Coolier - 新生・東方創想話

おもい、ちがい  後編

2012/01/03 06:28:00
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 私は、いろいろな場所に行き、人を眺めて、その時間を過ごしてきました。それが、いつからそうなの
は分かりません。気がついたらそうしていた、思い返してもそうしていた、そんな感じですかね。

 
 あるとき、私は図書館にありました。図書館といってもそこまで大きくなくて。そんな場所に本棚が、
人が一人通れるくらいの間隔で立ち並んでいました。それでその棚には綺麗に整頓され、でもぎゅうぎゅ
う詰めに本が並んでいて……私はその一冊でした。


 そうです。私、本だったんですよ。正確には本に封印されていた、ていえますかね。自分がその本にい
る理由も何も分かりません。ひょっとしたら私、凄い悪いことをしてしまって、それが原因で封印された
かもしれないですね。ほら、私、一応悪魔ですし。


 それで、この図書館には、女の子がよく本を読みに来ていました。ちょうど真ん中に配置された少し大
きめの机に読みたいだけの本を積み上げたら、後はひたすら読んでいました。一冊読んだら次、はい次、
そんな感じで。


 ある日気がつきました。ああ、ここはこの子の図書館なんだ、て。だって、この女の子以外誰も来ない
んですもの。両親も兄弟も友達も、動物も、そして音も。完全に、この子だけの空間。その中でただひた
すら、読書。読書以外には本の出し入れ……あと、上を見ていましたね。


 なんで上を見ているって思うじゃないですか。でも、特に意味はなかったと思います。さすがにノンス
トップで読書をしているので、疲れて楽な姿勢をしたら、それが上を見ている形になった、てところじゃ
ないでしょうか。つまり、休憩ってことです。


 それで私、そんな姿を眺めるのが嫌になっちゃいまして。だって本当にそれだけなんですよ。それ以外
一切何もしない。掃除もしない。休憩中、お茶を飲むわけでもないですから。


 今まで自分があったところは、例えば同じ図書館でも休憩中はお茶を飲んだり、大きな声ではないにし
ろ、私が聞こえるくらいにおしゃべりしたり、それでその内容を聞いたりして、それに興味を持って自分
なりに考えてみたりして。まあ、暇つぶしになったんですよ。でもそれが一切できないのです。


 だから、私はヤキモキしていまして。何で全然掃除しないんですかー、お茶でも飲めばいいじゃないで
すかー、友達でも連れてきておしゃべりでもすればいいじゃないですかー、とかその女の子を見ながらそ
んなことを思っていた、いや、言っていましたね。まあ、あの子にとっては、その全てが必要のないもの
だったみたいですが。


 いつしか、その思いは私がその女の子にしてあげたいことになっていまして。もし、解放してくれたら
お茶くらい淹れてあげますよー、おしゃべりくらい付き合ってあげますよ、読書に疲れたら、その、膝枕
くらいだったらしてあげてもいいかな、とかいろいろ考えていましたね。


 あるとき、私は女の子に気づいてもらう為に、渾身の力で棚から落ちたんです。なにせ本なのでそれく
らいでも、すっごい大変だったんですよ。けど、その甲斐があって女の子が気づいて、こちらに歩いてき
て私を手に取ってくれたんです。そして、じーっと私を見ていて、これは確実に解放してくれるなって、
そう思っていました。


 でも結果は惨敗。私、そのまま棚に戻されちゃいました。机に戻っていく女の子の後ろ姿に、必死で呼
び掛けてもダメで……いやー、あの時はかなり落ち込みましたね……


 それからしばらくはただその子を眺めるだけの日々。なんの変化もなくただそれだけでした。


 そんな時です。取ってもらえたんですよ、私! いつもみたく、はあ、今日も何もなしか~、なんて思
ってため息をついていたら、急にこちらにやってきて! 一瞬、何が起こったのか分からなくて、変な声
を出しちゃいましたよ。ついに解放される日が来たのですか、よっしゃーっ!! なんて叫んで思いっき
り舞い上がりましたね。


 ところが残念、二連敗……そうです、結局解放されなかったんですよ……でも、変化はありました。
女の子は私を、自分の読書をする机に置いたんです。ちょうど、その子の正面になるように。


 私としてはそれだけでもすっごく嬉しくて。気にしてもらえるってことだけでも、本当に嬉しかったで
すね。しかもなんとっ、その子、上を見なくなったんです! ほら、さっき休憩の為にって言ったじゃな
いですか! それじゃあどうしたかというと、なんと私を見るようになったんですよ!


 結局、解放されたわけでもないので、動くこともお話することもできなかったんですけど、何か自分が
女の子を変えたんだって、思いが通じたんだって勝手に思っていましたね。本当に私、あの姿が嫌だった
ので。


 それから、休憩中はいっぱい話しました。あ、もちろん一方的にですが。例えば、今どんな本を読んで
いるんですか、紅茶はどんなものが好みですか、実は私、悪魔だったりするんですよ……そんな感じでい
っぱい話し掛けました。そんな私をただ見ている女の子。ときおり少し表情を変えたときには、あ、今の
おもしろかったのかな? なんて思って、通じたんだと思って。それが凄く嬉しくて楽しくて。


 そして私はこの人のことを、ご主人様って呼ぶようにしました。理由はふたつ。ひとつはこの人の名前
が分からなかったこと。もうひとつは、この人に絶対解放してほしい、それ以外なんてありえない……そ
う思ったことです。



 ご主人様~、おはようございます。今日はどんな本を読むんですかー?

 
「……」




 ご主人様~、昔、すっごいおもしろいことがあって。えへへ、そのときにいた場所なんですけど……


「……」




 あ、今日はもうおしまいですか? お疲れ様でした。それではおやすみなさい、ご主人様……


「……」




 伝わらないことが分かっていても、何もしてあげることができないと分かっていても、それでも、その
人は私のご主人様でした。ご主人様と過ごせる日々が本当に、幸せでした……










 ある日、あの人が来なくなりました。

 いくら待ってもあの姿は見えなくて……

 それで私、


 ああ……またか


 って、思いました。長い年月の時を流れてきた私にとっては、それが当たり前のことで。だから、いつ
その時が来てもおかしくなくて、そんなことは解っていたはずなのに……悲しくて、泣きました。ずっと



 好きだったから





 そして私は考えるのをやめることにしました。

 ただ、じっとしていました。

 でも、

 次はどこに流れてしまうのか怖くて、

 ここから離れるのが辛くて、


 許されるならこのままここに、ずっといさせてください。


 結局、考えていました。













 
 

 その日は突然やってきました。

 あの人が帰ってきたんです。

 本当に突然扉が開いて、

 すぐにあの人だというのが分かりました。

 私はすごく嬉しくて、

 ご主人さまっ、ご主人さま、おかえりなさい、おかえりなさいっ! ずっと私、貴方を……


 待っていました。


 忘れられるわけがない。

 ずっと、大好きだったから。

 だから、早くあの人の姿が見たくて、

 あの頃の姿を見たくて、私は願った。

 でも、


 でも、願いは簡単に、外れました……









 

 その姿は


 服は無残に破けていて……


 あの綺麗だった髪は半分以上、無くなっていて……


 体中が血だらけで……


 
 そして、涙を流していました……






 「……」


 何で……どう、したんです、か? なにが、あったんですか?




