Coolier - 新生・東方創想話

博麗神社の珍しく静かな一日

2005/06/13 11:47:18
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何時の頃からだろう。私が周囲との関わりを気にしなくなったのは。


何時の頃からだろう。私が他者と僅かな距離を置くようになったのは。


何時の頃からだろう。私が孤独を苦痛に感じなくなったのは。



『博麗神社の珍しく静かな一日』



昼下がりの博麗神社。境内の掃除を終えた霊夢は、神社の縁側でゆっくりと日本茶をすすっていた。今日に限っては珍しく、口やかましい黒白魔法使いも、紅魔館の吸血鬼とその従者も、その他諸々の人妖も、この日は博麗神社に来訪してきていない。


―――たまにはこんな日もあるか。


心の中で呟くと、飲み終わった日本茶の湯飲みを脇へ静かに置いて、空に目を移した。


雲一つない快晴である。蒼という蒼がそのまま空に投影され、その中に一点だけ、強く輝く太陽が煌いている。


そのような空から、飽きることなく霊夢は目を外さない。霊夢自身も何故、目を外せないのかは解らなかった。


ふと、思う。


―――何故、私は一人でも平気なのだろう?


少なくても、博麗神社の巫女を継いだ当初はそうではなかった筈だ。むしろ、全くの正反対だと言っても過言ではなかった。


家族以外の存在と親しくなりたくて、来る日も来る日も、霊夢は参拝客を待ち続けた。


雨が降ろうが、雪が降ろうが、突風が吹き荒ぼうが、霊夢のそういった行動は変わらなかった。


誰かと、親しくなりたい。当時の霊夢はそれだけを願っていた。


そして霊夢は、ある一人の少女と出会うことになる。



少女は里に住んでいる普通の人間であった。しかし、物心ついた時には既に父親が他界しており、唯一、少女にとって心の支えであった母親も、重い病に倒れていた、


何とか母親を助けようと少女は、出来る限りのことをした。しかし少女の行為も虚しく、母親の病は徐々に重くなっていった。少女に残された手段は、神に祈る事のみであった。


そんな事情で博麗神社に参拝に来た少女を、霊夢は何としてでも救ってやりたかった。


霊夢は少女へ博麗神社秘伝の薬と護符を渡し、


「お母さんの病気が治ったら、また来てね」


と、約束を交わした。


……その約束が、永久に果される事も知らず。



約束を交わしてから三ヶ月が経った頃、たまたま里へ来た霊夢は、少女の名を里の人間に尋ねてみた。里の人間は重い表情で、


「その子は先日、妖怪に襲われて―――」


その言葉が耳に届いた時、霊夢の心が、砕けた。


親しくなれると思っていたのに。また話が出来ると思っていたのに。何故? どうして?


それから里で何をしたのか、霊夢は覚えていない。


気が付くと、霊夢は博麗神社の自室にいた。


月明かりが襖を通して霊夢を照らす。霊夢の頬を、一筋の光が伝って落ちた。



少女との別れを経験した霊夢の周りには何時の間にか、数多くの人妖が集うようになっていた。


しかし、霊夢は交友関係を進んで深めようとしなかった。


怖いのだ。関係が深まれば深まるほど、失った時の哀しみを味わうのが。


霊夢は少女の事を今でも覚えている。だからこそ、他者と一定の距離を置くようになったと、彼女は思っている。



つまるところ、博麗 霊夢とは太陽のような存在ではないだろうか。


太陽は全ての生ある者に恩恵を与え、限りなき感謝をされる。


しかし、太陽に近付ける者はいない。太陽自身の生み出す莫大な高熱が、他者の接近を拒むからだ。


霊夢もそのような存在なのかもしれない。


人間、妖怪を問わずして平等に接し、それらから好意的な感情を受け取る。


だが、霊夢はそれを拒絶する。


その感情を受け取ってしまうと、自らの心が砂塵の城の脆さを持ってしまいそうだから。



昼下がり、博麗神社の珍しく静かな一日。巫女は一人、空を仰ぐ。
鬼瓦嵐です。東方創想話での投稿はこれが初めてです。どうぞ宜しく。
霊夢が冷たい人間かもしれない、という設定を目にしたので、こういうSSに行き着きました。
下手な文章で申し訳ありませんが、これが今現在、自分自身の出し得る文章力です。
失礼ですが、批評や感想をくれると本当にありがたいです。

あと、プチ東方創想話での初投稿作品、冷静に考え直してみると自分でも、
「あれってSSかよ」と思いました。
何であんなモノ書いたんだろう……。
鬼瓦嵐
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コメント



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6.60沙門削除
 旨い緑茶を飲んだ様な感じがしました。読んだ後も心に残る様な。短いですが失礼します。
31.無評価鬼瓦嵐削除
名作を次々に執筆なされている沙門さんから、このようなお言葉を送られるとは恐悦至極です。
次も美味しい茶を出せるように精進したいと思います。緑茶か紅茶か珈琲か分かりませんが。
それと、この作品に点数を付けてくださった匿名の皆様にも、感謝の意を表します。