている。
よくよく見れば人の手になる加工の跡が認められ、それは倒れた柱のように思えた。
してみれば、先ごろから幾つか乗り越えた盛り土は田の畦道だったのだろうか。
そして何より――
「茶碗は人里にしか無い」
妹紅は辿り着いた樹の下で、滑らかな丸みを帯びた欠片を目にした。
拾い上げてしげしげと眺める。乾いた土の色。
風変わりな焼き物だ――と、妹紅は屈んだままの姿勢で凍りついた。
だしぬけに自分の見立て違いに気付いたのだ。
茶碗の破片と見えたのは、砕けた晒れ頭<されこうべ>だった。
折りしも、芒野を駆ける風が樹の枝を揺らし、幾つかの実を捥ぎ落とした。
足元に散らばる小さな実。大きさは少女の小さな手の平でも悠に握りこめる程。
薄茶に色づいた皮が割れて、硬く黒い種を覗かせているものもある。
妹紅は漸く、その樹の名前に思い当たった。
「無患子<むくろじ>の木……」
“正式な名は無いが、皆は『むくの里』と呼んでいる”
一車道の先にあったのは、小さな里の屍だった。
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微かな違和を抱く者なら、まるきり居なくはなかったのだ。
無患子の里から山を幾つか挟んだ村落に、村では長老と呼ばれる老人が暮らしている。
彼は、村を通る行商たちがいつしか無患子の里を通ってこなくなったのに気付いていた。
思い起こせば、最後に山向こうの里の話を聞いたのは、彼が嫁を娶った祝いの席だったように思う。
しかし村の皆に聞けば、口を揃えて「むくの里は息災だよ」と答えが返ってきた。
皆が言うならそうであろうと、彼は気に病むのを止めた。
/
紅い館の使用人は、屋敷で使う器物をしばしば人里から仕入れていた。
しかしその内に無患子の里から仕入れた物は唯の一つも無い。
尤も、それは無患子に取り立てて優れた職人も特産品も無いだけのこと。
従者にはそんなことよりも心を割かねばならぬ仕事が幾らでもあるのだった。
/
博麗の巫女は、偶さか傍らで茶を啜っていた知人に訊いてみたことがある。
「むくの里って知ってるわよね? ええ、そう、でっかい無患子の……」
相手は、週に二日は首を突っ込む先を探して幻想郷を翔け巡っている奇人である。
何か起こっていれば必ず知っている。その知人の答えはこうだった。
「んー? 特に変わったことは無かったと思うぜ。それはあれか。
今から遠まわしに正月の宣戦布告か? 来年も容赦なく受けて立つぜ」
無患子の種は羽子板と組みで正月の必需品だった。
「別に。むきになって墨だらけになるのはあんたの顔なんだし」
巫女は自分の気のせいだったかと安心し、いつも通り茶を啜ることに埋没した。
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けだし、無患子の里が今なお其処に在るのは歴然たる史実であったし、今に生きる人々も妖怪も押し並べてそう記憶していた。
だから斯様な疑念が日常の瑣事に紛れて顧みられないのも無理なからぬことだった。
或いは里に僅かでも縁を持つ者たちが一堂に会しでもすれば、各々の握る糸くずを縒り合わせて確とした綱を綯うことも出来たかも知れぬ。
しかし幸か不幸か、そのような機会は終ぞ無かった。
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どうにか繕ったつもりでいたのは妹紅本人ばかりだったらしい。
上白沢慧音は、庵に帰ってきた妹紅の顔をひとめ見るなり「すまぬ」と頭を垂れた。
その謝罪が、もし、堅物の友人には珍しい照れ笑いを伴っていてくれたなら。
『全く、非道いじゃないの。なかなかどうして、慧音も人が悪いな』
そんな風に笑って流すことが出来ただろう。
人を騙して廃村に赴かせるなど、平素の友人からは及びもつかぬ悪巫山戯ではあるが、誰にでも魔が差すことはある。
妹紅の内に渦巻く疑念の悍<おぞ>ましさに較べれば、これしきの茶目は責めるに能わぬ。
しかし慧音は飽くまで粛然とした態で、頭を上げて真っ直ぐに妹紅を見つめた瞳は寒気がするほど澄んでいた。
だから妹紅は平べったい声を搾り出して、「なに、慧音が謝ることは何も無いよ」と応じるに止めた。
それ以上は語る言葉が見つけられなかった。
里の有り様。慧音の態度。そして、彼女の能力。
三つを突き合わせれば答えは限られる。
ただ、妹紅はその解を認められない。他の解があるはずなのだ。絶対に。
だってそんなことがあり得るのか? あの上白沢慧音が?