 「……」


 だれに、やられたん、ですか……あなたに、そんなことしたの……




 「……」


 いって、ください……あなたに、そんなこと、した、やつらを……


 

 全部、殺してきますから




 あふれ出る感情。抑えようのない怒り、憎しみ。私が悪魔であることを思い知らせる、どす黒い心。



 ゆるさない…よくも
 
 わたしのたイセツナゴシュジンサマヲ 

 コロシテヤル ゼッタイコロシテヤル 





 オネガイシマスゴシュジンサマ 

 ワタシヲカイホウシテクダサイ

 アナタノソノムネンヲ

 ワタシガハラシマス ゼッタイニ





 そして、

 黒い欲望に溺れている、そんな私を、

 あの人は、解放してくれました。















 アリスの家のリビングで話をしていた小悪魔。彼女は話の中で涙を流した。あの頃を思い出したのだろう。そんなときはアリスが軽く、ハンカチで目元を拭ってあげていた。

「すいません、私、涙もろいみたいで……すいません……」

 目元を腫らして、小悪魔は何度も泣いてしまったことで、アリスに気を使わせたことを謝った。

「謝ることはないわ。誰だって悲しければ涙を流すものよ。我慢なんてする必要なんてない。男の子と違
ってそれが女の子の特権だもの」

 優しく小悪魔を慰める。ふと、アリスは先ほどの自分を思い出して、顔が熱くなるのを感じた。

 そんな彼女をよそに、目元を潤ませながらも小悪魔は話を続けようとする。

「そ、それでですね。その後解放された私は、こう、悪魔らしく契約の言葉を伝えるわけですが……」

「待って、小悪魔。いいの、それ以上言っちゃって?」

「え、契約の台詞ですか? それでしたら……」

「違うわ。これ以上話を続けていいのかってこと。これ以上聞いたら、もう誰の話をしているか解ってし
まうわよ?」

 小悪魔の話の中で誰のことを言っているのか、ほぼ確信していた。ここで、さらに契約の内容が出てく
ると確定しかねない。小悪魔が知られたくないなら、これ以上の話は無理がある、そうアリスは思い、話
を止めた。

「う、そうでした……すいません、お話はこれで終わりということで」

 そう言ってお辞儀をすると、時間はすでに9時を回っていた。そろそろ、行かないとタイムリミットに
間に合わない。

 小悪魔はすばやく荷物をまとめて、

「す、すいません。結局、助手のお仕事、中途半端になってしまいましてっ。本当に、申し訳なかったで
す。この埋め合わせは必ずしますので……そ、それでは、行きます!」

「待ちなさい小悪魔、忘れ物よ」

 アリスはそう呼び止め、小箱を手渡す。そこには、この解読の成功報酬であるルビーが入っている。

「そ、そんな、私全然、仕事出来ていないですよっ? それなのに……」

「さっきも言ったけどそんなことはないわ。優秀な助手には当然の報酬よ。それと、埋め合わせる必要な
んて、全然ないから気にしないこと。分かった?」
 
 アリスはそう言うと、最初に渡したときのように軽くウィンクをした。

「ありがとう、ございます。あ、あの是非近いうちに紅魔館に来てください。最高の紅茶を淹れてあげま
すから……」

「ええ、その時はよろしくね……あ、ごめんなさい小悪魔。あと一つだけ教えてほしいことがあるんだけ
ど、いいかしら? その、さっきの女の子なんだけど……話の最後、その子が貴方に何て言ったのか教え
てほしいんだけど……」

 契約内容を飛ばしての女の子の最後の台詞。アリスはこの言葉が、彼女の理由、なのではないかと思っ
た。


「ええ、それでしたら。えっと、『良いの?』……です」


「良いの?」

「はい。何のことかは分かりませんが、私、もう何でも受け入れる気でいたので、とりあえず返事はしま
したね。そしたらそのままパチュ……ごほん、女の子が倒れちゃいまして、それ以上は何も……ん? で
も何か言っていたような……まあ、とりあえずその後どういうわけか、契や……ごほん、ごほん。ま、ま
あ、そんな感じですよ」

 口が滑っている小悪魔を尻目にアリスは考える。

 しかしその答えは結局出なかった。

 でも彼女は微笑んで言った。

「ありがとう。ごめんなさいね、ぎりぎりまで話を聞かせてくれて」

「いいえ、こちらこそ。お茶、ご馳走様でした。それでは、行きますね」


 最後にお世話になりましたと言って、小悪魔は夜空へ飛び立っていった。

 それを見送るように、夜の虫が鳴いていた。




 パチュリーと小悪魔は間違いなく出会って、そしてお互いを認めた。

 それは当たり前なんだろうけど、アリスにはさらに何かあるような気がした。

 そしてそれこそがパチュリーの「理由」なのだろう。


 きっとこの出会いは最高の偶然だった。


 アリスはそう思い、小悪魔が飛んでいった方角を窓から眺めていた。




 

 



 仕事に一区切りがつき、咲夜は一人テーブルで紅茶を飲んでいた。昼間と違いメイド妖精たちはその大
半が寝静まっている。本来はこの時間帯こそ悪魔の館にふさわしく物々しい雰囲気に包まれるはずだが、
実際は逆で静かなものだ。咲夜としてはうるさいことは好まないのでありがたい。

 すると、紅茶を半分飲み終えたところで、こちらに何かが走ってくる足音が聞こえる。一応軽く警戒
心を高めておいたが、その正体がやってきたことで、それが無駄に終わる。


「咲ちゃーーんっ!! ここにいましたか!!」

 正体は小悪魔。例のリュックを直してもらうため全速力で走ってきたのだ。

「こあちゃん? どうしたの、そんなに慌てて? 予定よりも随分早いじゃない」

 小悪魔とは逆に冷静である咲夜。まったく動じずお茶の続きを楽しんでいる。その姿に頭が来たのか、
咲夜に抱きつき、くすぐり始めた。

「えっ!? ちょっと、こあちゃん!? ちょ、やめっ……」

「許しませんよ、咲ちゃん!! 猫ちゃんの恨み、思い知るがよい!!」

「ちょ、一体、何の、こと!? ほんと、やめ、くるしっ」

 咲夜は攻撃を必死で体をねじらせ逃れようとするものの、執拗につぼを押さえてくる小悪魔になす術が
ない。

「ほ~? まだ足らんようですな~。ならばとっておきの技をお見せしましょう。小悪魔符、腋固め!」

 そう宣言すると、両腋に自分の手を強引に差し込む。

「きゃ、はは! ちょ、やば、ひ! はひ、やめっ、ほんと、しんじゃう!」

 咲夜の一番弱い部分なのか先ほどよりもかなり効いているようだ。堪えるその姿は普段からは考えられ
ないほど、年相応のそれであった。

 ここら辺でやめておけばよかったのだが、小悪魔は調子に乗ってさらにヒートアップした結果、

「ここか~、ここがええのんか~? わかりました……では、いきま、ずぷっ!?」

 防衛本能の働いた咲夜に肘鉄を顔面に喰らい、その場に力尽きた。



 小悪魔から事情を聞いた咲夜は、腑に落ちなかったものの、リュックを調べてはみたが問題なかった。
 しかし何か事情があるのではと察して小悪魔に合わせた。アリスのことを多少は知っている咲夜にとっ
て、いたずらとは考えられなかったのだ。とはいえ爆発はどうかと思うが。

