Coolier - 新生・東方創想話

種違える隣人、その心の裡

2005/06/07 10:59:04
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半獣。
その半身に流れるは歴史喰いの、妖怪の血。
歴史を隠し、また創るその力は己の半ばを人間とする彼女にも具わっている。

そして彼女はその血の性質故か、人を好む。


自らの半分が犯している裏切りを知りつつも。



満月の夜は、妖怪達が騒ぎ出す。

私は妖怪を退け人を護る。
それは、私のためだから。
私が私であるために。



里を取り囲むように、しかしそれと判らないように要石は置いてある。
いつ、里の住人を害する妖魔が襲ってきてもすぐに遮断できるように。
私を狙う妖怪たちが里に被害を及ぼさないように、私の庵もやや離れた所にある。



今夜も私は里を隠す。
いつぞやの様に、不覚は取らない。

私の大好きな人間たちを、好きなようにはさせない。
誰にも手を出させない。
私の、全力で。

誰も、誰にも傷つけさせない。
渡さない。

それが例え態度からして人を食ったようなあのスキマ妖怪でも、夜を統べる吸血鬼でも。
ましてや何も考えていないような宵闇の妖怪になんて、絶対に。









隔離された里は、私の世界。
私の人間たち。

私以外が口にする事はおろか、手をかける事も許しはしない。
私の好きな、私だけが好きにして良い人間たち。


その顔と、両の手をあかく染め上げながら鏖殺するは私。


振り下ろした腕が肉と骨を潰す感触。
立ち上るハラワタの匂いと血の色は食欲を催す。

里の人間の眼前で殺戮を行い、生きたまま喰する。
裏切られたと知った時の絶望。
それとともに苦痛に歪む表情を浮かべるニンゲンを、散らしてゆく事。

それこそが、何物にも勝る私の愉悦。


なに、いくら喰い散らかそうが、いくら殺そうが関係無い。





そのような歴史はいくらでも、なかった事にすれば良いのだから。





夜が明け、陽光の射す頃。

いつもと同じ一日の始まり。
いつもと同じ生活の始まり。
いつもと同じ毎日の始まり。

変わる物など何もない。

いつもよりも紅い、蕎麦の茎を除いて。
まず最初に、この話は作品集8 ちょんまげ氏の「本当は怖いハクタクの話」と基本的なアイデア(テーマ?)がほとんど同一ですが、決して盗作したとかそう言う意図があってのものではありません。
しかしながら、以前拝見させていた事を(非常に失礼ながら)自分が忘れていた為、全く影響を受けていないとも言い切れません。

ちょんまげ氏を始め、上記の事の付いて疑問がある、あるいは不快に感じる方がいらっしゃいましたらご連絡ください。

最後に、前作にてコメントしていただいた 名前が無い程度の能力様へ。
タイミングを逃がしてしまったので、こちらにてコメント返させていただきます。
貴方の仰るとおり、前作は初回版蓬莱人形のテキストを強く意識しています。
「正直者」と「紫」の在り方を書いてみたいと思ったので。
そる・あーす
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