勿論、あり得るのだった。解がたった一つしか無いことを、妹紅は知っていた。
「里の者と、何かあったのだろう? すまぬ。浅薄だった」
妹紅の葛藤を余所に、ぶっきらぼうだが心根の優しい友人は、再び頭を下げた。
的外れではあったが、妹紅を案じる気持ちには一分の偽りもなく、それが更に妹紅を追い詰めた。
慧音は、良かれと思って勧めたことが妹紅を傷つけたと、その心を痛めていた。
またその一方で、妹紅が仮にどのような誹謗侮蔑を受けたにせよ、里の者に手を上げなかったことを信じていた。
信じてくれていた。だからこそ妹紅の様子に不審を感じるなり、問い糾しもせず、ただ静かに頭を下げたのだ。
ならば妹紅は笑って言葉を返さねばならぬ。心配するようなことは何も無かったと。
里には自分を拒むような不心得者は居なかったと。
「里には、(――誰も)
私を拒んだりする者は、(――誰一人として)
居なかったよ」
そう、お前の護る里には、もう誰も居ないのだよ、慧音――
妹紅は己が心中をよぎった言葉に慄然とし、全力を以てそれを噛み殺した。
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無患子の里を襲った終焉がどのようなものだったか、妹紅には判らぬ。
飢えた獣か、月に狂った化け物か。浅ましき人の諍いか、逃れようもない疫病か。
いずれにせよそれは大した意味を持たぬ。
判るのは、判ってしまったのは、慧音の力がそれに及ばなかったこと。
そして、そのあとに慧音が為した所業である。
慧音は喰った。
覚え書き。日記。文<ふみ>。口伝えから他愛のない噂話に至るまで。
あらゆる書物、あらゆる記憶に一片とて残らぬように、彼の里が絶えた日の歴史を喰い尽くした。
それでもなお飽き足らず、終には自らの記憶からすらも、その日の出来事を喰い千切った。
そうしておいて彼女は、紡ぎ始めたのだ。無患子の歴史の続きを。
名に込められた祈りのままに、恙無い平穏な里の歴史を。
書き損じた物書きが、汚れた紙を破り捨て白紙に筆を走らせるが如く。
己を含めた幻想郷の全てを騙す、在り得べからざる歴史を。
かくて残されたのは死という完結を許されなかった里の骸と、
己の護る者たちが疾うに喪われたのを忘れた墓守である。
それこそが数刻前に妹紅の見た芒ヶ原の意味だった。
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妹紅の知っている慧音は、これほど弱くはなかったはずだ。
死と向き合う度に立ち止まり、静かに顔を伏せる。
それでもいつしか前を向き、歩き出す。
慧音はそんな強さを持っていると、信じていた。
だが――と、妹紅は思う。
人は死しても、子を為し、血脈を繋ぐ。
たとえ子を為さずとも、彼らの生の欠片を心に留める者たちが伝えいく限り、その生は確かに受け継がれてゆく。
だから慧音は幾多の死を受け入れ、乗り越えることが出来た。
繋がっていたから。繋がってゆくから。
その生と死は無為ではなかったと、そう信じられるから。
それこそが歴史である。
ならばこそ。
慧音の護り続けた人が、里が、歴史が、ある日を境に悉く途絶えたとしたら。
無患子の里がそれまで積み重ね、慧音が記憶し続けた全てが『零』に集束したことを理解してしまったら。
そのとき慧音は強いままでいられただろうか――?
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妹紅はあまりに耐えがたく、右の拳で己が心臓を握り潰さんと胸を掴む。
歯を食いしばり、身を震わせ、それでも妹紅は涙を堪えた。
「どうした、妹紅!? 何処か痛むのか?」
ああ、慧音。やさしい慧音。私は、どうすればいい?
蓬莱の薬すら効かぬ、この胸の痛みはどうすれば癒やせる?