「……うん。これで大丈夫よ。ごめんなさいね。焦ったでしょう?」

「いやー、かなり焦っちゃいましたよ。でもこれで安心です。良かったね、猫ちゃん!」

 愛おしそうに猫の刺繍を撫でる姿に、咲夜はなんとなく笑みがこぼれる。するとそこにまた新しい足音
が聞こえてきた。咲夜はすばやく立ち上がり、姿勢を正す。彼女にとっては聞きなれた足音。

 こちらにゆっくりと近づいてきた音の主はレミリアだった。

「あ、お嬢様。ご無沙汰していました。お元気でしたか?」

 10日ぶりのその姿を見て、ここを出発したときと同じように羽をぱたぱたとする小悪魔。
 その姿をみとめてレミリアが顎に手をやり、

「……誰?」

「覚悟はしていましたよっ!? でもあんまりですっ!! そして小悪魔です!!」

「久しぶりのツッコミ、おいしいわね、ここあ」

 レミリアは満足そうに微笑む。そのまま、咲夜の引いた椅子に座り足を組んだ。咲夜は一瞬消え、ティ
ーセットを準備してきた。

「それで、どうだったの?」

 レミリアは咲夜が淹れる紅茶がカップに入るのを観ながら、小悪魔の成果を聞いてくる。

「はい。アリスさんは中途半端になってしまいましたが、まあまあ、出来たと思います。魔理沙さんの方
は満足してくれたみたいで、思ったより本を返してもらえました」

「中途半端? ああ、そういえば早いわね、帰ってくるの……何かあったの?」


 早く終わった理由を簡単に答えると、レミリアは口の端をあげて、

「ふーん。それじゃ、貴方はここで何をしているのかしら? 愛しのご主人様のところに行かなくてもい
いのかしらね?」

「行きますよ! 全く、どうしてそんな意地悪っぽく言うんですかね。ホントに」

 ぶつぶつと呟きながら小悪魔は図書館に向かっていった。その後ろ姿は久しぶりの主人との再会で浮き
立っているように見えた。楽しみでしょうがないのだろう、翼が小さくはためいている。

「ねえ咲夜。パチュリーの次の休憩も行くの?」

 小悪魔の後ろ姿を眺めていたレミリアは問う。

「いいえ。それは、あまりにも無粋です。必要あろうが行きません。あとは、こあちゃんに任せるとしま
すわ」

 それを聞き、レミリアが微笑む。

「咲夜、ふふ、まあ当然だけど……良い答えよ」





 地下への階段を駆けるように下り、目の前に現れた扉を力強く開く。10日ぶりの図書館。ここに初め
て来てから何十年と経っているが、こんなに離れていたことは無くて、それが一層、小悪魔に懐かしさを
かきたてる。このお化けでも出そうな薄暗さ、地下らしい特有のかび臭さも、見渡す限り広大なその場所
は、小悪魔にとっての居場所だった。

 小悪魔は扉を開けた勢いのまま、間違えることなく、自分の主人の元に一直線に走る。

(パチュリーさま、パチュリーさまぁ……)

 そして見つけた。自分の愛おしいご主人様。なにも変わらずにその姿があった。

「パチュリーさまっ!!! ただいまっ!!」

 10日振りの再開から、思わず大きな声で呼んでしまった。読書中のパチュリーに、しまったと思いつ
つもその高ぶりが治まりそうに無い。パチュリーは顔を上げ、ゆっくりと立ち上がり、こちらに歩いてき
た。

 (パチュリー様だ、パチュリー様だっ! パチュリーさまだ!!)

 抱きつきたい。いや、怒られるからダメだけど……でも、褒めてほしい。そしてなでなでしてほしい。
そう思いながら小悪魔はリュックから、傍にある机に自分の頑張った成果を広げる。魔理沙から返しても
らった本を積み上げ、アリスからもらったルビーの箱を開ける。


「見てください、パチュリー様!! 凄くないですか、これ!? 私、頑張りましたよ!!」


「…………」

 興奮するようにまくし立てる小悪魔に対して、パチュリーの反応は鈍い……いや、無い。

「ど、どうしたんですかっ? 私、本当に頑張ったんですよ! ですから……」

 褒めてください、そう言おうとしたところで止まる。

 じっとパチュリーは見つめている。小悪魔の成果ではなく、小悪魔自身を。

 それは優しさも怒りもない無表情。けど妙に光っている瞳。

「あ、あの、なんですか? わ、私、なにかしちゃいましたか?」

 意味も分からずただ、見つめられていたのが耐えられず小悪魔は聞いてみた。

 そしてその返事は小悪魔にとってあまりにも残酷だった。


「契約違反よ、こあ」


 突然の宣告に小悪魔は心臓が止まるかと思った。

 契約違反。使い魔が主人に対して、特に望まない行為をした時に適用される。それをしてしまった場合、罰はおろか最悪、契約解除もありえる。何十年も前に聞いたその内容も、あせることなく鮮明に覚えていた。
 それは、小悪魔が体中を震わせていることからも物語っている。

(え、な、なんで!? わ、私、なにしちゃったのっ!? え、え、なんで、なんで……!?)

 頭を抱え、縮こまるように震える小悪魔を尻目にパチュリーは伝える。

「なんでって顔ね、こあ? 理由は簡単よ。貴方は私の望まないことをした、ただそれだけよ」

「そ、そんな! 私、何も悪いことなんかしていないですよ!? 納得できません!!」

 説明のないことに顔を上げ反論するも、怯えている表情は変わらない。

「納得どうこうなんてどうでもいいのよ……全く、最初からこうしておけば……」

 最後の方は聞き取れないほど小さい声で呟くと、パチュリーは小悪魔にさらに、容赦の無い言葉を伝え
た。

「だから、私は貴方をこれから罰する。二度とこんなことをやらないようにね……」

 そう言うとパチュリーはゆっくりと歩み寄ってくる。それに対して小悪魔は後ずさるものの、震えか
ら足が思うように動かない。

「ま、待ってください!! 何でこんな目に合わなきゃいけないんですか!?」

「そうね……そのまま、後ろを向けば半分くらいで許してあげようかしら……」

 小悪魔の言葉なんて聞こえないとでも言うように、パチュリーは歩みを止めない。


「何で……私、すごい、頑張ったんですよ……パチュリー様が喜んでくれるって、そう思って……」

「……」


「魔理沙さんも、アリスさんも、すごい、褒めてくれて、主人が羨ましいって言って、くれて……」


「……」


「わ、たしは、パチュリーさまの、為なら、て、そう思って……」

 足が本棚にあたり、後が無いことを告げる。

 主人から感じたことのない恐怖に、それでも小悪魔は許してくれることを願って、自分の思いを言葉に
した。


「私が、頑張ることで、貴方が、いろいろなものを、見るようになってくれた。読書以外、無関心だった
貴方を、変えることが出来たんだって、ずっとそう思っていました……もうっ! あの頃の貴方を見たく
なかったから! だからっ……頑張って、きた、のに」
 
