半獣。
その半身に流れるは歴史喰いの、妖怪の血。
歴史を隠し、また創るその力は己の半ばを人間とする彼女にも具わっている。
そして彼女はその血の性質故か、人を好む。
自らの半分が犯している裏切りを知りつつも。
満月の夜は、妖怪達が騒ぎ出す。
私は妖怪を退け人を護る。
それは、私のためだから。
私が私であるために。
里を取り囲むように、しかしそれと判らないように要石は置いてある。
いつ、里の住人を害する妖魔が襲ってきてもすぐに遮断できるように。
私を狙う妖怪たちが里に被害を及ぼさないように、私の庵もやや離れた所にある。
今夜も私は里を隠す。
いつぞやの様に、不覚は取らない。
私の大好きな人間たちを、好きなようにはさせない。
誰にも手を出させない。
私の、全力で。
誰も、誰にも傷つけさせない。
渡さない。
それが例え態度からして人を食ったようなあのスキマ妖怪でも、夜を統べる吸血鬼でも。
ましてや何も考えていないような宵闇の妖怪になんて、絶対に。
隔離された里は、私の世界。
私の人間たち。
私以外が口にする事はおろか、手をかける事も許しはしない。
私の好きな、私だけが好きにして良い人間たち。
その顔と、両の手をあかく染め上げながら鏖殺するは私。
振り下ろした腕が肉と骨を潰す感触。
立ち上るハラワタの匂いと血の色は食欲を催す。
里の人間の眼前で殺戮を行い、生きたまま喰する。
裏切られたと知った時の絶望。
それとともに苦痛に歪む表情を浮かべるニンゲンを、散らしてゆく事。
それこそが、何物にも勝る私の愉悦。
なに、いくら喰い散らかそうが、いくら殺そうが関係無い。
そのような歴史はいくらでも、なかった事にすれば良いのだから。
夜が明け、陽光の射す頃。
いつもと同じ一日の始まり。
いつもと同じ生活の始まり。
いつもと同じ毎日の始まり。
変わる物など何もない。
いつもよりも紅い、蕎麦の茎を除いて。
その半身に流れるは歴史喰いの、妖怪の血。
歴史を隠し、また創るその力は己の半ばを人間とする彼女にも具わっている。
そして彼女はその血の性質故か、人を好む。
自らの半分が犯している裏切りを知りつつも。
満月の夜は、妖怪達が騒ぎ出す。
私は妖怪を退け人を護る。
それは、私のためだから。
私が私であるために。
里を取り囲むように、しかしそれと判らないように要石は置いてある。
いつ、里の住人を害する妖魔が襲ってきてもすぐに遮断できるように。
私を狙う妖怪たちが里に被害を及ぼさないように、私の庵もやや離れた所にある。
今夜も私は里を隠す。
いつぞやの様に、不覚は取らない。
私の大好きな人間たちを、好きなようにはさせない。
誰にも手を出させない。
私の、全力で。
誰も、誰にも傷つけさせない。
渡さない。
それが例え態度からして人を食ったようなあのスキマ妖怪でも、夜を統べる吸血鬼でも。
ましてや何も考えていないような宵闇の妖怪になんて、絶対に。
隔離された里は、私の世界。
私の人間たち。
私以外が口にする事はおろか、手をかける事も許しはしない。
私の好きな、私だけが好きにして良い人間たち。
その顔と、両の手をあかく染め上げながら鏖殺するは私。
振り下ろした腕が肉と骨を潰す感触。
立ち上るハラワタの匂いと血の色は食欲を催す。
里の人間の眼前で殺戮を行い、生きたまま喰する。
裏切られたと知った時の絶望。
それとともに苦痛に歪む表情を浮かべるニンゲンを、散らしてゆく事。
それこそが、何物にも勝る私の愉悦。
なに、いくら喰い散らかそうが、いくら殺そうが関係無い。
そのような歴史はいくらでも、なかった事にすれば良いのだから。
夜が明け、陽光の射す頃。
いつもと同じ一日の始まり。
いつもと同じ生活の始まり。
いつもと同じ毎日の始まり。
変わる物など何もない。
いつもよりも紅い、蕎麦の茎を除いて。