いっそ、全てをぶちまけようか。
闇に浮かぶ残像を見続けている慧音の瞼を抉じ開け、陽光に晒された髑髏を突きつけよう。
そう、お前が護った里の歴史は遙か数十年の昔に終焉していたのだという真実を――
/
妹紅はかつて、慧音に訊ねたことがある。
「慧音は、その――得るものも無く、ただ里を見守り続けるのに倦んだりしない?」
「妹紅、私は人間が好きなのだよ。それに、私が得たものはとても言い尽くせぬくらいだ。
彼らが泣けば私も悲しく、彼らが笑うときは私も嬉しい。それに飽いたりするものか」
そう言って、慧音は笑った。誘われるように、妹紅も笑った。
思えばあの時、無患子の里は既に滅びていたのだ。
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――出来るはずもなかった。
大人びた態度と怜悧な面差しに隠して、稀に覗かせる暖かさ。
それを永遠に喪うことに較べれば、この胸を刺す痛みなど如何ほどのものか。
身を切り刻むような真実を、ただ妹紅が呑み込みさえすれば、この世は遍く変わり無く続くのである。
すまない。
妹紅は詫びた。
目の前の友人に。
死を喰い尽くされた里の者たちに。
恐らくは慧音が果てるその日まで、永き平穏を約束された無患子の里に。
だから、せめて――私が、里の死を留めよう。
たとえどれだけ無慈悲な結末であろうと、其処に生き、滅びた者たちが居たことを。
やさしい友人が、数多の幻想の歴史の中で、唯一つ拒絶したその歴史を、私が担おう。
「……すまない、慧音。私はもう、里へは行かないと思う。
だけど、私もあの里を護る。手伝いを、させて――」
込められた真意は、けして伝わらない。けれども、慧音は肯いてくれた。
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妹紅は無患子の里にいた。
そうして芒野を眺めながら、墓を作るべきかとずっと逡巡していたが、遂に諦めた。
一つには、死を知らぬ自分が他者の死を弔うのは不遜に過ぎる気がした。
二つには――主な理由はこちらだった――里からすれば余所者にすぎない自分が今更なにをしたとて、無患子の樹よりも相応しい墓には為り得ないと思ったからだ。
此処にはもう、墓標があり、墓守がいる。
妹紅は樹の根元に小さな穴を掘ると、彼女の骨をそこへ納めた。
せめてこれくらいなら、無患子も咎め立てはしないだろう。
妹紅に出来ることはそれきりで仕舞いだった。
彼女は秋空をひとつ見上げ、暫くそのまま長い髪を風に泳がせていた。
そうして、下を向いても溢れぬ程度に心が乾くと、芒を掻き分けて帰路についた。
(了)
これは、否定されるべき物語である。この物語に明るい結末と平穏な未来は無い。
故に、翳に心惹かれず陽を好む方々は、いま来た道をそのままお戻りになられますよう。
筆者より。
‐無患子の里‐
上白沢慧音は里を護ってきた。
それは昼夜を通して一刻の間断も無く、数百年の昔から些かも揺るぎ無い事実であった。
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「なんだ、これは」
先ず、妹紅は己が化かされたと思った。
蓬莱人を捉まえて道を惑わすとは肝の太った古狸もいたものだが、考えてみれば蓬莱人とて不死を除けば人と変わらぬ。
気を緩めれば狐狸に誑かされもするだろう、と得心する。
そこで妹紅は辺り一面の芒<すすき>っ原に背を向け、ひとまず山へと取って返した。
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ことの始めは前日の晩、妹紅の棲む庵に幕を移す。
仏頂面で汁物を啜る妹紅の向かいで、相伴した少女が沢庵を齧っていた。
奇縁が高じて、いつの間にやら友人の位置に収まった上白沢慧音である。
極論すれば妹紅は食わずに生きてゆける。事実、飲まず食わずで過ごしていた年月は長い。
腹は減るが、そういうものだと割り切ってしまえば耐えられぬほどではない。
それを聞いて、筍だの山芋だのを抱え持ってきてくれた慧音の呆れ顔を、今でも良く覚えていた。
以来、こうして時折り夕餉を共にするようになり、もうどれほどの時が経っただろうか。
年を数えなくなって久しい妹紅には見当も付かぬ。
二人の間柄は、なんなら無二の友人と言っても差し支えは無い。
但しこの場合の無二とは『至上』ではなく字義通りに『一人だけ』を意味している。
世間がその言葉から抱く印象よりは大分乾いた関係だと、少なくとも妹紅はそう思っていた。