「後ろを向かないということは、全部でいいってことね?」

「ひぃっ!!」 


 小悪魔は頭を抱えるようにして後ろを向きしゃがんだ。

 涙がとめどもなく流れてくる。

 ずっと大好きだったご主人様。

 信じていたはずなのに裏切られた気がした。

 そのご主人様に対して恐怖を持つ自分が悲しくなった。

 何を間違えたか分からなかった。

 いろいろな思いが涙に変わって流れる。

 そんな小悪魔のすぐ後ろから、気配が徐々に近づいてくる。もう、息遣いが聞こえる距離……


 そして、



「……えっ?」

 しゃがんでいる小悪魔に覆いかぶさるように、ゆっくりと、手を回して抱きしめてきた。

 それは、少しずつ強くなり、本当に心地がいいところで止まった。背中に感じるぬくもりが、柔らかさ
が夢でないことを告げている。それでもやっぱり信じられなかった。

「あの、パチュリーさま……」

「静かにしていなさい」

 疑問をすぐに拒否され、小悪魔は黙り込んだ。緊張感があったためか、この時間はすごく長く感じた。
 
 ただ沈黙だけが続く時間。


「ごめんね、こあ……怖かった?」

 最初に沈黙を破ったのはパチュリーだった。その声色は先ほどとは違い、小悪魔が良く知るものに戻っ
ていた。表情も普段通りになっている、小悪魔は振り向かなくてもそう思った。

 すると、背中が少し震えた。自分がではなくて後ろから。
 パチュリーは寒さから耐えるように震えていた。

「……こあ……こあ……………こあ……」

 さっきよりも強く抱きしめ、パチュリーは泣いていた。それを見られないようするために、顔を背中に
うずめていた。かすかに嗚咽も聞こえる。

 それを聞いた小悪魔は振り向きそうになった。けど、それもパチュリーに制止される。

「このまま、動かないで……お願い」

 はい……、そう返事をし、ただじっとしていた。これが自分の今できることなら当然だ、私はパチュリ
ー様の使い魔なのだから。だから小悪魔はじっとしていた。主人の気が休まるまで……


 しばらくして震えが止まった。もうあの嗚咽も聞こえない。

 もう大丈夫と思った小悪魔は聞いてみた。

「パチュリー様……振り向いても、いいですか?」

 少しだけ間があって、いいわよ、と言ってくれた。

 それを聞いた瞬間、小悪魔はおもいっきり振り向いて抱きついた。
 パチュリーの胸に顔をうずめ、

「パチュリーさまぁ、ごめんなさい! ごめん、なさいっ!」

 私が何か泣かせるようなことをした、小悪魔はそう思った。涙がまた、たくさん溢れてきた。私が泣か
せた、傷つけた、苦しめたんだ、自分の大好きな人なのに。だから小悪魔は必死で謝った。

 そんな彼女の頭をパチュリーは優しくなでる。小悪魔が落ち着くように、慰めるように、そして愛おし
く撫でる。

「……安心しなさい、こあ。そこまで謝ることはしていないわ……まあ、私としては、気にしてほしかっ
たというか……」

「だって、さっき、パチュリーさま、泣いていた……きっとっ、私、相当ひどいことをしたに違いありま
せん! だからどんな罰でも受けます! 言ってくださいっ!」

 目を真っ赤にして涙を流しながら、パチュリーに迫ってきたので、その迫力に少し驚いたものの、すぐ
に微笑み、頭を撫で目元の涙をぬぐってあげた。

「謝らなければならないのは私なのよ、こあ……ごめんなさい、かなり大人気なかったわね。覚えてなく
て当然よね。もう何十年も前のことだもの。なのに貴方に八つ当たりをしてしまったわ。許して、こあ」

 言っている意味は分からなかったが、怒っていないということに安心し、小悪魔は脱力した。

 再び、いごこちが良いようにパチュリーの胸にうずまる。そんな彼女をパチュリーは愛おしい子供のよ
うに、口を彼女の頭に当てた。



 その後、抱き合っている体勢に疲れ、今は本棚に寄りかかって肩を並べて寄り添っている。小悪魔も、
すっかり落ち着きを取り戻したものの、すぐ横に愛おしい人がいるので顔が少し赤い。

「あの、パチュリー様。さっきのことですが、その、私は本当に何をしてしまったんですか?」

 長いこと一緒に過ごしてきたが、泣いたのなんて初めてだった。
 だから小悪魔は気になってしょうがなかった。

「ああ、あれね……えっと、私もまあ、理由は分かっているんだけど、泣くとは思わなかったわね。なん
かこう、こみ上げてくるものがあって、気づいたら……」

「……その理由、あの、教えてもらえませんか。お願いします」

 どうにもそれを言うことに渋っている主人に小悪魔は頭を下げた。とにかくこれを教えてもらえないと
どうのもならない。時間が経てば普段どおりになるかもしれないが、その間はお互い居づらくなるような
雰囲気になる気がした。

 パチュリーは目を閉じて少し考えた後、意を決したように答えた。


「寂しかった」


「……は?」

 予想外の答えに小悪魔の目は点になった。

 さっきパチュリーが気にしてほしかったという言葉に、何かしらやらかしたと思っていた。例えば、自
分の作った魔導書に何か不備があって、お気に入りの本がどこかに消えてしまった、そんなようなことだ
と思っていたのだが。

「だから寂しかったの。貴方がいなかったから。自分でもびっくりしたわ。だって、寂しすぎて頭が痛く
なるのだもの。貴方がいなくなってしばらくしたら、毎日よ? だから読書も集中できなかったし、咲夜
がお茶の用意とかしてくれたけど、食欲なんてもともと無いのに出るわけないわね。それくらい、その、
大変だったってこと……分かってくれたかしら?」

 小悪魔の抜けた反応に恥ずかしさは衰え、パチュリーは言いたかったことを全部言ったが、やっぱり恥
ずかしかったらしく顔を赤く染める。

 それ以上に、直に告白された小悪魔は沸騰寸前だった。

「あ、ぱ、ぱぱぱ、ちゅ、ちゅぱりー、さままっ!?」

「……」

 パチュリーはそっと、爆発しそうな勢いの使い魔の額に手をあてる。軽く水系の魔法を唱え冷やしてあげると、小悪魔は、はう~気持ちいい、と満足そうだ。

 その様子を見て落ち着いたと判断し、パチュリーは少し真剣な顔で、

「ねえ、こあ。貴方さっき、あの頃の私が嫌だって言ったじゃない? あれは、どういうことかしら?」

 思わぬ質問に小悪魔の熱は一気に冷め、まずいことを言ったと思いうつむいた。主人に対しての暴言だったといってもおかしくない。どんなかたちであれ、否定してしまったのだから。

