Coolier - 新生・東方創想話

死。点と線。

2012/01/03 02:02:48
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 何度殺し殺されても、死の瞬間っていうのはいまだになれない。
 死ぬ瞬間には、世界に死が満ち溢れる。
 点と線。
 その二つが見せるこの世界の死は、指パッチン一つで全てを終わらせられるような錯覚を私に教えてくれる。

 ああ

 世界はこんなにも「死」で満ち溢れている――――



 まだ朝もやが晴れない早朝に、私は目を覚ました。
 昨日の度重なる殺しあいの対価は私の普段着だった。
 ようするに……、全裸だ。

「さすがにこのままっていうのはいけないよね」

 この広場からなら自宅はそう遠くはないはずだ。
 そう思って家のほうに歩いていくと、途中、一本の黒線が視界に入ってきた。

「これは、新手のマーキング?」

 だとしたら少なからず覚えておかないといけない。
 大凶を引いた場合、大変なことになるからだ。
 私だっていきなり殺されたんじゃたまったもんじゃない。

「なんだろう、何かで焦がしたとか? でもそれじゃあこんなにきれいにはならないしなあ」

 結果、さわって確かめてみることにした。
 ゆっくり、ゆっくりと黒い線に指を伸ばす。
 指がその線に触れると

 ズブリ、と指が沈んだ。

「!? なに、これ」

 指先からはどこまでも黒い冷たさが伝わってくる。
 そのまま続けて線をなぞる。
 線をなぞりきったところで、目の前の竹はなぞった部分からきれいに倒れこんだ。
 近くにあった岩にも線があったのでなぞってみた。
 さっきの竹のように、岩はバターのように切断されて二つになった。

 なんてことだ。

「そう……、そういうものなのね、これは」

 この時にこの私、藤原妹紅は全てを理解した。
 全てが規格外の、人型をしたもの。
 蓬莱人は決して死ぬことも、老いることもない。

 死ぬことを何千、何万と繰り返してきたことで視ることになってしまった。

 これは、世界のほころび。

 全てに平等に死をもたらすものだと。



1.
 家に戻るまでの道のりは、まるで永遠のように感じられた。
 一つ目の線を確認してからというもの、私の視界にはおびただしいほどの黒い線が舞いこんできた。
 それは鳥だったり。
 竹だったり。
 微弱だけれど石にもあった。
 やっとの思いで家にたどり着き、着替えを済ませると、私が次にすることは決まっていた。

『慧音に会いに行こう』

 正直な話、体はもう悲鳴を上げていたが鞭を打ってでも行く価値はあると思った。
 この幻想郷の歴史を記録し続けている彼女なら、何かを知っている。
 私は迷いの竹林を、人里に向かって歩きだした。

 頭痛が、ひどい。

     ・

 私が里についたころには、もう太陽が頭の上に登っていた。
 案の定、里にも死は満ち溢れていた。
 その量は竹林の比じゃない。
 やっとの思いで辿り着いたいつもの寺子屋には、人の気配がしなかった。
 寺子屋の扉には今日の日付と慧音の字で

『今日の授業は休みとする』

 と、書いてある。
 それを見た私が『面倒だ』と考えていると、後ろから声がかかった。

「妹紅じゃないか、どうしたんだ?」
「ああ、慧音か。ちょうどよかった」
「なんだ? 私にできることなら手伝うぞ」
「よかった。実はね……」

 私は起きてから今までのことを慧音に話した。

「それで、慧音に話を聞きたかったんだけど」
「ふむ、それなら私よりもうってつけの人物がいる。紹介状を書こう、ついてきてくれ」

 ついていった慧音の家で、慧音は編纂の為に使っていた筆を使って、手紙を書き始めた。

「これでいいだろう。この里に『稗田 阿求』という人物がいる。阿求殿なら、妹紅の力になってくれるはずだ」


     ・・


「それで私に会いに?」
「ええ、そうなのよ」

 私は、慧音に話したように阿求にも全てを話した。

「それで、私は何をすればいいのでしょうか?」
「稗田家が纏めてきた記録の中に、私みたいなのがいなかったか調べてほしいんだ」
「わかりました。では、量が量なので明日また来てください」
「わかった。じゃあ、これで失礼させてもらうわ」
「はい、お気をつけて」