「里に顔を出してみる気はないか?」
それを聞いた妹紅は、椀の筍を睨め付けていた視線を正面に戻した。
彼女はこれまで、慧音が護っているという人里に赴いたことは一度も無かった。
慧音は妹紅の意外そうな表情を見て、言葉を加える。
「先だっての騒がしい連中――と言えばお前にも判ると思うが」
肝試しなどと嘯きながらやってきた、妙ちきりんな人間と妖怪のことなら向こう百年は忘れようはずも無い。
彼らと仕合った結果こそが、ここ数日に亘って妹紅が不機嫌の極みにいる元凶である。
「あいつらと里の者の間で何かあったの?」
「いや、彼らが直接に、どうこうでは無いんだ。ただ私はあの夜、不覚を取った」
慧音の言うことには、あの事件で出会った者たちの幾人かは、慧音を討ち破るのみならず歴史食いの術すら見破ったそうだ。
彼らに悪意こそ無かったが、その出来事は慧音に一つの危惧を抱かせた。
もしも同じくらい手練れた物の怪が、人間に危害を加えるべく里を襲えば、どうなるか。
しかしまた同時に、彼らはその不安を晴らす光明も残していった。即ち人妖の二人一組である。
「つまり、私に里の用心棒を付き合えってこと?」
妹紅の明け透けな物言いに、ばつの悪い顔で慧音は二きれ目の沢庵を齧ってみせた。
永遠亭の面々と違い、妹紅は咎人では無い。
いや、咎はあるかもしれないが、一つの大罪は既に時効であろうし、残りも少なくとも里の者に裁かれる類の咎ではない。
その気になれば旅装束でも纏って堂々と里に降りるのに何の支障も無かった。
それでも妹紅が今までそうしなかったのは、自らの甚だしい異質を認めているからだ。
里を訪ねることは出来ても、棲み着くわけにはいかぬ。
世間話に花を咲かすことは出来ても、芯から懇意には為れぬ。
人の里には妹紅の居処は無い。たとえ幻想郷においても、それは変わらなかったし、慧音もまた、そんな妹紅の心情を薄々と推し量っていた。
だから慧音が何故――それなりの理由があるとはいえ――今更そんなことを持ち掛けてきたのかと、妹紅の瞳に訝しげな光が宿るのも不思議は無かった。
ようやっと沢庵を噛み下した慧音は、弁解するように言葉を繋いだ。
「無理にとは言わない。合わぬと思えば、それきりにすればよい。
ただ、気晴らしのつもりで里に出向くのも偶にはどうか――と思ってな」
成る程。妹紅は合点がいった。
慧音の腹では、後者が本命であろう。塞いでいる妹紅を見かねての気遣いだったのだ。
しかし、前者――妹紅が里に居着けば、あわよくば妖の襲撃を防ぐ助けとなる――もまた、僅かながらも本音の一端ではあったのだろう。
そこでこの真っ正直な友人は、気遣いの陰に打算を潜ませることを潔しとせず、打算の裏に気遣いを隠すことにしたのだ。
何とも不器用極まりないが、妹紅はそんな慧音が微笑ましかった。
「まあ、慧音が言うなら、様子くらいは見に行ってもいいかな」
それを聞くやいなや、半獣の少女は「そうかそうか」と肯いて、三きれ目の沢庵に箸を伸ばした。
ほんとうに、真っ正直なことだった。
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さて日は明けて、狸に化かされたという妹紅である。
自らの棲み家が見える処まで戻ってくると、彼女は左の人差し指と中指を揃えてぺろりと舐めた。
勿論、眉に唾を塗るためだ。
その呪<まじない>の仕草は、知らず知らずに彼女の古い日々を揺り起こした。
かつては彼女は墨で――そう、唾などではなく――眉を描くような暮らしをしていた。
無駄に広いだけの屋敷。下らぬ作法に無益な嗜み。上っ面を飾るしか能の無い者ども。
化粧の手解きを受けたのは、母ではなく女官の一人からだったか。
今となっては惜しいとも懐かしいとも思わぬが、彼女が『其処』に生きていた事実は消えぬ。
過ぎた思い出を眺めるのは路傍の墓石を眺めるのにも似て、寒々しい心地を掻き立てた。
妹紅は我に返ると、自分が人里に馴染むことは出来ないと、改めて心を決めた。
昨晩に了解してみせたのは、友人の厚意を無下にするのが忍びなかったからだ。
用心棒の手助けなら吝かではない――なにせ暇と命は有り余っている――が、外敵を討つだけなら里の者と疎遠でも障りは無いだろう。
慧音には悪いが、今日一日だけ流れ者として里を見て廻った後、二度とは里に足を運ばないつもりだった。
照れ隠しの態を装って「一人で行く、慧音は待ってて」と言い張ったのもそのためである。
せめて精一杯、気が晴れたような顔で帰れば勘弁してくれるだろう。
曰く、“一車道の先には人間達が住む小さな里がある。