 そんな使い魔に主人は気にしていないというように、頭を優しく撫でる。

 それに対して安心したように、小悪魔は話始めた。

「あの頃というのは、まだ、私がパチュリー様と契約をしていなかった頃のこと、私がまだは本棚にあっ
た時です」

「……確かそうだったわね。そのときはまだ私は貴方に気づいていなかった」

「はい。だから私はやることがなくてですね、いつもパチュリー様を眺めていたわけですが……あの頃は
パチュリー様、読書以外何もしなかったじゃないですか」

 ふとパチュリーは思い出してみる。あの頃、ただひたすら様々な本を読み漁っていた。確かにそれ以外
は何もしていなかったかもしれない。

「それで、読書をしていないときは大体、上を見てぼーっとしていましたよね。あれ、私、嫌だったんで
すよ」

「そんなこと言われても、休憩してたのよ。ずっと読みっぱなしだと疲れるでしょ? だから……」

 休憩、そう言ったがいまいちピンと来なかった。

 普段の休憩だったら、時間ぎりぎりまで読書をして、時間が来たらお茶を飲んで、小悪魔と雑談をして
いた。最近ではアリスや魔理沙も来るので、それにはこと欠かさなかった。

 そう。そんなぼーっとする休憩なんて小悪魔が出掛けていた、ここ数日。それは実に何十年振りの休憩
のしかたをしていたのかもしれない。

「こんなことを言うのも失礼ですけども、休憩でも嫌なものは嫌だったんです。だから休憩をもっと楽し
い時間に出来たらなって思っていまして。ほら、契約してからは私、毎日お茶を出すようにしたじゃない
ですか。おしゃべりとかも無理やりですけど、しましたし」

 ああ、そうだった。お茶も睡眠も必要の無い魔法使いの私にとってそれが無駄に感じた。少しでも目を
休めて読書の続きをしたほうがいい、そう思っていた。
 しかし今では、お茶や軽い雑談が無いのでは休憩した気がしないが。

「それで、パチュリー様も徐々に付き合ってくれるようになってくれて。ときおり表情が変わるのが嬉し
くて、楽しかったです。何よりも、あの頃と切り離せたような気がして」 

「……切り離せた?」

「だって、あの頃のパチュリー様、悲しそうで、辛そうでしたから。顔には出て無くても雰囲気があった
というか……」

 (気づいていたのね)

 あの頃はパチュリーにとって一番辛く苦しい時だった。知識に溺れそうになるのを必死で、もがいてい
た。ただただ、一人で飲まれないように耐えていた。本来、相談すべき相手はいたはずだった。

 でもその人は……

「だから私は頑張るんですよ。あの頃のような思い、させたくありませんし、その姿も見たくもありませ
んから。パチュリー様が喜んでくれることだったら、どんと来い、ですよ」

「こあ……うん、ありがとう。よく解ったわ……けど」

 彼女はいつだって自分のことを考えてくれる存在。私のために頑張ってくれる最高の使い魔。

 けど、その使い魔は一番大事なことを忘れているようだった。

「ねえ、小悪魔……契約したときのこと、覚えている?」

 決して二人の契約は綺麗だったとはいえず、周りから見たら、さぞかしみすぼらしかったに違いない。
 でもパチュリーにとってはそれでも鮮明に思い出せる。

 あの時伝えたパチュリーの本当の願い。

「もちろんですよ! 私にとってはまるで昨日のことのようです!」

「そ、そこまで……そ、それじゃあ、私があの時言った願いも、覚えているのかしら?」

「それですっ!!」

 急に小悪魔は目をカッと開いた。

「どうして、私と契約できたんですか!? ずっと不思議に思っていたんですよ!!」

 ぎく、とパチュリーの肩が揺れる。何かを隠すように顔を反らした。

「な、何言ってるのっ? ちゃんと私の望みを伝えたじゃ、ない? あ、あれで契約は完了した。何をい
まさら……」

「言っていませんよ!? だってあの時、パチュリー様、望みを言う前に倒れちゃったじゃないですか。
その前の言葉もよく分からないものでしたよ?」

 小悪魔の言葉からどうやら伝わっていなかったらしい。確かに彼女が言うように倒れはしたが、ちゃん
と言った気でいた。

「なるほどね。まあ、いいんじゃない」

「よくないですよ!? だって望みを言っていないのに契約されちゃってるんですよ!? これってパチ
ュリー様が損しちゃっているってことじゃないですか!!」

 引き下がらない小悪魔に、これ以上は無理と覚悟を決めたように大きく息を吸って、パチュリーは答え
た。

「……驚かないで聞いてね? 契約はされているわ。私は貴方に望みを叶えてもらう権利も有している。
でも望みを叶えても私の魂をとることはできない。まあ、なんというか、私の主導権的な契約というとこ
ろかしら……」


「驚愕の真実!!?」


 まさかの事実に小悪魔は悪魔なのに、おお神よ、とすがるポーズで固まった。

 悪魔は契約者の魂を願いを叶える代価として、手に入れることができる。しかしこの契約だとパチュリーが死んでも手を出すことができない。

「うう、ひどいです…………でも……良かったです。パチュリー様の魂を持っていかなくていいんですね。なんか安心しちゃいました……ああ、でも、きっと怒られてしまいます、魔界の偉いお人に」

 小悪魔の脳裏にまだ見たことの無い魔界の王様の姿がよぎる。きっと、恐ろしい方に違いない。でも、
意外と優しい人かも、といろいろ考えては表情をころころと変えている。

 そんな小悪魔の反応にパチュリーは唖然としていた。悪魔にとってみればかなり洒落にもならないその
行いにも、首謀者である主人のことを想っているのだから。パチュリーは攻められる覚悟をしていただけ
に、その感動は大きいものだった。

(……どうしてこの子は、こんなにも……) 

 溢れてくる想いに堪らずパチュリーは、頭を抱えている小悪魔を思いっきり抱き寄せた。

「安心しなさい。どんな魔族が来ても、返り討ちにしてあげるから」

「パチュリー様、ありがとうございます……でも、それはどうかと思うんですけども」

 少し主人の異常に動揺しながらもやっぱり嬉しくて小悪魔は身を任せた。

「……そういえば、パチュリー様。結局、望みって何ですか?」

「……えっと、まあ、気にしないで……」

 正直あのときは言えたが、それを今、言うのは恥ずかしかった。もう自分の思いを伝えている為、いま
さらだが、これ以上自分の尊厳を失うわけにはいかないと思った。
 パチュリーはごまかすように小悪魔の頭を撫でる。

 言うつもりがないと悟った小悪魔はいじけたように、

「いいですよ~だ。言わないなら、またパチュリー様の怒らせるようなことを、してしまうかもしれませ
んけど……まあ、パチュリー様の罰がこんな情熱的な抱擁だったら、それでもいいかな~、なんて」


「次やったら、ロイヤルフレア」

「灼熱的な抱擁っ!!?」


 小悪魔の声が、二人だけのその場所に響いていた。




 あれから数十分が経ち、しかしまだ、お互いを離さないまま抱き合っていた。 
 でも変化はあった。それはパチュリーの心。

「……ねえ、こあ。聞いてほしいことがあるの」

 その言葉に小悪魔が顔を上げると主人と目があった。それが真剣であることを悟って、小悪魔は承知し
た意味での返事をする。

「さっき貴方は私が昔、辛そうにしていたって言っていたけど、あれは事実よ。そしてそれは、貴方と契
約する以前からだった」

「……やっぱり、そうだったんですね」

 小悪魔はもう一度その頃のことを考えていた。天井を見ていたパチュリーの顔は時々、苦悶の表情をし
ていたことがあった。

「あの時はその、いろいろあってね、精神的にかなり参っていたのよ……本当に、いろいろとね……」

 パチュリーはまるでその頃の情景を見るような目をしている。そこから微かな悲しみを小悪魔は感じ取
っていた。それを少しでも慰めるように主人の手を握った。彼女もそれに気づいて握り返す。