 私はだだっ広い廊下を抜け、大きな門をくぐった。

 頭痛はどんどんひどくなっていく一方だ。

 そこから先、私はどうやって家路についたのか覚えていない。

2.
 ふ、と目が覚めた。
 部屋には薬品臭がする。
 自宅ならこんな薬品臭がするはずがないのだが。

「あら、目が覚めたのね」
「あなたは、永琳ね。ということは、ここは永遠亭?」
「正解。昨日の夕方に、散歩中の姫様が倒れているあなたを見つけて運んできたのよ」
 
 永琳の話の通り、自分は自宅には辿りつけなかったらしい。
 それどころか林の中で倒れていたなんて。
 こんど輝夜と顔を合わせたときに何を言われるかわからない。

「多分過労ね。蓬莱人は何物にも侵されないものなんだけど。なにかあったの?」
「私にもわからないわ。いつも通りに生活してただけだし」
 
 そう、私はいつも通りに生活を。
「!?」
 
 とたん、私の視界に死が満ち溢れた。
 それに伴ってまた頭痛がし始めた。
 頭の内側から話にかがはい出してくるような痛み。

「どうしたの?」
「い、や、なんでもない」
「そう。それならいいんだけど」
 
     ・

 しばらくの間、私は痛みにうずくまって堪えていた。
 すると、病室の扉が開いた。
 永琳が戻ってきたのだろうか。
 そう思って目を向けると。

「どう、調子は。その様子だと、とてもじゃなさそうだけど」

 輝夜だった。

「なにを、しに来たの」

 輝夜はうっすらとした笑顔を浮かべながら答えた。 

「特になんでもないわ。暇つぶし」
「人が苦しんでいる姿をみるのが暇つぶしだって? 相変わらず趣味が悪い」

「褒め言葉ね。ありがたいわ」
「何をしに来たの?」

 動かない体に鞭を打って起きた。

「あなた、面白いものが見えているそうね。永琳から聞いたわ」
「面白いだって? 今すぐにでも気が狂いそうだ」
「私も視てみたい」
「やめたほうがいい。これは進んで視るもんじゃない」


 それから3秒ぐらいの間、輝夜は言葉を発さなかった。
 そして病室の出口のドアノブに手をかけながら、こう言った。



「あなたと同じ場所に立たなければ、意味がない。私も視ることができたなら……」

 病室には、最後。私だけが取り残された。




 続く
初めまして。
餌砲撒きと言います。
私の初投稿の拙い作品を最後まで視てくださってありがとうございます。
皆さんの気づきだと思いますが、この話まだ続きます。
続編ができたら、更新版としてまた投稿しますので、その時にはまたよろしくお願いします。

誤字、脱字。タグに追加したほうがよいものがあったら報告お願いしまう。

あけましておめでとう。
餌砲撒き
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コメント



0.400簡易評価
9.無評価名前が無い程度の能力削除
短けー!!!!
この文量なら最後まで書き終えて投稿したほうが絶対良いっすよ。100kb以上になったとか、読者が惹き付けられる魅力的なヒキがあるとかでもないかぎり、続き物は避けるべき。じゃないと毎週新作が何十作と投稿される創想話じゃ、特に固定ファンのついてない新人の作品は簡単に埋もれちゃうよ?
あと内容についてだけどさー、死の線が見えるようになった妹紅がやたらつらそうになってたけどさー、それってなんで?頭痛がだんだんとひどくなってきたとは後で出てきたけど、線が見えるようになった直後はなんでつらそうだったの?元ネタで志貴がそうだったから、なんてのはナシよ?ちゃんと作中で描写しないと。
他にも、妹紅は何時永琳に線が見えることを言ったの?とか、能力制御出来なくて一歩間違えれば全自動辻切りマシーンと化した妹紅を一人で人里を歩かせる危機感ゼロの慧音とか、異常事態なのに皆さん全体的に会話が事務的だなとか、おかしなところがいくつもありますねー。書いてておかしいなー、とか少しも思わなかった?

長々と書きましたが、とにかく書いたら投稿する前に1日おいて頭をリセットして読み返す、これだけで色々と気付ける点は多いはずです。次回を投稿する時はちょっとだけ気にしてみてください。
10.無評価名前が無い程度の能力削除
多分投稿する場所選択間違えてる。
漫画雑誌にも傾向があるように。
妹紅が型月系文章で、妖怪と死闘を繰り広げるような奇跡のクロスオーバーなら読みたいけど、過去100作品集でそういうのが受けたこと無いよね。
書くのもいいけど、クロスオーバーの名作がなんで面白いのか調べてもいいのでは。
また何処かで次の作品待ってます。
12.無評価名前が無い程度の能力削除
Arcadiaかにじファンにでも行った方がお互いの為かと…。
14.100名前が正体不明である程度の能力削除
これは続きが楽しみです。
埋もれるのが惜しい作品だから、これをOPにして、後はまとめて投稿した方がいいと思うなあ
15.無評価名前が無い程度の能力削除
直視の魔眼って別に魔眼でもなんでもなくね
直死なら魔眼だけど
18.無評価名前が無い程度の能力削除
正直、ここでやるべき内容ではないですぞ