正式な名は無いが、皆は『むくの里』と呼んでいる”
慧音の言葉を思い出しながら、妹紅は再び里へと道を辿り始めた。
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――だが、里があるはずの場所には、矢張り、何も無かった。
否、言を正せば何も無かったわけではない。
芒ヶ原の只中には、独つの大樹が老いた随身のように毅然と枝を張っていた。
六丈(約18メートル)はあろうかという大樹は、小振りな薄緑の実を揺らし、堂々たる荒れ野の長として存在していた。
枯れ芒どもとて分相応に畏れを知るのか、その樹の周りだけは、ぽっかりと拓けていた。
妹紅は取り立てて理由も無く樹の根元を目指した。
偏<ひとえ>に、それ以外にはどちらを向いても芒の穂しか目に映らなかったためである。
茫漠と蔓延る芒を掻き分けて歩を進めれば、半ば埋もれた朽木に躓いた。
悪態を吐きながら苔むした木を睨み付けると、どうにも不自然に角ばっている。
よくよく見れば人の手になる加工の跡が認められ、それは倒れた柱のように思えた。
してみれば、先ごろから幾つか乗り越えた盛り土は田の畦道だったのだろうか。
そして何より――
「茶碗は人里にしか無い」
妹紅は辿り着いた樹の下で、滑らかな丸みを帯びた欠片を目にした。
拾い上げてしげしげと眺める。乾いた土の色。
風変わりな焼き物だ――と、妹紅は屈んだままの姿勢で凍りついた。
だしぬけに自分の見立て違いに気付いたのだ。
茶碗の破片と見えたのは、砕けた晒れ頭<されこうべ>だった。
折りしも、芒野を駆ける風が樹の枝を揺らし、幾つかの実を捥ぎ落とした。
足元に散らばる小さな実。大きさは少女の小さな手の平でも悠に握りこめる程。
薄茶に色づいた皮が割れて、硬く黒い種を覗かせているものもある。
妹紅は漸く、その樹の名前に思い当たった。
「無患子<むくろじ>の木……」
“正式な名は無いが、皆は『むくの里』と呼んでいる”
一車道の先にあったのは、小さな里の屍だった。
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微かな違和を抱く者なら、まるきり居なくはなかったのだ。
無患子の里から山を幾つか挟んだ村落に、村では長老と呼ばれる老人が暮らしている。
彼は、村を通る行商たちがいつしか無患子の里を通ってこなくなったのに気付いていた。
思い起こせば、最後に山向こうの里の話を聞いたのは、彼が嫁を娶った祝いの席だったように思う。
しかし村の皆に聞けば、口を揃えて「むくの里は息災だよ」と答えが返ってきた。
皆が言うならそうであろうと、彼は気に病むのを止めた。
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紅い館の使用人は、屋敷で使う器物をしばしば人里から仕入れていた。
しかしその内に無患子の里から仕入れた物は唯の一つも無い。
尤も、それは無患子に取り立てて優れた職人も特産品も無いだけのこと。
従者にはそんなことよりも心を割かねばならぬ仕事が幾らでもあるのだった。
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博麗の巫女は、偶さか傍らで茶を啜っていた知人に訊いてみたことがある。
「むくの里って知ってるわよね? ええ、そう、でっかい無患子の……」
相手は、週に二日は首を突っ込む先を探して幻想郷を翔け巡っている奇人である。
何か起こっていれば必ず知っている。その知人の答えはこうだった。
「んー? 特に変わったことは無かったと思うぜ。それはあれか。
今から遠まわしに正月の宣戦布告か? 来年も容赦なく受けて立つぜ」
無患子の種は羽子板と組みで正月の必需品だった。
「別に。むきになって墨だらけになるのはあんたの顔なんだし」
巫女は自分の気のせいだったかと安心し、いつも通り茶を啜ることに埋没した。
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けだし、無患子の里が今なお其処に在るのは歴然たる史実であったし、今に生きる人々も妖怪も押し並べてそう記憶していた。
だから斯様な疑念が日常の瑣事に紛れて顧みられないのも無理なからぬことだった。
或いは里に僅かでも縁を持つ者たちが一堂に会しでもすれば、各々の握る糸くずを縒り合わせて確とした綱を綯うことも出来たかも知れぬ。
しかし幸か不幸か、そのような機会は終ぞ無かった。