「そんな時だった……ある事件があってね……私は、酷く絶望した」


 それはパチュリーが帰ってきた時のことだった。その時のことを思い出すのは相当辛いのだろう、体は震え、声すらも絞りだす様。そんな主人の手を小悪魔は一層強く握る。

「……すべてが嫌になって……もうだめだって…………そう思っていた」

 体も心もズタズタとはこのこと。パチュリーはすべての希望を失っていた。

 だから残された最後の自我に従おうとした。


「けど……私は貴方に出会うことができた」


「パチュリー、さま」

 震えは止まり、今は小悪魔に穏やかな目を向けていた。

「貴方のおかげで、私は踏みとどまることが出来た……ふふ、思い出してみても奇跡に近いわね」

「奇跡、ですか?」

「ええ、本当にいろいろな偶然が重なったとしか思えなかったわ。まるで、誰かが操っているんじゃない
かって疑ったもの」

 主人にそう言われても使い魔はいまいちな顔。

 一体何がそんなに偶然なのだろうか。確かに自分があの図書館に来たのは偶然だったかもしれないが。
他に何かそういえる要素があったのかと小悪魔は考えていると、

「いくら考えても出てこないわよ。だって、これは私個人の事情だから」

「なるほど……でも結果的に、パチュリー様の助けになったのなら満足ですね」

 小悪魔はそれを伝えるように微笑んだ。

「……それでね、こあ。私は今回、貴方がここを離れたことで分かったことがあるの」

 自分の使い魔の頭を撫でて、パチュリーは目を閉じて何かを決意したように、

「私はね、貴方がいないとダメなのよ。寂しいということもある……でもそれと同じくらい思い出してし
まうのよ、あの時のことを。だから……酷く、苦しくなる」

「……私がそれを癒すことが出来る、そういうことですか?」

「今まで貴方が、無関心だった私に気を使ってくれたことは、間違いなく辛さを抑制したのだから、そう
いってもいいわね」

 そう。お茶を飲んだりおしゃべりしたりしていたことは、間違いなく辛さを和らげることに繋がってい
た。

 パチュリーは小悪魔がいなくなって、いろいろな事に気づかされた。

「貴方はさっき、切り離せたって言ったけど……それは凄く嬉しかった。けどね、私自身、あの過去は忘
れたくない、背負っていかなければならないことなのよ……でもね、やっぱり苦しいの……本当に押し潰
されそうになることがある……けど、それも」





「貴方と一緒だったら大丈夫だから」






「……だから貴方に、ずっと傍にいてほしい」



 小悪魔の瞳を見つめてパチュリーは自分の想いを伝えた。


 その主人の想いに小悪魔は一度目を閉じた。

 そして伝えたいことが決まったように目を開け、



「貴方が望む限り、ずっと一緒にいます。私の愛するご主人様」


 微笑で答えた。











 



 


(……まいったぜ)

 使い魔とその主人から少し離れた場所で、魔理沙は本棚に寄りかかっていた。アリスと話をした後、
一度は家に帰ったもののパチュリーの顔(アリスの表現)が思い浮かび、いてもたってもいられずに謝りに
来たのだが、


(まったく、いつまで抱き合ってるんだよ) 

 二人が寄り添う姿を見つけ、声を掛けようとしたところで急に抱き合ったので、思わず、魔理沙は棚の
影に隠れた。なんともいえない気恥ずかしさに心臓が高鳴るのを感じた。その後も何度か声を掛けるチャ
ンスはあったが、タイミングが合わず今に至る。


(……にしても)

二人の姿を見ると、こう、いちゃいちゃしている感じではなかった。どちらかというと主人と使い魔、
いや、親子に近いのだが、それも何かしっくりこない。親子だったらどちらかが親と子で別れるはず。
普通に考えればパチュリーが親なんだろうが、魔理沙にはどうもそういう風には見えなかった。背格好が
ほぼ一緒の二人ということもあるのだが、パチュリーの方が小悪魔にすがっているように思えた。

 そんなことを考えていても一向に状況が変わらず、魔理沙はあきらめた。

 それでもせっかく来たので、このまま帰るのももったいない。

 魔理沙は聞こえなくてもいいやと思い、帽子を取りそれを胸に当てる。


(……二人とも、悪かったな)


 目を閉じて、ささやくように謝罪した。






 館の扉を開けると、涼しいそよ風が顔をくすぐる。

 空を見上げると雲一つ無い満面の星空。

 すると、流れ星が一つ。

 魔理沙はそれに気づいたが、願い事を考える間も無く、星はただ流れるまま消えた。

 ふと、思う。


 自分がこれから本物の魔法使いになるかもしれない、そしたら悪魔やらなにやら使役するのか。

 このまま人間として生きていくかもしれない、そしたら弟子でも取るのか。


 まあどちらにせよ、



「可愛げのある奴を頼むぜ」



 先ほど流れた星に願った。

 
 

 














 


 


 



 
 

 

 

 





















 母は一言で表すと静寂、

 父は一言で表すと旺盛、

 私はそんな二人の魔法使いの間に生まれた。

 だから私は半分ずつ受け継いだ。
 物静かだが好奇心は人一倍といった少女。


 母は私が何か間違いを犯しても叱ることは無くて、
 代わりにどうしてそれがいけないのか丁寧に教えてくれた。

 父の前では叱れないようにしていた。
 一度、怒鳴られたことがあって、それが子供心には十分過ぎるほどの、恐怖を植えた。


 教え方は違えど、愛し方は同じで、

 二人ともよく私を抱きしめてくれた。


 私は両親を愛していた。

 だから甘えていた。







 ある日、母が死んだ。


 魔法使いはそんな簡単には死なない。


 そう聞いていたのに、

 ずっと一緒にいれると思っていたのに、

 死んだ。


 特有の病気なのか、呪いなのかは分からない。

 どんなに考えても事実は変わらない、

 死んだ母は変わらない。



 私は父に食って掛かった。

 死なないなんて言ったのは母の方だったから、

 それを父に向けた。

 父は言った。


 それは仕方がないことだ


 子供でも分かるありきたりな言葉に、 
 
 より父に怒りを向けた。


 そんな私に父は抱きしめるだけだった。

 それにも、嬉しかった気持ちは私から消えていて。


 父はそんな私のわがままにもずっと付き合ってくれた。

 父は母が死んでも、

 前と一切変わらずにいてくれた。


 
 変わったのは、

 私の方だった。



 ある日、私に部屋を与えられた。

 前から自分の部屋はあったがそれとは別に、

 たくさんの本がある広い部屋。


 父は言った。


 これから忙しくなるから、お前に教える時間がなくなってしまった
 この部屋で自分で学びなさい


 久しぶりに与えてくれたものに嬉しさを感じた。

 私は動くことが嫌いだった。
 だから自然と読書が好きになっていた。

 そんな私にとって、その部屋はお気に入りになった。

 自分の部屋にある本はせいぜい、十数冊程度が小さな棚に収まっているくらい。

 それに比べここはいろいろな本がぎっしり棚に収まっていた。


 まるで図書館のように思えた。




 それから私の日常のほとんどはここで過ごすようになった。

 読めない本があっても嬉々として調べ、一日中読み更ける。

 それを毎日のように繰り返した。




 父は図書館に一切来なかった。

 父は薬の研究を生業としていた。

 それは純粋に人の為の、病い、怪我を治す薬。

 だからいつも忙しそうで、

 だから周りから尊敬されていた。

 間違いなく父は良い魔法使い。

 でも、

 私には母を忘れた人だった。







 それを見つけた時、心臓が止まるかと思った。


 生き返らせる方法が書かれた本。


 私にとってあまりにも衝撃的だった。

 そんな方法があるなんて、今まで微塵も知らなかったから。
 
 だから私は、片っ端から同じような本が無いか探した。

 すると出てくる。何冊も。

 早速、私は父に伝えた。


 やめなさい


 返ってきた言葉がこれだった。  

 何で、と思った。

 母が生き返るのに。

 その時の私は父の言葉が疑問で仕方なかった。

 そして思う。

 父はもう母をいらないのだと。






 それでも私は諦められず、一人で調べた。

 今までの本とは明らかに違う。

 意味の解らない言葉が永延と綴られている。


 それでも調べた。









 目が疲れ、頭が働かない。

 私はいつものように姿勢を少し前に出し、自然と上を見る格好で休憩していると、


 一冊の本が棚から落ちた。


 なんだろうと思い、その本を手に取ると、

 それは、


 悪魔が封印された本だった。


 その頃にはある程度の力と知識を持っていた私は、

 すぐにそれがなんであるか解った。


 でもその本にはそんなに力は無さそうで、

 とりあえず気に留めとく程度で、

 その本を棚に戻した。






 

 必死に学んだおかげで、

 私はかなり難しい本も読めるようになった。

 その知識をすべて、

 生き返らせることに使った。

 読書が終わり、その日常の最後に、

 違う部屋でそれをまとめていた。

 どうして図書館でやらないのか、

 一つはあの机は書くことに向いていない。

 もう一つは、

 ここは母の部屋だから。

 母の匂いがする部屋。

 だから、

 傍にいる感じがした、頑張れる気がした。






 

 まとめたものを私は父に見せた。

 そんな父は苦笑いで、


 やめなさい


 同じ言葉を言った。

 何回やっても、

 返ってくる言葉は同じ。

 それでも私は続けた。

 私の魔力では無理だから。

 父ならきっと出来るから。 

 いくらもう、

 母のことを想っていなくても、

 私はこの人に頼るほかなかった。

 だから、


 何度も、何度も、何度も、何度も、何度も……

 
 父に見せた。








 
 いつものように私のまとめたものを見せた。

 その父の顔は初めてだった。、

 真剣だった。


 この本を見せてくれ。


 初めて返ってきた違う言葉。
 
 私はその本を渡した。

 私が必死になって調べて理解したその本。

 父はその本を開き、

 顔色を変えた。

 その表情は、

 嬉しそうだった。

 やっぱりって思った。

 父の顔はいつも、寂しそうだった。

 まだ、母を愛していたのだ。



 それから父は薬の研究の傍ら、

 私のまとめたものを真剣に目を通すようになった。

 それが私は嬉しくて、

 必死で本を読み続けそれをまとめた。









 ある日、

 父は家を出ると言った。

 違う町に研究室があるらしい。

 父は言った。


 生き返らせたい


 父は理解してくれた、本気になってくれた。

 愛しているから当然。

 私は報われた気がした。

 本当に嬉しかった。






 それから父と私は手紙でのやりとりになった。

 父が求めるものを調べまとめて、

 それを返した。

 研究はうまくいっているようだった。
 
 父からの手紙には研究以外にも、

 母が生き返ったらどうしようか、

 期待に胸を膨らませているようだった。

 それだけ私たちを愛している証拠。

 だけど私は、

 
 どこにも行かずにみんな一緒にいたい


 そう返した。









 手紙のやりとりが多くなった。

 研究が行き詰っていた。

 求められることも多くなった。

 だから、私も行き詰った。

 そんな時だった。

 私は思い出した。

 この図書館には悪魔の契約書があることを。

 その本は変わらずにその場所にあった。

 私はその本を手に取り、

 自分の机に置いた。

 ちょうど自分の正面になるように。

 そして見ながら考える。

 悪魔と契約をすればいろいろな力が手に入るらしい。

 逆に契約者の願いが成就したら魂を取るらしい。

 今の私には魅力的だった。

 ただ、問題は、

 この悪魔が今の私の願いを叶えてくれるのか疑問に思うくらい、


 力が弱いことだった。


 契約をしても願いが叶わず魂だけ取られたら損。

 だから私は契約しても優位になるように、

 新しい問題ができた。





 しかし優先するのは父と私の研究。

 だから考えるのは休憩時間。

 読書を中断しその本を見つめる。

 どうすれば魂を取られずに済むか、

 または契約しても解除できるか、

 その本を見つめながら考えた。

 それを何回か繰り返すうちに、

 あることに気づいた。

 この本を見ていると、


 どういうわけか癒された。


 そしてそれが異様に癖になる。

 悪魔の魅惑とかそんなのではなくて、

 何ていえばいいのか、

 優しさが感じられた。

 だから休憩中は、

 
 この本を見つめて過すようになった。



 



 私はその方法を見つけた。

 これなら契約をしても魂は取られない。

 強制解除も同時に覚えた。

 生き返らせる研究よりも遥かに、

 楽だった。

 早速契約をしようとした。

 そしたら父から手紙が来た。

 その手紙には、


 きてくれ


 そう書かれていた。










 私は役立ちそうな本を準備して、

 部屋を出ようとした。


 ご主人様!


 そう呼ばれた気がして振り返ると、

 誰もいなかった。

 当たり前のこと、

 私がここに来るようになってから、

 誰一人この図書館には来ていない。



 いつも一人…………だった?