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どうにか繕ったつもりでいたのは妹紅本人ばかりだったらしい。
上白沢慧音は、庵に帰ってきた妹紅の顔をひとめ見るなり「すまぬ」と頭を垂れた。
その謝罪が、もし、堅物の友人には珍しい照れ笑いを伴っていてくれたなら。
『全く、非道いじゃないの。なかなかどうして、慧音も人が悪いな』
そんな風に笑って流すことが出来ただろう。
人を騙して廃村に赴かせるなど、平素の友人からは及びもつかぬ悪巫山戯ではあるが、誰にでも魔が差すことはある。
妹紅の内に渦巻く疑念の悍<おぞ>ましさに較べれば、これしきの茶目は責めるに能わぬ。
しかし慧音は飽くまで粛然とした態で、頭を上げて真っ直ぐに妹紅を見つめた瞳は寒気がするほど澄んでいた。
だから妹紅は平べったい声を搾り出して、「なに、慧音が謝ることは何も無いよ」と応じるに止めた。
それ以上は語る言葉が見つけられなかった。
里の有り様。慧音の態度。そして、彼女の能力。
三つを突き合わせれば答えは限られる。
ただ、妹紅はその解を認められない。他の解があるはずなのだ。絶対に。
だってそんなことがあり得るのか? あの上白沢慧音が?
勿論、あり得るのだった。解がたった一つしか無いことを、妹紅は知っていた。
「里の者と、何かあったのだろう? すまぬ。浅薄だった」
妹紅の葛藤を余所に、ぶっきらぼうだが心根の優しい友人は、再び頭を下げた。
的外れではあったが、妹紅を案じる気持ちには一分の偽りもなく、それが更に妹紅を追い詰めた。
慧音は、良かれと思って勧めたことが妹紅を傷つけたと、その心を痛めていた。
またその一方で、妹紅が仮にどのような誹謗侮蔑を受けたにせよ、里の者に手を上げなかったことを信じていた。
信じてくれていた。だからこそ妹紅の様子に不審を感じるなり、問い糾しもせず、ただ静かに頭を下げたのだ。
ならば妹紅は笑って言葉を返さねばならぬ。心配するようなことは何も無かったと。
里には自分を拒むような不心得者は居なかったと。
「里には、(――誰も)
私を拒んだりする者は、(――誰一人として)
居なかったよ」
そう、お前の護る里には、もう誰も居ないのだよ、慧音――
妹紅は己が心中をよぎった言葉に慄然とし、全力を以てそれを噛み殺した。
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無患子の里を襲った終焉がどのようなものだったか、妹紅には判らぬ。
飢えた獣か、月に狂った化け物か。浅ましき人の諍いか、逃れようもない疫病か。
いずれにせよそれは大した意味を持たぬ。
判るのは、判ってしまったのは、慧音の力がそれに及ばなかったこと。
そして、そのあとに慧音が為した所業である。
慧音は喰った。
覚え書き。日記。文<ふみ>。口伝えから他愛のない噂話に至るまで。
あらゆる書物、あらゆる記憶に一片とて残らぬように、彼の里が絶えた日の歴史を喰い尽くした。
それでもなお飽き足らず、終には自らの記憶からすらも、その日の出来事を喰い千切った。
そうしておいて彼女は、紡ぎ始めたのだ。無患子の歴史の続きを。
名に込められた祈りのままに、恙無い平穏な里の歴史を。
書き損じた物書きが、汚れた紙を破り捨て白紙に筆を走らせるが如く。
己を含めた幻想郷の全てを騙す、在り得べからざる歴史を。
かくて残されたのは死という完結を許されなかった里の骸と、
己の護る者たちが疾うに喪われたのを忘れた墓守である。
それこそが数刻前に妹紅の見た芒ヶ原の意味だった。
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妹紅の知っている慧音は、これほど弱くはなかったはずだ。
死と向き合う度に立ち止まり、静かに顔を伏せる。
それでもいつしか前を向き、歩き出す。
慧音はそんな強さを持っていると、信じていた。
だが――と、妹紅は思う。
人は死しても、子を為し、血脈を繋ぐ。
たとえ子を為さずとも、彼らの生の欠片を心に留める者たちが伝えいく限り、その生は確かに受け継がれてゆく。
だから慧音は幾多の死を受け入れ、乗り越えることが出来た。
繋がっていたから。繋がってゆくから。
その生と死は無為ではなかったと、そう信じられるから。
それこそが歴史である。
ならばこそ。
慧音の護り続けた人が、里が、歴史が、ある日を境に悉く途絶えたとしたら。
無患子の里がそれまで積み重ね、慧音が記憶し続けた全てが『零』に集束したことを理解してしまったら。
そのとき慧音は強いままでいられただろうか――?