 不思議と疑問に思った。

 どういうわけか、

 それがはっきりしなかった。

 考えている時間はなかった。

 後ろから視線を感じた。

 でも振り返らずに、

 私は図書館を後にした。












 そこはちいさな町だった。

 父の研究室はその外れにあった。

 父の研究室に入った。

 そこには、


 たくさんの    があった。


 父は言った。


 アトスコシ


 だから私は、

 父の助手をした。

 持ってきた資料の説明をした。





 それから何ヶ月も、

 私はその研究を続けた。

 冬になっていた。















 そして、

 研究は完成した。





 ははができた。





 はははゆっくりと起き上がった。

 はははゆっくりと近づいてきた。

 はははゆっくりと抱きしめた。




 初めて私を抱きしめたあと、




 ははは、

 私を食いちぎった。



 そんな私を、



 ちちは笑っていた。






 どのくらい経ったか、


 急に熱くなってきた。

 部屋が焼かれていた。

 私は動けた。

 だから、

 その部屋から逃げた。



 ちちは、



 ははに食われていた。










 部屋を出たら、


 周りは白かった。

 寒さは感じなかった。
 

 私は赤かった。

 痛みは感じなかった。


 ただ、

 悲しかった。


 どうしようもなく

 涙が出てきた。

 全部自分のせいだった。


 私は何も変わっていなかった。


 父も母も大好きで、

 わがままで甘えん坊の私が、



 父を変えてしまった。



 そして私は、

 死にたくなった。

 あのままあの場所で死ねばよかった。

 けど逃げた。

 何でだろうと思った。









 気づいたら図書館の扉の前にいた。

 そして私は分かった。

 自分が許せなかった。

 あのままあの場所で死ぬ、

 そんな程度では済まさない。

 ずっと苦しまなければいけない。


 悪魔と契約をしよう


 そう思った。

 願い事は、


 私を好きにしなさい


 これならどんな力の弱い悪魔でも、

 私を苦しめ殺し、

 その魂を、

 獄に導いてくれるだろう。

 そんなことを思いながらも、

 涙は止まらなかった。




 私は扉を開けた。

 何ヶ月ぶりの図書館。

 その本は変わらずに、

 机に置かれていた。

 私は両手で、

 その本を持ち上げ、

 呪文を唱えた。



 唱えた後に下を向いて、

 目を閉じた。



 これで封印が解かれた悪魔が現れる。

 そして、

 契約の言葉を私に伝えるのだろう。

 その後、

 私は願いを言うのだ。




 契約の言葉を、

 この世界で聞ける最後の言葉を、

 贈り物にしよう。

 堕ちた私の証拠の為に。

 だから私は目を閉じた。

 一字一句、
 
 聞き逃さないように。






 気配がした。

 目の前にいるのが分かった。

 その悪魔は息が荒かった。

 興奮しているのだろう。

 それはそう。

 この日を永い時を流れながら、

 ずっと待ち続けていたのだろうから。

 良かったわね。

 貴方のその想いは、

 報われるわ。

 さあ、言いなさい。

 契約の言葉を、












「わ、私はっ!!」 

 え?



「ご主人様の為だったらっ!!」 

 ちょ、ちょっと待って、



「なんでもしますっ!!!」

 な、何を言っているのっ? 





 私は思わず顔を上げた。

 そこには、


 少女が立っていた。


 黒い羽を持ったその少女は、


 泣いていた。




 私よりもずっと、

 声を震わせて、

 涙を流していた。




「ご主人様が、泣いている理由っ、分かりま、せんけど!!」


 そんな状態だから、

 うまくしゃべれていなくて、




「私に、任せてっ……くださいっ!!」


 でもその言葉はあまりにも、

 私の心に響いて、




「貴方に、そんなことした奴らを、とっちめ…………こ、殺して、きますからっ!!」 


 ……それは無理。

 それ以前に貴方は何も殺せなさそう。




「大丈夫です、ご主人様!! 私、悪魔ですからっ!!」


 大体、契約もしていないのに、

 何で、



 ご主人様なの? 







 ……分かった。

 そう……そう、だったの。


 あの視線も、


 疲れを癒してくれたのも、


 一人だって、はっきりいえなかったのも、



 この子がいたからなんだ。

 この子はずっと、



 私を主人として傍にいてくれたのだ。

 私を元気づけようと頑張っていたんだ。









 貴方が流すその涙の意味も分かった。

 それは、

 私を心から想ってくれる証拠。

 だから、

 私の心は揺れた。

 この罪深い私にも、

 堕ちるべき魔女にも、

 まだ、


「さあ、言ってください!! ご主人様っ!!」


 希望が、


「貴方の願いをっ!!」


 あっても、








「……良いの?」


 私の言葉にその悪魔は、

 何度も頷いた。

 涙を振り乱すように、

 何度も、何度も、

 
 頷いてくれた。



 


 

 良いんだ、

 まだ、

 生きて、いても、

 私なんかが、生きていても、

 良いんだ。







 きっとこの子は意味は分からないのだろうけど、

 でも私は、

 貴方に救われた。



 

 私はもう立っていられなくて、

 その場に倒れた。


「ちょっ!? ご、ご主人様!! ご主人様、しっかり!! ご主人さまぁ!!」


 何度も私を呼んでくれる、

 その可愛い小さな悪魔。


 安心しなさい。

 私はこれくらいでは、

 死なないわ。





 私は思った。

 本当に偶然だった。

 もしこの子に、

 白い羽なんて生えていたら、

 私は諦めていただろう。 

 だって私は、

 魔女だもの。

 でも、


 悪魔だったらいいよね?






 私は呪文を唱えた。

 それはあの呪文。

 少し卑怯な気がしたけど、

 でもどうか許してほしい。

 そうしないと、


 叶わない願いだから。















「ずっと一緒にいてください」













  
お疲れ様でした。

ここまで読んで頂き、ありがとうございました。

パチュこあを好きになってもらえると嬉しいです。
あ~にょん
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コメント



0.1410簡易評価
1.100名前が無い程度の能力削除
パチュリーの最後のセリフに惚れました。
2.100名前が無い程度の能力削除
演出の余白がやりすぎと思いつつもはじめからホッコリ読ませて頂きました
6.100名前が無い程度の能力削除
良い話でした。
ただ、一番最後の余白だけは長すぎたかも。
もう一段のオチがあるのかと期待してずっとスクロールして後書きでちょっとがっかりって感じで。
そこまでが上手く盛り上がってただけに。
あとは、中編でのレミリアと咲夜のやり取りがちょっと腑に落ちなかったかな。
8.100奇声を発する程度の能力削除
読み始めてあっという間にのめり込んでいきました
とても素晴らしく素敵なお話でした
16.100名前が無い程度の能力削除
これはすばらしいパチュこあ。
17.100名前が無い程度の能力削除
良いね。非常に良いね。
18.70名前が無い程度の能力削除
咲ちゃんって呼び方がすごくいい…
19.100愚迂多良童子削除
良い小悪魔だなあ。
ハガレン然りFE聖魔然り、死者を蘇らせるのは無理みたいですね。

>>それはパチュリーが帰って時のことだった。
帰ってきた時、帰った時 ?
21.100名前が無い程度の能力削除
久々に良い物を見させていただきました。
28.100名前が正体不明である程度の能力削除
新年早々によい長編を…
素晴らしい!
そして、創想話にようこそ!
36.100名前が無い程度の能力削除
悪魔だったらいいよね?
この一文がすごく印象に残りました。
次回作にも期待~
37.100名前が無い程度の能力削除
元々パチュこあスキーだったが貴方のせいでもう取り返しのつかないレベルに!
最高の作品をありがとう!
40.100名前が無い程度の能力削除
好きになってまうやろー!
パチュリーもっと幸せになれ
41.100Rスキー削除
やっぱパチュこあは、パチュリーちょっと依存気味で小悪魔がいい子過ぎるくらいがいいですね。
42.100名前が無い程度の能力削除
素晴らしいぱちゅこあ!
長編でしたが気付いたら読み切ってました
色々新鮮な知識を頂いたので妄想が捗りそうです!
45.100名前が無い程度の能力削除
パチュこあ最高!!goodでした!!
46.100名前が無い程度の能力削除
あぁ、こういう話大好きです!二人の絆がとっても伝わってきました!