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妹紅はあまりに耐えがたく、右の拳で己が心臓を握り潰さんと胸を掴む。
歯を食いしばり、身を震わせ、それでも妹紅は涙を堪えた。
「どうした、妹紅!? 何処か痛むのか?」
ああ、慧音。やさしい慧音。私は、どうすればいい?
蓬莱の薬すら効かぬ、この胸の痛みはどうすれば癒やせる?
いっそ、全てをぶちまけようか。
闇に浮かぶ残像を見続けている慧音の瞼を抉じ開け、陽光に晒された髑髏を突きつけよう。
そう、お前が護った里の歴史は遙か数十年の昔に終焉していたのだという真実を――
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妹紅はかつて、慧音に訊ねたことがある。
「慧音は、その――得るものも無く、ただ里を見守り続けるのに倦んだりしない?」
「妹紅、私は人間が好きなのだよ。それに、私が得たものはとても言い尽くせぬくらいだ。
彼らが泣けば私も悲しく、彼らが笑うときは私も嬉しい。それに飽いたりするものか」
そう言って、慧音は笑った。誘われるように、妹紅も笑った。
思えばあの時、無患子の里は既に滅びていたのだ。
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――出来るはずもなかった。
大人びた態度と怜悧な面差しに隠して、稀に覗かせる暖かさ。
それを永遠に喪うことに較べれば、この胸を刺す痛みなど如何ほどのものか。
身を切り刻むような真実を、ただ妹紅が呑み込みさえすれば、この世は遍く変わり無く続くのである。
すまない。
妹紅は詫びた。
目の前の友人に。
死を喰い尽くされた里の者たちに。
恐らくは慧音が果てるその日まで、永き平穏を約束された無患子の里に。
だから、せめて――私が、里の死を留めよう。
たとえどれだけ無慈悲な結末であろうと、其処に生き、滅びた者たちが居たことを。
やさしい友人が、数多の幻想の歴史の中で、唯一つ拒絶したその歴史を、私が担おう。
「……すまない、慧音。私はもう、里へは行かないと思う。
だけど、私もあの里を護る。手伝いを、させて――」
込められた真意は、けして伝わらない。けれども、慧音は肯いてくれた。
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妹紅は無患子の里にいた。
そうして芒野を眺めながら、墓を作るべきかとずっと逡巡していたが、遂に諦めた。
一つには、死を知らぬ自分が他者の死を弔うのは不遜に過ぎる気がした。
二つには――主な理由はこちらだった――里からすれば余所者にすぎない自分が今更なにをしたとて、無患子の樹よりも相応しい墓には為り得ないと思ったからだ。
此処にはもう、墓標があり、墓守がいる。
妹紅は樹の根元に小さな穴を掘ると、彼女の骨をそこへ納めた。
せめてこれくらいなら、無患子も咎め立てはしないだろう。
妹紅に出来ることはそれきりで仕舞いだった。
彼女は秋空をひとつ見上げ、暫くそのまま長い髪を風に泳がせていた。
そうして、下を向いても溢れぬ程度に心が乾くと、芒を掻き分けて帰路についた。
(了)
しかしこれは良い妹紅のお話ですね(待て
歴史とは想いを摘んでいくものなのか。真実を積んでいくものなのか。
そんな事を考えました。
悲しくて優しいお話、ご馳走様です。
単なるダークサイドの話ではなく、ほっとしました。
慧音、あんたは頑張ったんだ。
>どうして私はメインに据えたキャラより引き立て役に選んだキャラの方が暴れ始めるんだろう?
ああ……痛いほど良く分かります。
同じような古めいた文体をとっていても読みやすい物は読みやすいですし。
まぁ私に学が足りない可能性大ですが。